乳酸菌がつくるペプチドに「記憶力向上効果」
 乳酸菌は健康によいというが、どのように役立つのだろうか? 乳酸菌は、ヨーグルトや漬物の中にふくまれているが、腸内の善玉菌の代表でもあり、これが増えると大腸が健康になる。乳酸菌が乳糖を分解すると発生する乳酸と酢酸により悪玉菌の増殖が抑えられるので、腸内環境がよくなり、便秘も解消される。

 また、乳酸菌の活動により、いろいろの健康上の有用物質(乳酸菌生産物質)が作られて、大腸内で吸収されて健康を促進する。例えば、糖尿病、心不全、緑内障、ガンなど殆どの病気を軽減させたり、療す可能性もある。

 ただし乳酸菌(生きたもの)は、胃酸(強い酸)で分解され易いので、大腸にまで達するのは極く少数になってしまう。しかし、乳酸菌が生産した物質は分解されずにそのまま腸に達するので、乳酸菌食品(ヨーグルト、糖漬物など)はそれなりに有効とされる。

 今回、乳酸菌で有名なカルピスが、乳酸菌Lactobacillus helveticus(ラクトバチルス・ヘルベティカス)発酵乳の中から記憶力向上作用を持つペプチドを確認したと発表した。ペプチドとは、アミノ酸が数個つながった状態のもので、たんぱく質を分解する過程などに生成される物質。これが本当なら、また発酵食品に人気が出そうだ。

 研究したのは「カルピス発酵応用研究所」ならびに「中部大学応用生物学部」の共同研究によるもので、詳細は「第64回 日本生物工学会大会」にて(2012年10月23日~26日)で発表された。


Lactobacillus helveticus

 カルピスのさまざまな健康作用
 同社は1970年代より、「カルピス」を製造する過程で生み出される発酵乳「カルピス酸乳」の機能性研究を続けてきている。「カルピス酸乳」とは、「カルピス」は、生乳を脱脂し、独自のカルピス菌(乳酸菌と酵母の共生体)を用い、二度の発酵を経て作られるが、この製造工程で作られる一次発酵乳を、当社では「カルピス酸乳」と呼んでいる。

 現在は「カルピス酸乳」に含まれる乳酸菌ラクトバチルス・ヘルベティカスで発酵させた発酵乳に着目して研究を進めており、これまでに寿命延長、抗腫瘍、免疫賦活、血圧降下、疲労回復、ストレス低減などの作用があることを明らかにしてきていた。

 今回の研究では、発酵乳の中から、「記憶力向上」作用を示す成分を発見した。同成分を詳細に調べたところ、乳酸菌が牛乳に含まれる乳たんぱく質を分解することで得られるペプチドであることが明らかとなった。

 主な試験結果は2つ。1つ目は発酵乳由来ペプチドの記憶障害予防作用で、発酵乳の中から発見したペプチドをマウスに与えた結果、有意に短期記憶障害を予防したという。2つ目は発酵乳由来ペプチドの記憶力向上作用で、発酵乳の中から発見したペプチドをマウスに与えた結果、有意に2日後の記憶保持が向上したという。

 同社ではこれらの作用はヒトにも期待され、「もの忘れ」の予防や「脳機能の維持」に役立つ可能性があるとしており、今後も研究を継続し、関連するエビデンスを積み上げていく方針としている。

 乳酸菌Lactobacillus helveticus(ラクトバチルス・ヘルベティカス)は、ラクトバチルス属の乳酸菌の一種で、チーズなどの発酵に用いられるたんぱく質分解能力の高い乳酸菌。今回使用したのは、「カルピス菌」(乳酸菌飲料「カルピス」を製造するときに用いる菌で、乳酸菌や酵母などの集合体)を構成する主要な乳酸菌である。


 そもそも乳酸菌とは?
 乳酸菌は、ブドウ糖や乳糖を分解して乳酸を作り出す細菌(微生物)の総称で、私たち人間にとって、有益な菌のひとつ。乳酸菌には実にさまざまな種類があるが、そのうちの一部は、腸をはじめとする消化管に留まるなどして、私たちの健康を守っている。そんな乳酸菌は、ヨーグルトやチーズ、味噌やしょうゆ、漬け物といった、古くから伝わる発酵食品を作るために欠かせない存在で、乳酸菌と人間の健康・生活は、大昔から深く結びついている。

 乳酸菌は、さまざまな発酵食品の製造に用いられてきた。主なものとしては、ヨーグルトや乳酸飲料などの発酵乳製品、キムチや浅漬け、ピクルス、ザワークラウトなどの発酵植物製品、鮒寿司などのなれ寿司などが挙げられる。乳酸菌による発酵は、これらの食品に酸味を主体とした味や香りの変化を与えるとともに、乳酸によって食品のpHが酸性側に偏ることで、腐敗や食中毒の原因になる他の微生物の繁殖を抑えて食品の長期保存を可能にしている。

 また、乳酸菌は発酵の際、ビタミンCも生成し、発酵前の生乳等のビタミンCよりも濃度が高くなる。牛乳にはビタミンCがほとんど含まれていない。その理由は、子牛が自らビタミンCを合成できるので牛乳から摂取する必要がないためである。牛乳を発酵して作ったヨーグルトでは若干ながらビタミンCが含まれている。


 植物性乳酸菌は、野菜や豆、米や麦などの植物素材を発酵させる乳酸菌のことである。漬物(キムチ、ザワークラフトも含む)や味噌、しょう油、さらには酒やなれ寿司などの米の発酵食品まで、さまざまな食品に生育している。

 一方、ヨーグルトのように牛乳などの動物の乳に生育する乳酸菌は動物性乳酸菌と呼び、それぞれ区別している。動物性乳酸菌は、乾燥、熱、酸に弱く、胃酸で死滅するが、植物性乳酸菌は酸に強く、生きたまま腸に届くため現在注目を浴びている。

 植物性乳酸菌は、腸まで届くプロバイオティクス食品であり、腸内生存率が動物性乳酸菌の10倍であると言われている。植物性乳酸菌の効果として,免疫活性作用、発癌物質の排出・分解、便秘・下痢の解消、病原菌感染の予防などが挙げられる。

 一方、他の発酵食品の製造過程において、乳酸菌が雑菌として混入することが問題になることもある。ラクトバシラス属のL. fructivorans、L. hilgardii、L. paracasei、L. rhamnosusなど、アルコールに強い乳酸菌は、酒類の醸造、発酵中に混入・増殖すると、異臭・酸味を生じて酒の商品価値を失わせてしまう。

 日本酒醸造の現場ではこれを火落ちまたは腐造と言い、これらの菌は「火落ち菌」として造り酒屋たちから恐れられている。また火落ちにより混入した乳酸菌によって醸造後に腐敗することを防止するための手法が経験的に編み出され行われている。これは、「火入れ」と呼ばれる低温殺菌法で、醸造した酒を65℃の温度で23秒間加熱すればこれらの菌を殺菌できる。火入れは江戸時代頃から行われていた。

 ワインにおいても同様に保存中に乳酸菌発酵によって異臭や酸味を生じることがあり、その原因を究明しようとしたルイ・パスツールの研究によって、食物が腐敗するメカニズムが解明され、またパスチャライゼーションと呼ばれる低温殺菌法の発明につながった。

 L. lactisは、ナイシンとよばれる抗菌ペプチド(バクテリオシン)を生産する。ナイシンは、黄色ブドウ球菌やリステリア菌などの食品腐敗菌に対して高い抗菌活性を持つため、その抗菌作用を期待して食品添加物として世界中で広く用いられている。


 ヒトの常在細菌としての位置づけ
 乳酸菌のうち、特にラクトバシラス属とビフィドバクテリウム属は、ヒトの消化管内に常在し、常在細菌叢の一部を成している。これらの乳酸菌は、口腔内のう蝕を除いて直接ヒトの病気の原因になることはなく、むしろ生体にとって有益になるバリヤーとして機能していると考えられている。そのため、乳酸菌は「善玉菌」と表現される場合もある。ただし、極めて稀な例だが、乳酸菌血症などの感染症の原因になる例も報告されている。

 消化管内の乳酸菌健康なヒトの腸内にはたくさんの種類の微生物が生息しており、ほぼすべての人の腸内からは、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属の乳酸菌が検出される。これらの乳酸菌は、俗に言う「腸内の善玉菌」の一種として捉えられる場合が多く、腸内常在細菌叢(腸内フローラ)において、これらの細菌の割合を増やすことが健康増進の役に立つという仮説が立てられている。ただしその有効性については、意義があるとする実験結果と関連が認められないとする結果がそれぞれ複数得られており、結論が出ていないのが現状である。

 人体に有益な乳酸菌を摂取するという考えは、パスツール研究所に所属していたロシアの科学者であるイリヤ・メチニコフの発案だとされる。メチニコフは、小腸内から発見された毒性を示す化合物が吸収されると害になるという内容の自家中毒説を唱えていた。そして、1907年に『不老長寿論』という著書を出版し、ブルガリアに長寿者が多いことに目をつけ、ブルガリアの乳酸菌を摂取させたところ、腐敗物質が減少したので自家中毒を防止できて長寿になると唱えた。ブルガリアの乳酸菌の他に、ケフィアや酢漬け、塩漬けの食品によって人々は知らずのうちに乳酸菌を摂取していることを指摘している。

その後もこうした仮説による研究は発展していった。そして、疾患の原因は様々だが、有害な腸内細菌が作る毒素も生活習慣病につながる一因であるということが分かっている。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:乳酸菌 カルピス:乳酸菌が作るペプチドに記憶力向上効果

カルピス酸乳 アミールS 200ml×24本
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カルピス
Noale(ノアレ) KW乳酸菌(タブレット) 30粒
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ヤクルトヘルスフーズ
乳酸菌生産物質と正しい食生活で健康になる本
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日東書院本社

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