動物の聴覚・嗅覚・視覚
 動物の中には人から見ると驚異の能力を持っているものが多い。イルカやクジラ、コウモリは我々には聞くことのできない、超音波を聞く耳のよい動物だ。他にどんな能力があるだろう?

 嗅覚がよいのはイヌだ。嗅覚細胞の数は人間が500万、猫は1900万、犬は2億もある。視力がよいのは、猛禽類のワシ・タカである。黄斑部(良く見えるところ)の錐体細胞数(視細胞)はヒト20万、タカ160万で単純に計算して8倍の視力と言われている。実際にモンゴルの鷹匠のタカは1.5km放れたネズミを認識するという。

 海の中では、マグロも目のいい動物だ。今回、太平洋を泳ぎ回るクロマグロが、青っぽい海中にいる魚などの餌を見つけやすいように、青色の視覚を特別に進化させてきたことが、クロマグロのゲノム(全遺伝情報)を解析した水産総合研究センターや東京大学、国立遺伝学研究所などの共同研究で分かった。


 研究チームは、クロマグロのゲノム(約8億塩基対)の9割以上にあたる約7億4,000万塩基対の配列を解明し、2万6,433個の遺伝子を特定した。そのうち網膜で赤色・青色・緑色の可視光と紫外光、および光の明暗のそれぞれの感知に関わる遺伝子について調べ、他の魚類と比較した。

 その結果、光の明暗に関わる遺伝子が作るタンパク質では、より短波長側(青色寄り)の光を吸収できるようにアミノ酸の配列が変化していた。また緑色の知覚に関する遺伝子は、1億年ほど前に2つから5つに増えたと考えられ、そのうち4つの遺伝子のタンパク質で青色寄りの光を吸収するようにアミノ酸の置換が起きていた。これらにより、クロマグロは微妙な青-緑色の違いが認識できるようになったとみられる。


 “青色視覚”を進化させたクロマグロ
 太平洋の長距離を時速70キロメートル以上のスピードで泳ぎ回るクロマグロが、青っぽい海中にいる魚などの餌を見つけやすいように、青色の視覚を特別に進化させてきたことが、クロマグロのゲノム(全遺伝情報)を解析した水産総合研究センターや東京大学、国立遺伝学研究所などの共同研究で分かった。

 研究チームは、クロマグロのゲノム(約8億塩基対)の9割以上にあたる約7億4,000万塩基対の配列を解明し、2万6,433個の遺伝子を特定した。そのうち網膜で赤色・青色・緑色の可視光と紫外光、および光の明暗のそれぞれの感知に関わる遺伝子について調べ、他の魚類と比較した。

その結果、光の明暗に関わる遺伝子が作るタンパク質では、より短波長側(青色寄り)の光を吸収できるようにアミノ酸の配列が変化していた。また緑色の知覚に関する遺伝子は、1億年ほど前に2つから5つに増えたと考えられ、そのうち4つの遺伝子のタンパク質で青色寄りの光を吸収するようにアミノ酸の置換が起きていた。これらにより、クロマグロは微妙な青-緑色の違いが認識できるようになったとみられる。

 解読したゲノムの解析により視覚にかかわる遺伝子にクロマグロに特有の特徴を発見した。これは、海洋表層を高速で泳ぎ回るクロマグロが、赤色の乏しい海中の景色の中で微妙な青緑色の違いを認識できることを示していると考えられる。

 本成果は、クロマグロの行動特性に関する基礎的な知見を与えるものであり、今後のまぐろ養殖生産技術の改善にもつながるものです。


 さらに“緑色遺伝子”と“青色遺伝子”では数千万年前に一部の変換が起きた形跡があり、これに伴いタンパク質のアミノ酸配列が急速に変化したとみられる。こうした進化が起きた時期は、マグロと同じサバ科の魚類が出現した時期と重なっており、クロマグロとその仲間が青色に富んだ海洋の表層に適応するために起きた「分子レベルでの適応戦略の一つ」とも考えられる。

 今回の研究成果は、クロマグロの養殖生産における生けすの壁や網での衝突死の予防や、効率的な餌のやり方などといった飼育の改善、さらには視覚以外の生物学的特性の把握や育種技術への活用なども期待されるという。(サイエンスポータル 2013年7月23日)


 クロマグロとは何か?
 クロマグロ(Thunnus orientalis)は、スズキ目サバ科に分類される海水魚の一種。日本沿岸を含む太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布する大型魚で、重要な食用魚である。生鮮魚介類として流通する場合にはホンマグロの名称も用いられる。このほか地方名としては、シビ、クロシビ(各地)、ハツ(高知)などがある。また、特に幼魚を指す地方名としてヨコ、ヨコワ(近畿・四国)、メジ(中部・関東)、シンコ、ヨコカワ、ヒッサゲなどもある。

 成魚は全長3 m・体重400 kgを超え、日本沿岸で漁獲されるマグロ類としては最大種である。体型は太短い紡錘形で、横断面は上下方向にわずかに長い楕円形をしている。体表は小さな鱗があるが、目の後ろ・胸鰭周辺・側線部は大きな硬い鱗で覆われ、「胸甲部」と呼ばれる。 体色は背中側が濃紺、体側から腹部にかけてが銀灰色をしている。背鰭は二つとも灰色だが、第二背鰭先端とその後に続く小離鰭は黄色を帯びる。尻鰭とその後に続く小離鰭は銀白色をしている。また、幼魚期は体側に白い斑点と横しま模様が10-20条並んでおり、幼魚の地方名「ヨコワ」はここに由来する。

 本種とタイセイヨウクロマグロは、マグロ属の中で最も胸鰭が短く、第二背鰭に届かない点で他種と区別できる。かつてこの2種は同種とされていたが、分布が連続しないこと、鰓耙(さいは)数が異なること(クロマグロ32-39、タイセイヨウクロマグロ34-43)、タイセイヨウクロマグロは体腔背壁の筋肉が腹腔内に出るがクロマグロは出ないことなどから、亜種または別種とする見解が登場した。

 遺伝子分析よる研究では、ミトコンドリアDNAが別種レベルに分化している一方、核遺伝子では種内の系群レベルの分化を示すという説明の困難な結果が得られている。さらに、大西洋にわずかながら太平洋型のミトコンドリアDNAタイプを持つ個体がいること、太平洋にもわずかに大西洋型のミトコンドリアDNAタイプを持つ個体がいるという結果も得られており、太平洋と大西洋のクロマグロ間の進化系統関係はいまだに解決されていない。


 クロマグロの特徴・生態
 筋肉内の血管は動脈と静脈が近接する、いわゆる「奇網」(きもう : Rete mirabile)という構造を持つ。これで体内の熱が逃げるのを防ぎ、体温を海水温より高く保って運動能力の低下を抑える。また、水中を最高で魚雷並みの時速90 km程度で泳ぐことができる。これは学術的には証明されていないが、体の表面のやわらかな粘膜が水との抵抗を少なくするためだと考えられている。

 全世界の熱帯・温帯海域に広く分布するが、種類によって分布域や生息水深が異なる。海中では口と鰓蓋を開けて遊泳し、ここを通り抜ける海水で呼吸する。泳ぎを止めると窒息するため、たとえ睡眠時でも停まらない。

 食性は肉食で、表層・中層性の魚類、甲殻類、頭足類などを捕食する。海洋の食物連鎖においてはクジラ、アザラシ、カジキ、サメなどと並ぶ高次の消費者である。それ故に相対的に個体数が少なく、また、生物濃縮によって汚染物質を蓄積しやすいため、様々な問題も起きている。

 太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布する。インド洋にも分布するがまれである。また、北半球に多く南半球には少ない。

 外洋の表層・中層に生息する。同じくらいの大きさの個体同士で群れをなし、高速で回遊する。大型個体の遊泳速度は70~90km/hに達すると言われる。 食性は肉食で、海中を遊泳する他の魚や甲殻類、頭足類などを捕食する。

 日本近海を含む西太平洋のクロマグロは、南日本から台湾にかけての温暖な海域で、春から夏にかけて産卵する。受精卵は直径約1 mmの球形で、約32時間で全長約3 mmの仔魚が孵化する。卵黄を吸収した仔魚は小動物を捕食し、餌がない場合は共食いもして、孵化(ふか)後22日で約3 cmに成長する。74日で全長約25 cmに達し、この頃には形態は成魚とほぼ変わらなくなる。魚体が大きくなるのは早いが、性成熟は5年かかり、魚類の中でも遅い部類に入る。

 稚魚は暖流に乗って日本沿岸まで北上し、そこで成長する。ただし一部は太平洋を横断しアメリカ西海岸に達するものもおり、2-3年かけて現地で成長し、再び西太平洋に戻る。ある程度成長したものは太平洋横断はせず、季節的な南北の移動を繰り返す。(Wikipedia:クロマグロ


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