「キュリオシティ」川床の跡を発見
 2012年8月6日、米国の火星探査機「キュリオシティ」が、ゲールクレーターの中にある高さ3マイル、直径96マイルの山のふもとに着陸した。キュリオシティは火星表面の土と岩石をすくい取り、内部を解析する。最低でも、1火星年(2.2地球年)は活動する予定で、これまでのローバーよりも広い範囲を探索し、過去と現在の火星における、生命を保持できる可能性について調査する。

 9月13日にはロボットアームのテストが完了し、キュリオシティ(マーズ・サイエンス・ラボラトリ)は本格稼働に入っている。キュリオシティはまず、3種類の岩石が存在する地域「グレネルグ」を目指している。最終目的地は、6キロほど先にある標高5500メートルのシャープ山だ。

 9月27日には、かつて火星の地表を流れていた川が運んだとみられる多数の石を発見した。火星に水があったことを示す痕跡は見つかっているが、川の流れを直接示す証拠が見つかったのは初めてのこと。


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 NASAによると、石は、着地したゲール・クレーターの北端と、探査目的地のシャープ山の中間地点で撮影された。礫岩れきの層となって固まっており、石の形が丸みを帯びていることから、長い距離を流れてきたとみられる。NASAの科学者は、川の深さは人のくるぶしから腰のあたりまであり、秒速約3フィート(約90センチ)で水が流れていたと推測している。(2012年9月28日 読売新聞)

 シャープ山は、ゲイル・クレーターの中心にそびえ、多くの地層が積み重なってできている。しかも完全に露出しているため、火星の歴史の新事実が明らかになる可能性がある。クレーター中心に形成された理由の解明も注目度が高い。火山活動の跡が見られないため、循環する強風の侵食作用という説もある。
 造山過程はともかく、シャープ山が火星の地質研究に最適なことは間違いない。30億年以上前に形成されたゲイル・クレーターと同程度の地史を、積み重なる地層から分析できそうだ。まずは裾野を徹底調査し、その後は寿命が続く限り斜面を登っていくという。

 キュリオシティは今後2年にわたり、火星の地表を移動しながら試料を採取・分析、画像データを地球へ送信する。スピリットなどの前任機と同様、活動期間の2年を終えてもバッテリーは長持ちしそうで、シャープ山登頂に成功する可能性も十分にある。


 生命存在の期待も高まる
 火星の表面に、足首から腰程度の深さの速い川が流れていた。しかもその水流は、数千年~数百万年も続いたとも推測されている。今回の発見は、水の存在を示す初の直接的な証拠である。衛星画像からは切り立った峡谷や川床のような地形が確認されており、かつて水が流れていたとの仮説が立てられていた。その裏付けをついにキュリオシティが手に入れたことになる。
 調査チームの地形学者ウィリアム・ディートリック(William Dietrich)氏は次のように話す。「水流によって砕かれ、表面が滑らかになったのは明らかだ。水量や存在期間について、研究を進めていきたい」。
 発表は、キュリオシティの管制センターが置かれているカリフォルニア州パサデナのNASAジェット推進研究所(JPL)で行われた。チームの地質学者ジョン・グロツィンガー(John Grotzinger)氏によれば、川床の小石は太古の生命の可能性を示すという。「ただし、必要な物理的条件の一部が見つかった段階だ。生命には、水、エネルギー源、有機炭素が欠かせない。今回、水に関する分析が可能になった」。
 小石などは、キュリオシティ搭載の2つの実験設備で化学分析される予定。ただし、その場ですぐに実施されるとは限らないという。

 「最終目的地のシャープ山に移動する方が重要だ」とグロツィンガー氏は説明する。山の標高は5500メートル、ゲイル・クレーターの中心にそびえている。「とはいえ、生命を育む環境が可能性と言えども見つかった。順調な歩みには違いない」。
 キュリオシティの主目的は生命体の探索ではなく、生命体を構成する物質や環境の調査である。その行程が始まってから、51火星日(1火星日は約24時間40分)が経過した。


 礫岩(れきがん)中に丸い小石
 着地点付近の水系は約520平方キロに広がっていたとディートリック氏は推定する。川はクレーター壁を越えた標高の高い地点から始まり、「ピース谷(Peace Vallis)」を18キロの距離にわたってゆっくりと流れ下っていたようだ。ピース谷の下には約50平方キロの扇状地(堆積物が積もった扇形の地形)が形成された。ピース谷での川幅は約610メートルと考えられている。
 最も興味深い小石や砂利はアメ玉ほどのサイズで、着地点に近い3カ所の礫岩(れきがん)から見つかった。まず、着地時のエンジン噴射によって、「ゴールバーン(Goulburn)」と名付けられた露頭が出現。その後、「リンク(Link)」、「ホッター(Hottah)」という露頭も確認された。
 惑星科学研究所の地質学者レベッカ・ウィリアムズ(Rebecca Williams)氏によると、調査チームはピース谷の扇状地が着地点付近まで広がっているとは予想していなかったという。水が存在した範囲も、当初の予測より広い可能性がある。
 「石の丸い形状を見ると、別の場所から移動してきたとわかる。風で移動するには大きすぎるので、水流が存在したに違いない」とウィリアムズ氏は述べている。

 成果を即座に公表した理由として、グロツィンガー氏はデータの信頼性の高さを挙げた。また、以前の衛星画像で確認されていた峡谷や扇状地と、キュリオシティが観測した地形の関連性も明らかになってきたという。(Marc Kaufman for National Geographic News September 28, 2012)


参考HP Wikipedia:マーズ・サイエンス・ラボラトリィ National Geographic news:火星に広範囲な水系、川床の跡発見


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