再生能力のある動物たち
 人などは弱い動物だ、いつもここが痛い、あそこが痛いなどと文句を言っている。たまたま、一度失った器官は二度と戻ってくることがない。手・足・などはまだよいが、心臓・脳などが損傷すると生命が危うい。

 ところが、ある種の動物は何度体を切断されようと、何度でも再生をする。例えばプラナリアは体を7つに切断されると、その7つが新しい固体となって再生する。その理由は全身に、万能細胞(幹細胞)があるからだそうで、iPS細胞など人工の万能細胞(幹細胞)が開発されたことがいかに凄いことだったかがわかる。

 動物の再生能力に興味を持ち、調べてみると再生する動物はまだある。浜辺に棲み、釣り餌によく使われるゴカイは、ミミズなど環形動物の仲間だ。水中の有機物を食べるので環境の浄化にも役立っている。体長約10センチメートルの細長いチューブ状の胴体に骨格はなく、環状の「体節」と言われる繰り返し構造のパーツ(細胞群)が120個~130個も連なって形がつくられる。大きな特徴は、胴体の後部が傷ついても修復して無限に再生し、その能力は成長した後も持っていることだ。

 理化学研究所の丹羽尚研究員、林茂生グループディレクターらは、「イソゴカイ」の体節の観察などの研究により、その再生の仕組みを明らかにした。体節が傷つくと、切り離されずに残った部分の後端に細胞が活発に増殖する領域が現れて新たな体節作りのために細胞の供給を始める。しかも、その指令を出すタンパク質は、すでに出来上がった体節から出ていて、新たなパーツを次々と数珠玉のようにつなげて再生していた。


 ゴカイの無限再生能力解明
 浜辺に棲み、釣り餌によく使われるゴカイは、ミミズなど環形動物の仲間だ。水中の有機物を食べるので環境の浄化にも役立っている。体長約10センチメートルの細長いチューブ状の胴体に骨格はなく、環状の「体節」と言われる繰り返し構造のパーツ(細胞群)が120個~130個も連なって形がつくられる。大きな特徴は、胴体の後部が傷ついても修復して無限に再生し、その能力は成長した後も持っていることだ。

 このようなゴカイの強力な再生能力について、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)形態形成シグナル研究グループの丹羽尚研究員(現・客員研究員)、林茂生グループディレクターらは、「イソゴカイ」の体節の観察などの研究により、その再生の仕組みを明らかにした。

 つまり、体節が傷つくと、切り離されずに残った部分の後端に細胞が活発に増殖する領域が現れて新たな体節作りのための細胞の供給を始める。しかも、その指令を出すタンパク質は、すでに出来上がった体節から出ていて、新たなパーツを次々と数珠玉のようにつなげて再生していた。

 一般的に脊椎動物や節足動物の体節は、成長する組織の最先端部に細胞を増殖する領域ができて、体節を構成するさまざまな細胞が供給される。体が完成すると増殖領域が失われてしまうので、その後は再生できない。イモリ(両生類)や一部のトカゲ(ハ虫類)のシッポの再生などはよく知られているが、これは例外だ。

 ところが、ゴカイの場合は、成体になっても、隣接する体節から増殖再生を促すタンパク質が出せる。それが、強力な無限の再生能力の理由だった。

 こうした仕組みは、生物学のうえで約90年ぶりの大きな発見でもある。ドイツの著名な発生生物学者であるヒルデ・マンゴルドとハンス・シュペーマンは、1927年に両生類の成長過程である胚(はい)の時期に神経組織を移植すると、その組織が周囲の分化していない細胞に働きかけて神経の形成を誘導することをみつけて「相同形質誘導」と名付けた。その仕組みと同様の現象が再生の場でも起こっていることを初めて示したことになる。

 研究グループは、イソゴカイの増殖期の細胞を染色で可視化する方法により観察したが、実に精緻にコントロールされていた。切断された体節の後端に、まず増殖領域が現れ、次いで供給される細胞は順序良く列をなして追加されていって、5列並ぶと一つの体節の原型ができるという段取りだ。その細胞再生の速度は1日に1体節で、通常の4倍にスピードアップされていた。

 また、その仕組みをコントロールするのは、すでに出来上がった隣の体節から出るタンパク質(Wg)であることも突き止めた。このタンパク質は最後尾の体節から増設中の体節に浸透し、働いているとみられる。実際、このタンパク質の働きを増強したところ、体節の位置やサイズが異なるようになった。

 生物は生き残るためにさまざまな戦略を身に付けている。他の動物に食べられやすいイソゴカイは、逃げる際に傷ついても復活できる機能を尾の部分に発達させたらしい。その無限の再生能力の仕組みを医療などに応用するヒントを与えてくれるかもしれない。(産経news: ゴカイの再生能力解明


 再生能力とは何か?
 生物学における再生(さいせい)とは、損傷を受けた組織や器官、四肢などを復元する現象のことである。

 再生が行われる場合、まず未分化の肉の塊(再生芽)が生じ、それが次第に完成した形になる。このとき、各組織の幹細胞や、すでに分化した細胞が脱分化や分化転換し、分裂することで細胞が供給される。種々の幹細胞は様々な組織に分化できることから、これを用いて臨床に役立てようとする研究が再生医学の視点から行われている。

 再生が発生生物学の中で扱われるのは、そこに胚の発生の場合と似通った問題があるからである。再生芽に見られる組織の分化が起きる様子などはその例である。

 特に、極性の問題は、再生の研究から主として出てきた問題である。プラナリアの体をいくつかに切ると、どの断片でも頭の方向へ頭が、尾の方向へ尾が再生してくる。同じ切り口で、前方の切り口からは尾が、後方の切り口からは頭が生じるわけで、それがどのようにして決まるのかの問題である。かなり小さな破片であっても、ちゃんと元の体の方向に体が再生される。

 このことは、磁石の場合によく似ている。磁石のS・N極は、それをつなぎ合わせても、その一部をとっても、同じ方向の磁石になる。これは磁石そのものが無数の小さな磁石から出来ているためであるが、これと同じようなふうに見えるので、この性質を極性と言うわけである。具体的には、何らかの物質の濃度勾配などがあれば、そのような性質が期待できる。

 このような性質が分化に対して影響を与えるケースは、後に胚発生でも発見される。ウニなどにおいて、発生初期に左右に分割すると2つの正常な胚ができるが、上下に分けると発生が異常になり、動物極、植物極の間の極性が問題になった。なお、これら細胞相互の配列・分化の極性のことを、細胞極性と区別するために構造極性と呼ぶことがある。

 古くから、特に再生能力の強いものが知られ、この分野のモデル生物として用いられた。特に有名なのがヒドラとプラナリアで、これらは条件がよければ100-200分の1からも全身を再生することが出来る。また、多毛類のCtenodilusでは、体の一体節を含む破片から全身を再生する。脊椎動物では、イモリが特に再生力に優れており、尾や足などを切断しても完全に元に戻る。トカゲはしっぽが自切しても生えるので有名だが、実際には脊椎骨までは再生されない。(Wikipedia:再生


 ゴカイとは何か?
 ゴカイと人間のかかわりは、海釣りの餌として一番深い。海釣りのエサとしてポピュラーで、釣り方によってさまざまな種類が用いられる。

 ゴカイの正式名は、多毛類という。多毛類(たもうるい)とは、環形動物門多毛綱(Polychaeta)に属する動物の総称である。ゴカイ、イバラカンザシなどが含まれる非常に多様性の高い分類群である。一般にはゴカイ類と呼ばれることが多い。

 種数も非常に多く、既知の種だけで約8000種、このほかにも大量に未記載種がいるものと考えられている。釣り餌としてよく知られているように、魚類、甲殻類、鳥類などの重要な餌である。また、底質の環境指標生物としても注目されている。

 熱帯から寒帯まで、潮間帯から深海にいたる全世界の海に生息し、汽水域にも多い。一部は淡水に生息し、少数の種が湿った土壌中から発見されている。一部に終生プランクトン生活をするものもあるが、大部分の種はベントスである。

 体長約10センチメートルの細長いチューブ状の胴体に骨格はなく、柔らかい。体は前方より、口前葉 (prostomium)、囲口節 (peristomioum)、多数の体節からなる胴部と、尾節 (pygidium) からなる。このうち口前葉、囲口節と尾節は、発生段階におけるトロコフォア幼生時に対応する部分が形成され、その後に尾節の直前で順次作られる胴部の体節とは起源が異なるため、真の体節ではないと考えられる。

 多くは雌雄異体で、体外受精を行うが、体内受精のものや、卵胎生のものも知られる。その際、生殖群泳という行動を示すものが知られる。それらにおいては、普段は底生生活でありながら、生殖の際に多数個体が同時に海中に泳ぎ出て、そこで放卵放精を行うものである。ゴカイ科やシリス科では、成熟の際に剛毛などの形が変わり、遊泳に適した姿となる。無性生殖を行う種も多く知られ、分裂や出芽などが見られる。

 卵割は基本的にはらせん卵割を行い、発生の初期にトロコフォアの形をとる。トロコフォアは複数の繊毛環を持ち、プランクトンとして生活する。繊毛環の間に口、後端に肛門が開く。この形から、後方に体節が追加されるようにして形が長くなり、成体の形に移行する。(Wikipedia:多毛類) 


環形動物 多毛類
クリエーター情報なし
生物研究社
ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)
クリエーター情報なし
早川書房

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