熱波と動物たち
 9月も半ばを過ぎたのに真夏日が続いている。イタリア・ローマ(Rome)の動物園「ビオパルコ(Bioparco)」では、気温が40度近くまで上昇する酷暑となった8月21日、「焼けるような暑さに立ち向かう」動物たちのために取った対策を明らかにした。
 トラやライオンには自分たちの頭ほどの大きさもある、肉の味がする「氷あめ」が、サルにはヨーグルトとスイカ、凍らせたフルーツが詰められた竹筒が与えられた。動物園の職員によれば、この暑さ対策により飼育環境が改善されるのに加え、動物たちが食べ物を手に入れる能力を磨くこともできるという。(AFP 2012年8月22日)

 一方、アメリカのコロラド州やテキサス州では今夏、100頭以上の家畜が炭疽症で死亡した。被害が増加した原因は干ばつと見られている。高い気温が続き、炭疽菌の芽胞の形成が活発化したという。また、乾燥した環境では土壌中の芽胞も数年間生存できる。干ばつで少なくなったエサを求め、家畜が地面を掘り返した結果、芽胞が撒き散らされてしまったようだ。


AnthraxBacteria

 熱波は野生動物にとっても過酷だ。米国に生息する、リスの近縁種であるマーモットもまた、適応できる気候変動の幅は限られている。マーモットは通常、気温の低い高山に生息している。冬眠中は地下の巣穴で厳しい寒さから身を守り、夏季には脂肪を蓄えるためエサを食べ続ける。長い冬や雪不足はマーモットにとって命取りだ。さらに、夏の小雨はエサの生育に影響し、春にたくさん雨が降れば交配が進まない。
 2012年の冬、アメリカ西部の積雪量は著しく減少し、夏は記録的な猛暑と干ばつが続いた。ロッキー山脈ではマーモットの生息数が急減した。異常気象のせいだという。

 野生動物が数を大幅に減らす原因は、地球温暖化による漸次的な気温上昇よりも、熱波のような異常気象が度々発生するからだという。残念ながら、もはや「異常」と呼べない状況になりつつある。地球温暖化が進むにつれ、海水の蒸発量が増加。大気中の水分が右肩上がりに上昇すると、熱波や干ばつ、豪雨までも、異常ではなく日常化する可能性が高い。
 ロッキー山脈に最近雨が降り、エサとなる植物が復活。マーモットは脂肪を蓄え、繁殖期に入っている。

 熱波で炭疽症が発生
 アメリカでは、春から初夏にかけて雨がほとんどなく、全米の広い範囲で草原が育たず、草を求めるシカなどの有蹄動物が十分な食糧を得られずにいる。ユタ州の野生生物局は、冬場にアメリカアカシカの個体群が餓えて全滅するのを防ぐため、狩猟許可頭数を1000頭減らしたと地元紙は伝えている。
 食糧不足は飼育動物についても同様で、干ばつのために放牧用の草地が枯れ、飼料価格も高騰していることから、畜産農場の経営者は早い段階で家畜を食肉用に売却せざるをえなくなっている。
 家畜については、一部には炭疽症による被害もあり、コロラド州やテキサス州ではこの夏に100頭以上が死亡している。被害が増加した原因は干ばつと見られている。高い気温が続き、芽胞の形成が活発化した可能性があるという。また、乾燥した環境では土壌中の芽胞も数年間生存できる。干ばつで少なくなったエサを求め、家畜が地面を掘り返した結果、芽胞が撒き散らされてしまったようだ。
 炭疽菌は土の中にいる常在菌だ。 芽胞が肺にたどり着くと、発芽して毒性物質を放出、内出血や腫れ、組織の壊死を引き起こす。また、芽胞を飲み込んだり、傷口に擦り込まれた場合、血液中に侵入する可能性もある。
 密集した飼育環境では、群れの1頭が感染すると、あっという間に全体へ広がる。病死体や血液を屋外に放置している場合も危険だ。また、春に雨が多いと、炭疽菌を媒介するサシバエが増加しやすいという。
 家畜への感染予防には、ワクチン接種が一定の効果を上げている。人間への侵入経路は感染動物との接触が最も多いという。患者には、できるだけ早く抗生物質を大量投与する必要がある。

 炭疽菌(Bacillus anthracis)は、炭疽(炭疽症)の原因になる細菌。病気の原因になることが証明された最初の細菌であり、また弱毒性の菌を用いる弱毒生菌ワクチンが初めて開発された、細菌学の歴史上で重要な位置付けにあたる細菌である。

 また第二次世界大戦以降、生物兵器として各国の軍事機関に研究され、2001年にはアメリカで同時多発テロ事件直後のアメリカ炭疽菌事件に利用された。


 炭疽菌とは何か?
 炭疽菌 (Bacillus anthracis) は、バシラス属に分類されるグラム陽性の芽胞形成桿菌である。種小名の anthracis は「炭疽(anthrax)」を意味する。この語はギリシャ語の「炭 (ἄνθραξ)」に由来し、炭疽の病変部が炭のような黒色に変色することにちなんで付けられた。

 大きさは約 1~1.2 µm × 5~10 µm で、病原性細菌の中では最大の部類である。顕微鏡で観察すると、個々の桿菌は円柱状で、竹の節を直角に切り落としたように見え、これが直線上に配列した連鎖桿菌として観察される。その周囲を莢膜(きょうまく)と呼ばれる構造が取り囲んでいる。炭疽菌の莢膜は、他の細菌が持つものと比較すると境界が鮮明である。鞭毛や線毛は持たない。

 炭疽菌は芽胞形成菌で、生育環境が悪化すると菌体の中央付近に卵円形の芽胞を形成する。芽胞は熱や化学物質などに対して非常に高い耐久性を持つ構造体であり、このため炭疽菌が生息している環境から菌を除去することは極めて難しい。第二次世界大戦後に連合軍が行った炭疽菌爆弾の実験では、少なくとも投下後 40 年以上にわたって、多数の炭疽菌が土壌に残存しつづけるということが判明した。

 炭疽菌は土壌に生息、あるいは芽胞の形で存在し、またヒツジなどの動物の体毛にも土壌由来の菌や芽胞が付着して存在しており、世界中で分離される普遍的な自然環境の常在細菌である。

 ただし、特に炭疽の発生が多い地帯は世界に 2 カ所存在しており、この地帯では炭疽菌の生息密度が特に高いと考えられている。一つは、スペイン中部からギリシャ、地中海を挟んでトルコ、イラン、パキスタンに至る地帯であり、特にトルコからパキスタンにかけては炭疽ベルトと呼ばれることがある。もう一つは、赤道アフリカ地帯である。また、ジンバブエでは 1979年に記録的な炭疽の地域的流行が発生して以降、高度に炭疽菌汚染した地域になっていると言われている。


 炭疽症と治療法
 炭疽菌は土壌中の常在細菌であるが、家畜やヒトに感染して炭疽(症)を発症させる。そのもっとも多い例は、皮膚の傷口から侵入して皮膚で発症する皮膚炭疽である。この疾患は特に中世ヨーロッパでは、家畜の屠殺・解体・鞣革を行う者に多く見られた。

 また炭疽菌の芽胞が呼吸器を介して肺に到達すると、肺炭疽と呼ばれる極めて重篤な疾患を起こす。肺炭疽は羊毛を扱う者に見られた疾患である。また稀な例として、炭疽により死亡した動物の肉を食べたとき、腸管の傷口から侵入して起きる腸炭疽を起こす場合もある。

 いずれの場合もヒトからヒトへの伝染は起きない(言い換えれば、危険な感染症だが伝染病ではない)。炭疽は人獣共通感染症であり、日本では感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)において、四類感染症に指定されている。
 動物とヒトにおいて、それぞれ有効なワクチンが開発されている。動物に対しては弱毒生菌ワクチンが用いられる。これはパスツールが開発したものをヒントに、スターンが 1930年代に作り出したものである(細菌学における歴史的位置付け、莢膜の節を参照)。一方、ヒトに対しては成分ワクチンが用いられており、これは外毒素の一つである防御抗原 (PA) を用いたものである(防御抗原を参照)。

 しかし、いずれもヒトに対する副作用や有効性では問題が残っているため、新しいワクチン開発が続けられている。なお日本においては、ヒトに対する成分ワクチンが認可されていないため、生物テロに対する備えが不十分ではないかと指摘されている。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:炭疽菌 National Geographic news:熱波で数を減らす生物種 


熱中症―日本を襲う熱波の恐怖
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へるす出版
世界史を変えた異常気象―エルニーニョから歴史を読み解く
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