絶滅する動物たち、発見される動物たち
 九州のツキノワグマや、高知のニホンカワウソが絶滅種とされた。1600年~1900年の絶滅速度は1年に0.25種であったものが、1900年~1960年には1年に1種、1960年~1975年には1年に1,000種、1975年以降は1年に40,000種と、種の絶滅速度は急激に上昇し続けている。(EICネット)

 地球環境を破壊しているのは、紛れもなくヒトであり、そのために絶滅種が増えていくのは何かがおかしい。自然界の生物と共存共栄していけないものかと思うが、人類は未だに、となりの国どうしでさえ理解し、共存共栄していくのが難しい状況だ。

 一方、科学技術の発達により、毎年新種の生物が発見されているのも事実。地球に生命が誕生したのは35億年前。現在、発見され名前がついている生物はおよそ200万種、“未確認生物”は数百万種もいるといわれており、現在も毎年、3000種が新たに発見されている。その中には我々の想像力をはるかに超えた生物も発見されている。


Macropinna microstoma

 この10年ほどの間に発見された珍種71種を紹介するのが『進化しすぎた「新種生物」ファイル』だ。その著者、本折浩之氏によると、日本でも多くの新種生物が見つかっているという。以下は週プレNEWS(7月31日)からの引用だ。

 ―この本の中で本折さんお気に入りの生物は?

 「頭部が透明の深海魚『デメニギス』はインパクトがありました。アメリカのカリフォルニア州・モントレーで見つかったんですけど、完全に頭の中の器官が丸見えなんです。しかも、目は頭の中に格納されている。ドーム状の頭部が透明だから、頭の中に目があっても周囲が見えるし、眼球がぐるりと回転して後ろのほうまで見ることができるんです」

 ―肺がないカエルもすごいです。

 「インドネシアのボルネオ島に生息するカエルですね。ソーラーパネルのような平べったい体をしていて、全身で皮膚呼吸をしています。普段、流れの速い渓流で生活をしているので、浮輪のような役割を果たしてしまう肺が邪魔になった。それで肺がなくなってしまったといわれています。見た目はすごくおっとりしたかわいいやつなんですけど、すごく思い切った進化をしたカエルです」

 ―ほかにも、“頭に生殖器がついたサメ”とか“手みたいなヒレを使って海底を歩く魚”など、奇抜な生き物がたくさん出てきますね。びっくりするのは、これらが全部、ここ10年ほどの間に発見されているということです。いったい誰がどこで見つけてくるんですか?

 「環境保護団体のWWF(世界自然保護基金)や海洋生物研究のネットワーク『海洋生物のセンサス』所属の研究者などが多いですが、アマチュアで新発見をする人もいます。

 場所は、アマゾンの奥地やマダガスカルのようなところが目立ちますね。でも、体長5.1cmのサンショウウオ『パッチノーズド・サラマンダー』は2007年にアメリカのジョージア州で見つかったのですが、市街地を流れる川で泳いでるところを捕獲されたんです。

 人間の想像力を越えたとんでもない生物
 ペルーで見つかった“木をかじるナマズ”のように、地元の人には昔から食材として有名だったものを研究者がつい最近発見した例もあります。日本でも多くの新種が見つかっています。あなたのそばにも、新種生物がいるかもしれませんよ」

―ロマンあふれる話です。こんな不思議な生き物がいろんなところで見つかっているとなると、ビッグフットやカッパみたいな「UMA」も、実はどこかで生息してそうな気がしてきます。

 「むしろ、UMAのほうが人間の常識の範疇(はんちゅう)にありますよね。自分の生存のために進化してきた自然界の生き物のほうが、人間が考え出した突飛な生き物より奇抜なんです」

―人間の想像力が自然界の進化のメカニズムに負けている、と。

 「そうなんですよ。『後ろのほうまで見るために頭を透明にする』なんて考える人間はなかなかいないでしょう。この本で紹介した生物は、新種ですからまだ研究が進んでなくて、なぜこのような形に進化したのか解明されていないものがたくさんあります。

 読者の方には、本を読みながら『こいつはなぜこんな進化をしたんだろう』って想像してほしいですね。ベッドの脇において寝る前に読むとか、トイレで便座に座るたびに数ページずつ見てあれこれ考えてもらえたらうれしいです」(週プレNEWS 7月31日)

 本折浩之(もとおり・ひろゆき)氏は、1977年生まれ、三重県出身。文筆家、マンガ原作者。世界各国を巡るフィールドワーカー。共著で『作家と温泉お台場から生まれた27の文学』(河出書房新社)がある。

 『進化しすぎた「新種生物」ファイル』は大変興味深い本だが、今日はその中で深海で発見された2種類の生物について紹介する。一つは透明な頭を持つ深海魚「デメニギス」。もう一つは、不思議な新種環形動物「スキッドワーム」である。

 透明な頭をもつ深海魚デメニギス
 全長15センチほどの深海魚デメニギス(学名:Macropinna microstoma)。緑色の球状部分が円筒形の高感度の眼で、戦闘機のコックピットを思わせる頭部から真上に飛び出ている (写真)。通常の眼の位置にあるのは鼻に相当する器官だ。この写真は23日に公開されたが、撮影は2004年に行われていた。

 アメリカのモントレー湾水族館研究所(MBARI)が、カリフォルニア州中央沿岸部沖の深海で生きたデメニギスを発見した。その軟らかく透明な半球状の眼球が無傷のまま見つかったのは同種では初となる。

 1939年以降、デメニギスの存在は確認されていたが、引き揚げられる途中で魚網に絡んで傷だらけになってしまうのが常だった。

灰色がかった円筒部分が眼(管状眼)で、その上にドーム状の緑色の膜がかぶさっている。膜には光フィルターの役割があるようだ。この写真では、眼は上を向いている。深海の暗闇で生きるデメニギスが上を通る獲物を狙っているらしい。

 管状眼が垂直に起立しているため、「真っすぐ上だけ見ているようにみえる」とモントレー湾水族館研究所(MBARI)の海洋技術者キム・ライザンビッヒラー氏は言う。だが、遠隔操作無人探査機(ROV)を用いて深海で泳ぐデメニギスを観察し、さらに1匹を水族館へ持ち帰って研究した結果、デメニギスの眼は回転することがわかった。その様子はバードウォッチャーが双眼鏡をあちこちに向けている姿に似ているという。(Richard A. Lovett for National Geographic News February 24, 2009)

 驚きの新種環形動物「スキッドワーム」
 ゴカイか、イカか、はたまたイカを食べているゴカイなのか? 2007年、フィリピン沖の深海を調査中の無人探査艇から送られてきた映像には、長い触手、らせん状の外肢、玉虫色の“パドル”、羽毛のような“鼻”を備えた生物がとらえられていた。

 アメリカ、マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋研究所の海洋動物学者ローレンス・マディン氏は、「画面にこの姿が現れたとき、いったいこれは何なんだと誰もが頭を抱えたよ」と振り返る。同氏が共著者として参加した最新の研究でその答えが見つかった。この生物は一部で予想されたとおり、奇妙な装飾を施された新種の海洋性の環形動物であることが明らかになった。

 この新種は、「Biology Letters」誌で11月24日に公開された研究で初めて詳細に論じられ、“サマのイカムシ”を意味するテウティドドリルス・サマエ(Teuthidodrilus samae)という学名も正式に付けられた。サマとは、発見された海域に近いフィリピン諸島と結びつきの深い文化の名称である。体長約9センチと比較的長いこの環形動物は、頭部がイカのような触手で覆われていることから“イカムシ(スキッドワーム)”と呼ばれていた。

 体の前部には、体長とほぼ同じ長さの呼吸のための8本の腕と、餌を捕えるのに使われる緩いコイル状の2本の外肢がある。これほどの装備でも飽き足りないかのように、頭からは6対の羽毛状の感覚器が突き出し、“鼻”の集合体として機能する。体の側面には、移動時の推進力を得るための玉虫色の“パドル”も持つ。

 ワシントンD.C.にある国立自然史博物館の環形動物担当の学芸員で研究に参加していないクリスティアン・ファウチャルド氏は、この生物が何であるにしろ「かなり派手ないでたちだね」と話す。

 外見の面白さに加えて、この環形動物が進化の移行期にある可能性をその奇抜な特徴が示していることも注目を集めている。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の進化生物学者で研究の共著者カレン・オズボーン氏によると、この生物の生息地が2つの全く異なる環境にまたがっているため、環境に適応するために大きく進化した可能性があるという。

 テウティドドリルスは深さ2000~2900メートルの海中で確認されている。生息範囲は海底でも明るい海面近くでもなく、その中間の暗い海中だ。これまで限られた調査しか行われていないが、水中のプランクトンや栄養に富む有機堆積物を餌としていることがわかっている。

 このような奇抜な形態となった理由が何にせよ、この生物は明らかに環境に適応しているようだ。研究によると、数回の潜水調査だけで“多数の”テウティドドリウスが確認されたという。これは、その海域では個体数が多く、ありふれた生物であることを示している。

 この特異な造形は人間をも惹きつけている。少なくとも研究者にとっては魅力的なようだ。ファウチャルド氏は、「ありとあらゆる装飾を体のあちこちに施している。実に楽しいね」と語っている。(Traci Watson for National Geographic News November 25, 2010)

参考HP National Geographic news:驚きの新種環形動物スキッドワーム 透明な頭をもつデメニギス

進化しすぎた「新種生物」ファイル
クリエーター情報なし
PHP研究所
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廣済堂出版

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