エイズ母子感染の乳児、事実上初の治癒
 AIDSは、日本語で後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことである。一般にエイズ(AIDS)の略称で知られている。性行為感染症の一つ。

 AIDSは完治することの難しい不治の病として恐れられている。それでも現在では、HIV感染と診断されても、適切な治療を受ければ通常の寿命を全うすることが十分可能となっている。

 現在、抗HIV薬は様々なものが開発され、著しい発展を遂げてきている。基本的に多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:HAART療法)にて治療は行われる。ただ完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要がある。

 ところが今回、米医療チームが3月3日、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を持って生まれた乳児の治癒に初めて成功したと米ジョージア(Georgia)州アトランタ(Atlanta)で開催された第20回レトロウイルスと日和見感染症会議(Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections、CROI)で発表した。


 HIV感染新生児の治癒に成功したのは米ジョンズ・ホプキンス小児センター(Johns Hopkins Children's Center)のチーム。新生児への抗レトロウイルス薬投与を生後30時間以内から開始したという。新生児のウイルス数は徐々に減り、生後29日で検出されなくなった。1歳6か月まで抗レトロウイルス薬を使った治療を継続した後、投与を中止。その10か月後に複数の血液検査を行ったところ、いずれの検査でも陽性の結果は出なかった。

 通常、新生児への抗レトロウイルス薬投与は、生後6週間から実施可能な血液検査でHIV陽性の結果が出るまでは少量にとどめる。

 これによりHIVを持って生まれた乳児たちへの治療向上が期待されるが、チームは「完治」ではなく、あくまでも「機能的な治癒」としている。ウイルスが完全に撲滅できたわけではないからだが、この治療法でウイルスレベルは通常の薬剤治療を行う必要がない程度まで下がるという。

 ジョンズ・ホプキンス小児センターのデボラ・パサード(Deborah Persaud)氏は、新生児に早い段階で抗ウイルス療法を行うことで、体内からウイルスが除去され、潜伏しているウイルスの活動を防ぐことができると説明した。(AFPBB News 2013年3月4日)


 HIVのタンパク質改変でウイルス増殖を抑制、豪研究
 どうやら、今回の抗ウイルス療法、乳児に対する治療効果はあったが、大人にはあてはまらないようだ。

 一方、オーストラリアのクイーンズランド医学研究所(Queensland Institute of Medical Research)のDavid Harrich氏は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のタンパク質を変異させ、免疫細胞内での増殖を止める物質に変える方法を発見したと、オーストラリアの科学者が16日、発表した。HIVが引き起こす後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)の治療法確立に向けた重要な前進だ。

 David Harrich氏は、ウイルス増殖を助ける働きを持つHIV内のタンパク質を、非常に強力な阻害物質に改変。HIVの攻撃対象である免疫細胞に導入したところ、感染後のウイルス増殖速度を抑えることに成功したという。

 実験結果は、科学誌ヒューマン・ジーン・セラピー(Human Gene Therapy)に掲載されている。今回の実験は培養皿の上で行われた。人間を対象とした臨床試験を行うためには、今年中に始まる予定の動物実験の結果を待つ必要がある。

 Harrich氏によると、「ナルベーシック(Nullbasic)」と名付けられたこの改変タンパク質により、一部の細胞ではウイルス増殖が通常の8~10倍も抑えられたという。

 国連(UN)によると、HIVに感染した場合、何も治療をしなければ10~15年でエイズを発症することが多い。抗レトロウイルス剤を服用することで、潜伏期間を伸ばすことができる。

 1種類のタンパク質のみに基づいた治療法が確立されれば、HIV感染患者は多剤併用療法に終止符を打ち、生活の質を高め、治療費を抑えることができるかもしれない。

 だがHIV研究者の中には、ナルベーシックを使った新薬開発の実現は程遠く、すべてが計画通りに進んだとしても、ナルベーシックを使った治療の開始には10年はかかるのではないかとする者もある。(AFP 2013年1月17日)


 AIDS(後天性免疫不全症候群)とHAART療法とは何か?
 後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん、Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことである。一般にエイズ(AIDS)の略称で知られている。性行為感染症の一つ。

 現在、抗HIV薬は様々なものが開発され、著しい発展を遂げてきている。基本的に多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:HAART療法)にて治療は行われる。ただ完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要がある。

 それでも現在では、HIV感染と診断されても、適切な治療を受ければ通常の寿命を全うすることが十分可能となっている。

 HAART療法は、安定期まで持っていければ、ほとんどAIDSで死亡することはなくなった。ガイドラインで用いられているデータも、10年生存率まで記載されており、おそらく平均余命まで行くであろうというのが、大方の予想である(HIVの発見が1981年ということを考えると、ここまでデータがあれば十分である)。

 現在のHIV療法である多剤併用療法は、決して根治的な療法ではなく、血中のウイルス量が検出限界以下となっても、依然としてリンパ節や、中枢神経系などにウイルスが駆逐されずに残存(Latent Reservoir)していることが知られており、服薬を中止すると直ちにウイルスのリバウンドが起こってくる等の問題がある。基本的にHAART療法は、一生継続しなければならない。

 有名な副作用としては、開始直後から出現し徐々に軽快する胃腸障害や精神障害、開始後1 - 3週で一過性に生じる皮疹、開始後1カ月以上経過してから生じ、持続する高脂血症、リポアトロフィー(脂肪分布の変化)、糖代謝異常(高脂血症と併せて年間30%リスクで虚血性心疾患のリスクが高まる、かつ、PIとNNRTIはスタチン系と併用禁忌)、末梢神経障害、まれだが重篤な乳酸アシドーシス(NRTIにてミトコンドリアDNA合成を阻害するため)などが知られている。


 HAART療法ではなぜ多剤併用するか?
 以前は1~2剤の内服治療が主流だったが、すぐにウイルスが耐性を獲得してしまい薬が効かなくなってしまうことが問題だった。そこで抗HIV薬を3~4剤同時に内服する「強力な抗ウイルス療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:HAART)」が主流となった。最近では、必ず3~4剤併用する治療法が行われるため、HAARTを略してARTと言われるようになってきている。

 抗HIV薬は大きく下記5つに大別されます。すなわち、1.核酸系逆転写酵素阻害剤 2.非核酸系逆転写酵素阻害剤 3.プロテアーゼ阻害剤 4.インテグラーゼ阻害剤 5.侵入阻害薬

 1996年にHAARTが開発されてからは、HIV感染患者さんの予後は飛躍的に改善してきている。しかし、抗HIV薬はHIVを体内から完全に排除できる薬ではない。よって抗HIV薬は、開始したら一生飲み続けていくことになる。

 抗HIV薬を中途半端に内服してしまうと、薬が効かなくなってしまう問題がある。ウイルスが薬に対し耐性を獲得してしまうためだ。ちなみに、内服10回のうち1~2回飲み忘れてしまうだけで患者さん2人に1人は治療に失敗してしまう。

 ウイルスが耐性を獲得するということは、使える薬の選択肢が狭まるということ。すなわち中途半端な内服は、今後何十年とウイルスを抑えつける武器を自ら捨てているのと同じことになる。

 きちんと内服していくには「アドヒアランス」が不可欠である。アドヒアランスは、患者さんが積極的に治療方針に参加し、自らの意思に従って治療を実行(内服)し、それを続けていく姿勢を表した用語。

 自分のライフスタイルを確認し、内服できる状況や環境を探していくことで、内服を生活の中に取り込んでいく。内服を忘れないために、 携帯電話のアラーム機能などを利用して、内服忘れを予防していこう。


参考HP Wikipedia:後天性免疫不全症候群 


医療マリファナの奇跡―アメリカで広がるがん・エイズ先端治療を追う
クリエーター情報なし
亜紀書房
最新医学別冊新しい診断と治療のABC65/免疫5 HIV感染症とAIDS
クリエーター情報なし
最新医学社

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ ←One Click please