チリでアルマ望遠鏡が観測開始
 1月3日、世界最高性能を持つ、アルマ望遠鏡が本格的な観測が始まった。国立天文台は、南米チリの標高5千メートルの高地にあり、欧米とともに建設を進めている電波望遠鏡「アルマ」で、本格的な観測を開始したと発表した。 アルマは、66台のパラボラアンテナを組み合わせて運用する予定だが、当面は先行して完成した16台で観測する。

 研究チームは同日、地球から約7千万光年離れた「アンテナ銀河」の画像を公開。本格観測に先立つ調整段階の画像だが、従来の電波望遠鏡と比べても世界最高品質の画像だという。アルマはハッブル宇宙望遠鏡の画像との重ね合わせて、ガス雲が分布する様子など可視光では見えない世界を写し出せる。(2011/10/03 共同通信)

 翌4日には、アルマからの観測結果が発表された。遥か彼方にある、恒星のまわりに惑星が形成されている場面をとらえることに成功した。ただし、これは、昨年の観測成果である。

 チリ大学のサイモン・カサスス氏をはじめとする国際研究チームは、おおかみ座に位置する若い星HD142527を取り巻く塵とガスの円盤をアルマ望遠鏡で観測し、円盤の中で作られつつある惑星に流れ込んでいると考えられるガスを発見した。


HD142527

 惑星のへその緒
 このようなガスの流れは理論的には予想されていたが、実際に観測でその存在が確認されたのは今回が初めて。過去の観測から、HD142527という星のまわりには塵とガスの円盤があり、その円盤には大きな「すきま」があることがわかっていた。

 一般に、若い星のまわりにある塵とガスの円盤の中で形成している惑星が成長してくると、円盤の中にドーナツ状の「すきま」ができる。しかし「すきま」や星の近くの詳しい様子はわかっていなかった。

 今回の観測によって初めて、「すきま」の外側の円盤から「すきま」の中で成長しつつある惑星を経由して、「すきま」の内側の円盤にのびているガスの流れを直接とらえることに成功した。これは他の電波望遠鏡に比べて圧倒的に感度の高いアルマ望遠鏡を使うことで達成できた成果。

 このガスの流れは赤ちゃんの「へその緒」のように、惑星形成のためのエネルギーを供給しているようだ。このガスの流れは「すきま」の中に2本見つかっており、HD142527のまわりでは少なくともふたつの巨大ガス惑星が作られていると考えらている。

 研究チームではこのガスをさらに詳しく調べることで、木星のような巨大ガス惑星がどのように作られるのかを明らかにしたいと期待を寄せている。この成果はアルマ望遠鏡の初期科学観測で得られたもので、2013年1月2日発行の英国の科学雑誌『ネイチャー』に掲載された。 (国立天文台 2013年1月 4日)


 惑星形成論
 最近では太陽系外にある第2の地球型惑星を探す取り組みが各国で行われている。こういう惑星はどうやってできるのだろうか?

 惑星がどのように形成されたか。このテーマについての研究が惑星形成論である。1990年代まで、知りえた惑星系のモデルは太陽系だけであったが、21世紀には多くの系外惑星が発見されるようになり、主に2つのシナリオが提案された。1つは原始惑星系円盤の中で塵やガスが徐々に集まるものであり、形成に長大な時間がかかる。2つ目は円盤の中で重力不安定状態が生じ、巨大ガス惑星が急速に成長するもので、この不安定を起こす要因が何かなど議論の余地がある。多くの支持を集める理論は前者であり、以下ではこれを解説する。

 私たちの住んでいる銀河系だけでもおよそ2,000億個もの恒星が含まれている。宇宙にそれだけたくさんの恒星があるのならば、太陽系にあるような惑星があって、生命が育まれている惑星が他にもあると考えても不思議ではない。2008年までに330個以上もの系外惑星が発見されているが、まだ観測精度が十分でないので、海や植物が存在している惑星はまだ見つかっていない。私たちの太陽系はどのようにできたのか?どのような条件が揃えば太陽系のような惑星系が生まれるのか?そのような人類共通の疑問に答えるために、惑星のでき方について活発な研究が進んでいる。

 生まれてから100万年から1,000万年くらいの太陽は、ガスや塵(ちり)でできた円盤に囲まれていたと考えられている。この塵が集まって、惑星のもとである大きさ数km以上の微惑星に成長し、微惑星どうしが衝突し合体を繰り返すことで大きくなって原始惑星となり、さらに原始惑星同士が合体したり重力でまわりのガスや微惑星を集めたりして、ついには惑星と呼べる大きさにまで成長すると考えられている。惑星形成について大まかなシナリオはこのようにわかってきているものの、この理論には木星ができるまでの時間が円盤がなくなる時間よりも長いなどの問題があり、さらにくわしい研究が続けられている。(JAXA)


 原始惑星系円盤と原始惑星の形成
 超新星爆発で多くの元素が散らばった星間ガスが再び集まって恒星が形成される際、星団を作る程には濃くないと、恒星の周囲には余った物質が円盤状に集まって原始惑星系円盤を形成する例が発見されている。円盤の成分はほとんどが水素やヘリウムのガスだが、塵も含まれている。

 円盤の中で塵は重力のバランスから速く周回し、ガスに邪魔されて乱され衝突を繰り返しながら減速し、構成の方へ螺旋状に落ち込みながら衝突を繰り返す。そして段々と大きくなり大きさ数km単位の微惑星を経て、原始惑星へと成長する。この原始惑星の大きさはそれぞれの軌道上に集まった材料の量で決まり、これは軌道距離に依存する。原始惑星の質量は、恒星から1天文単位あたりでは地球質量の1/10程度、5天文単位あたりでは地球の4倍程度になる。


 雪境界線と巨大ガス惑星
 恒星が形成され活動が始まると、惑星系円盤の雪境界線部分のガスが薄くなる現象が起こる。雪境界線とは氷など低沸点の揮発性物質が昇華する温度になる領域で、太陽系では2-4天文単位あたりが相当する。この境界では揮発性物質が昇華と凝固双方の相転移が繰り返し、この現象が作用して周囲にあるガスの動きを不安定にさせ、結果的に領域からはじき飛ばしてしまう。すると希薄になったガスは速度を高め、ここに落ち込んできた原始惑星を加速され、領域の外側に留めるようになる。これらはやがて集積し、大きな天体を形成するようになる。

 雪境界線が集めた物質が木星になったと考えられるが、このような巨大ガス惑星は惑星系円盤に必ず生じるとは限らない。木星は塵が集まった天体がさらにガスを集積して形成されたと考えられるが、それにはガスがエネルギーを失い圧力が低い「冷えた」状態でなければ安定しない。余りに時間がかかり過ぎると、ガスが冷える前に恒星の活動や核になるべき岩石系天体の影響で失われてしまい、結果として巨大ガス惑星は形成されない事になる。この、ガスのエネルギーが奪われる「熱移送」がどのように起こったかについては明らかにされていない部分が多い。


 形づくられる惑星
 太陽系の場合、原始惑星や最初の巨大ガス惑星形成は、恒星の核融合開始から200万年後には行われたと考えられる。雪境界線内側では、多数生じた原始惑星がお互いの軌道を交差させながらぶれが生じ、やがて衝突を繰り返し岩石惑星(地球型惑星)へ集約したと考えられる。この衝突合体には、外側に生じた巨大ガス惑星が影響したという考えもあるが、あまり賛同を得られていない。地球型惑星は惑星系円盤のガスを集積したとは思われず、衝突や火山活動で内部から噴出させた物質から形成されたと考えられている。

 雪境界線外側では、最初の巨大ガス惑星が及ぼす重力によって、次の惑星が形成される。惑星の強大な重力は周囲にある物質の軌道を乱し、弾き出す。そうして軌道の外側に、物質が溜まるようになり、同じプロセスで次の天体を作り出す。これが連鎖し次々と惑星が形成されるが、それぞれの際にどれだけ物質が残されているかによって様相が変わる。太陽系では天王星や海王星が集積した時には惑星系円盤内のガスが乏しくなってしまい、巨大氷惑星として纏まらざるを得なかった。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:太陽系の形成と進化 国立天文台:アルマ望遠鏡が見つけた「惑星のへその緒」


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