巨大フレア2日間で4回発生
太陽活動はほぼ11年の周期で変動しており、その周期的な変動をサイクルとして1755年から数えている。第24太陽活動サイクルは、2008年1月から開始したと考えられている。ただ、2008年から始まった第24周期の黒点数の推移は、2009年のNASAの予想によれば1928年に近いものになり80年ぶりの少なさになると考えられている。
今回、太陽表面で起こる爆発現象「太陽フレアの、特に巨大な爆発が13~15日に計4回発生したと、情報通信研究機構が16日、発表した。通常の100倍以上の規模を持つ「Xクラス」という。こんなに短時間に4回も起きるのは珍しく、昨年1年で、Xクラスは7回発生した。
太陽フレアは、太陽の黒点で発生する爆発で、強い紫外線やエックス線、電波などが宇宙空間に放射される。計4回の太陽フレアは、地球から見て太陽面の東端の黒点群で発生し、航空無線が1~2時間通じなくなるなどの影響があったという。
この黒点群の活動は活発で、太陽の自転とともに1週間後には地球の正面に移動してくる。その段階で、巨大フレアが発生すれば、地球の磁場が乱れ、さらに長時間にわたって通信が途切れるなどの障害が起こりうるという。一方で、オーロラの活動が活発化する。だが人体への影響はない。
引き続き発生する可能性があり、今後2週間程度は人工衛星や全地球測位システム(GPS)、漁業・航空無線に障害が出る恐れがあるとして、関係機関に注意を呼びかけた。
どうやら活動の低下が心配されていた太陽活動は、第24太陽サイクルのピークを迎えたと、情報通信研究機構は分析している。(毎日新聞 2013年5月16日)
太陽の極大期がピークに
太陽フレアは、太陽の表面で爆発が起こった際に生じる短時間の明るい閃光(せんこう)。フレアは英語で「ゆらめく炎」を意味する。太陽表面より温度が低い黒点(約4000度)が集まった領域で起こる。規模はフレアが出すエックス線の強度によって、小さい順にA、B、C、M、Xに5分類されている。
情報通信研究機構(NICT)は5月16日、日本時間の5月13日から15日までの期間で合計4回の通常の100倍以上大型の太陽フレア現象(Xクラス)の発生を確認したと発表したほか、同現象にともない、ほぼ同時刻に「デリンジャー現象」も発生したことを確認したと発表した。
今回と同規模のXクラス太陽フレアは、2012年には7回発生していることをNICTでは確認しているが、今回の観測では2日間で4回の発生が確認されており、同現象は2008年1月頃に始まった第24太陽活動サイクルでは初めてのことだという。
また、今回確認されたフレア現象に伴い、ほぼ同時刻に、稚内、東京、沖縄上空の電離圏において、漁業無線や航空無線などの短波通信の障害となるデリンジャー現象の発生も観測されたが、今回のフレア現象により噴出された高温のガスは、地球方向から外れており、今後の影響はないと考えられるという。
ただし、同現象を引き起こした活発な黒点群(黒点群1748)は、太陽面東端にあり、今後1週間ほどで地球の正面方向を向き、その後、ほぼ1週間で太陽面西端に移動するものと予想されることから、もし黒点が地球に対面した形で今回と同規模のXクラスの太陽フレアが発生した場合、地球周辺の宇宙環境や電離圏、地磁気が乱れる可能性があり、通信衛星・放送衛星などの人工衛星の障害やGPSを用いた高精度測位の誤差の増大、短波通信障害や急激な地磁気変動に伴う送電線への影響などが生じる恐れがあり、注意が必要だとNICTでは注意を呼び掛けている。(情報通信機構 2013/05/16)
太陽フレアとは何か?
太陽フレア(Solar flare)は、太陽で発生している爆発現象のことである。
太陽系で最大の爆発現象で、しばしば観測されている。多数の波長域の電磁波の増加によって観測される。特に大きな太陽フレアは白色光でも観測されることがあり、白色光フレアと呼ぶ。太陽の活動が活発なときに太陽黒点の付近で発生する事が多く、こうした領域を太陽活動領域と呼ぶ。太陽フレアの初めての観測は、1859年にイギリスの天文学者、リチャード・キャリントンによって行われた。
「フレア」とは火炎(燃え上がり)のことである。フレアの大きさは通常数万km程度であり、威力は水素爆弾10万~1億個と同等である。100万度のコロナプラズマは数千万度にまで加熱され、多量の非熱的粒子(10keV-1MeVの電子や10MeV-1GeVの陽子)が加速される。同時に衝撃波やプラズマ噴出が発生し、時おりそれらは地球に接近して、突然の磁気嵐を起こす。
フレアの規模はX線の強度によって、X、M、C、B、Aの5つの等級に分類され、Xが一番強い。太陽フレアの規模は、アメリカの気象衛星GOESで観測される大気圏外の軟X線強度(W/m2)で分類され、低い方から10倍 (1桁) 強度が上がるごとに A, B, C, M, X と表される。 Cクラスは小規模、Mクラスは中規模、Xクラスは大規模のフレアに相当する。
各クラス内でさらに1-9まで直線状のスケールで強度を示す(ただしXクラスの上はないため、この場合は10を超えて示される)。このためX2フレア(2 x 10−4 W/m2)は、X1フレア(10−4 W/m2)よりも2倍の強度となり、M5フレア(5 x 10−5 W/m2)よりも4倍の強度であることを示す。
フレアの発生機構については、太陽活動領域中に蓄えられた磁気エネルギーが、磁気再結合によって熱エネルギーや運動エネルギーに変換されるという説が有力である。全てのフレアを説明するモデルとして、京都大学教授柴田一成の「統一フレアモデル」がある。
フレアが発生すると、多くのX線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子が発生する。またフレアに伴い、太陽コロナ中の物質が惑星間空間に放出される(コロナル・マス・エジェクション(CME))ことが多い。高エネルギー荷電粒子が地球に到達すると、デリンジャー現象、磁気嵐、オーロラ発生の要因となる。2003年は、大規模なフレアが頻発し、デリンジャー現象により、地球上の衛星、無線通信に多くの悪影響を与えた。また地球磁気圏外では、フレア時のX線、ガンマ線による被曝により、人の致死量を超えることもある。(Wikipedia)
超巨大太陽フレアで大停電
もし、巨大フレアが発生したらどうなるのだろうか?過去にあった地上の電波に影響をあたえたり、大停電が起きたりする以上のことが起きる可能性はあるのだろうか?
1989年にカナダで起こった磁気嵐では、600万人が停電の影響を受けた。フレアにより発生したオーロラ内部ではプラズマと磁場との相互作用で大電流が流れ、それによって生じた磁力によって変圧器のコイルに大きな誘導電流が生じる。その結果、変圧器が壊れて停電になったのだ。
フレアが生じると、約8分で可視光とX線、その後30分から2日で高エネルギー粒子線、2~3日後にプラズマが地球に届く。予測は、過去のデータから法則性を見つけて発生の確率を算出していくが、その規模や、方向、時期を予測することは簡単ではない。X線の強度や太陽表面の変化を正確に捉えることで、フレアによる地球への被害に備えることができる。
大停電を起こす規模の巨大フレアは1年に1度の頻度で発生するが、多くは地球とは異なる方向で起こるため、その規模や、方向、時期を予測することは簡単ではない。
これまでのデータの蓄積により、フレアにより放出されるX線強度と発生頻度が反比例することがわかってきた。前述した規模のフレアは1年に1度の頻度で発生していますが、例えばその1万倍規模の超巨大フレアは1万年に1度起こる可能性がある。地質学者との議論により、過去に起こった5回の大量絶滅の一部はこのような超巨大フレアが原因の1つかもしれないという可能性も出てきている。
超巨大フレアはいつ、どのように起こるのか。そこで、太陽と同じ型で様々な年代の恒星で起こる、超巨大フレアの観測が進められている。最近、生まれたばかりの恒星では太陽の100万倍の超巨大フレアが起きていることがわかってきた。「宇宙天気予報」は、身近で遠い太陽からもたらされる災害から身を守る、重要な研究である。
超々巨大太陽フレアで大量絶滅?
京都大学大学院理学研究科附属天文台の柴田一成台長・教授の著書『太陽の科学』に面白い話が書いてある。太陽フレアによって地球上の生命が大量絶滅したという可能性もなくはないという。
太陽フレアの発生頻度というのは次のようになっている。Cクラスのフレアは1年に1000回発生、Mクラスのフレアは1年に100回発生、Xクラスのフレアは1年に10回発生、X10クラスのフレアは1年に1回発生。
C、M、XというのはX線の強度を示す記号。C→M→X→X10と進むごとに強度が10倍ずつ上がっていく。 だから、XクラスのフレアのX線強度はCクラスの100倍ということになる。人類が見た過去最大のフレアはX30だそうだ。
この傾向がもっと大きなフレアにも当てはまるとするならば、X100000クラスのフレアは1万年に1回発生し、X1000000クラスのフレアは10万年に1回発生することになるのだとか。
柴田教授は冗談半分で恐竜絶滅は超巨大太陽フレアのせいじゃないかという話をするそうだが、他の大量絶滅では原因がよくわかっていないものもあり、もしかしたら超巨大フレアによって絶滅が起こった可能性も否定できないと書かれている。
参考HP Wikipedia:太陽フレア 情報通信機構(NICT):極大期のピーク到来 アイラブサイエンス:太陽に怪物級の黒点出現
![]() | 太陽と地球のふしぎな関係―絶対君主と無力なしもべ (ブルーバックス) |
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講談社 |
![]() | 太陽の科学―磁場から宇宙の謎に迫る (NHKブックス) |
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