エコロケーション
 動物の音を聞き分ける能力はすごい。

 最も有名なのは、哺乳類でありながら空を飛べるコウモリである。コウモリ類には大きく2つの群があるが、大型で果実食のオオコウモリ類は大きな目を持ち、視覚にたよって生活する。反響定位を用いるのは、小型で昆虫食が中心の小型コウモリ類の方である。

 小型コウモリ類は目がごく小さく、耳は薄くて大きい。コウモリは口から間欠的に超音波の領域の音を発して、それによってまわりの木の枝や、虫の位置を知る。虫を捕らえる直前は、音を発する頻度が高くなる。

 また。イルカなどのハクジラ類は頭部にメロンという脂肪組織のかたまりを持つが、これが鼻腔で発した音波を屈折させ、収束させるレンズとして機能し、指向性の高い音波の発信にかかわると言われる。また、音波の受信は、眼の後方にある耳孔ではなく下顎骨を用いて行い、ここから骨伝導で内耳に伝えられる。クリック音と言われる超音波を発し、これによって餌をとったり、仲間との交信を行っている。一説によれば、1,000km離れた仲間ともやり取りできるとも言われる。

 今回、さらに小さな動物、キンギョがバッハとストラヴィンスキーの曲を聞き分ける能力があることが慶應義塾大の研究でわかった。その実験方法がユニークだ。


 キンギョも音楽を区別
 音楽を区別する能力のある動物として、サルやゾウなどの哺乳類とカラスやハトなどの鳥類、さらに魚類のコイでの研究報告があるが、慶應義塾大学の渡辺茂名誉教授と南フロリダ大学の篠塚一貴研究員の研究グループはさらに、キンギョも音楽を区別できることを実験で確かめた。しかしキンギョは音楽に好みを示さなかった。ヒト以外でこれまで、明瞭に音楽への好みが見られた動物は鳴禽(めいきん)類のブンチョウだけだという。

 研究グループは、ある音楽が水槽の水中スピーカーから流れている時にビーズのついたひもを引くと餌がもらえ、別の音楽では餌がもらえない装置を作った。餌が出る音楽として2匹のキンギョにバッハの「トッカータとフーガ ニ短調」、他の2匹のキンギョにはストラヴィンスキーの「春の祭典」をそれぞれ30秒ずつ、1日に20回ずつ聞かせる訓練をした。

 キンギョが餌の出る音楽の時にひもを引く反応が1日の全反応のうち75%以上で観察され、これが3 日続けば「学習した」と見なした。その結果、4匹のキンギョは、早いもので79日、最も遅いもので196日かかって音楽の区別を学習した。訓練時に使わなかったバッハとストラヴィンスキーの曲を流すと区別ができなかった。


 音楽の好みは特になし
 次に「音楽の好み」実験として、水槽の両端にスピーカーがあり、上からビデオカメラでキンギョの動きを追跡する装置を作った。キンギョが両端から30センチメートル以内の区画に入ると、そちら側のスピーカーから音楽がランダムな順番で流れる仕組み。音楽が流れている区画内にキンギョが滞在した時間をもって「好み」と判断した。

この装置を使って、別のキンギョ6匹に「トッカータとフーガニ短調」と「春の祭典」の音楽、さらにコンピューターで作成した「白色雑音」、ふだんの水槽内の雑音を録音した「水中雑音」を聞かせる実験を1日に30分間ずつ8日間行った。その結果、1匹は有意に「春の祭典」側での滞在時間が増えたが、他の5匹では有意差がなかった。白色雑音と水中雑音では、5匹が水中雑音を嫌う傾向を示したという。

これまでの報告例では、コイの実験で古典音楽とブルースの区別に成功しているが、好みの実験はしていない。今回のキンギョの実験で、音楽の好みがない動物が魚類にまで拡張できることを明らかにしたことが重要だという。

 今まで音楽の好みが明瞭にみられたのは、複雑な聴覚コミュニケーションを持つヒトと鳴禽類のブンチョウだけで、ヒトは言語を学習し、鳴禽類も歌を学習しなくてはならない。研究グループは「音楽に好みがあることは、複雑な聴覚刺激に細かい好みの差があることを示しており、そのことが複雑な聴覚コミュニケーションの学習に有利に働くと思われる」と述べている。(サイエンスポータル 2013年7月5日)


 文鳥は微妙なニュアンスまで聞き分ける
 訓練するとヒトの言葉をしゃべるようになるブンチョウ(文鳥)は、ヒトの言葉そのものだけでなく、音声の微妙な違いまでも聞き分けることが、慶應義塾大学文学部の渡辺茂教授らの研究で分かった。

 渡辺教授らは、ブンチョウが、ヒトの音声の抑揚や音調などといった韻律的特徴(プロソディ)を聞き分けられるかどうかを実験した。ブンチョウを、「そうですか!」という“賞賛”のプロソディの発話を聞いた時だけ、別の止まり木に飛び移るとエサがもらえるように訓練したグループ、同様に、「そうですかぁ?」という“疑念”のプロソディの発話を聞いた時だけエサをもらえるように訓練したグループに分けた。

 「あなたですか!」(賞賛)と「あなたですか?」(疑念)という、それぞれ違ったプロソディの発話を聞かせたところ、“賞賛”で訓練のブンチョウは「あなたですか!」に反応し、“疑念”で訓練したものは「あなたですか?」に反応してエサをもらった。プロソディが前半と後半で異なる言葉をつなぎ合わせて聞かせたところ、ブンチョウは前半のプロソディを使って聞き分けていたという。

 同大学の研究グループはこれまで、ブンチョウなどの鳴禽(めいきん)が音楽や協和音と不協和音、中国語と英語を聞き分けることなどを報告してきた。今回の研究結果は、ブンチョウが“賞賛”のプロソディと“疑念”のプロソディをそれぞれ別のカテゴリーの聴覚刺激として聞き分けられることを示したもので、「人間以外の動物が人間の言語のプロソディの違いを区別することを示した初めての研究だ」としている。(サイエンスポータル 2012年10月23日)


参考HP サイエンスポータル:ブンチョウは人の音声ニュアンスを聞き分ける キンギョも音楽を区別する


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