ヒアルロン酸の分解遺伝子
 肌の潤いや張りをよくする「ヒアルロン酸」はよく聞くが、これは関節にも多く存在していて動きをスムーズにする。関節というと、ぐるぐるぐるぐる「グルコサミン」や「コンドロイチン硫酸」というのもよく聞く。これらの成分はどのような違いがあるのだろうか?

 今回、「ヒアルロン酸」の分解に働く遺伝子を、カネボウ化粧品・価値創成研究所(神奈川県小田原市)と慶應義塾大学の研究チームが特定した。この遺伝子の働きを抑えることで、皮膚の老化防止や関節治療などにつながるものと期待される。

 ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の2つの糖が交互に数万も結合した巨大分子の多糖で、生体では目の硝子体や関節液、皮膚などで高濃度に存在する。とくに皮膚のヒアルロン酸は全身の50%以上を占め、水分の保持や弾力性の維持のほか、創傷の治癒(ちゆ)、皮膚細胞の増殖などにも関わる。

 関節では関節液や軟骨組織に含まれて、関節の動きを滑らかにし、衝撃を吸収する機能を担っている。こうしたヒアルロン酸は活発な合成と分解によって日々置き換わっているが、そのバランスが崩れると、加齢に伴って皮膚で減少したり、関節リウマチや変形性関節症などが起きてくる。しかしヒアルロン酸の分解のメカニズムについては、これまで十分に解明されていなかった。


 研究チームは、ヒトの皮膚線維芽細胞で働く数万の遺伝子を解析し、「KIAA1199」という遺伝子の働きを抑えた場合にのみ、ヒアルロン酸分解が顕著に低下することを突き止めた。ヒアルロン酸を分解できない細胞に「KIAA1199」遺伝子を導入したところ、細胞が新たにヒアルロン酸を分解する能力を獲得した。また「KIAA1199」遺伝子は、関節リウマチや変形性関節症の患者で異常に働き、ヒアルロン酸が盛んに分解されていたという。

 なお「KIAA1199」遺伝子は初め、先天性難聴患者から“難聴遺伝子”として発見された。その後、胃がんや大腸がんの細胞や組織、「早老症(ウェルナー症候群)」患者の細胞でも働きが増加していることが報告され、これらの疾患との関わりが指摘されている。

 研究論文は米オンライン科学誌「PLOS ONE」に3月13日付けで掲載された。(サイエンスポータル March 26, 2013)


 ヒアルロン酸とは?
 ヒアルロン酸とは、人や動物の身体の中に含まれている多糖類の1種で、特に関節の中にある関節液や関節軟骨、眼球の水晶体(レンズ部分)の後ろにある硝子体(ガラス体)、皮膚、臍帯(さいたい・へその緒〉のことなどに多く含まれている。

 多糖類とは、単糖類が複数結合してできたものである。多糖類には1種類の単糖類からなるホモ多糖類と、2種類以上の単糖類からなるヘテロ多糖類があり、身近なものでは、デンプンやグリコーゲンが単糖類のブドウ糖1種類からできているホモ多糖類である。

 ヒアルロン酸は、へテロ多糖類の中でも、人などの生体内でたんぱく質と結合する性質を持つムコ多糖類と呼ばれるもの。ヒアルロン酸の水溶液は無色透明で粘度が高く、ゲル状になっている。

 人の身体の中では、関節液や関節軟骨に含まれたヒアルロン酸が、骨と骨との間の動きを滑らかにする潤滑作用や、クッションの役割を果たす緩衝作用によって、関節の動きをよくする役目を果たしている。その他にも、眼球のガラス体の中にあって眼球の形を保ったり、細菌の侵入を防ぐ、皮膚のみずみずしい張りを保つなどの働きもしている。

 医療用の医薬品としては、変形性膝関節症や、いわゆる五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎、慢性関節リウマチによる膝関節の痛みに対して、痛みを和らげたり炎症を抑えるために関節内に注入するなどの方法で用いられている。また、眼科領域では、白内障の手術や角膜移植術の際に補助剤として使われている。

 最近では、美容外科でもしわ取りなどの目的で使用されているが、インターネットの個人輸入などで購入し、自分で顔に注射するなどの行為が広がり、腫れやしこりなどの後遺症が問題となっている。場合によっては生命に危険が及ぶこともあるため、日本美容外科学会では公式ホームページで注意を呼びかけている。(知恵蔵2013の解説)


 ムコ‐多糖類とは何か?
 「ムコ」は粘液類似物の意のムコイドmucoidから、粘液質の多糖類。糖質とアミノ酸やウロン酸、またはその硫酸エステルからなる。ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸・ヘパリンなどがある。

 長鎖の枝分れがみられない多糖類のことを、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)という。多糖類とは、単糖類が複数結合してできたものである。多糖類には1種類の単糖類からなるホモ多糖類と、2種類以上の単糖類からなるヘテロ多糖類があり、身近なものでは、デンプンやグリコーゲンが単糖類のブドウ糖1種類からできているホモ多糖類である。

 ムコ多糖とは、狭義ではグリコサミノグリカンそのものを指すが、広義では、ヘテロ多糖のうち、アミノ酸を含む多糖の総称で動物性粘性物質の事をムコ多糖とよぶ。これには、ムチン等が含まれる。さらに広義ではアミノ糖を含まないアルギン酸をムコ多糖に含むこともある。

 コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸は、動物の結合組織を中心にあらゆる組織に普遍的に存在する。狭義のムコ多糖で、GAGと略される。

 コンドロイチン硫酸は硫酸基が付加した2糖の繰り返し構造からなる。うち1つはアミノ糖(ガラクトサミン、グルコサミン)であり、もう1つはウロン酸(グルクロン酸、イズロン酸)またはガラクトースである。

 多数の硫酸基とカルボキシル基を持つために、強く負に帯電している。 多くのグリコサミノグリカンは、プロテオグリカンとしてコアタンパク質と呼ばれる核となるタンパク質に付加した形で存在している。唯一の例外は、ヒアルロン酸であり、プロテオグリカンとしては存在していない。


 グルコサミンとは?
 グルコサミン(Glucosamine、化学式C6H13NO5)は、グルコースの一部の水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖の一つである。

 動物においては、アミノ基がアセチル化されたN-アセチルグルコサミンの形で、糖タンパク質、ヒアルロン酸などグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の成分となっている。N-アセチルグルコサミンは、アスパラギンにマンノースを中心とするオリゴ糖鎖が結合するN結合型糖タンパク質の骨格をなすほか(キトビオース構造)、更に複雑構造を持つ糖鎖の主要構成糖である。

 ヒアルロン酸は、軟骨に大量に存在するプロテオグリカン複合体(アグリカン、ヒアルロン酸、リンク蛋白質の3成分を中心とする複合体)の中心を占める巨大なグリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、保湿物質として、あるいは軟骨のようなクッション作用を持つ組織の成分として重要である。

 グルコサミンは、自然界ではカニやエビなどのキチン質の主要成分として多量に存在している。

 グルコサミンは、天然において貝の殻、動物の骨および骨髄に存在している。また、クロコウジカビ(Aspergillus niger) といった一部の真菌にも存在している。

 グルコサミン-6-リン酸の生成はこれらの産物の合成の最初の段階であるため、グルコサミンはこれらの生産の制御において重要であると考えられる。しかし、ヘキソサミン生合成経路が実際どのように制御されているかや、これがヒトの疾患に関与しているかどうかなどは不明である。

 単一成分、またはコンドロイチン(コンドロイチン硫酸)との混合物として、栄養補給サプリメントや健康食品として販売されている。経口摂取の場合の変形性膝関節症への効果は、医学的に効果があるとする論文とそうでないものがともに発表されており、議論が続いている。

 またクマリン血液凝固阻止剤を利用している患者にとってはグルコサミン含有サプリメントは健康リスクが指摘されている。グルコサミンとクマリン血液凝固阻止剤(有効成分ワルファリン又はアセノクマロール含有)を同時に摂取すると、血液凝固阻止作用が異常に強まるリスクがあるとドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)によって指摘されている。

 効果が無いとする研究 50歳~60歳の6691人の女性を対象とした臨床医師が行った無作為化比較試験の結果では、治療目的でのグルコサミンの内服は、摂取と発症に関し有意な影響は見られず、発症予防の効果は証明されなかった。(Wikipedia)


 コンドロイチン硫酸とは?
 コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)は、動物体内にみられるグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種。通常、コアタンパク質と呼ばれる核となるタンパク質に共有結合したプロテオグリカンとして存在する。特に軟骨の細胞外マトリックスにアグリカンと呼ばれるプロテオグリカンとして多く存在するが、皮膚などの結合組織、脳などあらゆる組織に広くみられる。

 D-グルクロン酸 (GlcA) と N-アセチル-D-ガラクトサミン (GalNAc) の2糖が反復する糖鎖に、硫酸が結合した構造を持つ。この「GlcA-GalNAc」2糖単位の中で硫酸基の付加やエピ化(GlcA からイズロン酸)で構造の著しい多様性がある。生体内に見られる長いコンドロイチン硫酸鎖には、一本の鎖で均一にすべての2糖単位が同じ構造(例:コンドロイチン6硫酸構造)をしているというものはほとんど存在しないといってもよい。このことは、多くの生化学や細胞生物学の教科書において誤解を与える記述がなされており注意を要する。

 哺乳類マスト細胞には、コンドロイチン硫酸Eが多く存在する。サメの軟骨には、グルクロン酸の2位に硫酸基が付加したコンドロイチン6硫酸(コンドロイチン硫酸D)が多い。また線虫には、硫酸化されていないコンドロイチンがみられる。コンドロイチンは、ある種の細菌によっても合成されている。

 コンドロイチン硫酸のコアタンパク質への付加は、キシロース、ガラクトースを含む構造をしている。コンドロイチン硫酸のほとんどは、プロテオグリカンとして細胞外マトリックスや細胞表面に存在している。その機能で代表的なものは、軟骨のコンドロイチン硫酸である。

 軟骨のコンドロイチン硫酸の多くは、アグリカンというプロテオグリカンとして存在し、ヒアルロン酸、リンクタンパク質とともに超高分子複合体を形成している。この複合体は、軟骨特有なII型コラーゲンとともに、軟骨の細胞外マトリックスを形成し、軟骨の持つクッション作用に重要な役割をしている。

 皮膚に多く存在するデコリンは、コラーゲン繊維に結合し細胞外マトリックス形成の調節を行う。その他の組織のコンドロイチン硫酸もプロテオグリカンとして、多くは細胞外マトリックスの形成に関与し、細胞接着、移動、分化、増殖など細胞形質の制御を行っていると考えられている。

 脳においては、神経線維の再生を阻害する因子のひとつとして知られるほか、神経細胞の回りを取り巻く構造であるperineuronal netの主要成分として脳機能の可塑性に関与するとされる。やや特殊な機能をするコンドロイチン硫酸としては、マスト細胞やナチュラルキラー細胞の細胞内顆粒に存在するものなどもある。

 医療用医薬品としてはコンドロイチン硫酸ナトリウムが以下のように用いられる。注射液で腰痛症、関節痛、肩関節周囲炎(五十肩)などの治療、点眼液で角膜表層の保護。一般用医薬品としてはコンドロイチン硫酸ナトリウムが以下のように用いられる。経口薬で関節痛、神経痛、点眼薬で角膜表層の保護。

 また、健康食品に配合されることもある。但し経口で摂取した場合は、関節疾患改善作用は無いものと医学的には考えられている。これは関節軟骨には血管が存在せず、消化管から吸収された成分が関節内に移行することが原理的に不可能なため。(Wikipedia)


参考HP マイナビニュース:肌に大事なヒアルロン酸!分解遺伝子「KIAA1199」


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