逆行する惑星系
 地球や太陽の自転や惑星の公転の向きはどちら向きだろう? 正解は左回り(反時計回り)である。これはどの惑星の自転や公転は同じで、みな反時計回りだ。

 例外として、金星と天王星の自転は、公転面に対してほぼ横倒しの状態で自転している。逆方向に公転している天体のほとんどは彗星で、これらは非常に離心率の大きな軌道を持っている。

 惑星が他の惑星と同じ方向に運動している状態を順行(prograde motion)。それに対して、順行と逆の方向に運動している状態を逆行(retrograde motion)という。天体の順行・逆行には、その天体の回転(公転・自転)方向自体の正逆に起因するものと、地球から天体を見た場合に起こる見かけの現象とがある。

 今回、国立天文台と東京大学の研究者を中心とする研究グループは、逆行惑星を持つ惑星系HAT-P-7に、これまで知られていなかった伴星(連星をなすもうひとつの恒星)と、もうひとつの別の長周期の巨大惑星が存在することを発見した。

 これは太陽系では考えられない現象だ。調査の結果この逆行惑星の近くには伴星や巨大惑星が存在することがわかった。複数の惑星は、お互いに重力的な影響を及ぼす。逆行惑星はまわりの天体の影響で、軌道の傾きを少しずつ変化させていったというシナリオが考えられる。


HAT-P-7

 逆行惑星の成り立ち
 国立天文台と東京大学の研究者を中心とする研究グループは、逆行惑星を持つ惑星系HAT-P-7に、これまで知られていなかった伴星(連星をなすもうひとつの恒星)と、もうひとつの別の長周期の巨大惑星が存在することを発見した。

 はくちょう座の方向1044光年かなたの恒星HAT-P-7は、2009年にすばる望遠鏡が世界で初めて逆行惑星を発見した天体だ。通常、惑星は主星の周りの円盤から形成されるため、惑星の公転方向は主星の自転方向(=円盤の回転方向)と一致するはずである。しかし、HAT-P-7の惑星HAT-P-7b(以下「惑星b」)は公転方向がその逆である「逆行惑星」で、どのようにして逆行軌道になってしまったのかはまだよくわかっていなかった。

 最近の理論研究によれば、惑星の公転軸方向が主星の自転軸方向と大きく異なると、惑星の公転軸は主星の自転軸に合わせて短時間で方向を変えてしまう。逆行軌道では、惑星の公転軸方向が主星の自転軸方向と真反対であるため、逆行軌道は長期間維持されないと考えられる。そのため、惑星が出来たばかりのころに逆行軌道になったとしても、なぜそのまま現在に至っているのかが説明できないのである。

 HAT-P-7bが逆行していることを最初に発見した国立天文台フェローの成田憲保さんらの研究グループでは、そのプロセスを明らかにするため、2009年からこの惑星系の撮像観測を行ってきた。その結果、中心星HAT-P-7と連星系をなす伴星HAT-P-7B(以下伴星B)が見つかり、さらに惑星bの外側かつ伴星Bより内側に巨大惑星HAT-P-7c(以下「惑星c」)があることも確認した。

 伴星や複数の惑星は、お互いに重力的な影響を及ぼす。伴星Bや惑星cが惑星bに対して古在機構(画像3枚目)という現象を引き起こして惑星bの軌道の傾きを少しずつ変化させ、主星の自転軸が惑星の公転軸に揃うのを阻み、惑星bの逆行に至ったというシナリオが考えられることが、今回の観測からわかった。

 この結果は、観測による明確な証拠によって逆行惑星の起源について示唆を与えた初めての結果となった。研究グループ代表の成田さんは「今回の結果は、一つの逆行惑星系の謎を解くだけでなく、他の逆行惑星や軌道の大きく傾いた惑星、軌道離心率の大きな惑星などがどのように形成されるかについても、直接撮像による外側の伴星の存在確認によって理解していく道を開いたものです」と語っている。(2013年1月25日 国立天文台)


 公転の逆行
 太陽系ではほとんどの天体が同じ方向で太陽の周囲を公転している。全ての惑星と大部分の小天体は、太陽の北極方向から見て反時計回りの軌道を持っている。逆行公転している天体のほとんどは彗星で、これらは非常に離心率の大きな軌道を持っている。

 同様に、惑星の衛星のうち半径が大きく母惑星に近い軌道を持つものはほとんどが母惑星の自転と同じ方向に公転しており、その方向が順行となっている。しかし木星型惑星には軌道傾斜角が大きく離心率の大きな軌道を公転する変わった小衛星が数多く存在する。これらの衛星は小惑星やエッジワース・カイパーベルト天体が惑星に捕らえられたものと考えられ、その多くが逆行軌道を持っている。

 2006年現在での捕捉天体と考えられる衛星の軌道の向きは、木星では逆行が48個に対し順行が7個、土星では逆行が18個に対して順行が8個、天王星では逆行が8個に対し順行が1個である。

 この種の衛星で最も大きいものの一つが土星の衛星フェーベである。海王星では状況は少し異なっている。海王星の衛星では、逆行軌道を持つが軌道要素自体は普通のトリトンのみが、エッジワース・カイパーベルトから捕捉されて現在まで残っている唯一の大きな衛星とみられている。トリトンより外側を公転し不規則な軌道を持つ衛星が6個あるが、これらは順行軌道と逆行軌道が半数ずつとなっている。これらの衛星のうちいくつかは捕捉天体ではなく元々海王星の衛星で、トリトンの捕捉によって軌道が乱されたものと考えられている。

 また、準惑星に分類された冥王星の衛星であるカロンも逆行軌道である。現在知られている中では、太陽系内ではカロンがトリトンについで大きな逆行衛星である。


 自転の逆行
 地球を含むほとんどの惑星は順方向に自転している。つまり、太陽の周囲を公転するのと同じ方向に自転している(言い換えれば、自転の北極と公転の北極が太陽の北極と同じ向きになっている)。

 例外は金星、天王星である。天王星は公転軌道に対してほぼ横倒しに自転している。これを赤道傾斜角と自転周期で表すと、傾斜角82°で自転周期-17時間の逆行自転をしている、もしくは傾斜角98°で周期+17時間の順行自転をしている、と表される。

 現在の推定では、天王星は元々は普通の赤道傾斜角を持ち順行自転をしていたものが、初期の段階で大規模な天体衝突によって自転軸が倒されたと考えられているため、後者の表現が用いられることが多い(なお、天王星の衛星の公転方向は天王星本体の自転に対する方向で表されるため、衛星の順行・逆行の記述は天王星の自転をどう表現するかにはよらない)。

 一方、逆行自転している金星の場合は赤道傾斜角は3°未満で、243日という非常にゆっくりとした自転周期を持つ。金星の場合は、地球と比べて自転軸が逆さになっていると考えるよりはゆっくりと逆行自転しているとした方が考えやすいことや、初期段階での大衝突によって自転軸にはほとんど影響を与えずに自転の方向のみが逆転したと考えられていることから、ほとんどの場合は(赤道傾斜角177°で自転周期+243日の順行自転ではなく)傾斜角3°で自転周期-243日の逆行自転をしていると表される。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:惑星の順行・逆行 国立天文台:すばる望遠鏡が解き明かす逆行惑星の成り立ち


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