アイコンタクトが苦手な日本人
 アイ・コンタクト(目を合わせること)は、いい人間関係をつくるための1つの方法である。人と接する時、まずアイ・コンタクトがいいきっかけになる。あいさつでも、何かを聞いたり伝えたりする時でも、目が合ったと感じたタイミングで声をかけると、確実に相手に伝わる・・・。そうよくいわれる。

 だが、私は人と目を合わすのが苦手だ。気まずい感じがしてしまう。そういう人も多いのではないだろうか?よく「人の目を見て話しなさい」などと先生はいう。そう言われると、内心ちょっと動揺してしまう・・・。そう思うのは私一人ではないらしい。どうやら多くの日本人に共通した感じ方でもあるようだ。

 日本人は、欧米人に比べてアイコンタクトの頻度が低いといわれる。正面から見つめられると、日本人は相手に対して「近づきがたい」「怒っている」などと感じてしまうのが要因であることが、東京大学大学院総合文化研究科の長谷川寿一教授や明地洋典・日本学術振興会特別研究員PD、フィンランド・タンペレ大学のヤリ・ヒエタネン教授らが行ったフィンランド人との比較研究で分かった。米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に研究論文が掲載された。

 アイコンタクトは、社会的コミュニケーションの上で不可欠だ。今回の研究結果を踏まえて、研究者らは「日本人は西洋人と会った際、アイコンタクトが『怒り』を示すものではないと知っておいた方がよい」と述べ、逆に「西洋人は日本人と会った際、日本人があまりアイコンタクトをしないのは、無意識に“近づきがたい印象”を与えないようにしている可能性を考えるとよい」とアドバイスしている。(サイエンスポータル 2013年3月25日)


 次に、3月14日の東京大学プレスリリースの記事「日本人はアイコンタクトをとられると近づきがたいと感じる」を引用・掲載する。


 日本人はアイコンタクトをとられると「近づきがたい」と感じる
 東アジア人は欧米人に比べてアイコンタクトの頻度が低いことが知られています。しかし、その文化差を生み出す生理・心理メカニズムについては知られていませんでした。

 東京大学大学院総合文化研究科の長谷川寿一教授、同研究科博士課程 (現・日本学術振興会特別研究員PD)の明地洋典氏らの研究グループは、フィンランドのタンペレ大学のヤリ・ヒエタネン教授とともに、日本人とフィンランド人を対象とした実験により、アイコンタクトに対する感じ方に文化差があることを発見しました。

 本研究グループは、電動液晶シャッター(注1)を通して、視線が正面向き、よそ向き、または目を閉じている他者の顔を画像ではなく実際に提示し、その際の心拍の変化や感じ方の違いについて記録しました。その結果、正面向きの顔がシャッターにより自動的に提示された場合、日本人もフィンランド人もよそ向きに比べて心拍数の減少が見られたため、生理的には文化差はありませんでしたが、心理評定においては、日本人はフィンランド人に比べて正面向きの顔をより「近づきがたい」「怒っている」と感じることが明らかになりました。

 アイコンタクトは社会的コミュニケーションをとる上で不可欠であることから、今回の結果を念頭に置くことで、コミュニケーション、特に異文化間の交流が円滑なものとなることが期待されます。今後は、この結果が、他の東洋・西洋の国々、また、日常の場面に一般化できるかどうかについて検討していく必要があります。


 研究の背景・研究方法
 アイコンタクトに対する敏感さは、発達的にとても早い段階から見られ、赤ちゃんはアイコンタクトをとっている人の顔をよく見ます。このような反応は生後2~5日でも見られるため、アイコンタクトへの敏感性は生まれながらにしてヒトに備わっているものであると言えます。一方で、アイコンタクトのとり方には文化差も存在することがわかっています。

 たとえば、日本人は、アメリカ人などの欧米人に比べ、アイコンタクトの頻度が低いことが報告されてきました。このことは、アイコンタクトへの敏感さは生まれながらのものでありながら、その使用は環境の影響も受けるということを示しています。しかし、どのような生理・心理メカニズムがこのようなアイコンタクトの文化差を生み出しているのかについてはこれまで検討されてきませんでした。

 研究グループでは、日本人とフィンランド人を対象に、それぞれ東京とタンペレ市で実験を行いました。それぞれの国の人の顔を実験刺激として、電動液晶シャッターを通して実際に人(モデル)の顔を提示しました。モデルの視線方向として、正面向き、よそ向き、また、目を閉じている条件がありました。そのモデルの顔を見ている間の心拍数変化の測定や、様々な心理評定を行いました。それぞれの国でモデルが異なるため、解析の際は、目を閉じている条件をベースラインとして扱い、モデルの顔の物理的特性の影響を統制しました。

 その結果、文化(国)に関係なく、正面向きの顔はよそ向きの顔と比較し、心拍数の減少を引き起こし、心理評定の結果から覚醒度が高まる感じがすることが示されました。これは、アイコンタクトをとられると、文化に関わらず注意が高まると解釈されます。そのように、通文化的なアイコンタクトの効果が見られた一方で、アイコンタクトに関する文化差が心理評定において見られました。日本人は、フィンランド人と比べて、正面向きの顔をより「怒っている」「近づきがたい」と感じることが示されました。

 アイコンタクトは社会的コミュニケーションをとる上で不可欠です。今回の結果を念頭に置くことで、コミュニケーション、特に異文化間の交流が、より円滑になることが期待されます。たとえば、日本人は西洋人と会った際、アイコンタクトが「怒り」を示すものではないと知っておいた方がよく、逆に西洋人は日本人と会った際、日本人があまりアイコンタクトをしないのは無意識に近づきがたい印象を与えないようにしている可能性を考えるとよいでしょう。今後は、この結果が、他の東洋・西洋の国々、また、日常の場面に一般化できるかどうかについて検討していく必要があります。(東京大学プレス)


参考HP 東京大学プレスリリース:アイコンタクトが苦手な日本人


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