ダークマターとは何か?
 ダークマター(dark matter )とは、宇宙にある星間物質のうち電磁相互作用をせずかつ色電荷も持たない、光学的には観測できないとされる仮説上の物質である。「暗黒物質」とも呼ばれる。"人間が見知ることが出来る物質とはほとんど反応しない"などともされており、そもそも本当に存在するのか、もし存在するとしたらどのような正体なのか、何で出来ているか、未だに確認されておらず、不明のままである。

 1986年に発見された宇宙の大規模構造が作られるまでの時間をシミュレートした結果、ビッグバン宇宙論から導き出されている137億年といった宇宙の年齢とはかけ離れた長い歳月を必要とすることが明らかになった。

 そのため、ビッグバン宇宙論が間違っていて修正が必要ではないかという見解が生まれたが、まもなく暗黒物質の存在を仮定すると、ビッグバン宇宙論と矛盾しない時間の範囲内でも、現在のような銀河集団の泡構造が出来上がることが明らかにされた。そこで、宇宙全体にどの程度の暗黒物質や暗黒エネルギーが必要なのか、繰り返しシミュレーションが行なわれている。その結果、ダークマターを含めた物質を約30%、ダークエネルギーを約70%にした場合にうまくいくことが確認されている。

 果たしてダークマターの正体は何だろうか?2003年から、宇宙背景放射を観測するWMAP衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきている。

 今回、ダークマターが一体何によって構成されているのか、実験で目に見えない物質をどのようにすれば検出できるのかに関するモデルが構築された。それによると、ダークマターは重力の伝達を担う未発見の粒子「グラビトン」の超対称性パートナーとされる「グラビティーノ」からできているという。


WMAP_2010

 ダークマターの正体を説明する画期的理論
 ダークマターは目に見えず直接観測することはできないが、目に見える物質に重力的な影響を及ぼしており、恒星や銀河の動きなどから間接的に検出することができる。ダークマターがないと、宇宙に存在する銀河などの天体はばらばらになってしまう。その存在割合は、宇宙に存在する物質の約80%もある。

 ノルウェー・オスロ大学の素粒子物理学のリーダー的存在であり、今回のモデルを発表した研究チームのAre Raklev准教授は、次のように話す。

 「宇宙にどれほどのダークマターが存在するのかを計算できても、ダークマターの実体についてはほとんど知られていません。ダークマターを構成する粒子は、粒子1個の質量が大きいか、あるいはひじょうに膨大な個数で存在するかのどちらかのはずです。ニュートリノは、ダークマターとしての必要条件の満たしますが、1つだけ厄介な点があります。質量がはるかに小さすぎるのです」。

 Raklevさんは、ダークマターがニュートリノである可能性を否定し、ダークマターがほぼグラビティーノから構成されていると断言している。物質と力の間に未知の対称性があるという「超対称性」仮説によると、電子やクォークなどすべての粒子には、それぞれに対応する重い粒子(超対称性パートナー)が存在すると考えられている。重力を伝達するとされる仮想粒子グラビトン(重力子)の超対称性パートナーが、ダークマター候補のグラビティーノだ。

 グラビトンはまったく質量を持たないが、一方でグラビティーノは相当質量を持つかもしれない。もし自然界が超対称であり、グラビトンが存在するならば、グラビティーノも存在することになる。Raklevさんは「超対称性は、すべてをシンプルにしてくれます。もし、“万物の理論”(自然界に存在する4つの力=電磁気力・弱い力・強い力・重力を統一的に記述する理論)が存在するならば、つまり4つの力を統一できれば、グラビティーノは存在するはずです」と話す。


 ダークマターの正体はグラビティーノ?
 Raklevさんはさらに次のように説明している。「ビッグバンからまもなく、宇宙は粒子が衝突し合うスープ状態にありました。強い力を媒介する粒子であるグルーオンは他のグルーオンに衝突して、グラビティーノを放出していたのです。つまり、多くのグラビティーノは、まだプラズマ状態にあったビッグバン後に作られた。これが、なぜグラビティーノが存在するのかという説明です」。

 しかしこれまで、永遠に存在できると考えられたグラビティーノは問題視されてきた。理論から導き出されるグラビティーノの数が多くなりすぎて、現実の宇宙の姿とは合わないと考えられたからだ。

 「そのため研究者は、理論からグラビティーノを取り除こうとしてきました。しかし反対に私たちは、グラビティーノから成るダークマターと超対称性モデルとを統一する、新しい説明を見つけたのです。ダークマターが安定ではないもののひじょうに長生きならば、どのようにしてダークマターがグラビティーノから構成されているかの説明がつくのです」。

 限りない永遠の命と、宇宙の寿命よりは長いが有限である150億年以上という(粒子の平均的な)寿命との間には、大きな違いがある。寿命が有限なら、グラビティーノはいつかは別の粒子に変化(崩壊)するはずだ。もしもその変化を正確に計測でとらえることができれば、その変化によってモデルの説明が可能になるという。

 「幸運なことに、グラビティーノは100%安定というわけではなく、ある時点で何か別のものに変化しているのです。グラビティーノが変化を起こした兆候として、ガンマ線のシグナルが見られることが予測されます」。

 現在、NASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」の広域望遠鏡でガンマ線計測が行われており、研究グループの1つが天の川銀河中心からわずかな余剰ガンマ線を観測しているという。Raklevさんは、これらの観測から自分たちのモデルと一致する観測結果がもたらされるかもしれないと期待を寄せている。(2013年1月30日 Apollon)


 グラビティーノと超対象性理論
 グラビティーノ(gravitino)とは、超対称性理論(素粒子物理学)から導かれる未知の超対称性粒子。重力を媒介する粒子グラビトンの超対称性パートナーであり、スピン3/2をもつフェルミ粒子。グラビトン、グラビティーノともに未発見である。

 現在素粒子物理学では、場の量子論を基礎とする標準模型が理論的にも実験的にも確かめられている。 一般に場の量子論の計算では、様々な箇所に発散が現れるという問題があるが、この問題は朝永振一郎らの繰り込み理論である程度解決可能されている。 この繰り込み理論と関連して、標準模型においては、ヒッグス機構による電弱対称性の自発的破れの大きさを観測事実と合わせるために、理論のパラメーターを非常に精密に調整する必要がある。 この問題は、プランクスケール(1019GeV)と電弱対称性が破れるスケール(102GeV)の間に大きな隔たりがあることに起因しており、階層性問題と呼ばれている。

 この問題に対する解決策の一つとして導入されたのが超対称性である。 超対称性の存在は、現在までに知られている標準模型の粒子たちに超対称性パートナーが存在することを予言する。例えば、電子に対してスカラー電子と呼ばれるスピン0で電荷-1を持つ粒子の存在が予言されるが、そのような粒子は観測されていない。 このため、我々が住んでいる世界の真空では、超対称性が自発的に破れていると考える必要がある。

 この超対称性の破れ(en:Supersymmetry breaking)を起こす機構はいくつか提唱されているが未だ実験的確証は得られていない。超対称性粒子は未だ発見されておらず、世界中の加速器で発見するための実験が進んでいる。


 グラビトンとは何か?
 グラビトンとは、重力子(Graviton)ともいう。素粒子物理学における四つの力のうちの重力相互作用を伝達する役目を担わせるために導入される仮説上の素粒子である。2011年までのところ未発見である。 アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論より導かれる重力波を媒介する粒子として提唱されたものである。スピン2、質量0、電荷0、寿命無限大のボース粒子であると予想され、力を媒介するゲージ粒子である。

 一般に質量の定義には慣性質量と重力質量の2種類がある。

 慣性質量(inertial mass) mi はニュートンの運動方程式で定義される量で、物体に働く力 F と加速度 a の比として次の様に表される。 「F=mi・a」

 これは実際に実験を行い、物体をある力で引っ張ったときの加速度を調べ、比例係数を計算することで求められる。慣性質量は物体の動きにくさ(あるいは止まりにくさ)を表す値であるといえる。

 重力質量(gravitational mass)mg は、ニュートンの万有引力の法則において現れる質量で、万有引力を起こす質量のことである。地球との間に生じるものについて言えば、物質物体に働く地球の引力 Fg、地球の重力質量 Me、地球と物質の重心間の距離 r、重力定数 G を用いて次の様に表される。 「Fg=GMe・mg/r2」

これは体重計などで計ることができる、直感的にイメージする「重さ」を生じさせる質量である。

 両者は全く別の定義であるが、これらは同一の値を取る。この経験則を等価原理といい、エトヴェシュ・ロラーンドなどが行った実験により高い精度で示されている。落体の法則や振り子の等時性といった法則は、この原理のために成り立っている。だが、なぜ慣性質量と重力質量が同じ値をとるのかという理由は、現在でも判っていない。

 慣性質量が生じる仕組みについては、ヒッグス粒子によるヒッグス機構が唱えられている。昨年、ヒッグス粒子の存在が確認されたのは記憶に新しい。

 一方、重力質量が生じる仕組みがグラビトン(重力子である)。重力子交換により、重力質量が発生すると考えられている。重力子はまだ発見されていない。(参考:Wikipedia)


参考HP Wikipedia:質量 万有引力 超対称性 ダークマター Astro Arts:ダークマターの正体を説明する画期的理論


対称性から見た物質・素粒子・宇宙―鏡の不思議から超対称性理論へ (ブルーバックス)
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講談社
対称性とはなにか 自然・宇宙のしくみを対称性の破れによって理解する (サイエンス・アイ新書)
クリエーター情報なし
ソフトバンククリエイティブ

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