ドーハで、COP18開催中
 国連気候変動会議(COP18・COP/MOP8)はカタールの首都ドーハで2012年11月26日から12月7日までの期間に開催されている。2012年3月には主要諸国間で事務レベル会議が開かれた。今回は、世界195か国・地域が参加し、京都議定書の延長と温室効果ガス削減の新たな国際的枠組み作りについて交渉する。

 会議では2012年で削減期間が終わる京都議定書の延長について、延長期間は5年(17年まで)なのか8年(20年まで)なのか、どの国が参加するのかなどを話し合う。これまでのところ、欧州連合(EU)、ノルウェー、スイス、豪州などは引き続き削減義務を負い、日本、ロシア、ニュージーランドは負わない方針。日本は目標を掲げて自主的に削減に取り組む。

 また、京都議定書で削減義務を負っていない中国や米国など大量排出国も入った新しい削減の枠組みについて、いつまでに何をするのかといった作業計画の作成に着手する。昨年のCOP17で、新枠組みは2015年までに採択し、2020年発効を目指すことが合意されている。 (2012年11月26日 読売新聞)


cop18

 だが、具体的な見通しは立っていない。今回は今後の方向性を探る程度で、終わってしまうかもしれない。米国や中国などのCO2大量排出国は、軍事費には大量に予算をつぎ込むが、地球温暖化阻止のためには予算を使わない方針だ。国連気候変動会議(COP18)は、京都議定書成立(COP3)当時の高尚な理想もなくなり、今は政治的な駆け引きの場になってしまっている。残念なことである。


 砂漠の国、オイルマネーの国「カタール」
 広漠とした砂漠に広い道路がまっすぐに伸び、真新しい高層ビルが林立し、数えきれないほどの巨大なタワークレーンがさらに多くのビルを増やすべく、建設資材を積み上げていく。

 「世界一退屈な町」といわれたカタールの首都ドーハは、豊富な天然ガスと引き換えに世界中から集まるオイルマネーを投じて拡大し、ダイナミックに変化し続けている。

 2012年11月26日、そのビル群のひとつ、ドーハ国際会議場を会場にCOP18が開幕した。カタール政府はこの巨大な人工都市にさまざまな国際イベントを招致して世界のメディアの注目を集め、国際社会における存在感を高めている。

 2022年のFIFAワールドカップの開催地に決定したほか、2020年のオリンピック招致に落選したものの、ふたたび2024年のオリンピック開催地に立候補しています。そして、COP18の誘致もこの国の威信を世界に示すひとつと目されている。

 しかし、カタール政府の目的が何であれ、アジア太平洋地域としては京都、バリに次いで3か所目、湾岸産油国としては初めての開催されるCOP18が、気候変動問題の歴史的な転換点になることはまちがいない。

 それはまず、このCOPが京都議定書の第一約束期間が終わる節目の年に開催され、すべての締約国が参加する「新しい枠組み」に向けた行程を創るときにあたる、ということにある。

 そして、新しい枠組みが求める低炭素社会への移行は化石燃料の時代の終わりの始まりでもあるのだ。気候変動を引き起こす化石燃料の産油国でCOPが開催されることは、その歴史的な流れの象徴といえるかもしれない。

 COP18のキャッチフレーズは「70億人でひとつの挑戦。私もやります」。カタールをはじめペルシャ湾を取り囲む国々は、気候変動を引き起こす化石燃料の供給国であると同時に、気候変動に脆弱な地域であるという側面ももっている。スムーズな低炭素社会への移行は、産油国を含む世界共通の利益なのです。議長国カタールには、その名誉ある役割を主導することが期待されている。


 「財政の崖」で余裕のない米国
 地球温暖化対策を協議する国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)が26日、カタール・ドーハで開幕した。京都議定書に代わるすべての国を対象にした2020年以降の新しい枠組みづくりの計画を詰める。ただ、200近い締約国の思惑の違いは大きく、新枠組みをめぐる交渉の行方は不透明。欧米や新興国の事情、思惑などを探った。

 議論を大きく左右するのが、最大の経済大国で、温室効果ガス排出量で2位の米国だ。米国は、先進国のみに温室ガス削減目標を課した京都議定書を「経済的に不利益を被る」として批准しておらず、新枠組みが強制力を持った仕組みになることに抵抗する。

 温暖化対策は、米大統領選では争点にならなかったが、選挙戦終盤に米東海岸を直撃したハリケーン「サンディ」で関心が高まった。温暖化でハリケーン被害が深刻化すると予測されていたのが現実になったためで、オバマ大統領は勝利演説で「子供たちには、地球温暖化の破壊的な威力に脅かされるような米国には住んでほしくない」と強調した。

 交渉関係者は、COP18で米国が具体的な行動に出るとは考えていないが、「新枠組みづくりを前進させるメッセージを発する可能性はある」と予想する。

 だが、減税停止と歳出削減が重なる「財政の崖」が心配され、温暖化対策に本腰を入れる財政的な余裕がない米国が、新枠組みの積極推進の立場に転じるかといえば「ノー」だ。


 期待できない中国の動向
 世界の温室ガス排出量の約24%を占める中国のスタンスは、米国に近い。京都議定書では途上国として排出削減義務を免除されており、新枠組みでも数値目標を義務づけられることを牽制(けんせい)している。名古屋大大学院の高村ゆかり教授は「新枠組みの議論を前に進めてもいいとの姿勢を示す一方で、自国に数値目標が課されることを警戒している」と分析する。

 中国は習近平総書記の新指導部が発足したばかりで、温暖化対策の方針を決めるには、まだ時間がかかるとの見方も強い。

 中国の態度をより先鋭化させたのがインドだ。COP17でも、インド代表団は「先進国が排出削減の主たる責任を負うべきだ」として、削減義務を課されることに反対し続けた。今回も同様の態度をとるとみられ、日本総合研究所の三木優主任研究員は「新枠組みについて、強制力を伴わない仕組みにするよう働きかけを続ける」とみている。

 これに対し、来年から始まる京都議定書の第2約束期間への参加を表明している欧州連合(EU)は、新枠組みについても強制力を持った仕組みを主張するとみられる。しかし、米国や中国、インドなどはEUの主張に否定的で、交渉担当者は「強制力を前面に押し出しすぎると新枠組み交渉自体がご破算になる可能性もあり、それはEUも望まないはずだ」と指摘する。

 一方、COP18に臨む日本の方針について、外務省関係者は「すべての国が参加する公平で実効性のある枠組みが必要」とし、新枠組み交渉を前進させたい方針。ただ、温室ガスの「25%削減目標」の修正を余儀なくされることは確実で、WWFジャパンの小西雅子気候変動・エネルギープロジェクトリーダーは「受け身の交渉にならざるを得ない」と懸念する。

 各国の主張の溝は深く、妥協点を見つけるのも容易ではない。今回は議長国カタールの指導力も未知数で、交渉進展は期待できないとの見方が多い。(産経sews 2012.11.26)


 COP17の「ダーバン・プラットホーム」採択
 南アフリカのダーバンで開催されていた気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)。この会議では、京都議定書が定める温室効果ガス削減義務を2013年以降も継続することになった。さらに、2020年には中国と米国を含むすべての国が参加する新たな法的枠組みを始めるとした合意を採択した。

 二酸化炭素(CO2)の排出量が1、2位で、世界の約4割を占める両国が法的枠組みに加わることに同意したのは、地球温暖化対策として大きな成果。京都議定書に代わる、新たな枠組みでの温暖化対策については作業部会を創設して協議。2015年までに決定し、2020年の発効を目指す「ダーバン・プラットホーム」を採択した。

 一方、日本は、2013年以降、削減は自主的に取り組むことになった。延長される京都議定書の削減義務は、カナダなどと一緒に拒否した。米国や中国、インドが参加しなかったというのがその理由だ。今回は、すべての排出国が集う新たな枠組みをつくることが目標だった。

 米中の決断の背景には国際情勢の変化もあろう。欧州からアジアに軸足を移したアメリカ外交。そこでのリーダーシップを握りたい中国。両国の綱引きの結果が、妥協を引き出した。

 欧州連合(EU)の要請もあった。京都議定書の約束期間が切れた後も、EUはCO2の削減に努力するとし、強いメッセージを放った。温暖化に苦しむアフリカ諸国や、海面上昇で国土を奪われそうな小島しょ国の訴えも強かった。

 ただ、京都議定書の継続期間は決まっていない。2020年からの新枠組みも、削減目標の設定など具体策は今後の交渉に委ねられる。地球温暖化阻止の「理念」を各国が共有し続けることが必要だ。(2011/12/13 西日本新聞)


参考HP アイラブサイエンス: COP17閉幕、地球環境問題を軽視?2020年以降に新枠組み設定


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