糖尿病の“常識”が変わる!NHKクローズアップ現代
 糖尿病というと日本人に多いのが、2型糖尿病。インスリン量が少なく、糖分を取りすぎると吸収しきれなくなり、血糖値が上がる。日本人というのは、もともと農耕民族で、インスリンの働きがよかったので、あまりインスリンが出ない体が作られた。そこに運動不足とか、あるいは動物性脂肪をたくさん食べることによって、どんどん血糖が上がるという特徴がある。

 糖尿病治療には、食事制限や運動など、身体に我慢を強いるので、なかなか長続きせず悪化させるケースがこれまで多く、「生活習慣病」とか「不治の病」などの印象が強い。ところが8月30日のNHKクローズアップ現代では、糖尿病が「治る病気になった」として紹介していた。

 番組ではこれまでの治療法を紹介、食事制限や運動、インシュリン注射など、これまでと大差がない。みなさんもご存じの治療方法だ。だが、これまでと違うのは、糖尿病のパターンを細分化していた。その人に合った方法で治療すれば、それほど我慢せずに、少しの努力で糖尿病も治療可能になることを知った。


Diabetes

 例えば、9年もの間糖尿病に悩んでいた女性。ある方法によって短期間で改善した。「1か月くらいで全く正常値になった。信じられない。」

 女性を救ったのは糖質制限食。肉や揚げ物ワインも自由に楽しめる!糖質の量だけを制限し他は今まで通りの食事だ…従来の糖尿病食とは全く違う食事法だった。糖尿病患者「本当においしいです。」今、医療機関でも患者の治療に取り入れる動きが広がっている。

 また、従来は最終手段だった、インシュリン注射も、急に血糖値が高くなった人には、有効であることも分かった。高血糖には糖毒性があり、インシュリンをつくる細胞を死滅させることがあり、はやく血糖値を下げたい。血糖値が急に上がっている人には細胞を守るために、インシュリン注射が有効な方法。

 さらにアメリカでは糖尿病を胃バイパス手術で治療する取り組みが進んでいる。その8割以上で血糖値が正常化。それまで使っていた薬が必要なくなった。外科医「ついに糖尿病を治しうる手段を手に入れたといえるでしょう。」以下はNHKクローズアップ現代からの引用である。


 糖尿病が改善 糖質制限食事法
 長年、苦しんだ糖尿病がある食事法でよくなった人がいる。藪田亜矢子さん。9年前に糖尿病と診断された。当時、体重は85キロ。血糖値の指標ヘモグロビンA1cは基準を大きく超えていた。

 医師からはカロリー制限食という食事療法を指示された。食事のカロリーを一般女性の8割ほどに抑え、さらに、食材の量や種類を細かく計算する必要がある。始めてみると予想外に手間がかかり食事作りに数時間かかることもあったという。

 藪田亜矢子さん「本当にグラムを量りながらつくる。精神的に、だんだんツラくなってくる。もう、早くこういう状況から抜けたい。」

 結局、2か月で断念。その後、症状は次第に悪化していった。そして去年、目の網膜で出血。手術で血は止まりましたが、失明の一歩手前と言われた。危機感を抱いた藪田さんは医師と相談のうえ、ある食事法を始めた。

 「結構、肉いれるんですね。」藪田亜矢子さん「そうですね。ふつう、このくらい使っています。」

 糖質制限食。米や小麦粉、そして砂糖など糖質の多い食べ物を減らす。例えば麺も、小麦粉ではなく豆腐で作った特殊なものを使う。それ以外の肉や魚、卵などは好きなだけ食べられる。糖質制限食の考え方だ。

 米や麺などを食べると血液中の糖質が急激に増える。すると、すい臓からインスリンというホルモンが出て糖質を取り込む。しかし、日本人の糖尿病の場合インスリンが少なく、取り込みきれない。残った糖質は周りの細胞を傷つけ、動脈硬化や失明などのリスクを高める。そこで食事の糖質を減らすことで、血液中の急激な増加を防ぐ。すると、少ないインスリンでも糖質が残りにくいのだ。

 糖質制限食を始めて3か月。効果が現れた。藪田さんの場合20キロのダイエットに成功。さらに血糖値が下がり、それまで飲んでいた薬なしでも正常な値になった。

 藪田亜矢子さん「何年もかけて、全くよくならなかった数値が、この食事方法にして、1か月くらいで全く正常値になった。信じられない。」今、糖質制限食を治療に取り入れる医療機関が増えている。

北里研究所病院糖尿病センターの山田悟さん。従来のカロリー制限食が続けられなかった人の治療に、3年前から糖質制限食を取り入れている。
 糖質の少ないパンを開発。味や見た目にも気を配ることで、治療を続けやすくした。12人の患者で調べたところ半年間で血糖値の指標が下がっていたことが分かった。

 北里研究所病院 山田悟糖尿病センター長「現在スタンダードなカロリー制限食、医学的な意義は間違いない。どうしても続けられない方はいる。そういう方の治療の選択肢として、糖質制限食は意義がある。」


 糖質制限食、自己流では危険性も
 しかし、この糖質制限食。患者が自己流で行うと危険もある。長年、糖尿病に悩んでいたこの男性。去年(2011年)、自己流で糖質制限を始めた。

 「ごはん類とパン類を一切なくした食事です。」糖質をほとんどとらなくなったことで、食事のカロリーは以前の3分の1にまで減った。2か月で血糖値の指標は大幅に改善した。ところがその後、体調が悪化。足の筋力が衰え、手すりをつかまないと階段も上れなくなった。さらに視力にも異変が…。

 「このへんの表示とか、文字が全然見えない。」病院で受診したところ、血糖値を急激に下げ過ぎたせいで、さまざまな異常が起きた可能性を指摘された。

「自己流でやったんで、冷静にちゃんと指導でやっていればよかった。」患者が暮らしの中で糖質制限を行う場合どんな課題があるのか?

 糖尿病の食事療法を研究する金沢大学の篁(たかむら)俊成さん。篁さんは、糖質をどこまで減らしてよいのか、検証を進めている。糖質を減らせば減らすほど、血糖値を下げる効果が期待できる。しかし、十分なカロリーを保とうとすると、たんぱく質や脂質の量が増え、栄養のバランスが偏ってしまう。

 篁さんのチームでは、まず糖質を減らす場合、通常の食事の半分程度までとする基準を作った。そして、減らした分のカロリーは、動脈硬化のリスクや腎臓への負担が少ないオリーブオイルなど植物性の油で補うことにした。

 「糖質制限の食事になります。」今、大学では工夫した糖質制限食を患者に食べてもらい、効果や安全性を調べる取り組みを進めている。

 金沢大学医学部 篁俊成准教授「患者が長く続けることができて、有効かつ安全な栄養のバランスを話し合いながら探っています。」


 高血糖にはインシュリン注射も
 熊本県に住むこの男性は2週間ほど前に糖尿病と診断された。血糖値は正常値の3倍以上。インスリンを出すすい臓の働きが衰えていることが分かった。

 「ショック、えーって思った。自分は健康ばってん、どうしてこういう病気になったんだろう。」

 そこで男性はすい臓の働きを改善するための治療を受けることになった。「今日からインスリンを始めたいと思います。」治療の最後の手段とされるインスリン注射。それを治療の最初から使う方法。

 インスリンは血糖値を下げる効果が高い一方、使い方を誤ると失神などを起こす危険もある。そのため通常、飲み薬などを試したあとで使われますが、男性の場合、十分な指導の下で行う。

 男性のように極めて血糖値が高い場合、すい臓の細胞が糖質によってダメージを受け、インスリンを出す働きが衰える。その結果、さらに血糖値が高くなる。糖毒性と呼ばれる現象だ。この状態が続くと、すい臓の細胞がやがて死んでしまう。

 インスリン注射は多くの場合、状態が悪化してから行われていた。しかし、男性の場合、細胞がまだ残っている段階でインスリンを補う。すると、一時的に血糖値が下がる。この結果、すい臓へのダメージが減り再び、インスリンを出す能力が高まるのだ。

 治療を始めて2週間後。「こんにちは。」「こんにちは、もうだいぶ良くなりました。うれしいです。」」効果が現れていました。すい臓の機能は倍近くに回復。以前は、最高で300程度あった空腹時の血糖値は139に下がりました。この結果、飲み薬と食事療法だけで血糖値を保てるようになり、インスリン注射をしなくてよくなった。

 熊本大学医学部 荒木栄一教授「インスリンは必ずしも最後の手段ではない。最も血糖の管理を可能とする重要な薬剤。(この治療によって)より少量の飲み薬でよりよい血糖のコントロールが可能になる。」


 胃バイパス手術が糖尿病に有効
 日本と同様に、糖尿病が社会問題化するアメリカ。従来の方法では効果が出ない患者に対し、手術で治療する取り組みが始まっている。ニューヨーク郊外に住むアーリーン・テラーさん58歳。4年前に糖尿病の診断を受け食事制限や、さまざまな薬で治療してきましたが、効果はなかった。ところが去年、ある手術を受けたところ血糖値が正常化。薬を使わなくてよくなりました。

 アーリーン・テラーさん「手術で糖尿病が治るなんて素晴らしいことだわ。自分に自信がもてるし、どんどん健康になっていくのよ。」

 アーリーンさんが受けたのは胃バイパス手術。胃や腸の一部を切り、食べ物の吸収を抑える。従来は重度の肥満の人に減量を目的として行われてきたが、糖尿病にも効果があることが分かってきたのだ。

 鍵を握ると考えられているのは小腸。その末端には特殊な細胞があり、食べ物に反応してホルモンを出す。このホルモンはすい臓に働きかけインスリンを出すよう促している。胃バイパス手術では胃を小さくし小腸も短くする。その結果、食べ物が吸収されないまま、たくさんこの細胞に届くしくみだ。

 すると、ホルモンの量が増え、インスリンを出す働きが高まると考えられている。これまでの研究では手術を受けた人の8割以上で血糖値が正常化。薬などの治療が必要なくなったと報告されている。

 ワイルコーネル医科大学 フランシスコ・ルビーノ准教授「この手術は5年以内に当たり前の治療になると思います。ついに糖尿病を治しうる初段を手に入れたといえるでしょう。」


参考HP NHKクローズアップ現代:糖尿病の常識が変わる アイラブサイエンス:毒トカゲから糖尿病新薬


糖質制限食のススメ
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東洋経済新報社
糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食
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ナツメ社

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