小型家電リサイクル法スタート
 2013年4月1日、小型家電リサイクル法がスタートする。この法律の内容はどのようなものなのだろうか?また、これまでの家電リサイクル法とどこが違うのだろうか?

 小型家電リサイクル法は昨年8月に成立したもので、今年4月に施行される。現在、家電リサイクル法で指定されている、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機以外のほとんどの家電が対象で、消費者は基本的に無料でごみを出せる。対象は携帯電話、デジタルカメラ、パソコン、電気こたつやランニングマシンなど、100品目以上に上っている。

 メーカーなどによる携帯電話やパソコンなどの自主的なリサイクルは従来通り続けられる他、自治体が小型家電を住民から回収し、認定業者が買取り、リサイクルする。

 小型家電には貴金属やレアメタルが含まれているが、これら有用金属は、廃棄物として埋め立て処分されることが多かった。これらを回収し再利用するための法律である。

 回収対象となる小型家電の中でも、携帯電話はインジウムなど20種以上のレアメタルが含まれる上、携帯1万台から50グラムの金が取り出せる。これは天然の金鉱ならば50トン分掘らなければならない量で、「都市鉱山」として有望視されている。


 しかし、いつから制度に参加するかは自治体の判断に委ねられているため、制度を進めるには回収に当たる自治体をどれだけ増やしていけるかが大きな課題となっている。環境省が去年行ったアンケートでは、参加の意向を示した自治体は34%にとどまっていた。

 すぐには制度に参加しなかったり、参加するかどうか決めていない自治体は、回収に当たる人員が足りず態勢的に厳しいことや、人件費や運搬費などが新たに発生するため予算的に難しいことなどを理由に挙げている。参加する自治体では準備が整いしだい回収を始めることにしていて、国は初期段階の準備費用を支援し、今後回収に当たる自治体の数を増やしたいとしている。


 有用金属のリサイクルの実際
 新制度では、市区町村が使用済みの小型家電を原則無料で収集。リサイクル事業者が分解、破砕、選別などの中間処理をし、金属製錬メーカーが金銀、レアメタルなどを取り出す。最後に小型家電のメーカーが原材料として再活用する。

 現場を見るため、名古屋市港区にあるリサイクル会社アビヅの工場を訪ねた。東証一部上場の中古車オークション会社USS(愛知県東海市)のグループ企業だ。

 同法に先行して、小型家電リサイクルに取り組む有力事業者の一つ。現在は愛知県安城市や岐阜県多治見市など、東海地方の八市町から使用済み小型家電を受け入れる。

 広大な工場に大型機械が整然と並ぶ。小型家電類は、手解体や強力なシュレッダーなどで分解、粉砕された後、磁力や電流、液体などを使った選別工程に投入され、鉄やアルミ、プラスチック、金や銀などが混じった金銀滓(さい)などが取り出される。

 これらの再活用ルートも確立済み。アルミや銅、金銀滓は製錬メーカー、鉄と燃料プラスチックは鉄鋼メーカーに送る。再活用が難しかった破砕くず類も製鉄所の高炉で使われる。

 新制度では、小型家電のリサイクルをする事業者は、計画を作って国から認定を受ける。そのための申請受け付けが一日に始まる。認定作業は二~三カ月かかる見込み。

 アビヅは今月中に申請予定で、「認定事業者になれば信用性が高まる。これまでより多くの自治体から、小型家電類を出してもらえるだろう」(金属プラスチックリサイクル事業部営業課)と期待している。(2013年4月1日 中日新聞)


 眠れる都市鉱山、中国流出防げ
 携帯電話やパソコンなど小型家電をリサイクルする新たな制度が4月1日から始まる。従来の家電リサイクル法で回収が義務づけられているエアコンやテレビなど4品目以外を対象に、市区町村が消費者から回収し貴金属などを取り出してメーカーが再利用する仕組みだ。制度には「都市鉱山」と呼ばれる都市に眠った貴金属やレアメタル(希少金属)などが中国をはじめ海外へ流出している実態を食い止める狙いもある。

 回収対象となる小型家電の中でも、携帯電話はインジウムなど20種以上のレアメタルが含まれる上、携帯1万台から50グラムの金が取り出せる。これは天然の金鉱ならば50トン分掘らなければならない量で、都市鉱山として有望視されている。

 携帯電話会社などが回収を進めるが、平成12年度の1361万台から減少傾向で23年度は696万台。業界団体の電気通信事業者協会は「個人情報や写真などが保存されている上、高機能なスマートフォンはカメラやゲーム機などとしても使われ、消費者が手放したがらない」と分析する。

 一方で海外への輸出は続いている。物質・材料研究機構の原田幸明特命研究員(61)によると、携帯電話などの「電子廃棄物」は有害物質も含んでおり、バーゼル条約で国際移動が規制されている。

 原田さんは「中古品の『再利用』名目にして、中国などアジアへ輸出されている。海外で貴金属やレアメタルが回収され、残りは不適正に捨てられている場合も多い」と指摘。こうした実態は、カラスのようにいいとこ取りで食い散らかす「鴉食(あしょく)リサイクル」と呼ばれているという。

 国立環境研究所の寺園淳室長(47)が日本の貿易統計で推定したところ、中古携帯は23年、香港へ約3万4千台、アフガニスタンへ約2万7千台、イランへ6900台が輸出されていた。中国は中古家電の輸入を禁じており、寺園室長は「実態は不明だが、香港へ輸出された中古携帯は中国本土へ再輸出、つまり密輸されている恐れがある」と懸念する。

 新制度は、制度そのものも「壮大な社会実験」といわれる。家電リサイクル法は消費者とメーカーにリサイクルを義務づけるものだが、新制度は消費者からは基本的に無料で回収し、メーカーが取り出した貴金属などの売却益で経費をまかなうビジネスモデルだ。

 原田さんは「いわば『もったいない精神』による善意のシステムであり、世界でも例がない。家電リサイクルも当初は欧州から『消費者に回収費を負担させると不法投棄が増える』と揶揄(やゆ)されたが、日本人は生真面目なので成功した。レアメタル供給の安全保障という意味からも長い目で育てたい」と話す。(産経news 2013.3.31)


 家電リサイクル法との違い
 これまでの家電リサイクル法との違いは、対象とする家電が大型ではなく小型であること、有料ではなく無料であることである。これまでの家電リサイクル法を振り返ってみよう。

 家電リサイクル法の正式名称は、特定家庭用機器再商品化法(平成10年6月5日法律第97号)である。 一般家庭から排出される使用済みの廃家電製品は、その多くが破砕処理の後に鉄などの一部の金属のみ回収が行われている場合があるものの、約半分はそのまま埋め立てていた。

 廃家電製品には、鉄、アルミ、ガラスなどの有用な資源が多く含まれ、また、我が国の廃棄物最終処分場の残余容量がひっ迫しており、廃棄物の減量化は喫緊の課題となり、廃棄物の減量とリサイクルが必要となってきた。

 このような状況を踏まえ、廃棄物の減量と再生資源の十分な利用等を通じて廃棄物の適正な処理と資源の有効な利用を図り、循環型社会を実現していくため、使用済み廃家電製品の製造業者等及び小売業者に新たに義務を課すことを基本とする新しい再商品化の仕組みを定めた家電リサイクル法が平成10年6月に制定され、平成13年4月から施行された。

 この法律では、○家庭用エアコン ○テレビ(ブラウン管式・液晶式(電源として一次電池又は蓄電池を使用しないものに限り、建築物に組み込むことができるように設計したものを除く。)・プラズマ式) ○電気冷蔵庫・電気冷凍庫 ○電気洗濯機・衣類乾燥機  の家電4品目について、小売業者による引取り及び製造業者等(製造業者、輸入業者)による再商品化等(リサイクル)が義務付けられ、消費者(排出者)には、家電4品目を廃棄する際、収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことなどをそれぞれの役割分担として定めている。

 また、製造業者等は引き取った廃家電製品の再商品化等(リサイクル)を行う場合、定められているリサイクル率(50~70%)を達成しなければならないとともに、フロン類を使用している家庭用エアコン、電気冷蔵庫・電気冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機(ヒートポンプ式のもの)については、含まれるフロンを回収しなければならない。

 国の役割としては、リサイクルに関する必要な情報提供や不当な請求をしている事業者等に対する是正勧告・命令・罰則の措置を定めている。そのほか、消費者から特定家庭用機器廃棄物が小売業者から製造業者等に適切に引き渡されることを確保するために管理票(マニフェスト)制度が設けられており、これによりリサイクルが確実に行われているかどうかを消費者からも確認することができるシステムとなっている。(環境省)


参考HP 環境省:家電リサイクル法 政府広報オンライン:小型家電リサイクル法


図解 よくわかる「都市鉱山」開発―レアメタルリサイクルが拓く資源大国への道 (B&Tブックス)
クリエーター情報なし
日刊工業新聞社
家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)の解説〈2010年版〉 (経済産業省リサイクルシリーズ)
クリエーター情報なし
経済産業調査会出版部

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