太陽電池が高価な理由
 太陽電池にはどのようなものがあるだろうか?

 現在使われている太陽電池は、原料としてシリコンなどの無機物を利用したものが多い。そのため、製造行程である程度高い温度にしてやる必要が生じたり、真空装置を使う必要が生じたりする。これが太陽電池のコストを高くしている。常温・常圧で製造できれば、その分コストダウンが可能になる。

 これを目指しているのが、有機系太陽電池である。これには色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池がある。一般に、結晶シリコン太陽電池では、照度が低くなる(曇天や朝夕など)につれ、光電変換効率が大幅に低くなるが、有機系太陽電池は、照度が低くなっても光電変換効率は下がりにくいという特徴がある。

 色素増感太陽電池とは、光エネルギーの吸収作用を有する色素と酸化チタン光電極などを組み合わせた太陽電池である。有機薄膜太陽電池とは、導電性ポリマーやフラーレンなどを組み合わせた有機薄膜半導体を用いる太陽電池を指す。


 今回、NEDOは次世代太陽光発電システムの本命の一つとされる、有機系太陽電池の早期実用化を目的とした実証試験を開始する。有機系太陽電池は、大幅な低コスト化が期待されるだけでなく、少ない光でも発電する等、従来の太陽電池に比べ様々な利点があることから、国内外で開発競争が行われており、実使用環境下における課題の抽出と解決を進め、実用化を急ぐ必要がある。

 NEDOでは、色素増感太陽電池を用いた「デザインソーラーランタン」を京都市内に設置し、発電量や耐久性の検証を開始。また、有機薄膜太陽電池を用いた「発電するサンシェード」を仙台市科学館に設置し、太陽光発電と日射熱のカットによる省エネ効果の検証を年度内に開始する予定。また、日本各地で新しい設置スタイルに繋がる、様々な実証試験を展開する。


 有機系太陽電池の実証試験がスタート
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、次世代太陽光発電システムの主力とされる「有機系太陽電池」の早期実用化を目指して、実際の使用環境下での発電量や耐久性などを検証する実証試験を国内メーカーとともに京都市や仙台市、島根、奈良、千葉の各県で開始したことを発表した。

 有機系太陽電池は光の吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池で、「色素増感太陽電池」や「有機薄膜太陽電池」などがある。これらは従来のシリコン太陽電池よりも変換効率は劣るが、少ない光で発電でき、大幅な低コスト化や軽量化も見込まれる。有機系太陽電池については、海外メーカーが近年、相次いで有機系太陽電池の生産投資に踏み切っており、日本のメーカーにおいても市場参入を急ぐべき状況にあるという。

 このうち色素増感太陽電池は、光エネルギーを吸収する色素と酸化チタン光電極などを光電変換層としたもので、パネルに絵を描いた色素増感太陽電池と蓄電池・LEDライトを組み合わせた「デザインソーラーランタン」を日本写真印刷(株)が開発し、京都市国際交流会館と京都市美術館の敷石として利用する実証実験を始めた。また同社は島根県産業技術センターとともに、シースルー(半透明)性の色素増感太陽電池を取り付けた「独立電源型広告掲示板」を製作し、島根県内2カ所(「テクノアークしまね」「くにびきメッセ」)で実証実験をスタートさせた。

 さらに色素増感太陽電池は太陽光の入射角や光量に依存性が少ないことから、住宅や工場などの壁面や北側の日射量の少ない場所でも発電が期待される。この特長を利用し、シャープ(株)は“高電圧型”色素増感太陽電池を製作して奈良県・葛城工場に設置し、(株)フジクラは“高電流型”色素増感太陽電池を千葉県・佐倉事業所に設置して、それぞれ実証試験を始めた。

 有機薄膜太陽電池は、導電性ポリマーやフラーレンなどを混ぜ合わせた有機薄膜半導体を光電変換層とするもので、「薄い」「軽い」「曲がる」「高いデザイン性」などの特性がある。三菱化学(株)は、仙台市震災復興計画に定める「持続的なエネルギー供給を可能にする省エネ・新エネプロジェクト」とも連携し、今年度は「スリーエム仙台市科学館」でシースルー性のある有機薄膜太陽電池を“発電するサンシェード(日よけ)”として利用し、太陽光発電と日射熱のカットによる省エネ効果などを検証するという。(サイエンスポータル 2013年7月18日)


 有機系太陽電池 軽い、柔らかい、カラフルで低コスト
 現在使われている太陽電池は、原料としてシリコンなどの無機物を利用しています。そのため、製造行程のどこかである程度高い温度にしてやる必要が生じたり、真空装置を使う必要が生じたりします。これが常温・常圧で製造できれば、その分コストダウンが可能になります。

 それを可能にするのが、現在開発中の有機物を用いた太陽電池です。有機物を用いた太陽電池には、下記のようなものがあります。

 色素増感太陽電池:光を吸収する色素と、イオンが移動する電解質の層を持つ、変わり種の太陽電池です。製造が比較的簡単で、無機物で構成された太陽電池よりも安価に量産できると期待されています。また色素を変えることによって、様々な色の太陽電池を作れるのも特徴です。

 現在のところ、研究レベルでの変換効率は約10%です。既に屋外でのモジュールの暴露試験も始まるなど、激しい開発競争が行われています。

 有機薄膜太陽電池(有機半導体太陽電池):普通の太陽電池はp型とn型の二層に分かれていますが、この太陽電池は違います。n型とp型の両方の半導体を混ぜ合わせて塗り、電極をつければ電池になります。

 無機半導体からすれば常識外れのこの太陽電池、有機物を用いた半導体から出来ています。もちろん、通常通りにp型とn型の2層構造のものも製造できます。

 近年開発が始まったばかりですが、製造が簡単な上、様々な色や形が実現でき、半透明のものやフレキシブルなものも造ることができます。変換効率はまだ3~5%程度ですが、室内のインテリアやおもちゃなどから実用化が始まる見込みです。将来は、屋根や壁に「塗る」だけで使えるようになるかも知れない太陽電池です。 いずれも現在のところ、変換効率と耐久性が課題になっています。(産総研 有機系太陽電池


 太陽電池の分類 材料・構造・性能
 どれも多種多様 ひとくちに太陽電池といっても、低コストなものから高性能なもの、フレキシブルなものやカラフルなものなど、性能も形態も様々です。現在既に広く用いられているものから開発中のものまで、いろんな材料や構造を用いたものがあります。

 太陽電池は、その中に用いられている材料で分類できます。細かく分けていくと数十種類になりますが、おおまかにはシリコン系・化合物系・有機系の3つに分類できます。

 最も広く用いられているのがシリコン系、新顔が最近量産され始めたのが化合物系、開発中だけれど将来を期待されているのが有機系、と言うことができます。主な太陽電池には、それぞれに特徴があり、最適な用途もそれぞれ異なります。市場でも様々な種類の太陽電池が棲み分けながら、年と共により新しくて高性能な太陽電池へとシェアが移行すると予測されています。

 単結晶シリコン太陽電池:最も古くからある太陽電池です。高価ですが高性能で、特に変換効率が求められる用途に使われます。

 多結晶シリコン太陽電池:現在もっとも広く使われている太陽電池です。細かいシリコン結晶が集まった「多結晶シリコン」を用います。単結晶シリコンよりも省エネルギーな方法で製造でき、変換効率も良い太陽電池です。製造方法や構造も多様です。

 リボンシリコン太陽電池:シリコンの融液から直接、シート状の多結晶シリコンを製造し、太陽電池に用いるものです。インゴットからウエハを切り出す手間が省ける特徴があります。

 球状シリコン太陽電池:直径1mm程度の球状の多結晶シリコンを、多数並べて構成する太陽電池です。意匠性に富んだモジュールが造れる特徴があります。

 薄膜シリコン太陽電池:結晶シリコンの100分の1程度のごく薄いシリコン膜を使う太陽電池です。アモルファスシリコン、または微結晶シリコンを用います。変換効率では劣りますが、大量量産しやすく、軽量でフレキシブルなモジュールも造ることができるなどの長所があります。

 ヘテロ接合(HIT)太陽電池:結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせて、結晶シリコンだけの場合よりも省資源で、性能も高めた太陽電池です。

 CIGS系太陽電池:省資源でなおかつ多結晶シリコンに近い性能が出せる太陽電池です。量産性やデザイン性が良く、価格を下げる余地も大きく、今後の普及が期待されています。

 CdTe太陽電池:毒物のカドミウムを使いますが、製造時に使うエネルギーが少なく、実は環境性能が良い太陽電池です。日本では売られていませんが、価格が安く、欧米などで大規模発電所に利用され始めています。

 色素増感太陽電池:製造が容易でカラフルなものが作れる太陽電池です。量産したときの価格を下げる余地が大きいと期待されています。今のところ寿命と変換効率が課題ですが、もうすぐ実用化できそうな水準まで開発が進んでいます。

 有機半導体太陽電池:今世紀に入ってから開発が本格化した太陽電池で、有機物を含んだ固体の半導体薄膜を使います。常温で塗布するだけで製造でき、カラフルで軽量なものも造れる太陽電池です。寿命と変換効率の向上が課題ですが、屋内用のものは量産が始まっています。

 III-V族多接合型太陽電池:主に宇宙用に用いられるもので、集光すると40%以上の変換効率を発揮する超高性能太陽電池です。非常に高価ですが、地上でも直射日光の多い国や地域での利用が検討されています。

 量子ドット太陽電池:量子効果を利用して性能を向上させる技術です。ナノサイズの微小加工が必要で、太陽電池の中に材料が異なるnmサイズの粒を規則的に並べた構造などが提案されています。これはまだ基礎研究の段階ですが、現在の理論限界を破る太陽電池として開発が進められています。

 このように、太陽電池にはたくさんの種類があります。そして、そのどれもが-少しづつ、でも着実に-改良され続けています。(産総研:太陽電池の種類


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