「あかり」による大マゼラン雲の赤外線天体カタログ公開
 我々の銀河系にもっとも近い銀河はどこだろう?よくアンドロメダ銀河や、大小マゼラン雲が思い浮かぶが、実は2003年に発見されたおおいぬ座の矮小銀河が最も近い。次が1994年に発見された、いて座の矮小楕円銀河である。3番目が大マゼラン雲、5番目が小マゼラン雲である。

 ということは、4番目の銀河も我々の近くにあることになり、いったい、いくつ銀河系のまわりに銀河があるのかといえば、17個も発見されている。これらはすべて、銀河系の伴銀河で、銀河系を中心にして、そのまわりを惑星のように公転している…。思ったより銀河系はスケールが大きい。

 2006年2月に打ち上げられた日本初の赤外線天文衛星「あかり」は、翌2007年8月までに全天をくまなく観測する「全天サーベイ」を行った。これと平行して「あかり」はいくつかの領域を集中的に観測する「指向観測サーベイ」も行った。その一つ、大マゼラン雲の近・中間赤外線サーベイについては、これまでにもサーベイ初期成果(「銀河の生い立ちに迫る-大マゼラン星雲の赤外線画像-」、2006年11月1日)、超新星残骸の研究(「『あかり』が探る大マゼラン星雲の超新星残骸」2008年11月19日)などの成果を報告してきた。

 今回、この大マゼラン雲サーベイプロジェクトの集大成とも言うべき、大マゼラン雲の赤外線天体カタログとスペクトルカタログを世界中の研究者に公開した。このカタログは、東京大学の加藤大輔研究員(当時)、下西隆氏(当時大学院生、現在は神戸大学研究員)、尾中敬教授、および東北大学の板由房助教らの研究グループが中心となって作成したもの。


LMC

 宇宙の進化に重要なデータバンク
 「あかり」近・中間赤外線カメラを用いて、5つの赤外線波長(3, 7, 11, 15, 24マイクロメートル)で撮影した大マゼラン雲の約10平方度(満月およそ50個分)にも及ぶ画像データから、80万以上もの赤外線天体を検出し、それらのなかから信頼性の高いもの660286個の位置や明るさを測定してカタログにまとめた。そのうち1757天体については、波長2~5マイクロメートルの詳細な赤外線スペクトルも得られており、このデータも公開された。

 このカタログは、地上からの観測が困難な赤外線波長のデータを大マゼラン雲中の多くの天体についてもたらし、生まれたての星や、進化した星の研究に重要なデータとなることが期待される。点光源カタログはアメリカのスピッツァー宇宙望遠鏡によるカタログと匹敵する規模の天体を含み、特に波長11, 15マイクロメートルのデータは、「あかり」が提供する世界初めてのデータで、特に進化した星からの物質の供給の研究に重要な情報となっている。

 またスペクトルカタログは、この波長帯では世界初のデータで、天体中の分子ガスや、氷などの固体微粒子に関する情報をもたらし、大マゼラン雲中の天体の正確な分類を飛躍的に向上させることができる。

 すでにこのカタログを元にした詳細な研究により、生まれたての星の周りに存在する氷の性質が我々の銀河系とは異なることが明らかになってきている。

 氷は惑星の原材料の一部であり、惑星が生成する上で重要な役割を果たしていると考えられている。「あかり」カタログは、我々の銀河系以外の銀河での惑星系形成の研究を、大きく進展させるだろう。また、生まれたての星を無数にある通常の星の中から選び出すことは一般的に大変難しいことだが、「あかり」の3マイクロメートルのデータとスペクトルデータによって、正確な分類が可能となるため、星形成の研究にも強力な道具となる。

 一方、宇宙空間に物質を放出している進化した星についても、このカタログを用いることで放出量や進化段階を詳細に議論することができる。もちろん、これ以外にも様々な大マゼラン雲の研究に有効に活用されることだろう。


 大マゼラン雲とは何か?
 大マゼラン雲は我々の銀河系の伴銀河で、銀河系の端に位置する太陽系から16万光年(銀河系の直径は約10万光年)という近い距離にある若い銀河だ。銀河をほぼ真上から俯瞰することができるため、一つの銀河の中で星の誕生や進化がどこでどのように起きているか、またそれらの活動がどう関連し、物質が循環しているかを研究するには恰好の天体で、盛んに研究が行われている。

 南天にあるため残念ながら日本からは見えないが、1987年に大マゼラン雲に出現した超新星からのニュートリノを検出したことが、小柴昌俊東大名誉教授のノーベル賞受賞に繋がったことで、日本人にもなじみが深い。

 ビッグバンで生まれた宇宙には、初め水素とヘリウム(とごく微量のリチウム)しかなかった。今日のように、炭素や酸素、金属などの重元素が存在し、それによって作られた地球や我々人間が存在する宇宙になるまでに、どのような過程を経てきたのか?すなわち宇宙空間の中で、物質がどのように進化してきたかを知る事は、天文学の重要な研究テーマだ。大マゼラン雲は、この宇宙の物質進化を研究する上で、またとない恰好の研究対象なのである。

 赤外線天文衛星「あかり」は2006年2月に打ち上げられ、2011年11月に運用を終了しているが、そのデータを元にした分析研究は引き続き行われている。「あかり」による大マゼラン雲の近・中間赤外線サーベイについてはこれまでにもその成果が発表されてきたが、今回の発表はその集大成となるものだ。

本研究は、JAXA宇宙科学研究所と東京大学を中心とし、東北大学、国立天文台、神戸大学、名古屋大学、ソウル大学などの協力により行われた。この研究成果は科学研究費補助金のサポートを受けている 。また成果は論文に掲載されている。(JAXA)


 大・小マゼラン雲と銀河系
 大マゼラン雲 (Large Magellanic Cloud = LMC)は、かじき座からテーブルさん座にかけて位置する銀河である。Sm 型の棒渦巻銀河とされるが、Irr-I 型の不規則銀河に分類されることもある。小マゼラン雲とともに銀河系の伴銀河となっており、アンドロメダ銀河などとともに局部銀河群を構成している。

 南天にあるため、日本からは見ることができない。南半球では、かじき座とテーブルさん座にまたがるぼんやりとした雲のように見える。太陽系からおよそ16万光年(5万パーセク)の距離に位置し、質量は銀河系の10分の1程度、直径は銀河系の20分の1程度の矮小銀河であり、局部銀河群の中ではアンドロメダ銀河 (M31)・銀河系・さんかく座銀河 (M33) に次ぐ4番目に大きなメンバーである。

 大マゼラン雲には、局部銀河群の銀河の中でも最も活発なスターバースト領域である散光星雲のタランチュラ星雲 (NGC 2070) や、1987年に出現し、宇宙ニュートリノが検出された超新星 SN 1987Aが存在する。

 小マゼラン雲 (NGC292、Small Magellanic Cloud = SMC)は、きょしちょう座に位置する Sm 型の棒渦巻銀河。不規則銀河に分類されることもある。大マゼラン雲とともに銀河系の伴銀河となっており、アンドロメダ銀河などとともに局部銀河群を構成している。

 両銀河は、銀河系に接近するたびに強い潮汐力を受けている。両銀河は棒渦巻状の構造を持つが、潮汐力により大きく乱れている。一方、銀河系のディスクも、わずかに変形している。また、両銀河と銀河系の間に中性水素の帯であるマゼラニックストリームができている。これは、両者がすれ違ったためにできたのではないかと考えられている。

 両銀河の速度はハッブル宇宙望遠鏡により正確に測定され、480km/sと出ている。この速度は、両銀河が銀河系に重力的に束縛されていない可能性を示唆している。これが正しいなら、マゼラン雲の効果として説明されてきた現象は修正の必要がある。

 肉眼で容易に見えるので、南半球および北半球低緯度の人々には、原始時代から知られていたと思われる。ヨーロッパ人に知られるようになったのは、1519年から1522年のフェルディナンド・マゼランによる世界一周航海に参加したヴェネツィアのアントニオ・ピガフェッタが記録してからである。

 「マゼラン」の名が冠されるようになったのはかなり後のことである。1603年のヨハン・バイエルの『ウラノメトリア』では、「Nubecula Major(大雲)」・「Nubevula Minor(小雲)」 として載っていた。1795年のジョン・フラムスチードの星図には、「Le Grand Nuage」・「Le Petit Nuage」(同じ意味のフランス語)として載っていた。(Wikipedia)


参考HP  Wikipedia:近い銀河の一覧 JAXA:赤外線あかりによる、大マゼラン雲の天体カタログ世界に向けて公開


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