フランケンシュタイン博士
 映画「フランケンシュタイン」は、1931年、アメリカのユニバーサル映画が製作したホラー映画。メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」の映画化作品である。小説の方は1818年3月11日に出版されている。世界的に大ヒットし、ホラー映画史上不朽の名作として伝説的な作品となった。ストーリーは次の通り。

 「若き科学者ヘンリー・フランケンシュタインは、生命創造の研究に没頭していた。助手のフリッツと共に墓地から盗み出した死体を接合し、雷光の高圧電流を浴びせ新たな人間を創造するという実験を行う。だが、その肉体には犯罪者の脳が埋め込まれてしまったため、凶暴な怪物が誕生してしまった。怪物は研究室から脱走し、村で無差別に殺人を犯す。怒れる村人たちに風車小屋に追い詰められた怪物は、燃え盛る小屋諸共崩れ去った…」

 人の肉体は、脳や血管、心臓、臓器をつなぎ合わせれば、蘇ることも可能…いわゆる科学万能主義を戒めるかのようなストーリーである。1930年代には、まだ人体実験が行われていた。第二次世界大戦中、ナチスドイツが強制収容所において行った、回復の望めない人体実験は有名である。

 1938年のノーベル生理学・医学賞は、心臓や血管などの循環器系の研究に贈られた。受賞理由は「呼吸調節における静脈洞と大動脈機構の演ずる役割の発見」。受賞したのはベルギーの生理学者、コルネイユ・ハイマンスである。

 ハイマンスは、私たちが無意識に酸素不足をセンサーで探知し、呼吸量を調節するしくみがあるのを発見した。ハイマンスは、呼吸調節の仕組みを、動物実験で繰り返し確かめつきとめたと考えられる。

 問題はそのやり方である。彼の動物実験は凄かった。胴体からほぼ完全に切り離した犬の頭部を生かしておくために、別の頭のない犬の胴体の動脈から血液を送る。その犬の胴体を生かしておくには人口心肺装置が用いられた。教授の「血圧研究」の一部として行われた実験である。


 さらにハイマンスはこの実験動物の写真を自分の研究室の壁に貼っていたという。ハイマンスの同僚の学者たちはこの成果に熱狂、彼を1938年のノーベル賞に推薦した。

  確かに犬を生かすためには血液や呼吸の維持が必要であり、犬の首をすげ替えることは、新しい発見があったに違いない。しかし、もっと別の方法があったのではにだろうか?私にはちょっと理解できない。この逸話を聞いて、当時はやっていた映画、「フランケンシュタイン」を思い出した。フランケンシュタイン博士は、彼のような人のことをいうのかもしれない。


 コルネイユ・ハイマンス
 コルネイユ・ハイマンス(Corneille Jean François Heymans、1892年3月28日~1968年7月18日)はベルギーの生理学者。

 1938年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。受賞理由は「呼吸調節における静脈洞と大動脈機構の演ずる役割の発見」である。血圧や血液中の酸素の含量が体の各部でどのように認識され、大脳に情報が届けられるのかということを示した。

 ハイマンスは、フランデレン地域のヘントに生まれた。父親のジーン・ハイマンスの後を継ぎ、ベルギーのヘント大学の薬理学の教授となった。1929年に、博士号を持つバース・メイと結婚し、4人の子供に恵まれた。

 1939年、彼はclimiteaと診断され、科学界から引退した。月の北方75.3° N, 144.1° Wの位置にあるクレーター「ハイマンス」は、彼の名前にちなんだものである。

 インターネットを調べて、ショックを受けたのは彼の造った実験動物の写真である。胴体からほぼ完全に切り離した犬の頭部を生かしておくために、      別の頭のない犬の胴体の動脈から血液を送る。その犬の胴体を生かしておくには人口心肺装置が用いられる。教授の「血圧研究」の一部として行われた実験である。ハイマンス教授はこの写真を自分の研究室の壁に貼っていた。

 ハイマンス博士の同僚の学者たちはこの成果に熱狂、彼を1938年のノーベル賞に推薦したという。ちょっと現代の私たちの感覚では理解できない。 しかし英国の外科医で、医学誌研究者でもあるM・ベドウ・ベイリー博士は、この実験にやや冷たい論評を加えている。

 「このような方法で得られた結果を人間に応用できると考えるのはまったくの愚か者だけである。論理的に堕落しきった科学者でなければこんな実験を思いつき、実行に移すことはできない。たとえハイマンスが犬を使って30年間も実験して得た結果が正しいと証明されたとしても、人間の高血圧の理解をほんの少しでも先へすすめたとは言えないであろう」

 ちょっと厳しい評価だが、当時は動物実験に関する、倫理的な規定が存在しなかった。実験方法を公にするために実験動物の写真が必要だったのかもしれないが、一匹の犬の首に別の犬の首をつけることに何か科学的な意味があるのだろうか?現代では動物虐待になるであろう。問題点もあったが、ハイマンス博士の業績が、素晴らしいことは認めたい。


 反射性循環調節
 私たちの血液循環を調節する機構には血圧反射という仕組みがある。これは血圧を安定させるのに重要な役割を持っており、血圧が上がると動脈の壁の中にある圧受容体という自律神経の終末で出来ている“血圧センサー”が血圧上昇を血管の壁のひずみとしてとらえて、その情報を電気信号に変えて脳へ伝え、脳の基部にある心臓血管運動中枢といわれる神経細胞群と脊髄や脳の基部から出る自律神経とが心臓と血管に作用して血圧を元に戻すというもの。大動脈神経はこうした血圧の情報を脳へ運ぶ自律神経のひとつである。

 動脈圧受容器反射: 私たちの頸動脈洞・大動脈弓に血圧を感受する圧受容器があり、それぞれ舌咽神経・迷走神経を経て、圧情報を延髄の血管運動中枢に送り、反射的に血圧の変動を修正するしくみがある。瞬時の血圧変化に対して最も強力な調節作用を持つ。

 心肺圧受容器反射: 大静脈・心房・心室・肺動静脈にある低圧系の圧受容器で、静脈還流量の変化を感受して、特に腎臓の交感神経に強い影響を与える。心肺圧受容器が刺激を受けると、交感神経活動の抑制・バゾプレッシン分泌の抑制・レニン分泌の抑制がおこる。一言でいえば、血液量の変化を感受してその強く関与している。

 Bezold-Jarisch反射: 心臓の化学受容器反射で、冠動脈内にニコチンやベラトラムアルカロイドを注入すると交感神経の抑制・迷走神経の興奮が起こる。心筋虚血時の徐脈・低血圧に一部関与している。

 化学受容器反射: 頚動脈体・大動脈体に化学受容器があり、酸素分圧の低下・pHの低下・炭酸ガス分圧の上昇を感受して交感神経興奮と徐脈を来たす。同時に呼吸促進を来たし、その結果、肺の伸展受容器が刺激を受けると頻脈が起こるといわれている。


 動物実験について
 動物実験は、広くは動物を使う実験一般をさすが、普通はヒトに対して危険が生じる可能性のある化学物質や機器を、ヒトに適用する前にまず動物に対してこれを用いて実験することを意味する。

 医療技術、薬品、化粧品や食品添加物の他に、あらゆる物質の安全性や有効性、操作の危険性を研究するために行う。やむを得ず人体実験(臨床試験)を実施せざるを得ない場合に、その実験を科学的かつ倫理的に適正に実施するため、事前に科学的知見を収集するために行われるのが動物実験である。

 動物実験は、主に医学の発展のために、一部は公衆衛生に貢献するために、必要なものとしてやむを得ず実施するものである。その必要性はヒトを対象とする医学研究の倫理的原則、すなわちヘルシンキ宣言に明確に示されている。

 「人間を対象とする医学研究は、科学的文献の十分な知識、関連性のある他の情報源および十分な実験、ならびに適切な場合には動物実験に基づき、一般的に受け入れられた科学的原則に従わなければならない。研究に使用される動物の福祉は尊重されなければならない」—ヘルシンキ宣言 B章第12条(日本医師会ウェブサイトより)

 かつて、非倫理的な人体実験が行われた時代を反省して、人体実験をする以前には十分な科学的知見を得ておかなければならないことを、この宣言は謳っている。(Wikipedia)


 実験動物について
 実験動物はヒトに近い方が良質なデータを得られる可能性が高いと考えられるので、主に哺乳類が用いられる。大型動物としてサル、イヌ、ミニブタなどが、小型動物としてラットやマウス、モルモット、ウサギなどが用いられる。 ただし、生物学的に(進化論的に)見て「ラットよりサルの方がヒトに近い」ということをもって、「サルのほうがラットよりも良質なデータが得られる」とは一概には言い切れない。目的に応じた適切な動物種を用いることが必要とされ、さらにその”適切さ”が必ずしも既知ではない事に留意が必要である。前節との問題とも直結するが、サリドマイドの崔奇性はヒトとヒツジにしか現れないことが、薬害事件の後明らかになっている。

 日本では過去にイヌ・ネコに関しては、保健所へ持ち込まれたペットのイヌ・ネコや、捕獲(駆除)されたイヌの一部が全国の自治体で動物実験用に払い下げられていた。しかし、東京都を皮切りに払い下げ廃止を決定する自治体が続き、2006年(平成18年)度をもって、全国的にそのような制度は終結している。現在は、実験結果の信頼性や再現性、安定した個体数確保を目的として最初から実験用として繁殖させた動物(実験動物)を用いることが常識となっている。

 このうち、マウスやラットといったげっ歯類に関しては、実験用途としてのビジネス化がひときわ進んでおり、微生物学的なコントロールにより清浄度を高めたSPF動物や、特定の疾病を発症する疾患モデル動物や無毛(ヌードマウスなど)のもの、さらには特定の遺伝子を組み換えたり(トランスジェニック動物)、欠損(ノックアウト動物)させたりした遺伝子改変動物が生産されている。

 3Rは動物実験の基準についての理念で、「Replacement(代替)」「Reduction(削減)」「Refinement(改善)」の3つを表し、1959年にイギリスの研究者(Russell and Burch)により提唱された。
Replacement(代替):意識・感覚のない低位の動物種、in vitro(試験管内実験)への代替、重複実験の排除
Reduction(削減):使用動物数の削減、科学的に必要な最少の動物数使用
Refinement(改善):苦痛軽減、安楽死措置、飼育環境改善など

 3Rの理念により動物実験(個々の動物の生涯)をどこで終了させるかは重要な課題となっている。現在では実験を継続しても得られる知見より、動物への苦痛が大きいと判断された場合は原則的に動物を安楽死させる。安楽死は法律に沿って行い、できる限り処分動物に苦痛を与えない方法を用いなければならない。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:コルネイユ・ハイマンス 動物実験 動物実験について:現代の蛮行


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