ヒトクローンES細胞作製
 ES細胞とは万能細胞の一種。さまざまな異なる細胞に分化し、増殖する能力を持つ、発生初期の胚由来の細胞。受精卵の一段階である胚盤胞から取り出した内部細胞塊から樹立される。再生医療に役立つとして研究されている。ES細胞の採取は受精卵を殺すことになるので倫理面の問題がある。

 卵子に体細胞の核を移植して培養する「クローン技術」を使い、体のさまざまな組織や臓器になるES細胞(胚性幹細胞)を作ることに、米オレゴン健康科学大学のシュークラト・ミタリポフ(Shoukhrat Mitalipov)教授や立花真仁(まさひと)研究員らのチームが世界で初めて成功した。米科学誌「セル(Cell)」に15日発表した。

 研究チームは学内倫理委員会の審査を得た上で卵子提供者を募り、さまざまな検診・検査に最終パスした米国内の23-31歳の女性9人から提供を受けた。実験では計122個の卵子を使い、それぞれの核を取り除いて別人の皮膚細胞の核を移植し、培養した。その結果、21個をこれまで難しかった「胚盤胞(はいばんほう)期」と呼ばれる段階にまで成長させることができ、その組織の一部を培養すると6個がES細胞になった。それをさらに、心筋の細胞にまで成長させることができたという。(サイエンスポータル 2013年5月16日)


 クローン人間も可能に
 同じ遺伝情報を持つ細胞を作る「クローン技術」を使って、様々な細胞に変化する能力を持つ、人のES細胞(胚性幹細胞)を世界で初めて作製したと、米オレゴン健康科学大の立花真仁(まさひと)研究員らが15日、米科学誌セルに発表した。

 患者と同じ遺伝情報を持つ心筋や神経細胞などを作り出せれば、山中伸弥・京都大教授が作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様に、再生医療に応用することが可能になる。

 研究チームは、健康な女性が提供した卵子から、遺伝情報の入った「核」を取り除き、別人の皮膚細胞の核を移植。150個ほどまで細胞分裂させた「胚盤胞(はいばんほう)」という状態に育て、ES細胞を作製した。マウスやサルでは成功していたが、人では核移植した卵子を胚盤胞まで育てるのは難しかった。既存の手法を改良し克服した。

 クローン技術を応用したES細胞は、2004年に韓国ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授(当時)が作製に成功したと論文を発表したが、のちに捏造(ねつぞう)と判明した。

 今回作製した胚盤胞を子宮に移植すれば、クローン人間が生まれる可能性がある。しかし動物実験の場合、胚盤胞まで育てても流産率は高く、胎児の奇形も高頻度で見られる。国立成育医療研究センター幹細胞・生殖学研究室の阿久津英憲室長は「クローン人間作りは胎児だけでなく、妊婦も危険にさらすことになる。倫理的に許されないだけでなく、技術や安全の面でもクローン人間は現実的ではない」と指摘する。(読売新聞 2013年5月16日)


 ヒトES細胞の倫理的問題
 ES細胞を樹立するには、受精卵ないし受精卵より発生が進んだ胚盤胞までの段階の初期胚が必要となる。ヒトの場合には、受精卵を材料として用いることで、生命の萌芽を滅失してしまうために倫理的な論議を呼んでいる(一般的に、卵子が受精して発生を開始した受精卵以降を生命の萌芽として倫理問題の対象となるとみなしている。神経系が発達した以降の胚を生命の萌芽とみなす考え方もある)。

 先進国においては、例えば米国ブッシュ政権が2001年8月に公的研究費による新たなヒトES細胞の樹立を禁止している様に、いずれヒトになりうる受精卵を破壊する事に対する倫理的問題から現段階でのヒトES細胞の作製を認めない国がある。

 一方、パーキンソン病などの神経変性疾患、脊髄損傷、脳梗塞、糖尿病、肝硬変、心筋症など根治の無かった疾患を将来的に治療できる可能性から、その研究を認める国などに対応が分かれている。

 日本においては体外受精による不妊治療において母体に戻されなかった凍結保存されている胚の内、破棄されることが決定した余剰胚の利用に限って、ヒトES細胞の作成が認められている。

 米国においても、公的研究費を用いない形での研究がハーバード大学幹細胞研究所などで行われているほか、カリフォルニア州においては、アーノルド・シュワルツェネッガー知事が認める方向を打ち出すなど大きな社会的議論になっている。また、受精卵を用いるES細胞の新たな作製にともなう倫理的問題を回避するために、次の項に述べるような方法も開発されている。

 2006年にAdvanced Cell Technology社のRobert Lanzaらのグループは、マウスおよびヒトにおいて、胚盤胞期以前の卵割期の胚の単一割球のみを用いて、胚の発生能を損なうことなく、ES細胞を樹立することに成功した。この技術開発により受精卵を破壊せずにES細胞の樹立を行うことが可能になった。

 同年、ニューキャッスル大学のMiodrag Stojkovicらのグループが、発生停止したヒトの胚からES細胞を樹立することに成功した[5]。これにより、不妊治療において廃棄されていた過剰な卵を用いることが可能になった。


 ES細胞を用いた再生医療
 ヒトES細胞を用いた再生医療は、現時点ではまだ開発中であり実現はされていない。

 ES細胞を再生医療に応用するためには、まずES細胞をある特定の細胞に分化させなくてはならない。これについては、神経細胞や心筋細胞、膵臓ベータ細胞などに効率的に分化させる方法が盛んに開発されている。

 その上で、分化した細胞を選択後、移植することになる。例えば、糖尿病患者に対しては、ES細胞の分化によって得たインスリンを分泌する膵臓ランゲルハンス島(膵島)ベータ細胞に相当する細胞を、患者に移植するという操作が必要となるが、主要組織適合抗原 (MHC) が患者とES細胞の材料となった受精卵とで異なる事が大半であるために、移植しても拒絶されるという問題点がある。

 これを克服するため、患者由来の遺伝子を有するES細胞を樹立する事ができれば、拒絶される事はなく幅広い応用が可能になる。近年動物においては、体細胞核移植の技術により、卵の核を体細胞の核と置換してクローン胚を得、そこから生体外にて胚盤胞にまで発生させた後にES細胞を樹立する事が可能になっている(体細胞由来ES細胞)。


 体細胞由来ES細胞
 今回、ヒトにおいても他の動物と同様に、この技術を用いてクローンES細胞を得る事は可能になった。だが、成功率が低いため多量の卵を必要とすること、更にその中途段階にて得られるクローン胚を母体の子宮に戻せばクローン人間を作製することが可能であるために、先進国各国の大多数において現段階ではヒトクローンES細胞の作製は禁止されている(現在ではクローン個体を作製しないという限定条件下にて、難病治療目的でのクローンES細胞の作製は認められる方向である)。

 なお、この倫理的問題を解決するために、既に樹立されたES細胞と体細胞を融合させ、多分化能を持つ細胞を作製する手法が開発されている。この場合、拒絶反応を回避するにはES細胞由来の染色体を除去する必要があり、その技術開発が進められている。

 また、ES細胞を生体外にて増殖させ続けると、染色体変異、遺伝子異常が生じて次第に蓄積していく事が明らかとなっており、医療への応用は樹立後間もない株に限られるであろう。こうした遺伝子異常の結果、癌(がん)化する可能性も指摘されている。

 以前は、ES細胞は、ウシ胎仔血清など動物由来の成分を含んだ培地で培養することが一般的であったが、現在は、これらの問題は既に解決されており、先進国のES細胞研究所では、既に、動物由来成分を含まない培地を用いてヒトES細胞を増殖・分化させることが常識となっている。(Wikipedia)


参考HP Wikipedia:ES細胞(胚性幹細胞)


クローン人間誕生以後―世界の経済と社会は超変化する
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遺伝子・大疑問―ベーシックな知識からクローン人間の可能性までそのすべてに答える本 (別冊宝島 (341))
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