調査が一段落のキュリオシティ、次の目的地へ
 火星の岩石のサンプル調査からかつての環境の手がかりを得るなど大きな成果を挙げてきた探査車「キュリオシティ」。今月初めにこれまでの調査エリアを離れ、約8km離れたクレーターの中央丘を目指している。

 どのような成果があがったのだろうか?

 2012年8月に火星に軟着陸した火星探査機「キュリオシティ」。2012年9月には、丸い小石の集まりを発見。これはあきらかに「水が流れた痕」である。

 さらに2012年10月には、火星で「水がなくなった」証拠を発見した。サンプルのほぼ半分が、火山ガラスや風化したガラスなどの非結晶物質であり、水がなくなったあとに風化した鉱物を発見した。

 水の存在は生命の存在に必須だ。生命体をつくる他の物質や空気の存在はどうだろうか?

 2013年3月、NASAは、火星探査車「キュリオシティ」による岩石調査の結果から、過去の火星には微生物に適した環境が存在したと発表した。

 火星の岩石からサンプルを採取。生命に必須な物質である、硫黄、窒素、水素、酸素、リン、炭素の存在が確認された。キュリオシティの使命である「火星に生命を育める環境が存在したか否かの解明」に、これまでのところは「イエス」の回答が出たことになる。


 さらに大気についても、かつて厚い大気が存在したという分析結果が出た。キュリオシティは、これまでに複数の地点で大気を採取して分析を行っており、炭素やアルゴンの分析から、かつて火星大気が大量に失われたことが示された。

 具体的には、過去に比べ重い放射性同位体が空気中に増加している。軽い成分は宇宙空間に飛散していったと考えられる。今後も、どんな成果があがるか楽しみだ。 


 かつて火星の大気が失われた痕跡を発見
 薄い大気しかない火星に、かつては厚い大気が存在したかも知れない。探査車「キュリオシティ」から、その根拠となる分析結果が届いた。

 火星の大気の変化を理解することは、過去に火星が生命に適した環境だったかどうかを判断するのに重要な要素だ。現在の火星には地球のわずか100分の1程度という非常に薄い大気しかないが、NASAの探査車「キュリオシティ」の分析から、過去に大気が失われたという根拠が得られた。

 「キュリオシティ」がゲールクレーター内の「ロックネスト」という場所で採取した大気サンプルを分析したところ、大気に含まれる二酸化炭素を構成する炭素のうち、重い同位体(同じ元素でも、中性子の数により質量が異なるもの)の比率が火星誕生間もないころにおける推定比率より5%増加していることがわかった。これはかつて上層大気の軽い同位体が宇宙空間に流失した可能性を示している。またアルゴンの場合も重い同位体の比率が増加しており、地球に落ちた火星起源の隕石を調べて得られた大気組成と一致している。

 この結果から、はるか昔の火星は現在とは全く異なり、豊富な水と厚い大気が存在していたという推測ができる。上層大気の過去の流失については、NASAの探査機「MAVEN」が2014年に到着してさらに調べる予定だ。

 「キュリオシティ」はさらに、メタンガスの分析も行った。地球では生物学的なプロセスでもそれ以外でも作ることができ、生命の単純な構成要素として調査の対象となっている物質だが、火星大気にはごく微量にしか検出されておらず、地球や上空の周回機からの測定は難しい。今回の高精度な測定からも、メタンガスの量はほぼ無きに等しいものだった。

 「ゲールクレーターでは、メタンは大量に存在しないことが明らかになりましたが、メタンを捜索するということ自体がわくわくします。この場所ではごく微量しか検出できなくても、火星の大気が場所によって異なり、意外な発見があるかもしれないのです」(NASAジェット推進研究所のChris Websterさん)。

 「キュリオシティ」は今後数週間のうちに、今回使われた「SAM」と呼ばれる分析装置で、岩石や土壌に含まれる有機化合物の分析も行う予定だ。含水鉱物と炭酸塩の検出と分析が今後の優先ミッションになるという。

 「大気と土壌の両方を分析することで、火星の過去の生命環境の理解が大きく進展することでしょう」(NASAゴダード宇宙飛行センターのPaul Mahaffyさん)。(2012年11月16日 NASA)


 かつて火星は生命に適した環境だった
  NASAは、火星探査車「キュリオシティ」による岩石調査の結果から、過去の火星には微生物に適した環境が存在したと発表した。

 火星で活動中のNASAの探査車「キュリオシティ」は先月、ゲールクレーター内の「イエローナイフ湾」と呼ばれる盆地で岩石のサンプルを採取。その分析から、生命に必須な物質である、硫黄、窒素、水素、酸素、リン、炭素の存在が確認された。キュリオシティの使命である「火星に生命を育める環境が存在したか否かの解明」に、これまでのところは「イエス」の回答が出たことになる。

 今回のサンプル採取現場は、2012年9月にかつての河床を見つけた所から数百mのところで(参照:2012/10/1「火星探査車が見つけた丸い小石」)、ゲールクレーターの縁から河川が網の目のように走っていた場所だ。

 サンプルには、かんらん石などの火成鉱物と真水とが堆積物中で反応して生成される粘土鉱物が20%以上含まれていた。また硫酸カルシウムも含まれていることから、中性か、ややアルカリ性であることも示唆される。火星には激しく酸化した場所や、強酸性、あるいは多量の塩分を含む場所も存在するが、今回の現場はマイルドな環境だったことがうかがえる。

 それぞれ酸化の度合いが異なる物質が混合していたことも驚きだった。地球には、こうしたエネルギーの差(エネルギー勾配)を利用して生きている微生物も多い。

「サンプルから明らかになった成分は、すばらしい発見です。たとえば硫酸塩と硫化物といった、微生物にとってエネルギー源となる物質の組合せが示唆されています」(「SAM」主任研究員Paul Mahaffyさん)。

キュリオシティはイエローナイフ湾周辺でさらに数週間調査を行った後、ゲールクレーターの中央丘「マウントシャープ」を目指す。そこでも、さらに火星の生命環境についての知見が得られることが期待されている。 (2013年3月14日 NASA)


 火星で「水がなくなった」証拠を発見
 1か月前に「水が流れた痕」を見つけた火星探査車「キュリオシティ」が17日、今度は水が枯渇した時期の玄武岩質サンプルの分析を行った。かつて火星の環境がどのように変化したか、その推測を裏付けるものとなっている。

 サンプル採取が行われた吹きさらし地形は「Rocknest」と名付けられている。左が火星で見たままの画像で、火星の赤くほこりっぽい地表環境を反映している。右は、地球と同条件の光の当たり方で見えるようすを模したもの。クリックで拡大(提供: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

 X線ビームを当てると、鉱物固有の環のパターンが現れる。今回のサンプルからは、ハワイの火山性土壌と同様の鉱物組成が見られた。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Ames)

 NASAの火星探査車「キュリオシティ」は、スコップですくった土壌サンプルから150μm(髪の毛程度)より大きな粒子を取り除き、化学鉱物分析装置「CheMin」で分析を行った。X線回折分析と呼ばれるこの手法は地球でも石油やガスの探査に使われているが、火星探査で実施されるのは初めてだ。

 ダイヤモンドと黒鉛のように、化学組成が同じでも鉱物組成が異なると物質は違った構造や特徴を見せる。それを調べることで物質がどのような条件で形成されたかがわかり、過去の火星環境を知る手がかりとなる。

 火星には数十億年前に水が豊富な時期があったとされており、約1か月前には当時水が流れた跡と見られる礫岩が見つかっている(参考:2012/10/01「火星探査車が見つけた丸い小石」)。今回のサンプルはそれよりずっと後、火星が水を失い乾燥していく移行期のものと目されている。

 CheMin研究員のDavid Bishさんは分析結果について、「火星の大部分を覆う塵の鉱物組成について、これまで完全にはわかっていませんでした。今回の調査で、予測どおり長石、輝石、かんらん石を豊富に含む玄武岩と同質のものであることがわかりました。サンプルのほぼ半分が、火山ガラスや風化したガラスなどの非結晶物質でした」とコメントしている。

 「古い礫岩は水の流れた跡を見せ、もっと新しい土壌の鉱物は水の少ない環境を示唆する。これらの分析結果は、ゲール・クレーターが火星が乾燥化していく移行期の名残をとどめているとする私たちの推測と一致しています」。

 探査開始からまだ1か月余り。「キュリオシティ」の活躍で、赤い惑星の歴史が今後さらに明らかになりそうだ。(2012年10月31日 NASA)


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