米国 記録的な干ばつ 広がる被害と影響
 この夏、記録的な暑さに見舞われているアメリカ。 7月は、観測史上最も暑い1か月となった。 暑さで、ハイウエーのアスファルトにはひびが入り、 線路がゆがんで、脱線事故も発生。 猛暑に加え雨不足で、生産量世界一を誇るトウモロコシも大きな打撃。アメリカのキャスター 「アメリカ全土で現在起きている干ばつについて、研究者たちは、面積で見て、アメリカ史上最大の自然災害だと宣言しました」。

 今年の生産量は大幅に落ち込んだ。 トウモロコシ農家 「普段なら満杯の備蓄倉庫が、今年は空っぽだよ」 アメリカで深刻さを増す干ばつの被害。 影響はどこまで広がることになるのか?

 世界有数の農業生産国アメリカで、56年ぶりとなる大規模な干ばつが広がっている。 被害の範囲は国土の6割以上に及び、世界的な穀物の供給に混乱が生じることも懸念されている。すでにトウモロコシや大豆の先物価格は、代表的な指標で、この2か月あまりの間に歴史的な水準にまで高騰。 日本でもトウモロコシや大豆と連動して値上がりしている輸入小麦の価格について、農林水産省が価格を引き上げることを決めた。


Food_crisis

 アメリカ南部、アーカンソー州。 最も深刻な干ばつ被害を受けている地域の1つだ。 トウモロコシ畑の気温は41度。 湿度は20%台しかない。農家を営む、ロバート・ストーバーさんは、 トウモロコシや大豆などの畑を経営して、26年になる。この地域では、4月中旬以降、雨らしい雨が降っていないと言う。アメリカを襲っている干ばつは、中西部の穀物地帯を中心に南部や西部にも広がり、8月16日現在、アメリカの国土の少なくとも60%以上にまで広がっている。

 ストーバーさんの畑のトウモロコシは、例年の大きさの3分の1程度の大きさまでにしか育っていない。作付けしたトウモロコシの半分は、商品として出荷できない状態だ。ストーバーさん 「こんなにひどい干ばつは、経験したことがない。 商品にはならず、数百万ドルの損害になるだろう。 破滅的な影響だ」 トウモロコシの収穫の見通しが悪化していることを受けて、アメリカ農務省は、穀物の生産や在庫の予測を下向きに修正。 厳しい生産予測を明らかにしている。(NHK news 2012年8月22日)


 米 バイオ政策が穀物価格高騰に拍車
 アメリカの大規模な干ばつで、トウモロコシなどの穀物価格が上昇し、飼料も値上がりして畜産業に深刻な影響が出始めている。こうしたなかオバマ政権が推し進めるバイオ燃料の普及を促進する政策が、トウモロコシ不足などにさらに拍車をかけようとしていて波紋を呼んでいる。

 アメリカではおよそ56年ぶりと言われる大規模な干ばつで、トウモロコシなどの穀物価格が上昇し、畜産農家の間では飼料も値上がりしていることから、牛を早く売る動きが広がっている。

 このため牛肉は価格が下がり、ステーキ店では値下げのキャンペーンが相次いでいるが、今後は、次第に出荷が減るため、逆に値上がりすると予想されている。

 またオバマ大統領が推し進めてきたバイオ燃料の普及を促進する政策が、トウモロコシの年間収穫量の半分近くを車の燃料用に振り分けることを義務づけていることから、トウモロコシ不足の懸念はさらに強まっている。

 一部の畜産農家からは、バイオ燃料の普及を促進する政策の見直しを求める声も出ていますが、一方でこの政策が安定収入につながると見込んで、トウモロコシの栽培にも乗り出している畜産農家が多くある。

 このためオバマ政権は11月の大統領選挙を前に明確な対応を取れずにおり、環境のためのバイオ燃料の普及促進策が、トウモロコシ不足や世界の穀物や食肉の価格上昇に、さらに拍車をかけようとしていて波紋を呼んでいる。(NHK news 2012年9月19日)


 干ばつ襲来 穀物輸送にも波及
 アメリカで一段と深刻になっている干ばつの被害。作物の収穫量だけでなく、物流網にも影響が及び始めている。日本へ輸出される大豆やトウモロコシなどの穀物は、アメリカ内陸の中西部で主に収穫されるが、その後「ハシケ」といわれる輸送船でミシシッピ川下流の港湾まで運ぶ。その後、港湾で大型貨物船に積み替えられ、日本へと輸出されるのだ。ところが、干ばつによりミシシッピ川の水位が低下。大型の「ハシケ」が座礁する事故が起きた。一時は100隻あまりの船が立ち往生し、1日1万ドルもの被害が出たとの試算も。この事態に、アメリカ陸軍工兵隊の作業船が出動し、川底を掘って水位を確保している。しかし、このまま雨が降らなければ根本的な解決にはならない。

 全農グループで米国で穀物貯蔵施設を運営する全農グレインも、ミシシッピ川を通して穀物を仕入れ、日本向けに出荷している。ただ川の干ばつのため、ハシケの積載量を2割ほど減らさざるを得ず、安定供給にも支障がある。ハシケにかわってトラックや貨車での輸送を始めているが、多くの台数を確保しなければならないほか、コストもかさむ。全農グレインのジョン・ウィリアム社長は「干ばつの影響を受けて、取引価格の急騰が深刻だ」と語っている。


 アメリカ、猛暑と干ばつで原発停止
 アメリカは今夏、記録的な猛暑と干ばつに襲われており、大量の水を必要とする原子力発電所が深刻な影響を受けている。

 東海岸のコネティカット州から西海岸のカリフォルニア州に至るまで、干ばつによる水不足に加えて冷却用水の温度が猛暑で急上昇。数多くの発電所が電力生産量の減少を余儀なくされている。冷却水の水温規制値に関して、適用除外の特例を求めるケースも出ているという。

 熱波で1万人以上の死者を出した2003年のヨーロッパでも、冷却水用の川の水温が高くなりすぎて、稼働レベルを下げる原発が相次いだ。「今夏のアメリカは何とか乗り切っているが、電力不足に陥る夏がいずれ来るだろう」とウェバー氏は語る。実際に冷却水源の水位が取水管の位置よりも低くなったために、操業を停止した発電所も出ている。
 干ばつは水力発電にも影響を与える。カリフォルニア州の送電を担う独立系統運用機関(ISO)の広報担当ステファニー・マコークル(Stephanie McCorkle)氏は、「カリフォルニア州の水力発電所では今夏、電力生産量が例年に比べて1137メガワット減少すると予測されている。昨冬の干ばつの影響だ」と話す。水力発電の源となるシエラネバダ山脈の積雪量は、春の段階で例年の50%しかない場所もあったという。
 「カリフォルニア州では、雪に電気が蓄えられている。夏のピーク時、水力発電は州内の電力生産量の16%を占める。残念なことに、今秋も例年より気温が高くなると予想されている」。
 夏は終わりを告げようとしており、異例の猛暑もアメリカの大部分で収まっているが、干ばつは広い地域で継続している。ネブラスカ大学国立干ばつ軽減センター(NDMC)の気候学者ブライアン・フュークス(Brian Fuchs)氏は、「今後、ミズーリ、アーカンソー、オクラホマ、カンザス、ネブラスカ、イリノイの各州で範囲を広げ、勢いを増す」と述べる。「秋も雨不足が予想され、厳しい状況が続くだろう」。(Joe Eaton for National Geographic News August 20, 2012)


 熱波、干ばつ、猛暑、原因はやはりCO2
 ここ数年地球の各地域で観測される干ばつ、熱波、全体的な気温の上昇の原因は何なのか―。温暖化が叫ばれる昨今、アメリカの気象学の権威ジェームズ・ハンセン博士がこの度この問題に言及し、収集したデータをもとに公表した内容を海外サイト「consoGlobe」が報道している。

 昨年はアメリカのテキサス、オクラホマで干ばつが起こり、ロシアと中東は熱波に襲われ数千人の犠牲者を出した。2003年にはフランスが猛暑に見舞われた。これらの異常気象の原因は本当に地球温暖化なのだろうか?

 ハンセン博士らによって行われた新たな調査によって最終的に明確にされた説は「これらの気候の変動は人的な要因によって引き起こされた地球の温暖化が原因である」とするものであった。

 この発言の裏付けとして、博士は1951年から1980年までの観測データを比較対象とした場合のその後の気温の推移をグラフ化している(動画参照)。まず、現在の平均気温は1951年から1980年のデータと比較すると0.5から0.6度確実に上昇している。

 1980年のグラフのカーブから1990年、2000年と進むにつれて、グラフのカーブは右へ右へと動いている。これは、猛暑が単発的に発生しているのではなく徐々に猛暑の日数が増え、もはやそれが「異常」ではなく「普通」になってきていることを示している。

 1951年から1980年までは「厳しい暑さ」が観測された土地は北半球の33%程度だったのに対し、ここ30年ではその割合が75%にまで上昇したのだという。ハンセン博士は化石燃料の使用に対する課税などをはじめとする、一刻も早い対策を呼びかけている。(省エネ最新ニュース 2012年9月2日)


 気候変動と異常気象で食糧価格は今後も高騰
 国際NGOオックスファム(Oxfam)は5日、気候変動と、干ばつやハリケーンなどの異常気象の増加により、食糧価格が今後20年で2倍に高騰する可能性があると述べた。

 オックスファムは、現状の気候変動調査が異常気象を考慮に入れていないと指摘。異常気象の増加だけで、気候変動それ自体による食糧価格上昇と同程度の上昇が引き起こされる可能性があると警告した。

 オックスファムは、英サセックス大学(University of Sussex)の開発学研究機関(Institute of Development Studies、IDS)に、今夏米国を襲った熱波と干ばつのような異常気象による影響を考慮に入れた新たな調査を依頼。調査報告書は、2030年の世界市場の輸出価格が、トウモロコシで2010年と比べて177%高く、小麦は120%上昇、コメは107%上昇すると推計している。

 この価格上昇予測のうち、気温上昇や降雨パターンの変化などの気候変動に起因するのは半分から3分の1程度で、異常気象による影響の方が、長期の価格上昇予測に対してより大きな影響を及ぼしていた。「2012年の米国の干ばつが示すように、異常気象は食糧価格の極端な高騰を意味する」と、オックスファムは述べた。

 世界銀行(World Bank)によると、米国の干ばつの影響で、世界の食料価格は7月に10%上昇した。また、トウモロコシ価格は25%高騰し、さらに上昇する見通しだ。だが、発展途上国の農家は資金調達の手段をもたないために生産を増やすことができず、食糧価格の高騰を上手く活用することが難しいのが現状とオックスファムは付け加えた。(AFP 2012年09月05日)


参考HP National Geographic news:米干ばつでエタノール生産に強い批判 世界中を巻き込む食糧危機の嵐


90億人の食糧問題―世界的飢饉を回避するために
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シーエムシー
2015年の食料危機―ヘッジファンドマネージャーが説く次なる大難 (-)
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東洋経済新報社

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