肉食?草食?ジアンチャンゴサウルス
 中国で発見された恐竜の化石は、顎が“草食恐竜”、体が“肉食恐竜”の特徴を持った新種の羽毛恐竜であることが、北海道大学総合博物館の小林快次准教授や中国・河南省地質博物館などの共同研究でわかった。「ジアンチャンゴサウルス」と名付けられ、5月29日付の米オンライン科学誌『Plos One』に発表した。

 化石は遼寧省(りょうねいしょう)の約1億2500万年前の地層から、全身の骨格がほぼそろった状態で発見された。体長は約2メートルと推定される。化石に残っていた羽毛は幅2-3ミリ、長さが10センチほどで、首にほぼ垂直に生えていたとみられ、羽毛恐竜として知られているベイピアオサウルスとは異なる特徴があった。

 骨格を解析した結果、獣脚類(ティラノサウルスなどの肉食恐竜)のうちの、テリジノサウルス類に分類されることが分かった。しかし歯や顎の構造が、恐竜の中でも最も植物食に適応していたとされる鳥盤類(トリケラトプスなど)に似ていることから、草食だったと考えられる。


 今回の「ジアンチャンゴサウルス」はテリジノサウルス類の中でも初期の恐竜とみられる。初期のテリジノサウルス類がまず歯や顎の構造を進化させて植物食となり、その後の体の巨大化に伴い腹腔が拡大し、植物を消化できるようになったと推察される。身体の部分によって“進化の時差”があることが分かったという。(サイエンスポータル 2013年6月5日)


 奇妙な構造を持つ恐竜を発見
 以下は北海道大学プレスリリース、2013年5月29日の記事より引用した。

 中国河南省地質博物館は,遼寧省から発見された恐竜を購入しました。この化石は,下部白亜系義県層(バレミアン期:約1 億2500 万年前)から発見されたもので,ほぼ全身がそろっている骨格です(図1)。2010 年から,河南地質博物館・北海道大学総合博物館・中国科学院地質研究所で共同調査が始まりました。研究の結果,この恐竜は,獣脚類(ティラノサウルスなど主に肉食恐竜で構成されているグループ)のテリジノサウルス類に属することがわかりました。

 テリジノサウルス類は,中国・モンゴル・米国の白亜系から発見されている恐竜で,特異な獣脚類恐竜として有名です。その特異性により,以前は竜脚類(ブラキオサウルスなど巨大な植物食恐竜)に類似しているという考えもありましたが,近年の系統解析により,獣脚類コエルロサウルス類であることが受け入れられています。

 その特異性は,モンゴルのセグノサウルスSegnosaurus に代表されるように,歯の鋸歯が大きく,骨盤が異常に広いため体腔が大きいことが挙げられ,植物性であることが示唆されています。

 また,テリジノサウルス類の一種テリジノサウルスTherizinosaurus は大きな爪を持つことでも有名で(図2),テリジノサウルス類は,謎の多い恐竜として世の中に知られています。

 本研究では,新しく発見されたテリジノサウルス類を詳細に観察し系統解析を行いました。今回得られた解析によると,この標本は同地層から発見されているベイピアオサウルスBeipiaosaurus とは異なる恐竜であり,親属新種の恐竜であることが明らかになりました。そこで私たちは,この恐竜をジアンチャンゴサウルス・イシアネンシスJianchangosaurus yixianensis と命名しました。また,ジアンチャンゴサウルスの研究により,テリジノサウルス類の進化と植物食性の進化の解明につながりました。(北海道大学)


 巨大な爪・テリジノサウルス
 テリジノサウルス(Therizinosaurus)は、中生代白亜紀後期にモンゴルに生息していた恐竜の一種。名前は「刈り取りをする爬虫類」を意味し、前肢の巨大なツメを“刈り取り用の大鎌”に見立てた命名である。因みに種小名のcheloniformisは「カメのような姿の」と言う意味で、後述の前脚化石と共に幅広の肋骨化石が見つかり、カメのような姿に復元された事に由来する。推定全長8 - 11メートル。「テリズィノサウルス」、「ティリジノサウルス」とも呼ばれる。

 1948年に、全長2メートルもの巨大な前脚が、不完全な後脚、幅の広い肋骨と共に発見された。その腕についたかぎ爪は70センチにも達し、生存時は表面に角質のサヤがついて90センチほどになったと見られている。この巨大な前足から、当初は「超巨大肉食恐竜である」「アリクイのように巨大なツメで昆虫を掘り起こして食べる恐竜である」などと推測された。また、幅の広い肋骨からカメのような姿に復元されたこともある。

 その後、1988年のアラシャサウルスのほぼ完全な骨格の発見により、その正体がようやく明らかになった。テリジノサウルス自身は獣脚類に属するが、動きの鈍い植物食恐竜であったと見られている。獣脚類は普通、3本の指を接地させ歩行し、4本目の指は退化する傾向にあるが、テリジノサウルスの場合、後肢は4本の指を接地させて歩いたと考えられる。原始的なテリジノサウルスであるベイピアオサウルスでは4本目の指が退化したままであり、進化の過程で再び4本目の指が発達していったものと考えられる。この種には原始的ながら羽毛があった痕跡が残されていた。

 ちなみに、テリジノサウルス科に属する恐竜は側面に腕を広げられ、鳥が羽ばたくような動きも可能な腕構造を持っていたが、なぜこのような進化を遂げたのかはよくわかっていない。また、食性についても植物食であるという直接の証拠は少なく、魚食性であったとする説もある。(Wikipedia)


参考HP 北海道大学プレスリリース:奇妙な構造を持つ恐竜 Wikipedia:テリジノサウルス


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