理研発見の新元素113番「証明確実」
 理化学研究所は、平成16年に発見した113番目の元素の3回目の合成に成功したと発表した。新たな崩壊過程を確認したことで発見を確実に証明でき、新元素として国際的に認定される可能性が高まったという。日本物理学会の英文誌(電子版)に9月27日、論文が掲載される。

 113番元素の寿命は、500分の1秒。できたと思ったら、すぐ他の元素に崩壊する。よく確認できたものだ。国際機関が新元素と認定すれば研究チームに命名権が与えられ、日本人が発見した元素の名前が初めて周期表に記されることになる。元素名は「ジャポニウム」が有力視される。

 理研の森田浩介准主任研究員らは16年と17年の計2回、当時最も重い原子番号113の元素を加速器で合成。国際機関に申請したが、データ不足などを理由に認められなかった。

 今年8月、3回目の合成に成功し、直後に壊れてドブニウムなどの元素に変わっていく様子を調べた。ドブニウムの崩壊パターンは2種類あるが、今回は過去2回とは違うタイプを観測。両方の現象を確認できたことで「113番の元素合成を百パーセント示せた」(森田氏)としている。


 理研の野依良治理事長は「非常に説得力のある成果だ。新元素発見の証拠が一段と盤石になり、日本初の命名権獲得に大きく近づいた」と話す。

 新元素は国際純正・応用化学連合など2機関が推薦する委員でつくる作業部会で審議。理研は9月27日に論文を送付し、年内にも命名権について見解が示される可能性がある。元素名はジャポニウムのほか、原子核物理学者の仁科芳雄氏にちなむ「ニシナニウム」などが候補に挙がっている。

 ウランより重い元素は人工的に合成され、米露などが発見にしのぎを削ってきた。113番の元素は米露も発見したと主張しているが、理研チームが示したような崩壊過程での重要な証拠に欠けるという。(産経news 2012.9.27)


 最近発見された新元素「Cn」「Fl」「Lv」とは?
 元素とは、宇宙のあらゆる物質の基本的な成分。原子核の陽子の数で原子番号が決まる。原子番号「1」の水素が最も軽く、92のウランまでが自然界に存在する。それ以上重い元素は各国が人工的に作り出す研究で競い合っている。114種が国際認定済みで、最も重いものは原子番号116。113のほか米露が115、117、118を発見したと主張している。

 2009年5月、国際機関「国際純正及び応用化学連合(IUPAC)」が、112番目の元素を公式に承認。「コペルニシウム」と命名された。この元素は、1996年にドイツ・重イオン科学研究所(GSI)などの国際チームが合成した。しかし、短時間しか存在できないことなどから再現実験が難しく、確認に時間がかかっていた。だが、2004年、日本の理化学研究所のチームも合成に成功して2007年に発表し、認定されることになった。

 ドイツ・重イオン科学研究所(GSI)のホフマン教授は「私たちの世界観を変えた傑出した科学者の名をたたえる」とし、地動説を提唱したことで有名なポーランドの天文学者コペルニクスにちなんだ、「コルペシニウム(Cn)」を提案。意見募集などを経て、数カ月後にIUPACが最終決定する。元素の数が増えるのは、2004年のレントゲニウム(原子番号111番)の認定以来であった。 (asahi.com 2009年8月24日)

 さらに2011年12月には、IUPACが新しい元素を二つ承認。元素数は114となった。二つの元素は、原子番号114と116。名前をそれぞれ「フレロビウム(Fl)」と「リバモリウム(Lv)」とした。

 新元素の二つの名前は、発見した米・ロの研究機関がある地名や設立にかかわった物理学者の名前から取った。フレロビウムは、発見したロシアの研究所を設立した物理学者の名前から、リバモリウムは、米国の研究所がある地名から取られたという。元素は、原子番号112のコペルニシウムまでが認定されていた。( asahi.com 2011年12月4日)

 今回、加速器を使って113番元素の合成に成功した理化学研究所・仁科加速器研究センターの森田浩介准主任研究員(55)らは、次は119番と120番の合成・発見に挑戦する方針を明らかにした。どちらも海外で合成したとの報告がない。現在の周期表にはない第8周期(8段目)の元素となり、どんな性質か興味深いという。

 113番元素は、原子番号30の亜鉛の粒子を同83のビスマスの標的に衝突させ、原子核同士を完全融合させる方法で合成した。これに対し、119番の場合は同23のバナジウムと同96のキュリウム、120番の場合は同24のクロムとキュリウムの組み合わせになる。(時事通信 2012年9月29日)


 そもそも元素とは何か?
 元素は英語で「Chemical element」という。元素とは何だろう?

 元素は万物の性質の根源をあらわすものであり、古代の哲学者らは様々な物性が少数の基本的性質の混合により多様性を発現していると考察した。例えば、タレスは万物の根源にアルケーという呼名を与え「水」であるとした。その他、「空気」であると考えた人、「火」であると考えた人、「土」だと考えた人がおり、それぞれがアルケーであるという立場を採った。

 エンペドクレスはアルケーが、火・空気(風とも)・水・土の4つのリゾーマタからなるとする後世にいう四元素説を唱えた。プラトンやアリストテレスは四元素説を承継した。これが元素の始まりである。

 現代では、元素とは化学物質を構成する基礎的な成分であることがわかっている。すなわち、水素、酸素、炭素、窒素、ナトリウム、塩素、鉄...などのことである。これらは互いに化合して化合物である水、二酸化炭素、デンプン、アミノ酸、などさまざまな化学物質をつくっている。

 ではこの元素、地球上に何種類あるだろうか?

 正解は約100種類である。正確には94種類ある。これらの元素は原子番号1番の水素から94番のプルトニウムまで番号がつけられている。つい最近まで92番目のウランが地球上に存在する最後の元素とされていたが、ウランが放射線を出して崩壊するときに、ネプツニウムやプルトニウムができることが確認された。


 超ウラン元素
 地球上の元素は94種類であるが、実際には、約118種類の元素が知られている。これはどういうわけだろう?


 実は、原子番号94以降の元素は、基本的に全て人工的につくり出さねばならない。また、全て放射性で、半減期は地球の年齢よりかなり短い。よって、これらの元素が地球誕生の頃に存在していたとしても、はるか以前に消滅してしまっている。

 92番目のウラン以降の、主に人工的につくられる元素を超ウラン元素という。現在地球上で発見される超ウラン元素は、基本的に原子炉や粒子加速器で人工的につくられる。

 超ウラン元素には、93-ネプツニウム(Np)、94-プルトニウム(Pu)、95-アメリシウム(Am)、96-キュリウム(Cm)、97-バークリウム(Bk)、98-カリホルニウム(Cf)、99-アインスタイニウム(Es)、100-フェルミウム(Fm)、101-メンデレビウム(Md)、102-ノーベリウム(No)、103-ローレンシウム(Lr)、104-ラザホージウム(Rf)、105-ドブニウム(Db)、106-シーボーギウム(Sg)、107-ボーリウム(Bh)、108-ハッシウム(Hs)、109-マイトネリウム(Mt)、110-ダームスタチウム(Ds)、111-レントゲニウム(Rg)、112-コルペシニウム(Cn)、114-フレロビウム(Fl)、116-リバモリウム(Lv)…などがある。

 これ以外の113,115,117,118番目の元素は化学者の国際学術機関、IUPAC(国際純正・応用化学連合)で、まだ認定されておらず正式名称はない。


参考HP 理化学研究所:3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認 アイラブサイエンス:新元素認定!次はジャポニウム(Jp)?

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