シャチに4つのタイプ

 シャチ(Orcinus orca)は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科シャチ属の唯一の種である。

 イルカの仲間では最大の種であり、オスの体長は5.8~6.7m、メスの体長は4.9~5.8m、オスの体重は3,628~5,442kg、メスの体重は1,361~3,628kgに達する。

 背面は黒、腹面は白色で、両目の上方にアイパッチと呼ばれる白い模様がある。生後間もない個体では、白色部分が薄い茶色やオレンジ色を帯びている。この体色は、群れで行動するときに仲間同士で位置を確認したり、獲物に進行方向を誤認させたりする効果があると言われている。

 シャチはその体の模様から、A~Dの4つのタイプに分類することができる。南洋に生息する希少な「タイプD」は、この度、1955年に博物館に寄贈された骨格を用いて、ゲノム解析が実施された。

 タイプDが初めて確認されたのは1955年。ニュージーランドの海岸に群れごと打ち上げられていたが、普通のシャチと異なる姿形が注目を浴びた。通常のシャチ(タイプA、B、C)の身体は流線型で、両目上方にアイパッチと呼ばれる白くて大きな模様がある。タイプDはアイパッチが小さく、大きな頭部は球根のように丸い。

 その異形な姿から、遺伝子異常と考えられてきた「タイプD」のシャチ。最近の研究で新種の可能性が出てきた。


 以下はNational Geographic news「希少なシャチ“タイプD”、実は新種」からの引用である。


 シャチのタイプD、実は新種

 米国海洋水産局の海洋生物学者ロバート・ピットマン(Robert Pitman)氏によると、タイプDの目撃例はほかに存在せず、最近まで突然変異の個体だと思われていた。

 しかし、座礁事件から50年以上過ぎ、ピットマン氏ら研究者が資料の本格調査を開始。異形なシャチの報告書がほかにも見つかり、ニュージーランドの群れが唯一の目撃例でないことがわかった。

 「実際には南極水域のいたる所で写真が撮られていた。この海域は常に天候が悪く、科学者による調査が難しい。希少とされてきた原因だろう」と、ピットマン氏は説明する。 新たな発見を受けピットマン氏のチームは、2010年にタイプDのユニークな体型に関する研究成果を発表した。

 普通のシャチとの身体的な違いは明らかだが、新種かどうかの見極めには遺伝子検査が不可欠だ。しかし、目撃例が少なく、新鮮な組織の入手が難しい。

 そこで目を付けたのが、ニュージーランドの博物館が50年前に収蔵した骨格だ。

 「将来を見越して、試料を保存しておいてくれた先人たちに感謝したい。本当にラッキーとしか言いようがない」とアメリカ、カリフォルニア州ラホヤにある南西漁業科学センターの海洋生物学者で研究共著者のフィリップ・モリン(Phillip Morin)氏は語る。

 研究チームは骨格の一部を利用し、タイプDのゲノムマップを作成。その結果をタイプA、B、Cと比較し、4タイプすべての遺伝的相違を明らかにした。

 タイプDは約40万年前に遺伝的に枝分かれし、新種か亜種になった可能性が高い。ただし、さらなる証拠が見つかるまで断定はできない。

「シャチの研究は始まったばかりで、まだまだ不明点が多い。とにかく、もっと多くの個体を調査しなければならない。シャチの世界は、思っている以上に多様性が高い」とモリン氏は話している。

 今回の研究結果は、「Polar Biology」誌オンライン版に6月14日付けで掲載されている。(Lara Sorokanich for National Geographic News July 1, 2013)


 シャチとは何か?

 タイプA 最近の論文などではwhale eater killer whaleと記述されることが多い。一般的にイメージされるシャチであり、クロミンククジラ等を主食とする。アイパッチの大きさは中間的で、サドルパッチはない。流氷の少ない沖合に棲む。

 タイプB 最近の論文などではmammal eater killer whaleと記述されることが多い。タイプAよりやや小型であり、海生哺乳類を主食とする。クロミンククジラ・ナガスクジラ・ペンギン等も捕食する。アイパッチがAの二倍ほど大きく、サドルパッチがあるのが特徴。白色部がやや黄色い。流氷のある沿岸近くに棲む。

 タイプC 最近の論文などではfish eater killer whaleと記述されることが多い。Orcinus glacialisという学名が新たに提案されている。最も小さいタイプであり、タイプAと比較してオスで100cm、メスで60cmほど小さいと思われる。タラを中心とした魚食性。最も大きな群れを作る。アイパッチが他と比べ小さく、体の中心部の黒白の境界面に対して大きな角度を持つ。タイプB同様サドルパッチを持ち、白色部がやや黄色い。流氷のある沿岸近くに棲む。

 タイプD 2004年以降、提唱されるようになった種。通常よりも小さい目、短い背びれ、ゴンドウクジラに似る丸みを帯びた頭部によって認識される。活動範囲は南緯40度~60度の間の亜南極海域で、地球を回るように周回していると考えられている。主な食事については知られていない。

 現在タイプB・Cは別種とすべきという研究が提出されつつある。

 北太平洋付近の観測もある。研究の進んでいるカナダのブリティッシュ・コロンビアで、レジデント(定住型)・トランジエント(回遊型)・オフショア(沖合型)の3タイプの個体群が知られている。

 レジデントは主に魚を餌とし、大抵は十数頭の家族群を形成して生活する。魚の豊富な季節になると、特定の海域に定住し、餌を追うことから定住型と呼ばれる。それに比べ、トランジエントは小さな群れまたは一頭のみで生活し、決まった行動区域を持たず、餌も海に住む哺乳類に限られる。

 オフショアは文字通り沖合に生息し、何十頭もの巨大な群れを形成する。3タイプの中で最もデータが少なく、餌についてもほとんど分かっていないが、傷が多かったり歯がすり減ったりしているという特徴があるため、「手強い」獲物(サメなど)を食しているとも考えられている。

 上に挙げた3タイプのシャチ間での交配は報告されておらず、遺伝子も異なることがわかっている。


 シャチの生活

 一般的に冷水を好むが世界中の海に生息し、クジラ目としては珍しく地中海やアラビア海にも生息する。餌になる動物が多いことなどから、特に極地付近の沿岸に多く住む。主にカナダのブリティッシュコロンビア州・ノルウェーのティスフィヨルド・アルゼンチンのパタゴニア・インド洋のクローゼット諸島などに住む個体群の研究が進んでいる。地球上で最も広く分布する哺乳類の一種と言われる。時には餌を求めて、数百kmも川を遡上することも報告されている。日本では北海道の根室海峡から北方四島にかけてや、和歌山県太地町にて度々目撃されている。

 非常に活発な動物であり、ブリーチング(海面へ自らの体を打ちつけるジャンプ)・スパイホッピング(頭部を海面に出し、辺りを見渡すためと言われる行動)など、多彩な行動が水上でも観察されている。また泳ぐ速さは時速60-70kmに及び、「泳ぎの達人」と呼ばれるハンドウイルカと並んで、哺乳類では最も速く泳ぐことができる生物のひとつである。餌を求めて1日に100km以上も移動することが知られている。また、好奇心も旺盛で、興味を持ったものには近寄って確かめる習性もある。

 他のハクジラと同様、二つの種類の音を使い分けていることが知られている。一つはコールと呼ばれ、群れのメンバー同士のコミュニケーションに使用される。もう一つはクリック音と呼ばれ、噴気孔の奥にある溝から、メロンと呼ばれる脂肪で凝縮して発射する音波である。この音波は物質に当たるまで水中を移動するため、シャチはその反響音を下あごの骨から感じ取ることで、前方に何があるか判断することができる。この能力をエコーロケーション(反響定位)と呼ぶ。クリック音の性能は高く、わずか数mmしか離れていない二本の糸を認識したり、反響音の波形の違いから物質の成分、果ては内容物まで認識することが可能だという。

 オスの平均寿命は30歳、最高寿命は約50歳で、メスの平均寿命は50歳、最高寿命は80歳あまりである。


 食物連鎖の頂点

 肉食性。海洋の食物連鎖の頂点に位置し、武器を使う人間を例外にすると自然界での天敵は存在しない。知能も高く多くの生物を捕食することから、非常に獰猛で貪欲な捕食者として知られている。利益にならない戦闘は避ける傾向もあり、食べる必要のないものを襲うことは少ないと考えられている。

 アザラシやオタリアを襲うとき、海面上に放り投げ必要以上の苦痛を与えることがあるが、これは子供のシャチに安全な海中(上)で狩りの練習をさせるためだと考えられている(陸上のアザラシを捕食する際、シャチ自身が海に戻れなくなり死亡することがあるため)。しかし、はっきりしたことは未だわかっていない。英名の Killer whale は「殺し屋クジラ」であり、学名の Orcinus orca は「冥界よりの魔物」という意味である。

 各タイプのメインの獲物だけでなく、小さいものでは魚・イカ・海鳥・ペンギン、比較的大きなものではオタリア・アザラシ・イルカ・ホッキョクグマ、時にはクジラやサメなど、捕食する動物は多岐に渡るとされる。一部を別種とする学説すらあることからわかるように、一頭のシャチがさまざまな種類の動物を捕食するというより、個体ごとにさまざまな好みを持った生物であると理解した方が現実に近い。一頭一頭を見れば、どちらかといえば偏食な動物である。

 死肉を食べる例もあり、海底で見付けたミンククジラの死体を数頭で食べる映像記録も発表されている。


 高度な狩りの技術

 氷の下からの奇襲・群れでの協力・挟み撃ちなど、高度な狩りの技術を持つ。前述のクリック音を通常より凝縮させて獲物に当てて麻痺させ、捕食しやすくする行動も知られている。浜辺にいるアシカなどに対して、そこへ這い上がって来て捕食することもある。海洋学者のジャック=イヴ・クストーの海洋探査船が、水面下を遊泳していた3mほどのサメを真下から攻撃し、一撃で仕留めた例を報告している。サメやエイを捕食する場合、獲物の身体をひっくり返し擬死状態にすることで抵抗出来なくしてから食べる。

 軟骨魚類特有の性質を用いた有効な狩猟方法だが、エイの尾にある猛毒によって致命傷を負うこともある。口に入れた魚を吐き出してカモメをおびき寄せ、集まってきたカモメを食した例も報告されている他、モントレー湾の観察では、超音波を放ってサケ類を麻痺させて食べる事も報告されている。多頭でうずを巻くようにニシンなどの比較的小さな魚を一箇所に集めた上に尻尾でたたきつけ気絶させやすやすと捕食する例も報告されている。大型のクジラを襲う場合は、一頭がクジラの頭上に陣取って海面での呼吸を妨げ、もう一頭はクジラを底から押し上げて潜水を妨げるなどの行動が観察されている。好物はクジラの舌、口付近であり、他の多くの部分は放置されることがしばしばある。

 攻撃力が高く、自分より体躯が上のヒゲクジラ類も襲い、地球上最大の動物であるシロナガスクジラのこどもをも餌とする。大型で獰猛なホホジロザメすら制圧し、そのため「海のギャング」などと呼ばれるが、しかしながらシャチでも獲物とするクジラは大半が群れでこどもを襲うのがメインであり、世界で初めて撮影されたシャチ対クジラの映像ではコククジラの子を守るためにおとなのザトウクジラが胸びれや尾びれでシャチを攻撃しその一撃は致命傷に値しシャチ達が必死に逃げ出すという場面が撮影された。

 同じハクジラ類のマッコウクジラはあまり襲わない。マッコウクジラのメスや子供はともかく、オス成体は性質が勇猛な上に、体が大きく深く潜るために仕留めにくく、更に好物の舌部分が他の鯨より引き締まって硬く、あまり食べる部分が無いのが敬遠される理由だといわれる。(Wikipedia:シャチ


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