「富士山」世界文化遺産に 「鎌倉」は不登録 
 富士山が世界文化遺産に登録されることになった。日本人として誇らしい気持ちだが、なぜ自然遺産ではないのだろうか?

 富士山については2003年5月、世界自然遺産の候補地として、環境省と林野庁の検討会が審議した。しかし、「ごみやし尿汚染を解決しなければ、登録は困難」として暫定リスト入りが見送られた。

 2007年1月には、文化庁が世界文化遺産登録への第1ステップとなる暫定リストに「富士山」(静岡県・山梨県)を追加することを発表した。

 今回、2013年4月30日、政府は「富士山と信仰・芸術の関連遺産群」(山梨県、静岡県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が、条件付きで世界文化遺産への登録を勧告したと発表した。

 勧告を踏まえ、6月にカンボジアで開かれるユネスコの世界遺産委員会で登録が正式決定される見通しである。富士山は、平成23年の「平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」(岩手県)以来、国内13件目の世界文化遺産となる。


 富士山は、富士五湖や富士山本宮浅間(せんげん)大社(静岡県富士宮市)、忍野八海(おしのはっかい)(山梨県忍野村)など25件が構成資産。浮世絵で描かれたり和歌の題材になるなど芸術のテーマとしても取り上げられ、神社や自然を一体として名山の景観を形づくっているとしている。

 ただ、「三保松原(みほのまつばら)を除き記載が適当」との条件が付いた。また、「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)については、登録にふさわしくないとする「不記載が適当」との勧告がなされた。

 世界遺産はユネスコで採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき人類の財産として登録された遺産。遺跡や建物が対象の「文化遺産」と重要な自然環境を対象とする「自然遺産」、双方を備えた「複合遺産」の3つがある。国内では文化遺産に法隆寺(奈良県)や姫路城(兵庫県)など12件が登録されている。(産経news 2013.4.30)


 ゴミの山、リスト除外の憂き目も
 世界自然遺産登録への挫折から10年。富士山の世界文化遺産登録が4月30日、勧告された。6月にカンボジアで開かれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で、世界遺産を目指してきた20年来の「悲願」達成が確実となった。

 富士山の世界遺産登録をめぐっては、平成6年に国会で「富士山の世界(自然)遺産リストの登録に関する請願」が採択された。しかし、15年には国の候補地検討会が、ゴミや屎尿(しにょう)対策の不備などを理由に推薦リストから除外。自然の美しさが求められる自然遺産としては国内段階で“失格”とされた。

 そのため両県は、日本人にとって古くから信仰や芸術の対象としてとらえられてきた「文化遺産」としての富士山に注目。山梨県の「忍野八海(おしのはっかい)」(忍野村)や静岡県の「三保松原(みほのまつばら)」(静岡市)など25の構成資産とともに文化遺産登録に向けて、17年末に両県などで「文化遺産登録推進両県合同会議」を結成した。

 同会議は翌18年10月には「日本人の精神的なよりどころとなり、外国にも日本の象徴と認識されるようなかけがえのない存在として今日も生き続けている希有(けう)な文化的景観である」とする「暫定リスト素案」を文化庁に提出した。その後、19年に国がユネスコへの登録推薦に向けた暫定リストに富士山を追加。イコモスが昨年夏に両県で調査するなど、静岡県内では世界遺産登録への期待が一気に高まっていった。

 しかし昨年末、イコモスが三保松原を構成資産から除くことを日本側に要求。これに対し、川勝平太静岡県知事は「富士山を見られる場所は富士山と一体であり、信仰の文化がある」として除外を拒否。登録の可否に与える影響が懸念されていた。

 この日の勧告でも「三保松原の除外」が登録への条件として示された。静岡市の観光地を担当する静岡観光コンベンション協会の酒井康之事務局長(61)は「三保松原が外れて世界遺産に登録されても、めげずに富士山の構成資産の一つとしてPRしていきたい」と話している。


 なぜ、鎌倉は登録されないか?
 ともに世界文化遺産への登録を目指した富士山と鎌倉で明暗が分かれた。文化庁は1日未明に記者会見を開き、登録の見通しとなった「富士山」(山梨県、静岡県)について、国際記念物遺跡会議(イコモス)が「日本の国家的象徴」と高く評価したことを明らかにした。一方、登録が難しくなった「武家の古都・鎌倉」(神奈川県)は現存する武家関連の遺跡の少なさを指摘した。

 かつて世界自然遺産への登録を目指しながら、ごみの不法投棄問題などで断念を余儀なくされた富士山。文化遺産としての判断となった今回は「日本の国家的象徴だが、影響は日本をはるかに越えて及んでおり、今や国家的意義を広範に越えている」と指摘。「宗教的、芸術的伝統の融合に特徴がある」と評価し、古くからの山岳信仰や多くの浮世絵の題材となったことなどが認められた。

 構成資産の一つとされながら除外対象となった三保松原(みほのまつばら=静岡市)については「富士山から45キロ離れており、山の一部として考慮し得ない」と指摘。松原から富士山を臨む複数の地点で防波堤が景観を害しているとし、「審美的な観点から望ましくない」とした。

 登録がふさわしくないと判断された鎌倉については、武家の権力を示す遺跡が少ないことが問題点として挙げられた。イコモスは「歴史的な重要性は十分に説明されている」としながらも、鶴岡八幡宮など鎌倉の構成資産に社寺が多いことから「精神的、文化的な側面以外の要素は物的証拠が少ない」と厳しい意見を投げかけた。

 会見した文化庁記念物課の榎本剛課長は「世界遺産の審査が厳しくなったと改めて感じた。三保松原や鎌倉については関係省庁や自治体と協議して対応を決めたい」と硬い表情を見せた。(産経news 2013.5.1)


 世界遺産とは何か?
 世界遺産(せかいいさん)とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然など、人類が共有すべき普遍的な価値をもつものを指す。


 世界遺産登録までの手続きは?

(1)国内暫定リストに掲載する物件を選定: 文化遺産の場合は文化庁  自然遺産の場合は環境省か林野庁
(2)世界遺産条約関係省庁連絡会議で国内暫定リストへの掲載を決定
(3)国内暫定リストをユネスコ世界遺産センターへ提出
(4)暫定リストのなかから条件の整った物件をユネスコ世界センターへ推薦: 推薦は年1回、1物件(自然遺産を含む場合のみ2物件)
(5)ユネスコ世界遺産センターが現地調査: 文化遺産については ICOMOS、自然遺産については IUCN が現地調査を実施
(6)ユネスコ世界遺産委員会ビューロー会議で審議: ICOMOS 及び IUCN の調査結果をもとに世界遺産にふさわしいかどうかを審議
(7)ユネスコ世界遺産委員会(年1回開催)で登録の可否を決定: ICOMOS、IUCN 及び ICCROM の代表を交えて審査し登録の可否を決定

ICOMOS=国際記念物遺跡会議
IUCN=国際自然保護連合
ICCROM=文化財の保存及び修復の研究のための国際センター


 世界遺産 様々な条件
(1)物件を保有している国が世界遺産条約を締結していること
(2)物件が国の法律で確実に保護されていること
 文化遺産の場合: 国宝を含む重用文化財、重要文化的景観、伝統的建造物群保存地区などに指定されていること。
 自然遺産の場合: 自然環境保全法によって国立公園や都道府県が指定する自然環境保全地区に含まれていること。
(3)物件は完全性、真実性を満たし、登録基準のいずれか一つ以上にあてはまること
 完全性(Integryty): 世界遺産の価値を構成する必要な要素がすべて含まれ、長期的保護制度が確立されていること。
 真実性(Authenticity): 文化遺産の場合は建造物や遺跡が本来の芸術的・歴史的価値(オリジナリティ)を保っていること。


 登録10基準
 2007年以降は文化遺産の6基準、自然遺産の4基準を統合した10基準が登録基準となる。登録基準(日本ユネスコ協会のホームページから引用)

1.人類の創造的才能を表す傑作であること。
2.ある期間、あるいは世界のある文化圏において、建築物、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展において人類の価値の重要な交流を示していること。
3.現存する、あるいはすでに消滅してしまった文化的伝統や文明に関する独特な、あるいは稀な証拠を示していること。
4.人類の歴史の重要な段階を物語る建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体、あるいは景観に関する優れた見本であること。
5.ある文化(または複数の文化)を特徴づけるような人類の伝統的集落や土地利用の優れた例であること。(特に抗しきれない歴史の流れによって存在が危うくなっている場合。)
6.顕著で普遍的な価値をもつ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接的または明白な関連があること(ただし、きわめて例外的な場合で、かつ他の基準と関連場合のみ適応)。
7.類例を見ない自然美および美的要素をもった自然現象、あるいは地域を含むこと。
8.生命進化の記録、地形形成において進行しつつある重要な地質学的過程、あるいは重要な地形学的、自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な例であること。
9.陸上、淡水域、沿岸および海洋の生態系、動植物群集の進化や発展において、進行しつつある重要な生態学的・生物学的過程を代表する顕著な例であること。
10.学術上、あるいは保全上の観点から見て、顕著で普遍的な価値をもつ、絶滅のおそれのある種を含む、生物の多様性の野生状態における保全にとって、もっとも重要な自然の生息・生育地を含むこと。


参考HP Wikipdia: 世界遺産


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