発展する自動車安全技術
 交通事故死傷者数は、2009年に5,000人を切るなど、年々減少しつつあるが、それでも毎日10人以上の尊い命が犠牲になっており、交通事故情勢は依然として厳しいものがある。

 これに対して、最近の自動車安全技術も発達している。シートベルトやABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やエアバッグだけではない。プリクラッシュセーフティシステム(衝突回避技術:PCS)、アダプティブクルーズコントロール(車速維持・車両追随システム:ACC)などが実用化されている。

 プリクラッシュセーフティシステムは、最近のスバル自動車のCM「アイサイト」でお馴染みになった。衝突しそうになったら自動的にブレーキがはたらくシステムだ。アダプティブクルーズコントロールは、アクセルを踏まずに自動的に定速度で走るシステムに、前を走行する自動車との車間距離を一定に保つシステムを組み合わせたものである。

 今回、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、自動運転で大型トラック4台の車間距離を4メートルに保ったまま、時速80キロメートルのスピードで隊列走行させることに成功した。後続車の空気抵抗を少なくできるので、将来的には15%以上の省エネ効果が期待されるという。この技術は、コーペレイティブアダプティブクルーズコントロール(CACC)という。


 車間距離を短くして隊列走行することにより、先頭車と最後尾車の間に挟まれた中間車両は空気抵抗が低減するため燃費が向上する。先頭車両は単独で走る場合と変わらないか牽引するためにやや悪化する。

 最後尾車も後方に気流などの関係で引っ張られるので中間車両ほど燃費は上がらないが、もちろん先頭車両ほどではない。 しかし、3~4台の隊列で走行する形で、その3~4台を平均すると燃費が向上し、4mの間隔で走れば、15%の燃費向上(積載条件や気象条件、路面状況などによってもちろん変化する)するという。

 また、4mという車間を詰めた状態で走れるので、現状の道路幅員を維持したまま交通容量を増大(単位道路距離あたりの走行台数が増加)でき、交通流の円滑化効果も期待される。 これらの技術は、センサーやカメラで認識した情報をもとに、アクセルとブレーキを自動制御するシステムだが、ハンドル操作は自動化されていない。


 CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)
 自動運転で大型トラック4台の車間距離を4メートルに保ったまま、時速80キロメートルのスピードで隊列走行させることに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が成功し、茨城県つくば市にある産業技術総合研究所つくばセンターのテストコースで公開した。後続車の空気抵抗を少なくできるので、将来的には15%以上の省エネ効果が期待されるという。

 自動車交通分野でのエネルギー・環境対策として、NEDOが2008年度に「エネルギーITS(高度道路交通システム)推進プロジェクト」(2012年度までの5カ年間、総予算約44億円)を立ち上げ、交通渋滞に伴う損失や環境負荷の低減、物流コストの大幅縮減などを狙いに、大学や自動車メーカー、研究機関などが協力して技術開発(CACC)に取り組んできた。

 トラックにはカメラやレーダー、GPS(衛星利用測位システム)、センサー機能を取り付け、コンピュータ制御によって、道路端の白線を認識して走行し、車・車間通信を行って車間距離を維持したまま隊列走行する。さらに障害物を検出した場合には、レーンチェンジや非常ブレーキ制御をかけ、道路が分・合流する場合や、降雪や悪天候時に白線が認識できない場合には、先行車を認識して追従走行もできる。走行中に運転者は、監視以外に特にすることもなく、ハンドルやアクセルも操作しない。

 今回開発の技術(CACC)によって、現状の道路の幅員を維持したまま交通容量(走行台数)を増やすことができ、いっそうの交通流の円滑化が図れる。さらに各種の運転支援システムの高度化にも転用できるので、高齢化社会における“安全で環境に優しいモビリティ”の確保にも貢献できると述べている。(サイエンスポータル 2013年2月27日)


 大型トラックの自動運転・隊列走行の技術要素
 今回、大型車・小型車混在で操舵制御と速度(車間)制御を行う自動運転・隊列走行の実験に成功した。この技術は、通常時は道路の白線を認識・基準に走行するが、分合流部、降雪などの悪天候時などの白線認識不可時は前方車を追従する。また、衝突回避の自動制御を行う。具体的な要素技術は下記の通りである。

1.隊列形成(個々の車両の位置を認識して隊列を形成し管理する技術)

2.車線保持制御(道路端の白線を認識して操舵を制御する技術)

3.車間距離維持制御(車車間通信と車間距離検出によって車間距離を制御する技術)

4. 障害物との衝突回避制御(障害物を検出し、レーンチェンジや非常ブレーキ制御を行う技術)

5.先頭車追尾制御(分合流部、降雪や悪天候時などの白線認識不可時に先行車を認識し追従する技術)

 車間距離を短くして隊列走行することにより空気抵抗の低減と、現状の道路幅員を維持したまま交通容量を増大(単位道路距離あたりの走行台数が増加)でき、交通流の円滑化効果が期待される。

 さらに、本プロジェクトで開発した自動操舵システムや車車間通信を用いた車間距離制御システム等は、各種の運転支援システムの高度化にも転用可能であり、高齢化社会における安全で環境に優しいモビリティ確保に貢献する。(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 2013年2月25日)


参考HP 新エネルギー・産業技術総合開発機構:大型トラックの自動運転隊列走行


自動車の安全技術 (自動車技術シリーズ)
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自動車が進化する―未来のクルマに込められた安全・環境・エネルギー技術 (人と技術のスケッチブック)
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