ウニを食べるラッコ、CO2削減に貢献
 ラッコは動物園の人気者。器用に胸に乗せた石を使い、トゲだらけのウニや貝などを食べる。そのラッコが最新の研究から、地球温暖化の緩和に一役買っている事実が明らかになった。
 
 ウニは温室効果ガスを吸収するケルプ(コンブ)をエサにしている。ラッコがウニを捕食すれば、ケルプの繁殖が促されるのだ。ラッコが“手助け”したケルプの群れでは、貪欲なウニに食べられた場合と比べ、大気中の二酸化炭素(CO2)吸収量が12倍高くなるという。

 研究では、アラスカとカナダ沖の太平洋におけるラッコとケルプ群生に関する40年間のデータを解析。「この地域に限って言えば、ラッコがCO2の貯蔵サイクルに大きな影響を与えているのは間違いない」との結論に至った。ラッコは地球温暖化の新たな“救世主”となるのだろうか?


Sea_otters

 アメリカ、インディアナ州にあるパデュー大学気候変動研究センター(Purdue Climate Change Research Center)のジェフリー・デュークス氏は、「そうとは言い切れない」と指摘する。
 「ラッコのおかげでCO2吸収が増えたとしても、地球全体の気候変動から見れば取るに足らない量だ。しかし、とある生態系の中で、捕食動物がCO2サイクルを劇的に変化させる事実を突き止めた点は興味深い」。
 研究チームの一員でカリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の生物学者クリス・ウィルマース(Chris Wilmers)氏も、「地球温暖化に大きな影響を与える可能性は低い」と認めている。
 同じく共同研究者でUCSCのジェームズ・エステス(James Estes)氏は、「ラッコだけでは大きな効果はないかもしれない。しかし、自然界における少量のCO2削減が積み重なれば、大きな効果を生み出す可能性がある。気候変動の影響を緩和する方法を見つけるためにも、生物の相互作用がCO2サイクルとどのように関係するのか、全体的な現象に目を向けたい」と話している。(Kate Andries for National Geographic News September 12, 2012)


 ラッコとは何か?
 ラッコ(海獺、猟虎:Sea otter)は、食肉目(ネコ目)- イヌ亜目- クマ下目 (en)- イタチ科- カワウソ亜科- ラッコ属に分類される、中型の海棲哺乳類(1種)。本種のみでラッコ属を形成する。

 イタチ科のうちで水棲に進化したのがカワウソ類(カワウソ亜科)であるが、その中から海洋に進出して、陸に依存しないでも棲息可能なまでの本格的な適応を遂げた唯一の現生種が、ラッコ属であり、ラッコである。氷河期を迎えた北太平洋西部海域におけるコンブの出現と適応放散がもたらした新たな生態系が、ラッコの出現および適応放散と密接に関係すると考えられている。

 日本の択捉島東部、千島列島、アラスカ、カリフォルニア州などの北太平洋沿岸に生息している。分布の北限は北極海の氷域であり、南限はカリフォルニアのオオウキモの分布の南限と一致している。

 体長約55- 130cm、尾長約13- 33cm、体重約15- 45kgと、イタチ科最重量種である。尾は短く扁平。尾の基部には臭腺(肛門腺)を持たない。体毛密度が高く、哺乳類のなかでも最も高い部類に入る。8億本もの体毛が全身に生えており、これは6cm²の皮膚にヒトの頭髪すべてが生えているのと同等である。全身をくまなく毛繕いするために柔軟な体、皮膚を具えている。「綿毛」と呼ばれる柔らかい下毛が 1cm²あたり10万本以上密生している。水中に潜るときでも、綿毛の間に含まれた空気が断熱層となり、防寒の役目を果たしている。背面は濃褐色、頭部は淡褐色の体毛で被われる。吻部には洞毛が密生する。幼獣は全身が黄褐色、亜成獣は全身が濃褐色の体毛で被われる。

 前肢は短く、後肢は大型。指趾の境目は不明瞭で、後肢は鰭状になる。大臼歯は大型で丸みを帯び、固い獲物を噛み砕くことに適している。水分は海水を飲むことで補い、浄化のため腎臓の大きさはカワウソ類の平均的な大きさの2倍にもなる。


 ラッコの生態
 海岸から10km以内の沿岸域に生息する。陸上に上がることは稀であるが、天候が荒れた日には上がることもある。数十頭からなる群れを形成し、生活する。昼行性で、夜間になると海藻を体に巻きつけて海流に流されないようにして休む。防寒効果を維持するため、頻繁に毛繕いをし、毛皮を清潔に保っている。幼獣の毛繕いは母親が行う。

 食性は動物食で、魚類、貝類、甲殻類、ウニなどを捕食する。海中で獲物を捕らえ、水面まで運んでから食べる。貝類を食べる際には胸部に石や別の貝類を乗せ、それらに貝殻を打ちつけ叩き割ってから下顎の門歯で中身をこじ開けて食べる。サル目を除いた哺乳類では本種のみ道具を使う例が報告されている。

 亜種カリフォルニアラッコでは道具を使い貝類を割る行動が比較的確認されているものの、主に柔らかい獲物を食べる亜種アラスカラッコでは道具を使って貝類を割ることは稀とされる。なお、動物園などで飼育されているラッコの場合は自然界には無い道具を使用するほかに水槽のガラスに貝殻を叩きつけることも確認されており、日本の豊橋総合動植物公園では強化ガラスを叩きつけすぎて強化ガラスにヒビが入った例も確認されている。また貝類を食べる際の石等の道具や食べ切れなかったアサリ等はわき腹のたるみをポケットにして、しまいこんでおく癖がある。
 ラッコが長く生息する海域ではウニが食い尽くされて、主に貝類を捕食するようになるといわれる。そういった生態から漁業被害を訴えられることもあるが、ウニが増えるとコンブなどの海藻が食い尽くされる弊害があり、ラッコが生息することでそれを防ぐ効果もある。
 繁殖形態は胎生。交尾、出産は海上で行う。春になると雄は雌に交尾のアピールをし、雌の承諾が得られると並んで仰向けになって波間に浮かぶ。雄は交尾の際、体勢を維持するために雌の鼻を噛む。たいていはすぐに治る軽症で済むが、稀に傷が悪化し、食物を食べられなくなることなどで命を落としてしまうケースもある。

 雄は交尾が済むと別の雌を探しにいき、子育てに参加することはない。 妊娠期間はおよそ8- 9か月。1回に1頭、稀に2頭の幼獣を産む。腹の上に仔を乗せながら、海上で仔育てを行う。幼獣は親が狩りをしている間、波間に浮かんで親が戻ってくるのを待つ。このときは無防備になり、ホホジロザメに約1割の幼獣が捕食されてしまう。幼獣は親から食べられる物の区別や道具の使い方を習う。成長したラッコは気に入った特定の石を保持し、潜る際には錘(おもし)に使う。


 人間との関係
 毛皮が利用されることもあった。18世紀以降、ロシア人が極東に進出してきた理由の一つに本種の毛皮採集が挙げられる。 毛皮目的の乱獲により、20世紀初頭にはラッコの個体数は絶滅寸前にまで減少した。アラスカではカリフォルニアアシカが乱獲などによって激減したことで、それを主要な捕食対象としていた当海域のシャチが食うに困って対象をラッコにシフトし、これによって90%近くを捕食してしまうという事態も起きた。 その後、野生生物に対する意識が保護へと大変換する時代に入ると、ラッコは1911年に締結された国際的な保護条約(猟虎及膃肭獣保護国際条約)の対象となり、以後は生息数を徐々に回復していった。
 1989年、アラスカのプリンスウィリアムス湾で超大型タンカー「エクソン・バルディーズ号」が座礁し、27万バレルの原油が流出するという事故があった。この事故によって約6,000頭のラッコが死亡したとされる(少なくとも1,016頭の死亡が確認されている)。鰭脚類などと比べると体が小さく皮下脂肪が相対的に薄いため、体毛が油で汚染されることで防寒効果が低下して凍死し、また、体毛の間に蓄えられた空気がなくなり、浮力が減少して溺死したのである。
 アワビ、ウニなどを捕食する害獣と見なされることもある。国際条約などで保護動物となっている場合が多いので地域の都合で駆除などができない。
 シートン動物記によると、本来は海辺で生活する陸棲動物であり、日光浴をしている群れをごく当たり前に見ることができたらしい。その頃は人間に対する警戒心も無かったため、瞬く間に狩り尽くされてしまい、現在のような生態になったと記されている。
 日本では平安時代には「独犴」の皮が陸奥国の交易雑物とされており、この独犴が本種を指すのではないかと言われている。陸奥国で獲れたのか、北海道方面から得たのかは不明である。江戸時代の地誌には、三陸海岸の気仙の海島に「海獺」が出るというものと、見たことがないというものとがある。かつて千島列島や北海道の襟裳岬から東部の沿岸に生息していたが、毛皮ブームにより、H・J・スノーらの手による乱獲によってほぼ絶滅してしまった。このため、明治時代には珍しい動物保護法「臘虎膃肭獣猟獲取締法(明治四十五年四月二十二日法律第二十一号)」が施行されている。
 現在でも時折、千島列島などから来遊し、北海道東岸で目撃されることがあるが、定着するまでには到っていない。2003年頃から襟裳岬近海に、2010年頃から納沙布岬近海に、それぞれ1頭のラッコが定着したが、ウニなどを大量に食べることから漁業従事者は被害(食害)を問題視している。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:ラッコ National Geographic news:ウニを食べるラッコCO2削減に貢献


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