光触媒の性能
 酸化チタンというと、「光触媒」であるが、この効果は1972年、東京大学の本多健一氏と藤嶋昭氏によって発表された。2012年にはノーベル賞の有力候補者として、現在、東京理科大学長である藤嶋昭氏(70)の名前があげられた。残念ながら今年の受賞はならなかったが、我が母校の学長となられた藤嶋昭氏が受賞されれば、私も卒業生の一人として名誉なことである。

 光触媒は、いろいろなところで使われている。酸化チタンを10~20nm(ナノメートル)の大きさの粉末にして、いろいろな物質にコーティングする。これに太陽光(紫外線)が当たると強い酸化力がはたらく。これが、光触媒の原理であり、これにより殺菌効果が確認されている。

 また、コーティングされた表面に水をかけると水が全面を覆ってしまう、超親水性効果という現象も確認されている。すると、油汚れがあっても、水が油を浮かせてしまう。これも光触媒の大きな特徴の1つ。これらの効果は、既に建材のセルフクリーニングや、空気や水の浄化、殺菌、ガラスの曇り防止など、様々な場面で利用されている。

 今回、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京大学は10月11日、「銅系化合物酸化チタン」材料で従来よりも優れた抗菌効果に加え、これまでは実現困難とされていた抗ウイルス性能に優れた新しい光触媒材料を開発したと共同で発表した。


Photocatalyst

 この成果は、NEDOが実施した「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」において、東京大学と助成先各社(昭和タイタニウムなど)が、新しい原理に基づいた光触媒材料の開発を実施した結果である。


 可視光でも働く光触媒
 近年、生活環境を脅かすさまざまな問題が顕在化しており、早急な解決に向けた技術開発が求められている。具体的には、室内外の環境破壊を促進する多種多様な有害化学物質への対策、院内感染問題をはじめとする抗菌・抗ウイルス対策、土壌汚染対策などが強く望まれており、国の施策の下、健全な経済産業活動と安心・安全な生活環境の実現が急務となっているところだ。

 現在上市されている光触媒製品は、「紫外光応答型光触媒」を用いた製品が中心であり、外装建材、浄化用フィルター材を中心に市場が拡大しているものの、紫外線の少ない室内などでの利用は限られている。こうした中で、2001年には部分的に可視光を吸収する光触媒が日本で開発されたが、その性能は現状では室内などの環境で使用するには不十分だった。

 このような紫外線の少ない環境下での光触媒の潜在的ニーズを含めれば、光触媒市場は今後20年間で3兆円近くにまで達するものと見込まれており、可視光照射下においても高い光触媒効果が現れ、消費者や利用者がそれを実感できる製品を普及させるため、十分に高感度な「可視光応答型光触媒材料」の開発が急務となっているというわけだ。


 新開発「銅系化合物酸化チタン」
 今回開発された、可視光応答型光触媒材料の開発材料である銅系化合物を担持した酸化チタンは、抗菌・抗ウイルス効果がある。この材料は、光が当たらない暗所でも抗ウイルス効果を発揮し、感染力のあるウイルスの数は1時間で4桁減少、すなわち、99.99%のウイルスを不活化することができた。これには、開発した研究者らも「大変驚くべきこと」としている。

 また、可視光(紫外線をカットした白色蛍光灯で照度は800ルクス)を照射したところ、1時間で7桁以上のウイルスを不活化することに成功した。また、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの抗菌効果についても抗ウイルス効果と同様、暗所での抗菌効果を発揮し、さらに可視光の照射でその効果が大きく促進されることが判明している。

 さらに、可視光下で高い抗菌・高ウイルス性能を示す銅系化合物酸化チタンほかの開発材料を適用した各種供試材を実際の日常空間に設置し、その効果の検証も行われた。

 比較的人の出入りが多く、感染症のリスクが高いと思われる空港と病院を実環境として選び、気温・湿度等環境条件の季節変動を考慮するため年間を通した実証試験が行われた形だ。その結果、新可視光応答型光触媒は、実環境においても優れた抗菌・抗ウイルス効果を発揮し、ラボレベルでの結果を検証することに成功した。

 なお銅系化合物酸化チタン材料については、助成事業先である昭和タイタニウムが量産技術を確立したことを明らかにしているほか、貴金属や希土類を使用せず、酸化チタンに銅系化合物または鉄系化合物を修飾した可視光応答型光触媒についても2013年内の量産化を目指した技術の確立を進めているとしている。

 そして銅系化合物酸化チタン材料を適用した製品化については、盛和工業が空気浄化システムの、積水樹脂技術研究所が内装材の、TOTOがタイルおよび塗料の、日本板硝子がガラスの、パナソニックがフィルム材の、太陽工業がテント材の検討を進めているとしている。


 酸化チタンとは?
 酸化チタン(TiO2)は白色顔料や紫外線吸収料としてペンキ、化粧品などの原料に広く使われ、食品添加物としても認められている安価で安全な材料である。一方、酸化チタンはn型半導体性を示し、光電極や光触媒の材料として太陽エネルギー変換材料への応用が注目されている。

 酸化チタンが紫外光を吸収すると大きく分けて2つの機能を発現する。

1.強い酸化還元作用 酸化チタンの価電子帯の電子が紫外光で伝導帯に励起されると、比較的還元力の強い電子と非常に酸化力の強い正孔が生成する。従って、酸化チタンに適切な助触媒を組み合わせれば、水を酸素と水素イオンに酸化、また同時に水を水素と水酸化物イオンに還元するほどの酸化還元能を示す。

 つまり、水を酸素と水素に分解できる。このため本多・藤嶋の発見以来、酸化チタンを用いて水から水素を得ようとする工学的応用が研究されている。これは太陽の光エネルギーから、水素というクリーンエネルギーを生成することを意味し、夢のエネルギー循環サイクルといわれている。しかし現状では効率が低く(後述)、大規模な製品化には至っていない。

 酸化作用を利用し、有害物質の分解なども試みられている。ただし有害物質の処理に関しては、他の処理技術のほうが効率や処理できる量の面で優れている場合が多い。そのため酸化チタンには、光照射だけでよい手軽さを生かした応用が行われている。たとえば病院の手術室の壁・床を酸化チタンでコーティングしておけば、ブラックライト(紫外光ランプ)を照らすだけで殺菌処理を行うことが可能である。この応用は既に製品化されており、一部の病院で利用されている[注 1]。 また応用として色素増感太陽電池と呼ばれる太陽電池も作られている。

2.超親水作用 超親水性を示す作用は、ガラスの防曇加工技術として既に応用されている。自動車のバックミラーや道路のミラー等を酸化チタンでコーティングしておけば、水がはねついても表面で水滴とはならず、そのまま流れ落ちる。そのため雨天時の視認性が大幅に向上する。また油性の汚れが全く定着せず、雨などで定期的にこのような水が流れることにより、表面が洗浄され、いわゆるセルフクリーニング作用をもつ。このセルフクリーニング作用は、既にビル外壁やテントシートおよび住宅用窓ガラスなどへ応用されている。 

 酸化チタンに似た電子構造を持つ物質が他にも数多く存在するなかで、なぜ酸化チタンに顕著な光触媒活性が見られるかは未知の部分が多く、この解明に向けて多くの研究が行われている。しかし、いずれも断片的な実験事実からの推測の域を得ず、いまだに統一的なシナリオは描かれていない。

 超親水作用についても、酸化チタンの酸化作用によって表面に吸着した疎水性有機物が分解された影響なのか、それとも酸化チタン表面自体に何らかの化学変化が起こっているのか、研究者の見解は分かれたままである。(Wikipedia)


 光触媒の発見
 藤嶋昭氏は大学院生の頃、コピー機用の新たな感光材料の基礎研究を行っていた。硫酸ナトリウム(Na2SO4)水溶液中で酸化亜鉛(ZnO)や硫化カドミウム(CdS)などの酸化物半導体や硫化物半導体を一方の電極とし、もう一方を白金電極とした回路を作製し、そこに光を当てると電流が流れる現象が知られていた。

 この現象は酸化亜鉛が溶解することで電流が流れるのだろうと予測されていた。他の酸化物半導体ではどうだろうかと考えていた時に、偶然入手できた酸化チタンの単結晶を一方の電極とし、もう一方を白金としてキセノンランプの光を当てる実験を試みた。すると両方の電極から泡が生じており、酸化チタンからは酸素が、白金からは水素が出ていた。その後数日光を当て続けても酸化チタンは一向に溶解していないことが判明し、このときはじめて光によって水を酸素と水素に分解出来ていることが判った。

 この実験を元に、1972年(昭和47年)、東京大学の本多健一氏と藤嶋昭氏は、酸化チタンを用いた水の光分解に関する論文をネイチャー誌に発表した。これは粉末状の酸化チタンを水中に入れ、光を当てると、水素と酸素に分解され、それぞれの気泡が発生するというものだった。この現象は、発見者の名前を取って「本多-藤嶋効果」と呼ばれる。

 藤島 昭氏は、日本の化学者。現在東京理科大学学長。専門は光電気化学、機能材料化学。愛知県出身(東京生まれ、生後まもなく愛知県豊田市へ移っている)。初代東京大学特別栄誉教授。財団法人神奈川科学技術アカデミー理事長。2006~2007年度日本化学会会長。他に日本学術会議会員、化学委員会委員長、光機能材料研究会会長、電気化学会会長、光化学協会会長、川崎市教育アドバイザーなどを歴任している。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:光触媒 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO):これまで困難だった光触媒で抗ウイルス効 アイラブサイエンス: 2012年ノーベル賞候補者に日本人3人!


図解 光触媒のすべて
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オーム社
酸化チタン―物性と応用技術
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技報堂出版

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