ボルネオ島で生物多様性調査
 ボルネオ島(Borneo Island)は、東南アジアの島で、面積は725,500km²で日本の国土の約1.9倍の大きさである。 世界の島の中では、グリーンランド島、ニューギニア島に次ぐ、面積第3位の島である。

 南シナ海(西と北西)、スールー海(北東)、セレベス海とマカッサル海峡(東)、ジャワ海とカリマタ海峡(南)に囲まれている。インドネシア・マレーシア・ブルネイ、この3か国の領土であり、世界で最も多くの国の領地がある島となっている。

 今回、世界でも有数の生物多様性にあふれた地として知られるボルネオ島北部、マレーシア領に位置するキナバル山で9月、オランダとマレーシアの合同調査チームが新種の動物、植物、菌類の大規模な調査を行った。

 オランダとマレーシアの生物学者チームによる2週間で、1400種以上の動物、植物、菌類を記録、新種を約160発見している。クモや甲虫、カタツムリ、イトトンボ、シロアリ、ハエなどが新たに確認されたという。


Borneo

 「地球上どこを見渡しても、キナバル山ほど多様な種が見つかる場所はない」と、調査チームを指揮したメノ・シュルトフイゼン(Menno Schilthuizen)氏は話す。同氏はオランダ、ライデンにあるナチュラリス(国立自然史博物館)生物多様性センター(Naturalis Biodiversity Center)に所属している。「これら固有種の進化の道筋を解明するのが調査目的だ」。


 キナバル山は菌類の宝庫
 2週間に及ぶ生物多様性調査では、約300種の菌類を収集。うち100ほどは新種と考えられている。写真は新種と見られるイッポンシメジ属のキノコ。ボルネオ島、マレーシア領北部のキナバル山の標高約2000メートル地点で、詳細な調査を目的として採取された。

 ナチュラリス(オランダ国立自然史博物館)生物多様性センターに所属する菌類専門家、ヨージェフ・ゲムル(Jozsef Geml)氏は、「キナバル山は菌類の宝庫だ。形や色にも際限がない」と話す。「手を付けたばかりで詳細な科学分析には数年かかる見通しだが、既に多くの新種が判明している」。

 調査チームによると、今回得られたDNAサンプルをはじめとする各種データから、キナバル山に生息する菌類の大まかな数が初めて判明するという。

 調査チームは、隔離された山の固有種と、低地に広く生息する種との間にある進化上の関係を解明する目的で現地入りした。

 シュルトフイゼン氏は、「低地の種がゆっくりと高度を上げ、山に生息地を広げる過程で寒く厳しい環境に適応していったというのが定説だ」と話す。

 ところが、どうやら多くの種が逆のルートをたどったらしい。「むしろ頂上の種が原始的形態を備えている場合がある。つまり、低地の近縁種よりも古い」とシュルトフイゼン氏は話す。「進化の結果ではなく、始まりだったのだ」。

 収集したサンプルのDNA解析は、詳細な系統樹の作成に使用される。作成後、低地に生息する種の系統樹と比較されるという。

 「母集団の分岐順序を基に、種の誕生の前後関係がわかる。キナバル山の生物進化は現在進行形なのか、それとも頭打ちなのか。結果に期待している」とシュルトフイゼン氏は話している。


 アトラスガ、ハエトリグモ、ウデムシの新種
 節足動物では、日本最大の蛾「ヨナグニサン」のなかまが発見されている。ボルネオ島、マレーシア領北部のキナバル山で発見された世界最大級のアトラスガ。羽を広げると30センチ大で、鳥さながらの外見をしている。

 ボルネオ島北部、マレーシア領のキナバル自然公園では、ハエトリグモの新種が発見された。 「口の前の体節に、非常に長い鋏角(きょうかく)を持つ。通常はエサを捕らえる器官だが、求愛用の場合もあり特定は難しい。今回の調査で10~15種のハエトリグモが発見された」と、調査チームを指揮したメノ・シュルトフイゼン(Menno Schilthuizen)氏は語る。

 洞窟の中でコオロギを捕食するのは、新種のウデムシだ。体長は1センチほどで、今回公表された4種類の新種のウデムシの1つ。これらの新種はいずれも、2004年にボルネオ島のインドネシア領内で発見された。

 ウデムシは、クモやサソリの仲間ではあるが別種の節足動物である。第一脚はムチのように長くしなやかに進化し、触角の役割を果たすほか、扁平な体、左右に大きく張った捕食用の器官(触肢)など、奇抜な特徴をいくつも備えている。触肢には鋭いトゲが並び、まるで鎌のようだ。

 ジャカルタにあるインドネシア科学研究院の生物学者で調査チームのリーダーを務めたカヒヨ・ラフマディ(Cahyo Rahmadi)氏によると、ウデムシはおよそ4億年前のデボン紀から世界中の熱帯に生息してきた。しかし存続している種は比較的少なく、今では小さな洞窟で生き延びているだけだという。

 ボルネオ島では最近、石炭や石灰石の採掘計画が持ち上がり、貴重なウデムシ達に危険が迫る可能性をラフマディ氏は指摘している。(James Owen for National Geographic News October 10, 2012)


 世界遺産キナバル自然公園
 キナバル山(キナバルさん、マレー語: Gunung Kinabalu, 英: Mt.Kinabalu)は、ボルネオ島北部、マレーシア領のサバ州にある山である。標高 4,095.2mは東南アジアの最高峰である。

 キナバルとは、マレー語でキナは中国、バルは未亡人の意味。キナバル山付近には、中国の王子とその未亡人の伝説も残っている。キナバル アキ・ナバル(祖先の霊る山)がなまってキナバルになったという説の方が有力。

 1851年、プラントハンターのヒュー・ローによって初登頂を果たされる。ヒュー・ローは76種の新種の植物を採取した。世界でも有数の生物多様性に富み、6000種以上の植物と100種以上の哺乳類が確認されている。山頂には、花崗岩による独特の岩場が広がっている。また山の麓は、熱帯雨林特有のジャングルとなっている。熱帯雨林から高山帯までの特異な動植物が数多く存在している。山麓のジャングルでは、世界最大の花とも言われるラフレシア、食虫植物として有名なウツボカズラが原生している。

 約1500万年前に溶岩が固まって現在のキナバル山が造られたと考えられている。約10,000年前までの氷河期には、山頂付近に氷河が存在したと考えられている。山域は、キナバル自然公園として、ユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されている。

 キナバル山のあるサバ州の旗には、キナバル山が描かれている。コタ・キナバル発で、3,400m付近の山小屋に1泊。翌日早朝に登頂してご来光を拝み、その日の内に下山する1泊2日の登山ツアーが一般的である。登山に当たり高度は高いが技術的に難しい所は無い。2004年現在、入山届提出、入山料の支払いおよびガイドの随行が義務化されている。また、下山時に公園事務所で登頂認定書を有料で発行してもらうことができる。

 コタキナバルの北部郊外にあるイナナンバスターミナル(北部バスターミナル)よりサンダカン行きのバスに乗り、約2時間程でキナバル公園の管理事務所付近に到着する。


参考HP National Geographic news:ボルネオ島キナバル山で生物多様性調査 Wikipedia:ボルネオ島 キナバル山


キナバル山―ボルネオに生きる…自然と人と
クリエーター情報なし
東海大学出版会
ボルネオ ネイチャーアイランド (地球の歩き方 GEM STONE 24)
クリエーター情報なし
ダイヤモンド社

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