バイオ燃料が大気汚染の原因に、人間の寿命に影響も?
 植物のつくる有機物や化学物質にはどんなものがあるのだろう?デンプンやセルロース以外にも様々な成分を作ることが知られている。その中には意外にも人類にとって不都合な成分も存在する。

 1月6日、環境に優しいとされる「バイオ燃料」の原料となる植物の栽培が、大気汚染につながる可能性があることが分かった。科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に6日、研究結果が掲載された。

 植物は成長の際に大気中の二酸化炭素を吸収するため、燃焼させても吸収した二酸化炭素が大気中に戻るだけで、環境に優しいとされている。

 同研究に携わった英ランカスター大学のニック・ヒューイット氏は、バイオ燃料の原料となる植物を育てることは、大気中の二酸化炭素の量を減少させる点で効果的だとされていたと述べる一方で、「バイオ燃料は大気の質に悪影響を与える可能性がある」と指摘した。

 研究によれば、バイオ燃料の原料となるポプラや柳、ユーカリの木は成長が早く、再生可能な木質燃料として使用されているが、成長の過程で「イソプレン」という化学物質を高いレベルで放出するという。イソプレンは太陽光の下で他の汚染物質と反応し、有害なオゾンを生成する。

 また研究では、欧州で大規模なバイオ燃料用の植物栽培が行われているとし、人間の寿命や農作物の収穫量に少なからず影響を与える可能性があると指摘した。( ロイター 2011年1月8日)


Isoprene

 イソプレンとは何か?
 イソプレン(isoprene)は構造式CH2=C(CH3)CH=CH2の、二重結合を2つ持つ炭化水素。ジエンの一種。IUPAC命名法では 2-メチル-1,3-ブタジエン (2-Methyl-1,3-butadiene) と表される。分子量 68.12、融点 −145.95 ℃、沸点 34.067 ℃。室温では揮発性の高い無色の液体で、ゴムもしくは都市ガス様の臭気を持つ。可燃性・引火性に富み、特に霧状で大気中に存在すると爆発の危険がある。CAS登録番号は [78-79-5]。

 産業のみならず生体物質としても有名ではあるが、場合によっては環境や人体に多大な影響を及ぼす恐れがある。

 イソプレンは天然ゴムのモノマーであり、イソプレノイドと総称される天然有機化合物類の共通構造モチーフでもある。イソプレノイドの分子式はイソプレンの倍数であり、(C5H8)nで表される(イソプレン則を参照)。生物システムにおける機能性イソプレン単位は、ジメチルアリル二リン酸 (DMAPP) および異性体のイソペンテニル二リン酸 (IDP) である。

 イソプレンは多くの種の木によって生産され、大気中に放出される(主な生産者はオーク、ポプラ、ユーカリ、一部のマメ科植物)。植生によるイソプレンの年間放出量は約600 Tgであり、半分は熱帯広葉樹、残りは低木由来である。

 これはメタン排出量とおよそ同等であり、大気中に放出される全炭化水素の1/3に相当する。放出後、イソプレンは(ヒドロキシルラジカルのような)フリーラジカルおよびより少ない程度のオゾンによって、アルデヒド、ヒドロペルオキシド、有機硝酸塩、エポキシドといった様々な分子種に変換され、これらは水滴と混じり合いエアロゾルや煙霧の形成を助ける。

 ほとんどの分野ではイソプレン放出はエアロゾル形成に影響を与えると認められているが、イソプレンがエアロゾルを増加させるか減少させるかについては論争がある。

 大気に対するイソプレンの二番目に主要な影響は、窒素酸化物 ((NOx)の存在下で対流圏オゾン(英語版)の形成に寄与することである。これは多くの国々における主要な大気汚染の一つである。

 イソプレン自身は、植物由来の天然物の一つであるため、通常は汚染物質とは見なされていない。対流圏オゾンの形成はほぼ例外なく工業活動から来る高レベルのNOx存在下でのみ可能である。実際に、イソプレンは低レベルのNOx下ではオゾン形成を抑えるという逆の効果を示す。(Wikipedia)


 光化学スモッグの原因にも?夏の日中に多いイソプレン
 地球上の多くの植物が大気中にイソプレンというガスを放出しており、その総量は年間400メガトン(1メガトンは100万トン)にものぼる。森の香りとして知られるピネンやリモネンと違って,濃いイソプレンは都市ガスとよく似た嫌なにおいを持っている(熱帯植物温室などへ行けば体験できる)。

 このイソプレンは大気中における光化学反応性が高く、最終的には温室効果気体である一酸化炭素やオゾンを生成すると共に、対流圏の酸化反応を全般的に支配しているOHラジカルを消費するため、地球環境に重大な影響を及ぼしている可能性が高い。北米大都市近郊の森林地域で観測される高濃度オゾンの一因になっているとの報告もある。

 このように重要な間接的効果をもつイソプレンの影響を定量的に評価するためには、放出量の実測、各種反応実験に加えて実際の大気中におけるイソプレンの変質過程を理解する必要がある。そのために、イソプレンとその初期の反応生成物(メチルビニルケトンとメタクロレイン)の濃度変動を調べたのが本論文の内容である。

 観測は国立環境研究所の松林にある大気モニター棟で、当時新しく開発した自動濃縮/キャピラリーガスクロマトグラフ-質量分析計を用いて行った。1991年の6月から12月までの間に1~3週間の連続測定を数回行って,約1800組のデータを得た。

 イソプレンもその反応生成物も日中濃度の方が夜間よりもずっと高くなっている。このことは、植物からのイソプレン放出と大気中の反応が共に日中盛んであることを示している。この日中の反応がOHラジカル反応であることも各化合物の相対比と反応性の比較から明らかにされた。

 夜間のデータについて見るとオゾンが残留している場合明らかに反応生成物/イソプレン比が大きくなっている。これは夜間にオゾンから生成されるNO3ラジカルとの反応を示唆するものであるが、この反応については実験データも不足しており今後の検討課題である。植物活動が衰える冬にはイソプレンの放出も減り、その濃度も下がるものと予想されたが、光化学反応が抑えられるためか、一日の最高濃度に大きな変化はなかった。

 ただし、昼夜の変動パターンは大きく変わって日中濃度の方が夜間よりも低くなる日が多くなった。論文ではこのような冬季の変動についてもその要因解析を行ったがここでは省く。

 上に述べたように夏期の日中にはイソプレンとその中間反応生成物がOHラジカルと急速に反応しそれに伴ってオゾンや一酸化炭素を生成するというシナリオがフィールド観測によって確認された。

 現在急速に進んでいる熱帯林の破壊は地球上のイソプレン発生量を大幅に減らすことになるが、そのことが将来対流圏大気に深刻な影響を及ぼすのか否かを判断するためにもイソプレンの動態解明を急ぐ必要がある。(横内陽子,化学環境部計測技術研究室)


参考HP 国立環境研究所:待機中のイソプレンとその反応生成物の季節変化と日変化 Wikipedia:イソプレン


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