ニュートリノとは何だろう?
 原子をつくる素粒子には、レプトンとクオークがある。このうち、レプトンには、「電子」「ミュ-粒子」「タウ粒子」の3種類とそれぞれと対を成す、3種類のニュ-トリノ(電子ニュートリノVe,ミューニュートリノVu,タウニュートリノVt)がある。ニュ-トリノは、電荷を持たないレプトンであり、他の粒子との相互作用は、いわゆる弱い相互作用しかない。

 ニュートリノは、弱い相互作用のみで現れるもので、たとえば、放射性同位元素がベ-タ崩壊する場合には、原子核の中の中性子が陽子と電子と電子ニュ-トリノに崩壊することで、電子ニュ-トリノが発生する。したがって、原子炉からは大量のニュ-トリノが発生しているし、水素などの核融合で輝いている太陽からも大量のニュ-トリノが地球にふってきている。また、パイ中間子は、短い寿命の後、ミュ-粒子に崩壊するが、このとき、ミュ-ニュ-トリノを伴う。

 ニュートリノには「電子」「ミュー粒子」「タウ粒子」の3種類があり、互いに別の型に変化し続けている。「ミュー粒子」から「電子」への変化は、実験で確認可能な変化のパターン4通りの中で唯一未確認で、2011年に国際チームが発見の兆候をとらえ、2012年に中国などのチームでは、間接的な方法で確認したと発表するなど、研究が続いていた。


 今回、高エネルギー加速器研究機構(茨城県)や京都大、東京大など11カ国の国際研究チームは7月19日、素粒子のニュートリノが「ミュー型」から「電子型」に変化する現象を世界で初めて発見したと発表した。この変化は「ニュートリノ振動」と呼ばれ、観測が難しく未確認だった最後の1通りの変化を実験で確認した。宇宙の誕生で決定的な役割を果たしたとされる物理現象「CP対称性の破れ」を解明する鍵となる成果だ。


 「J-PARC」から「カミオカンデ」へ発射
 実験は、茨城県東海村の加速器施設「J−PARC」から295キロ先の岐阜県飛騨市の「スーパーカミオカンデ」に、素粒子ニュートリノを発射することで行われた。

 国際チームは、大強度陽子加速器施設「J−PARC」(同県東海村、5月の放射能漏れ事故で停止中)で大量のミュー型を作り、約295キロ離れた東大の観測装置「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)へ向けて発射。旧神岡鉱山の地下水槽(直径、高さ各400メートル)で、ニュートリノが水中を通ることで出るかすかな光(チェレンコフ光)を検出し、到着までに電子型に変化した割合を調べた。

 実験は東日本大震災による施設被災で一時中断したが、2010年1月から今年4月の間に神岡で532個のニュートリノを検出し、うち28個が電子型と分かった。日本列島の地下を横断するうちに電子型に変化したものを99.9999%以上の確率で他起源のものと見分けることができ、学問的に「発見」と認定した。

 同機構の小林隆教授は「最後まで未解明だったニュートリノ振動が明らかになり『CP対称性の破れ』探索の可能性が開けた。さらに10倍ほど実験データを蓄積し、精度を高めたい」と話している。


 ニュートリノ:変化確認 物理学最大の謎、研究に弾み
 宇宙はビッグバンと呼ばれる大爆発で生まれ、星や銀河のもとになる「物質」と、電気的性質などが反対の「反物質」が同じ量だけ生じたとされる。しかし、両者は互いに打ち消し合い、できたての宇宙は瞬く間に消滅してしまうはず。この物理学最大の謎を解く鍵が「CP対称性の破れ」という現象で、今回の発見は、現象の解明に道筋をつけ、研究の弾みとなる極めて大きな成果だ。

 CP対称性の破れは、物質が反物質よりごくわずか壊れにくかったため消えずに残ったとする理論。益川敏英・京都産業大教授と小林誠・高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授がクォークという素粒子のグループで説明し、2008年のノーベル賞を導いた。

 だが、これだけでは謎を解くには不十分と判明した。小林さんは「クォークの『破れ』で宇宙全体の状況を説明しようとしたが無理で、今の宇宙にある量の物質が存在するにはクォーク以外の別の物質でも『破れ』が必要だ」と話す。その候補がレプトンという別の素粒子のグループで、ニュートリノもその仲間だ。

 国際チームはニュートリノを人工的に作って長距離を飛ばし、その間の変化を観測する方法で、未確認だったミュー型から電子型への変化を世界で初めて発見した。実験で判明した電子型の出現確率を他のデータと総合すると、ニュートリノでも「破れ」の証明につながることが期待できるという。今後、より精度を高める実験データの蓄積が重要だといい、チームの中家剛・京都大教授(素粒子物理学)は「研究を続ければ『破れ』が見える可能性が出てきた。観測装置をより高性能にすることが必要かもしれない」と話す。(毎日新聞 2013年07月19日)


 ニュートリノの歴史
 もともとニュートリノは、1930年にオーストリアのパウリが「ものすごく小さくて電気を帯びていない粒子があれば、物理学のつじつまが合うのだけれど」と、仮に考えた粒子。その考えがとても魅力的だったので科学者はニュートリノの存在を信じた。しかし、本物が見つかったのは1956年のことだった。

 アメリカのライネスが、膨大な数のニュートリノが生まれている原子炉のそばで実験して見つけた。そして1980年代になって、もっとたくさんのニュートリノがつかまえられるようになり、やっと研究が進み始めた。

 1987年2月23日、午前7時35分35秒(世界標準時)から大マゼラン星雲内で起きた超新星SN1987Aからのニュートリノを「カミオカンデ」が検出。この成果により、小柴昌敏氏が2002年ノーベル物理学賞を受賞する。

1998年、長い間、重さがないと考えられてきたニュートリノだが、日本のスーパーカミオカンデが、ニュートリノの体重はゆらりゆらりと2つの重さの間で変化を続けていることを発見、これがニュートリノに重さがある決定的証拠となった。3つのニュートリノの違いは質量の違い。質量が変化することになる不思議な現象だ。

 これは大変な発見で物理学は大前提を崩され、始めから考え直さなければならなくなった。それに、宇宙にたくさんあるニュートリノに重さがあると、宇宙全体の重さに影響してくる。宇宙全体の重さは宇宙の運命の鍵を握っているのでとても重要だ。

 最近では2011年9月22日、欧州合同原子核研究機関(CERN)が、素粒子ニュートリノが光より速く飛んだとする実験結果を発表し、話題になった。しかし、2012年2月23日、結果が間違っている可能性を正式に認めている。同機関の発表によると、国際研究グループ「OPERA」は、実験結果に影響を与えうる問題点として(1)時刻の補正ミス(2)光ファイバーケーブルの緩み…がある。こうした不備で結果がどう変わるか検証する実験を5月に行うという。

 ニュートリノ振動については、2011年に国際チームが発見の兆候をとらえ、2012年に中国などのチームも間接的な方法で確認したと発表するなど、研究が続いている。


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