ゲノム解読から明らかになったカメの進化
 カメの形態上の最大の特徴は、甲羅を持つことである。甲羅は脊椎や肋骨と癒合した皮骨からなる甲板(骨甲板)と、鱗からなる甲板(角質甲板)の2つの甲板で構成される。腹甲の一部は鎖骨や肋骨が変形したとされる。骨甲板と角質甲板の継ぎ目がずれており、強度をあげている。

 アルマジロ、ワニ、カメはどれも鎧(よろい)をまとった陸上脊椎動物だが、カメの甲羅は肋骨や背骨を癒合させて作りあげた特別なものだ。しかも、カメの肩甲骨はヒトと違って甲羅(すなわち肋骨)の内側にあったり、爬虫類に共通してみられる頭蓋骨の孔(側頭窓)が存在しなかったりと、脊椎動物の中でも特異な形態を持っている。

 こうした形態的特徴のため、カメがどういう進化的な起源を持つのか、その形態的特徴をどう進化させてきたのか、論争は長年続いてきた。

 今回、理化学研究所は、カメのゲノム(全遺伝情報)を世界に先駆けて解読し、カメの進化の謎を解明しようと取り組んだ。その結果、爬虫(はちゅう)類のカメが進化的に恐竜や鳥の近縁種であることを突き止め、28日付の米科学誌ネイチャージェネティクス電子版で発表した。カメの進化をめぐる論争に終止符を打つとともに、爬虫類の進化の過程を解明するのに役立つと期待される。


 研究グループは、甲羅を持つなどの特徴があり、謎の多いカメの進化を調べるため、スッポンとアオウミガメの血液からゲノム(全遺伝情報)を塩基配列解読装置で解読。ヒトやニワトリ、メダカ、ワニなど10種類の脊椎動物と比較する方法をとった。


 カメは恐竜の“親戚”だった 遺伝情報を解読し判明
 爬虫(はちゅう)類のカメが進化的に恐竜や鳥の近縁種であることを、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)の入江直樹研究員らの研究グループが突き止め、28日付の米科学誌ネイチャージェネティクス電子版で発表した。カメの進化をめぐる論争に終止符を打つとともに、爬虫類の進化の過程を解明するのに役立つと期待される。

 研究グループは、甲羅を持つなどの特徴があり、謎の多いカメの進化を調べるため、スッポンとアオウミガメの血液からゲノム(全遺伝情報)を塩基配列解読装置で解読。ヒトやニワトリ、メダカ、ワニなど10種類の脊椎動物と比較した。

 その結果、カメは、ペルム期末の生物大量絶滅期(約2億5100万年前)ごろに、主竜類と呼ばれるワニや鳥、恐竜のグループから分岐したことが判明。

 カメの起源については、これまで原始的な爬虫類とする説やトカゲの近縁種とする説などがあったが、トカゲが爬虫類の祖先から分岐した約2億7700万年前より後に出現し、ワニや鳥、恐竜に近い種であることが確定的になった。

 大量絶滅期は、多くの生物が死滅する一方で、生態系に空白が生まれるため、環境の改善後、生き残った生物の進化や種の多様化が急速に進む作用もあるとされる。

 研究グループは「カメの進化や甲羅の発達が大量絶滅の原因を特定する鍵になるかもしれない」としている。(産経news 2013.4.29)


 研究手法と成果
 1.カメのゲノム解読とその進化的起源: カメの起源に関してはこれまで3つの説がありました。共同研究グループはこの論争に決着をつけるため、2011年に理研が主導して設立した国際カメゲノムコンソーシアムを中心にカメ類のゲノム解読を進めました。

 カメと他の動物のゲノムを比較することで、各動物が進化的にどのような位置づけにあるかが分かります。共同研究グループは、超並列シーケンサーと呼ばれる塩基配列解読装置や大型計算機などの先端技術を駆使したショットガンシーケンス法を用いて、アオウミガメとスッポンのゲノム解読に成功しました。

 ゲノムサイズはいずれも約22億塩基対でヒトゲノムの3分の2の大きさ、遺伝子の数はいずれも約1万9000個でヒトとほぼ同等な数でした。さらに、ヒト、ニワトリ、メダカ、ワニなど他の脊椎動物10種とカメを1,113遺伝子について比較・解析したところ、カメが主竜類といわれるワニ・トリ・恐竜に近い起源を持つことを突き止めました。

 興味深いのは、カメが約2億5,000万年前に主竜類から分岐したという解析結果で、これはカメの祖先が生物大量絶滅期(P-T境界)前後に出現したことを示しています。さらに、ゲノムの中にアオウミガメで254個、スッポンで1,137個の嗅覚受容体をコードする遺伝子を発見しました。これほどの数の嗅覚受容体が哺乳類以外の脊椎動物で発見されるのは初めてです。これはカメ、特にスッポンはイヌ(811個の嗅覚受容体)より潜在的に高い嗅ぎ分け能力を持つ可能性を示しています。

 2.カメも守っていた脊椎動物の基本設計と、その後の特殊化: カメの祖先がワニ・トリ・恐竜などの主竜類系統と分かれた後の進化過程の概要を理解するため、カメとニワトリ(鳥類)の胚発生過程における遺伝子発現を網羅的に比較解析しました。

 その結果、発生の初期では両者で多少異なるものの、遺伝子発現レベルで最も似通った時期が発生の中頃、特に咽頭胚期に現れ、その後、両者は独自の発生過程を経るということが分かりました(図6)。

 これは、脊椎動物が脊椎動物の基本設計(ファイロタイプ)をなるべく変化させずに進化してきた、とする進化の「発生砂時計モデル」を支持する結果です。つまり、形態学的には極めて特殊化したカメも、ファイロタイプを示す時期にいったん脊椎動物の基本的な解剖学的特徴を成立させ、そのあとで特殊化する様子が明らかになりました。さらに、カメ独自の発生過程の中で、甲羅の縁となる構造(甲陵)を形成するときには、他の陸上脊椎動物の四肢(手と足)の形成に関わる遺伝子群の一部を使い回していることも突き止めました。つまり、甲羅は手足形成に関わる遺伝子を利用して進化してきた可能性が高いことを示します。(理化学研究所 2013年4月29日)


 カメとは何か?
 カメ(Turtle)は、爬虫綱-(双弓類)- カメ目(亀目、学名:Testudines、英語名:Testudines)に分類される爬虫類の総称。絶滅した初期グループおよび、現存する曲頸亜目・潜頸亜目の2亜目で構成される。 現生と化石の別無く、すべての種が胴体を甲羅としている点が特徴となっている。

 カメ目は、史上に多様な爬虫類グループの中でも比較的早期の約2億1000万年前(中生代三畳紀後期)に出現し、甲羅を本格的に発達させたことで特徴づけられる一群で、現代まで継続して繁栄している。ヒトの出現、乱獲によって絶滅した種、あるいは危惧される種があるが、それでも、グループ全体としては水・陸の両域で多様性を維持している。

 基本的な構造は、四肢動物の基本から大きく逸脱するものではない。ただし、その胴部がはっきりした甲羅を構成する点が最大の特徴となっている。これは、内部構造では脊椎骨、肩胛骨、肋骨、胸骨などが互いに密着して箱のような構造をなしている。また外側ではブロック状に並んだ板によって外見的な甲羅が形成されるが、これは二次的に退化したものもある。

 甲羅は腹面、背面、側面で閉鎖されており、前側の窓から頭部と前足、後ろ側の窓から後ろ足と尾が出る形になっている。このように四肢帯が肋骨に囲まれているのは脊椎動物ではこの類以外になく、現生は虫類中でもっとも特殊化した形態である。なお、このためにこの群では胴部の柔軟性が極端に低い。

 大型種としては、コガシラスッポン属(インドコガシラスッポンは甲長140cm)、アルダブラゾウガメ(甲長120cmで体重300kg)、現生最大のウミガメであるオサガメ(甲長約200cm、重さ900kg以上)などを挙げることができる。

 過去の絶滅種には全長4mに及ぶウミガメであるアーケロン(Archelon spp.。最大甲長1.9m。中生代白亜紀、米国)や、最大甲長でそれを上回る淡水棲のヨコクビガメ類であるスチュペンデミス・ゲオグラフィクス(Stupendemys geographicus。全長約4m、最大甲長約2.35m、最小甲長約1.8m。新生代中新世トートニアン、ベネズエラ)などの大型種が存在した。

 有史以前にはリクガメ属の仲間やメイオラニアなど、2.5mを超える種が世界中の比較的広い範囲に分布しており、南北アメリカやオーストラリア、アフリカなどに棲息していたことが知られている。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:カメ 理化学研究所:ゲノム解析から明らかになったカメの進化


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