サンディ被害「ニュヨーク大停電・再び?」
 大西洋で観測されたハリケーンとしては最大規模の「サンディ」の来襲で、米国では少なくとも92人が死亡、地下鉄トンネルは洪水被害を受け、東海岸ではニュージャージー州を中心に最大850万の世帯と企業が停電となった。1日時点でも停電しているのはサウスカロライナ州からメーン州やミシガン州におよぶ地域で約480万世帯。

 ニュヨークの大停電は今回だけではない。1965年北アメリカ大停電、1977年ニューヨーク大停電、2003年北アメリカ大停電と度々問題になった。その他にも、送配電線の損傷や地下ケーブル、発電所の火災など、多くの電力トラブルが頻発しており、日本では殆どなくなった停電が日常茶飯事のように起こっている。なぜこれほど停電が多いのだろう?

 この原因のひとつは、戦火にまみえず、また、電力自由化等による投資の抑制によって更新が遅れたために、時代遅れになっている送配電網であると考えられている。現在、アメリカのエネルギー戦略では、2030年までに「超伝導ケーブル」による強固な送配電網を全米に構築する「スマートグリッド」計画が検討されている。

 今回、電気抵抗がゼロになる「超伝導」の技術を利用し、送電効率を高めた電線「超伝導ケーブル」を使った、国内で初めての実証実験が10月29日、横浜市鶴見区の東京電力旭変電所で始まった。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが推進する事業で、約1年かけて信頼性や安定性を検証する。


Superconductivity_Desertec

 超伝導ケーブルはステンレス製で、直径は約15センチ。ケーブル内部には、超伝導物質を巻き付けた3本の銅線が入っている。ケーブル内部はさらにマイナス200度ほどの液体窒素で満たされている。超伝導物質を液体窒素で超低温に冷やすことで、電気抵抗が限りなくゼロに近い状態で送電できるという。

 通常の電線では、発電した電気の一部が、電気抵抗によって送電中に熱に変わってしまい、約5%程度のロスが生じて電気が無駄になっている。しかし、この超伝導ケーブルは、内部を超低温に冷却して超伝導状態に維持する電力が必要となるものの、その電力を含めてもロスを2~3%程度に抑えられるという。(2012年10月30日 読売新聞 )


 高温超伝導ケーブルを東京電力が実証実験
 東京電力などが29日、実際の送電に高温超伝導ケーブルを用いる実証実験を横浜の旭変電所で始めた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高温超伝導ケーブル実証プロジェクト」として行われる。1年間の連続運転の予定で、約50万世帯分をまかなっている部分で実験する。30日付各紙が報じた。

 超伝導とは、ある温度以下で電気抵抗がゼロになる現象。1911年に、水銀が4.2K(-269℃)で超伝導になることが発見された。超伝導物質を電線に用いれば、通常5%ある送電ロスを減らすことができ、今回の実証実験は送電ロスを従来の33分の1まで下げられるものを用いる。電線を冷やすための冷凍機が電力を消費するが、その分を含めても送電ロスは半分になるという。

 実験では、住友電気工業株式会社が開発したビスマス系高温超伝導線「DI-BSCCO」を用いる。この超伝導ケーブルを直径15cmの二重断熱ステンレス管の中に3本通し、管の中に-204℃の液体窒素を流してケーブルを超伝導状態に近づける。今回は変電所と変電所の間に240m分、導入し、実際の運用を想定して保守・点検などについても検証するという。

 超伝導送電のメリットの一つは、電気抵抗が小さいため、細い電線で大電力を送れることだ。そのため、電力消費量が増え続ける都市部への送電力を強化する際にも現行の管路の本数を増やす必要がないので、敷設コストを下げられるという。東京電力は敷設コストを2020年には従来の半分にする目標だ。

 日本が自然再生エネルギーに比重を移すにしろ、原発を推進するにしろ、省エネ技術は必要になってくるだろう。同様の実験を米国や韓国も行っているが、日本はそれらに比べてケーブルの半径が小さい点で優れているという。技術において勝れば、日本が海外でインフラ事業に食い込める可能性は高まる。敷設後の維持管理のサービスまで含めて、息の長い事業が期待できる。(2012.10.30 The Liberty Web 居)


 EUで注目される超伝導送電「デザーテック」
 新しい電力網の技術である「超伝導直流送電」を研究している中部大学の山口作太郎教授は2011年11月16日、ニコニコ生放送「世界を変える『超伝導直流送電』って何ですか?」に出演。山口教授は、電力コストが低下するという超伝導直流送電のメリットを語りつつ、「これから10年の技術の進歩は非常に楽しみ」と実用化に期待を込めた。

 また山口教授は、超伝導直流送電の普及によって、国家間の対立が抑止される可能性にも触れた。

 超伝導直流送電とは、超伝導材料などの新しい技術を用いた送電システムのことだ。山口教授によると、現在主流の交流送電方式では送電の際に電気が熱となり、全体送電量の約6%が損失するのに対し、超電導直流送電ではその損失が現行の10分の1以下に抑えられるという。

 超電伝直流送電の技術を導入しようとする一例として、最近ではドイツなどがけん引する「DESERTEC(デザーテック)」と呼ばれるプロジェクトがある。デザーテックでは、北アフリカや中東の砂漠に太陽光や風力の発電施設を作り、ヨーロッパとネットワークを結び、そこから送られる電力をヨーロッパの電力源の1つにする。

 山口教授によると、「デザーテック」の送電部分に超伝導直流送電技術を採用しようとする動きがあるそうだ。


 「超伝導直流送電」は国家間の対立を抑制する!?
 番組では、「日本発! 世界を変えるエコ技術」などの著書を持つ山路達也氏が「超伝導直流送電の技術が実用化されて、普及して、低コストで使われるようになった時に、世界でどのような変化が起こると思うか?」と山口教授に質問をぶつけた。これを受けた山口教授は、「(太陽光のような)再生可能エネルギー(で発電した電力)を世界中で結ぶことを考えているが、太陽が当たっているところから送電をして暗い所へ送るようなイメージになる。

 地球はくるくる回っているので、送電する向きが逆方向に変わる」と説明した上で、 「例えば、隣の国がけしからんと送電線を止める話もあるが、止めると12時間後には自分の国が困るわけだ」と述べ、国家間の対立をけん制する抑止力になるのではないかと示唆した。

 さらに山口教授は、米ソ冷戦時代の米国で、抑止力としての大陸間弾道核ミサイルが「ピースキーパー」と呼ばれていたことになぞらえ、「『ピースキーパー』と呼んでいいんじゃないか」と語った。

 実用化に大きな期待が寄せられる超伝導直流送電。山口教授の研究所では現在、200メートルのケーブルで実験中だという。山口教授は「あと1年くらいで200メートルで取らないといけないデータが取れる。その次に2キロぐらいに伸ばしたい。企業と本格的に一緒にやるようにしていって次は20キロぐらいのものを作りたい」と語り、実用化に向けた展望を明かした。山口教授は、「超伝導のこれからの10年の技術の進歩は非常に楽しみ」と語り、新電力網の実現へ期待を寄せた。


 長距離「直流超伝導送電」とは?
 送電というと一般に交流を思い浮かべるが、山口教授が研究しているのは「直流超伝導送電」。どうして直流がよいのだろうか?

 交流送電ではケーブルが3本必要になる(3相交流)が、直流ならば1本で済む。おまけに交流の発熱量は「0」にならないが、直流ならばほとんど「0」になり、完全な超伝導状態になるという。さらに山口教授は語っている。

 「送電線に抵抗ゼロの直流超伝導線を導入し、送電線損失の少ない送電システムの研究開発を行っています。最終的には地球規模の電力網を作ることが目標です。」

 「炭酸ガスによる地球温暖化の防止や化石燃料の枯渇問題のため、急速に太陽光発電や風力発電の導入が進んでいます。太陽光発電や風力発電に適切な場所は人口密集地から遠く離れているので、長距離を低損失送電するシステムが必要になります。現在でも?2000kmの長距離送電は直流が広く使われています。そこで、直流大電流が得意な超伝導を長距離送電に応用する研究を進めています。」

 「例えば、日照条件が良く広大な中国のゴビ砂漠に太陽光パネルを設置して、日本に送電する。日本なら70km四方、中国なら100km四方、世界の主要国なら250km四方の面積で全ての電力を賄えます。ゴビ砂漠から日本までは5000kmくらい離れていますので、直流超伝導送電に適しています。」

 「また、直流超伝導送電は電力貯蔵能力もありますので、出力が不安定な自然エネルギーとの組み合わせに適しています。 また、地球規模の送電ができると原子力発電所との相性も良いです。」

 「現在、原発は世界に450基有ります。そして、今世紀中に2000基作る計画があります。たぶん22世紀には太陽エネルギーだけで人類の使う全エネルギーは賄えるのですが、今世紀は原発と太陽エネルギーの両方を使うと思われています。一方、世界中どこでも昼間の電力消費は夜間ではほぼ2倍です。電力は貯蔵できないので、発電施設は昼に合わせて作られ、夜間は余剰な発電施設を抱えます。「長距離直流超伝導送電」で昼と夜の地域で電気を融通し合うことが出来れば、二酸化炭素の放出量の少ない原子力発電設備を効率的に利用することができると同時に、22世紀では廃炉する原子炉数も減るでしょう。」


参考HP 中部大学:クローズアップ 山口研究室 The Liberty Web:高温超伝導ケーブルを東京電力が実証実験


超伝導の基礎 第3版
クリエーター情報なし
東京電機大学出版局
トコトンやさしい超伝導の本 (B&Tシリーズ―今日からモノ知りシリーズ)
クリエーター情報なし
日刊工業新聞社

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