火星に巨大洪水の痕跡
 火星に水が存在し、巨大洪水が起きていた証拠が、周回衛星のレーダーによって見つかった。驚くほど最近に起きたこの洪水によって、火星に長さ966キロにわたる水路が形成されたとみられる。

 この「マルテ谷(Marte Vallis)」の水路系の存在は以前から知られていた。しかし、新たなレーダー調査の結果、この大規模な水路は従来考えられていた2倍の深さがあることが判明し、さらに水の出所と氾濫原が特定された。それらが火山噴火の溶岩に埋もれたのは、わずか5億年前のことだ。

 この巨大洪水と火山活動は地質学的にはごく最近に起こったものであり、火星が今なお地質学的に活発な惑星である可能性を示唆することから、特に重要性が高いと考えられる。

 ここ10年ほどの間に新たな事実が次々と明らかになる以前、火星は寒くて乾燥した、地質学的には30億年以上前にほぼ活動を停止した惑星だと考えられていた。

 「この巨大洪水は、地下深くにある水が地殻変動による亀裂を通じて地表に出てきたために発生したことを突き止めた」と、今回の研究の共著者であるスミソニアン国立航空宇宙博物館(NASM)のガレス・モーガン(Gareth Morgan)氏は述べている。「これまで水の出所と流出規模は謎だったが、レーダーによって溶岩流の下まで見通し、そこに以前は何があったのかを調べることができた」。


 地球にも発生していた大洪水
 マルテ谷の洪水の規模は、1万5000年ほど前に米太平洋岸北西部で起こったミズーラ洪水に近いとモーガン氏はみている。ミズーラ洪水では、当時存在した氷河湖ミズーラ湖の氷のダムが決壊し、あふれた水が西へ流れて現在のワシントン州とオレゴン州の広いエリアを浸水させた。洪水のため、幅322キロの湖は48時間で水が枯れたと考えられている。

 ミズーラ洪水(何度も発生した)の場合も、火星のマルテ谷の巨大洪水(ミズーラに比べて発生頻度ははるかに低いとみられる)の場合も、水の威力によって固まった溶岩や玄武岩に深い水路が掘られた。

 モーガン氏のほか、NASAのゴダード宇宙飛行センターやジェット推進研究所(JPL)、サウスウェスト研究所(SwRI)の研究者が参加した今回の研究は、NASAの火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタに搭載された浅部レーダー「SHARAD」(Shallow Subsurface Radar)のデータを数年がかりで分析した結果に基づいている。

 レーダーはこれまで主に火星の両極の調査に用いられており、最近になってようやく赤道付近のエリシウム平原など他の地域にも目を向けられるようになった。マルテ谷はこのエリシウム平原にある。

 火星に存在するこれらの深い水路は、およそ37億~31億年前に形成された。長さは966キロかそれ以上、幅は約97キロと推定される。水路の特徴を分析した結果、水流の深さは従来推定されていた40メートルよりも深く、80メートルかそれ以上あったと研究チームは結論づけている。


 画期的な発見
 今回の発見は、火星に水の痕跡を見出すという近年の画期的な研究成果につらなるものだ。深い水路だけでなく、これまでにも液体の水が流れてできたとみられ、しかも今なお成長している可能性のある“溝”や、火星の暖かい時期に塩水がクレーターの壁面を流れ落ちたとみられる痕跡などが見つかっている。

 「火星は現在、非常に寒く乾燥していることは確かだが、それでも今なお活動していて、死んでなどいない」とモーガン氏は言う。「火星の表面下には膨大な量の氷があり、この氷と地表との関係についてはまだ詳しいことがわかっていない」。

 しかし今回のマルテ谷の発見により、火星の地下水が岩石の割れ目を通って地表に出てくる可能性があり、実際、比較的近い過去にそのような現象が起きていたことが明らかになったとモーガン氏は述べる。そして将来、同様の現象によって再び巨大洪水が起きる可能性もゼロではない。

 今回の研究成果は、3月7日付で「Science」誌オンライン版に発表された。(Marc Kaufman for National Geographic News March 8, 2013)


 予備のコンピューターに切り替え
 火星で活躍中の探査車キュリオシティ(マーズ・サイエンス・ラボラトリ)。過去に水の流れがあったとされる証拠を次々に発見している。

 今回、キュリオシテイが初の大きな不具合を経験した。米国時間2月27日、搭載コンピューター2台のうちの1台に異常が発生し、予定通り“スリープモード”に切り替わらない状態に陥った。

 NASAジェット推進研究所(JPL)のキュリオシティ・チームは2月28日未明、すべての作業をもう1台の同じコンピューターに切り替える命令を送ったと、NASAは同日付の声明で述べた。ほとんどの宇宙探査機は、メインのコンピューターに異常が発生したときのために予備のコンピューターを搭載している。

 キュリオシティのプロジェクト責任者リチャード・クック(Richard Cook)氏によると、今回のトラブルは、火星に着陸して7カ月近くの間にキュリオシティが経験した中で最も深刻なものだという。

 他の宇宙ミッションでも、高エネルギーの太陽放射と宇宙線の影響によって同様の問題が発生しており、今回のトラブルもおそらくそれが原因だとクック氏は言う。  キュリオシティはそのような高エネルギー放射に対する防御策をとっているが、影響を受けたとみられる場所が悪かったために問題が大きくなったようだ。

 その場所とはコンピューター・メモリーのディレクトリ、すなわち“目次”だ。この場所に影響を受けたことでコンピューターが無限ループに陥ったとクック氏はみている。

 キュリオシティは現在、初めてドリルを使って採掘した岩石のパウダー状サンプルを保持しているが、この貴重な試料の分析は今少し待たねばならない。  キュリオシティが1週間で元通りの活動に復帰したとしても、こなせる科学調査の量は限られている。4月初めに太陽が火星と地球の間に入り、まるまる1カ月にわたって命令を送る無線通信が一部遮断されてしまうからだ。

 チームの計画では、太陽の“合”と呼ばれるこの期間中、火星から科学データの送信は受けるが、地球から命令は送らないことになっていた。太陽の影響で命令がうまく届かず、それによってキュリオシティのコンピューターに障害が生じるのを懸念してのことだ。(Marc Kaufman for National Geographic News March 4, 2013)


参考HP National Geographic news:キュリオシティに初の大きな不具合 火星に新しい巨大洪水の痕跡


2035年 火星地球化計画     (角川ソフィア文庫)
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最新探査機がとらえた火星と土星―水と生命の証拠を求めて/タイタンとリングの謎に挑む (ニュートンムック)
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