南極海で海氷過去最大
 今年9月16日、北極海の海氷面積が、昨年までの最小記録だった2007年9月24日の425万平方キロ・メートルより日本列島2個分小さい349万平方キロ・メートルになった。一方、同時期、南極周辺では、海氷面積が過去最高を記録した。

 北極海の方は、JAXA(宇宙開発機構)の観測衛星「しずく」で確認した。JAXAは「地球温暖化の影響が出ている」とみている。北極海では近年、薄い海氷が多く、解けやすい状態だったことに加え、8月上旬に大型の低気圧が発生し、海氷が海水とともにかきまぜられたことで縮小が進んだという。

 コンピューターによる気候モデルによると、地球温暖化が海氷縮小に与える影響は、CO2排出などの温室効果ガスの増加が原因とするものが約60%、残りが自然の気候変動によるものとなった。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候モデルでも、地球温暖化が続く場合、数十年後の夏には北極の氷が完全に解けると予測されている。

 こうした地球温暖化や海氷融解、海面上昇がたびたび報じられるなか、南極の方では、一見明るいニュースと思える気候解析データが発表された。冬の南半球において、南極大陸の冷たい海に浮かぶ海氷の面積が増えていることがわかったのだ。


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 アメリカ国立雪氷データセンター(NSIDC)が10月11日に発表したところによると、衛星データが示した2012年9月末の南極大陸周辺の海氷面積は、この領域での観測史上最大となる1944万平方キロを記録したという。とはいえ、その成長速度は遅く、前年から約1%増加したにすぎないため、先ごろ最少記録を更新した北極の海氷の融解を補うにはほど遠い。


 なぜ南極の海氷が増加したのか?
 ナショナルジオグラフィック ニュースでは、NASAの研究者でカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の地球システム科学教授であるエリック・リグノ(Eric Rignot)氏にインタビューし、今回の観測結果は明るいニュースなのか、また氷の融解が一因となっている海面上昇にとって、この結果がどのような意味を持つのか話を聞いた。

 「南極の海氷面積が過去最大を記録したというのは、われわれがよく耳にする海氷減少のニュースと矛盾しているように思えますが、なぜ海氷が増加するのでしょうか?」

 「温暖化が地球全域で一様に進んでいるのなら、南極大陸の海氷面積も減少するはずですが、実際はそうではありません。というのも、南極は地球の他の地域より気温が低いからです。南極も温暖化してはいますが、他の地域よりペースが遅いのです。

 その結果、地球の他の地域は気温が上昇し、南極は低温のままという現象が起きており、その差は拡大しつつあります。それによって南極周辺の風速がやや強まっています。他の気域との差は、南極上空の成層圏でオゾンが減少し、成層圏の温度を下げていることも原因の1つです。

 以上が南極大陸で起きていることの主な原因ですが、その影響はごく小さいものだと認識しなければなりません。」


 海氷面積と海面上昇の関係
 「他の研究データは、南極の大陸氷の融解が海面上昇に寄与していることを示していますが、今回の観測結果はそれとどのように関係するのでしょうか?」

 「海氷はもともと海に浮かんでいるものですから、(海氷の増加は)海面の高さにはどのみち影響しません。増えても海水位は変化しないのです。海水が凍ったものですから、それが氷であろうと水であろうと、海水位は変化しません。」

 「北極では海氷が減少しているのに、南極では少しずつ増えています。北極と南極でこれほどの違いがあるのはなぜでしょう?」

 「南極点には大陸があります。北極点には海しかありません。北極では大気温と海水温の本格的な上昇がみられ、加えて氷の移動が増加しています(北極域から外へ出ていく氷が増え、北極から冷たい空気と水を奪っている)。それらすべての要素が影響して、北極の海氷面積が減少しているのです。

 一方、南極は、独自の気候システムとして考えなければなりません。地球の他の地域から隔絶した広大な大陸で、周囲を海洋に囲まれています。風がいつも南極の周囲を時計回りに吹き、この大陸を孤立させています。北半球の他の地域と完全につながっている北極とは事情が異なるのです。」

 「地球の気候システムは問題を抱えていると常々言われていることを考えれば、今回の観測結果は朗報なのでしょうか?」

 「今回の結果は、地球温暖化に関するわれわれの理解と一致しています。局地的な細かい変化に関しては、簡単には予測できない場合もあります。ですが、全般的傾向として海氷面積が減少し、グリーンランドの氷床および氷帽が減少していることは、われわれの予測と一致しています。

 南極は各種モデルが予測したほど速いペースでは温暖化していません。しかし、ペースが遅いだけで温暖化していることは確かです。したがって、地球温暖化の傾向とはまったく矛盾していません。」 (Daniel Stone for National Geographic News October 15, 2012)


 北極海海氷の観測データ解析結果について
 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、7月3日から第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)による地球の観測を継続してきた。

 マイクロ波放射計が観測した北極海の海氷データを解析した結果、今年の海氷面積は、8月24日に421万平方キロメートルに縮小し、それまでの観測史上最小記録を更新した。海氷面積はその後も減少を続け、9月16日に349万平方キロメートルを記録した。北極域は、すでに気温低下が始まっており、結氷に伴い海氷面積も増加へと転じていることから、9月16日の面積値がこのまま今年の最小値(観測史上最小記録)になるとみられる。

 今年の北極海氷は、観測史上初めて400万km2を下回り、これまでで最小だった2007年9月の425万km2から日本列島2つ分も小さくなった。これは、1980年代の平均的な面積と比べると、半分以下の小ささにまで縮小したことを意味している。

 北極海の海氷縮小の背景には、1980年代以降増加傾向にある北半球の気温上昇に伴い、海氷厚が徐々に薄くなり、大気場(気温や風)や海水温の影響を受けやすい状態に海氷が変化してきていることがあるとみられる。特に今年は、春の段階で北極海のほぼ半分の海域が薄い一年氷(前年の夏以降に生成した氷)で広く覆われていたこと、また、夏期には大型の低気圧が北極海上空に発生し海氷域を襲っている様子が、衛星画像でも捉えられており、海氷の融解縮小を促進する効果があったものと推定される。

 JAXAでは、今後も「しずく」による北極海氷の監視を続けていき、ウェブサイト等で最新の情報を公開する。(JAXA 2012年9月20日)


参考HP National Geographic news:南極海表面積増加、その意味は? JAXA:北極海氷のこれまでの衛星画像解析 北極海氷モニター 第一期水循環変動観測衛星「しずく」


NHKスペシャル 北極大変動―加速する氷解/資源ビジネスの野望
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日本放送出版協会
世界一空が美しい大陸 南極の図鑑
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