月の誕生、「巨大隕石衝突説」確実か?
 月の誕生は地球と巨大隕石(いんせき)とが衝突した結果によるもの──この37年前に提唱された説を裏付ける科学的痕跡が新たに見つかったとする研究論文が17日の英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 地球の衛星である月が誕生した過程については、天文学者たちが1975年の会議である仮説を提唱した。数十億年前、まだ生まれてまもなかった地球と、火星ほどの大きさの隕石が衝突して月ができたという「巨大隕石衝突説」だ。学者たちはギリシャ神話の月の女神セレネ(Selene)の母親の名にちなんで、この隕石を「テイア(Theia)」と名づけた。

 この説は、衝突によってテイア全体と原始地球のマントルの大半が溶解、蒸発し、その後冷えて凝集したものが月になったと主張するもので、月が太陽系の衛星中で5番目に大きく、地球の4分の1程の大きさがあり、しかも地球からわずかしか離れていないことを説明できるとされた。ただコンピューター・シミュレーションを用いて同現象が現実に起きていた可能性が示されるまで、この説は脇へ追いやられていた。

 しかしこの度、アポロ(Apollo)計画で持ち帰られた月の土壌を質量分析計で精査した結果、この説を裏付ける化学的証拠を発見したとする論文が発表された。論文によると、月の土壌には比較的重い亜鉛同位体がわずかに多く含まれていた。蒸気雲の中で重い同位体が軽い同位体よりも急速に凝集したことが原因と考えられる。このわずかな、しかし決定的な差は同位体分別と呼ばれる。


 亜鉛同位体分別比にわずかな違い
 「われわれが月の石から測定した同位体分別の規模は、地球や火星の石で測定されるものの約10倍だった。これは非常に重要な違いだ」と米ワシントン大学(University of Washington)のフレデリック・モワニエ(Frederic Moynier)准教授(地球惑星科学)は語る。

 同位体分別の測定を行ったのは過去4回のアポロのミッションで持ち帰られた月の石20サンプルで、これらは月面上の異なる地域および月隕石から採取されたものだ。これらサンプルを、火星に由来するものと特定されている隕石10個と、さらに地球上の岩石と比較分析した。すると月面上のサンプルでは、一般的な亜鉛が激減していた一方でより質量の大きい亜鉛の同位体を示す痕跡がみられたという。

 亜鉛の大量蒸発は、局地的な火山活動などよりも、隕石衝突のような巨大な出来事を示唆すると研究者らは主張している。米スクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)のジェームズ・デー(James Day)氏も「亜鉛を蒸発させるほどの熱が生じるには、月全体が関与するような大規模な溶解が必要だ」と説明した。

 また地球が水に恵まれている一方で、なぜ月があれほどまでに乾燥しているのかといった謎を解くにも「巨大隕石衝突説」が鍵になりそうだ。デー氏はこう述べる。「他の惑星で生命体を探そうとする時、(地球と)同様の条件がおそらく必要だと考える必要がある。ある惑星における生命誕生を考える際、そうした条件がどのようにして得られるのかを理解する必要がある」(AFPBB News 2012年10月22日)


 月の起源にさまざまな説
 月が地球に巨大隕石が衝突してできたとは驚きである。これまで、月の起源については、古くから4つの説が唱えられてきた。

 まず、捕獲説。これは、月は地球とは全く別なところで誕生し、その後地球に捉えられたという考え方。地球と月との違いは説明できるが、理論的には、宇宙をさまよっている天体を地球が捉えるということはきわめて難しく、あり得ないといってもいいことだ。

 次に分裂説。これは、月が地球から飛び出してできたという説。確かに月の物質は、地球内部のマントルの物質と比較的似ている。しかし、固い地球から月が分裂するためには、地球の自転速度が相当に速くなくてはならない。

 3つ目が双子集積説。月は地球の周りで地球とは独立に作られたという考え方。月と地球が似たような物質からできている点をはじめとして、月と地球の特徴をよく説明できる。しかし、この説では月の運動の特徴(月と地球の角運動量)を説明することができない。

 これらの説では説明できなかった事柄を説明できる理論として、「巨大衝突説」がにわかに注目されている。誕生してまもなくの原始地球に火星くらいの大きさの巨大な天体が衝突し、その衝撃で飛び散った原始地球と衝突天体、両者のマントル物質が軌道上で集積して、月を形成したとする説。

 この巨大衝突説は、これまで考えられてきた、捕獲説、分裂説、双子集積説のちょうど間をとったような形になっている。これまでのところ、月に関する事実をうまく説明できるため、 現在ではこの説がもっとも有力とされている。


 巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)
 巨大衝突説は、アポロ計画により採取された月の石の分析結果から地球のマントルと月の石の化学組成や酸素同位体比が似ている事が判明したが、兄弟説や他人説ではそうなる理由を説明できなかった。一方で、月の石の放射性炭素年代測定により、月は約45億5000万年前に誕生し、また35億年前までは小天体の衝突が多発していたことが判明した。それらを踏まえ、有力とされるようになったのが巨大衝突説である。

 月は地球と他の天体との衝突によって飛散した物質が地球周回軌道上で集積してできた。地球がほぼ現在の大きさになった頃、火星程の大きさの天体 (テイア) が斜めに地球へ衝突し、その衝撃で蒸発・飛散した両天体のマントル物質の一部が地球周回軌道上で集積して月が形成されたとする。

 最近の研究では、衝突から1ヶ月程度で現在の月が形成されたと考えられている。 この説を用いると、月の比重 (3.34) が地球の大陸地殻を構成する花崗岩(比重1.7 - 2.8)よりも大きく、海洋地殻を構成する玄武岩(比重2.9 - 3.2)に近いこと、地球と比べて揮発性元素が欠乏していること、地球やテイアのマントルを中心とする軽い物質が集積した月のコアが小さいこと、月の石の酸素同位体比が地球とほとんど同一であること、月の質量が現在程度になること、月と地球の全角運動量が現在程度でも不思議はないことなどについて矛盾なく説明することができる。


参考HP Wikipedia: Yahoo!ニュース:月の誕生、「巨大隕石衝突説」


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