水素が世界を変える?
 水素とは何だろうか?そう、燃えて水になる気体である。全宇宙にある元素のうち93%は水素で、あとの7%はヘリウム。他の元素は1%もない。これだけ大量にあるにもかかわらず、空気中にはわずか、0.00005%しかない。しかし、水素はCO2を出さないので、将来有望なエネルギー源として注目されている。 

 例えば、水素は住まいの発電燃料になる。家庭用燃料電池の「エネファーム」は、すでに実用化。燃料電池とは水素と空気中の酸素を反応させて発電する装置だ。エネファームは都市ガスの主成分であるメタンを触媒反応で、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)に分ける。取り出した水素で発電し、一緒に出る熱でお湯も沸かす。

 水素はエコカーの燃料にもなる。燃料電池車は車に積んだ水素と空気中の酸素を反応させて生み出した電気でモーターを動かす。さらに同時につくられた水だけを車外に出すので“究極のエコカー”ともいわれる。 2015年に一般販売する予定だ。

 だが、燃料の水素を、宇宙に取りに行くわけのもいかない。どうやって大量につくるのだろうか?現在、メタンなどのガスから取り出す方法、水の電気分解で得る方法が取られている。今回、HIT事業研究会では、何と「下水汚泥」から水素ガスを製造する実証試験に着手した。


JBEC

 HITとはハイドロゲン(水素)・イノベーション(技術革新)・タウンを意味する。各社が保有する専門知識やネットワークを集め、実証試験を通してバイオ水素に関する技術ライセンス、プラント建設、製造した水素の流通・販売などを共同で推進するという。だが、どうやって「下水汚泥」から水素を取り出すのだろう?


 ブルータワー技術
 この技術は下水汚泥中のバイオマス(有機物)を利用する。HIT研究会は、JBECが所有するバイオマスガス化技術「BLUEタワー技術」を利用することにより、現在一般的である化石燃料からの水素製造ではなく、その多くが焼却処分されている下水汚泥からの水素製造を目指したものだ。

 BLUEタワー技術の最大の特長は、熱媒体として「アルミナボール」を使用することにある。熱分解器において、木質チップや下水汚泥などのバイオマス原料が、高温に加熱された多量のアルミナボールに接触することで、メタンなどのバイオガスが発生。

 さらに改質器において、バイオマスガスがより高温のアルミナボールと水蒸気に接触し、水蒸気改質反応などを経て、バイオ水素が製造されるのだという。このアルミナボールの循環により、熱が各部に伝わるだけでなく、従来プラントの機器トラブル(閉塞など)の主要因となるタールの発生抑制・除去を可能としているというわけだ。

 実証試験は、JBEC(ジャパンブルーエナジー)が所有する島根県出雲市の実証プラントで実施。これまでの試験で下水汚泥を加熱ガスにすることで水素を主成分とするガスが得られ、下水汚泥が持つバイオ水素の原料としての潜在性を確認。今後、実証プラントで連続運転試験を行い、製造技術を確立すると同時に、商用規模のバイオ水素製造プラントとモデル事業を構築する。

 将来的には、一般的な化石燃料からではなく、多くが焼却処分されている下水汚泥から水素を作り出す技術の導入を各地の下水処理場で進める計画で、普及が見込まれる燃料電池車、燃料電池バス、住宅用や業務用の定置型燃料電池向けに水素を供給する。住宅の下水からは再び水素が製造でき、水素を地産地消する低炭素・循環型の街づくりにつなげる。(JBEC)


 具体的な技術と手順(概要)
1.熱分解: 水素製造のスタート地点、熱分解器では、550℃の温度まで高められたヒートキャリアと下水汚泥が同時に熱分解炉内へ供給される。熱分解器の中では、下水汚泥がヒートキャリアと接触し、その熱によって下水汚泥が分解され、熱分解ガスが発生する。発生した熱分解ガスは改質器へと上昇する。下水汚泥が熱分解した後に残った固形物のチャー(炭化物)は、ヒートキャリアと共に熱分解器の底部より取り出され、その後、分離されて、ヒートキャリアは再び予熱器へ、チャーは熱風発生器へと送られる。ここで熱分解ガスに含まれるタールはヒートキャリアに吸着される。

2.熱風発生器: 熱風発生器ではチャーを燃焼する。その燃焼によって発生した高温熱風ガスは予熱器へ送られ、その熱がヒートキャリアの加熱源に使われる。熱媒体と副生物を分離。蒸気を使い、ガスの質を高める。(改質)熱媒体を熱風で加熱、バイオマスを熱でガス化する。

 このとき、小さな球体(アルミナボ-ル)をガス化用の熱供給源として循環利用する。改質ガスから水素ガスを分離回収。改質ガスから電気と熱を作る。副生物を利用してガス化用の熱を作る。改質ガスの用途に応じて設備を組合わせる。

3・改質器: 改質器の中は高温のヒートキャリアによって950℃程度の温度になっている。ここで改質器にスチーム(蒸気)を投入。また、熱分解器から上昇してきた熱分解ガスは、改質器内でスチームと接触し、反応が起こる。これにより、熱分解ガス中のメタンCH4 は、水素ガスH2 と一酸化炭素CO へと改質され、更に、CO はスチームと反応してH2 と二酸化炭素CO2 になる。この結果、水素濃度の高いガスができる。


 バイオマスとは?
 バイオマスは、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と国によって指定されている。使用時に二酸化炭素を排出するが、バイオマスは太陽エネルギーと水と二酸化炭素から作られるので、地球上の二酸化炭素を新たに増加させることはない。(カーボンニュートラル)

 プラントで使われる、原料となるバイオマスである「木質チップ」や「下水汚泥」は地域から出る間伐材、ゴミを有効利用として受け入れ、地域に根差したこれからの循環型環境社会に適応したシステムとなる。

 カーボンニュートラルでは、バイオマスは有機物なので燃焼させるとCO2を排出するが、これはバイオマスが成長過程で光合成により大気中から吸収したCO2に由来します。そのためバイオマスを使用しても全体としてみれば、大気中のCO2の量を増加させていないと考えてよいとされている。


 バイオガスとは?
 バイオガスの平均的成分構成は、CH4 50-75% 二酸化炭素, CO2 25-50% 窒素, N2 0-10,水素, H2 0-1%、硫化水素, H2S 0-3% 酸素, O2 0-2%。(Wikipedia)

 バイオガス(Biogas)は、バイオ燃料の一種で、生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス。例えば、サトウキビや下水処理場の活性汚泥などを利用して、気密性の高い発酵層で生産される。メタン、二酸化炭素が主成分。 発生したメタンをそのまま利用したり、燃焼させて電力などのエネルギーを得たりする。バイオガスは非枯渇性の再生可能資源であり、下水処理場などから発生する未利用ガス等も利用が期待されている。
 日本ガス協会もバイオガス利用促進センターを設置し、バイオガス利用促進の取り組みを行っている。国や自治体が化石燃料や都市ガス電力に炭素税を課税する議論があるが、バイオガスは、化石燃料とは異なりカーボンニュートラルであるため非課税になる可能性がある。

 バイオ水素は、バイオガスを改質してつくるガスだ。強まるCO2の排出規制。資源の枯渇が危惧される化石燃料や深刻化する環境問題に対して、水素の再生可能なリサイクル性、クリーン性が注目されまたエネルギーの脱炭素化への社会的背景もあり、有機性資源である「木質バイオマス」「下水汚泥」から精製されるこの「バイオマス水素」に、これからのエコエネルギーへの期待がつよく寄せられている。


参考HP 豊田通商:下水汚泥を原料とするバイオ水素の製造に着手 IDEX:バイオマス水素とは


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