地下鉄丸ノ内線で14人けが 洗剤破裂か
 まるで中学校・理科「酸・アルカリ」の実験に出てくるような事故が起きた。地下鉄で、アルミ缶にアルカリ洗剤(パイプ洗浄剤?)を入れて振ってしまい爆発したらしい。以下はNHKニュースの引用である。

 東京・文京区にある東京メトロ・丸ノ内線の駅に停車中の電車内で、乗客が持っていたアルミ缶が突然、破裂し、乗客14人がけがをした。 東京消防庁によると、缶の中に入っていた液体洗剤が容器と化学反応を起こして破裂した可能性があるということで、警視庁が詳しい原因を調べている。

  10月20日午前0時すぎ、東京・文京区にある東京メトロ・丸ノ内線の本郷三丁目駅で「電車内で缶が爆発してけが人が出ている」と110番通報があった。 警視庁によると、前から5両目にいた男性3人、女性11人のあわせて14人の乗客が顔などにやけどのけがをして手当てを受けたが、いずれも意識はありけがの程度は軽いという。 電車内では20代の乗客の女性が液体を入れた缶を持っていて、この缶がいきなり破裂したとのこと。

 この女性は警視庁に対して「自宅を掃除するために、勤めている飲食店から油汚れを落とす強力な液体る洗剤を分けてもらい、500ccのコーヒーのアルミ缶に入れて持っていた」と説明しているという。 東京消防庁によると、缶の中の液体洗剤はアルカリ性とみられ、この液体が容器のアルミ缶と化学反応を起こして破裂した可能性があるという。 警視庁が当時の状況や詳しい原因を調べている。(NHKnews 2012年10月20日)


Al+NaOH

 缶破裂事故:強アルカリ性洗剤「詰め替え危険」
 東京メトロ丸ノ内線「本郷三丁目駅」に停車中の電車内で10月20日未明、アルミ缶が破裂し14人が軽傷を負った事故で、警視庁はアルミ缶の中の強アルカリ性洗剤が、アルミと化学反応を起こし、水素が充満して破裂した可能性を指摘している。業務用洗剤は一般的に強アルカリ性成分で、水や金属と反応すると水蒸気や水素ガスを発生させる。専門家は「強アルカリ性の洗剤の詰め替えは危険」と注意を促している。

 名古屋大学大学院の石原一彰教授(有機合成化学)によると、強アルカリと水が反応すると、発熱して水蒸気が発生し、アルミ缶のアルミニウムと反応すれば、水素ガスが発生する。缶を持っていた女性はコーヒーの空き缶に洗剤を入れて、ふたをしてビニールや紙袋で包んでいた。密閉状態で缶内部が膨張し破裂したとみられる。

 石原教授は「アルミ缶が破裂するのは、相当な威力。強アルカリで内部のコーティングが溶け、薄くなっていた可能性がある」と指摘する。強アルカリは、皮膚につくとやけどを負い、目に入れば失明の可能性もある。石原教授は「酸やアルカリを金属と一緒にしてはいけない。ガラスやポリ容器などの専用容器から、詰め替えるのは危険」と話している。(毎日新聞 2012年10月21日)

 アルミニウムはくを、水酸化ナトリウム液に入れると、あわを出しながらとける。塩酸にアルミニウムを入れたときも、あわを出してとける。このとき出るあわは、どちらも水素である。このように、酸とも塩基とも反応する元素を両性元素という。アルミニウム・亜鉛・スズ・鉛はその代表例である。

 10月20日に発生した地下鉄車内でのアルミ缶破裂事故。 どうやら原因は、アルミニウムと強アルカリの化学反応によるものである可能性が強まっている。 事故を起こした女性の証言によると、「コーヒーの空き缶(アルミ製)の中に業務用洗剤を入れて、フタで密閉していた」とのこと。身近な洗剤とアルミ缶で、理科の酸・アルカリの実験で行うような反応が起き、事故につながるとは考えにくい。

 いくら身近なものでも注意が必要だ。そういえば「まぜると危険」という漂白剤に酸性のものを混ぜて、簡単に塩素が発生する。これにも注意が必要だ。


 両性元素とは何か?
 両性元素とは、酸と強塩基の両方に溶ける金属元素のこと。その酸化物や水酸化物も、酸と強塩基の両方に溶ける。

 アルミニウムも両性元素で、酸にもアルカリにも溶ける性質がある。普通、「金属は酸に溶ける」と言うが、一部の金属はアルカリにも溶ける。アルミニウム・亜鉛・スズ・鉛はその代表例だ。これらの金属なぜ酸と塩基どちらにも溶けるのか?

両性元素は、酸に溶けるには、普通に金属が酸に溶けるときの反応をして水素が発生する。アルミニウムの場合は

2Al + 6H+ → 2Al3+ + 3H2

これに対して、塩基に溶けるときには、「錯イオン」というものを作って溶けるのだ。こちらも水素が発生する。アルミニウムの場合は

2Al + 2OH- + 6H2O → 2[Al(OH)4]- + 3H2

この[Al(OH)4]-の部分が錯イオンだ。Al3+の周りにOH-が4つついた形をしている。Znの場合は [Zn(OH)4]2- となる。このような、(OH)-と錯イオンを形成する性質を持つものを、両性元素という。

 「次の性質にあてはまる元素を選べ」のような問題が出た時に、「強塩基に溶ける」という情報をヒントに両性元素を選ぶことが多い。また、水酸化物が水に溶けるという性質を利用して「少量のNaOH水溶液を加えると沈殿ができたが、過剰のNaOH水溶液を加えると沈殿は再び溶けた。」というような問題も両性元素である場合が多い。

 両性元素の陽イオンを含む水溶液にNaOH水溶液を少量加えると、水酸化物(Al(OH)3など)として沈殿し、そこにさらにたくさんNaOH水溶液を加えると、さらにOH-がついて、錯イオン([Al(OH)4]-など)となって溶ける。


 アルカリ洗剤はパイプ洗浄剤か?
 一方、業務用洗剤の主成分は強アルカリ性の溶液。水酸化ナトリウムとか水酸化カリウムとか。強アルカリ性の溶液はタンパク質を溶かすので、配水管の汚れ等に効き目がある。パイプ洗浄剤かもしれない。

 つまり、アルミ缶の中に強アルカリ性溶液を入れると、化学反応を起こしてアルミ缶が溶けていく。アルミニウムと水酸化ナトリウムを反応させたときの化学反応式は…。

2 Al + 2 NaOH + 6 H2O → 2 Na[Al(OH)4] + 3 H2

 Na[Al(OH)4]はテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという物質です。それと同時に水素が発生することが分かる。洗剤が入れられたアルミ缶は密閉されていたから、発生した水素は缶の中に充満して内圧を高める。そして缶の強度がそれに耐えきれなくなった瞬間に破裂した、と考えるのが可能性としては最も高い。

 では、強アルカリ性の溶液はどのような容器に保存すればいいのか?水酸化ナトリウムをはじめ、強アルカリ性の溶液は、一般的にはプラスチック製のボトルに入れる。

 液体の試薬を入れる容器としてはガラス製ボトルがよく使われますが、強アルカリはガラスとも反応してしまうので、あまり好ましくない。ガラス表面がペリペリと剥がれてきてしまう。

 ところで、事故の原因として、大きなウエイトは占めないとは思うのですが、もう一つの可能性があるようだ。埼玉県立坂戸高校の山田先生が実際に実験された。コーヒーの空き缶に残った砂糖と水酸化ナトリウムが反応しても、同様に気体が発生している。

 アルミ缶は入手が容易でとても便利な容器である。しかし、それが逆に「どんな液体でも入れられる」という錯覚を生じさせているのかもしれない。業務用洗剤のほうは容易に入手できるものではないとはいえ、今回の事故は、誰しもが加害者になり得る可能性を提起したものであるように感じた。製品に表示されているであろう注意書きはしっかりと読まなくてはいけない。


参考HP たのしい化学:洗剤入りアルミ缶爆発事故 鬼勉:両性元素


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