人力でどこまで飛べるか?
 人力飛行機というと、鳥人間コンテストを思い出す。毎年夏休み明けの9月初めにテレビ放送される。

 今年も「第36回鳥人間コンテスト2013」が、7月27日(土)28日(日)、滋賀県彦根市の松原水泳場で開催された。 これまでの最高記録は東北大学Windnautsの36km。2008年7月27日、第32回大会で記録された。

 日本記録は日本大学理工学部航空研究会開発のメーヴェ21(Möwe21)が記録した飛行距離約49km。世界記録はマサチューセッツ工科大学のダイタロス88の115.11km。である。

 今回、人力ヘリコプターの世界記録が達成された。その条件は「60秒間浮上」し、「少なくとも1度、最下部が地上3メートルの高さまで到達」、「その間、操縦席の位置が10メートル四方の範囲から出ない」ということ。


 この単純な条件をクリアするのは非常に難しく、賞の創設以来、30年以上受賞者がゼロという難関だった。今年ついにその壁を破る覇者が誕生。偉業を成し遂げたのはカナダのトロント大学を母体とするチーム「アエロベロ」の「アトラス号」で、その姿はとてもヘリコプターのイメージからは想像できないものであった。

 例えていうなら、4枚の巨大なシーリングファン。アメリカヘリコプター協会(AHS)が1980年に賞を創設して以来、浮上に成功した機体でさえわずか5機しかない難関だった。

 以下はNational Geographic News記事(人力ヘリコプター史上初の快挙)からの引用である。


 人力ヘリコプター、史上初の快挙達成

◆人力ヘリコプターの夢
 航空分野で最高クラスの賞の1つに、「シコルスキー人力ヘリコプター賞」がある。創設以来、30年以上受賞者がゼロという難関だったが、今年ついにその壁を破る覇者が誕生。偉業を成し遂げたのはカナダのトロント大学を母体とするチーム「アエロベロ」の「アトラス号」で、見た目は航空機というよりも巨大なシーリングファンに近い。

 アメリカのメリーランド大学航空宇宙工学科のチームも2012年、「ガメラ2号」で惜しいところまでいったが、あと一歩届かなかった。アエロベロには、賞金25万ドル(約2500万円)が贈られる。

 ヘリコプターを浮上させ高度を維持する試みは、固定翼機に比べてはるかに難しいといわれている。

 カリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校の工学者ビル・パターソン(Bill Patterson)氏は、「空気力学的に大量のパワーを必要とする。前進できるのなら、速度のおかげで多くの空気をつかめるのだが」と条件の厳しさを語る。同氏のチームがかつて開発した「ダビンチIII」は、シコルスキー賞に挑んで初めて浮上に成功した人力ヘリコプターである。

◆サイズの問題
 パターソン氏のチームは、創設された直後から賞を狙っていた。1989年、ようやく浮上に成功するが、高さ20センチ、滞空時間7秒が限界だった。その機体は、操縦席の上で長さ約15メートルの2枚のブレードが回転するヘリコプターらしい姿をしていた。

 しかし、サイズを大きくしないと浮上できない。大きくすると重くなり、制御も難しくなる。「まるで猛獣使いの気分だった」とパターソン氏は話す。

 猛獣を飼いならす方法を編み出したのが日本大学のチーム。開発した「YURI-I号」は20メートル四方のX型のフレームを持ち、各4カ所の先端に長さ5メートルの回転ブレードが取り付けられていた。このアイディアで、巨大なサイズと軽量化を実現。4つの回転翼が互いにバランスを取る仕組みも導入し1994年、浮上に成功する。

 以来、アトラス号やガメラ2号を含め、人力ヘリコプターはすべて、日本人が発明した「X型のフレームに4つの回転翼」というデザインを踏襲。2009年、メリーランド大学がガメラプロジェクトを開始し、3年後にYURI-I号の記録を更新する。

◆勝利への道
 ガメラプロジェクトの成功に刺激を受け、人力羽ばたき機の開発などに取り組んでいたトロント大学のチームが昨年、人力ヘリコプターの開発に参加を決断する。

 2013年春には、両チーム間の競争が激化。どちらのチームも、賞の条件を1つずつクリアしていった。

 2013年6月13日、ついにトロント大学のアトラス号が1回のフライトで3条件を見事クリア。7月11日、正式にシコルスキー賞の受賞が発表された。

 チームリーダーのキャメロン・ロバートソン(Cameron Robertson)氏は、「ようやくコントロールが可能になった。3メートルの高さや60秒の滞空時間は達成できていたが、“箱”の中に留まるのが難しい」と語る。

 チームは発想を転換。機体の柔構造を逆に利用して、中心部の操縦席と回転翼の部分をワイヤでつなぎ、パイロットが体を傾けると回転翼も傾く仕掛けを編み出した。

 「直感的に操縦できるようになって、反応も速くなった」とロバートソン氏は話す。「この方法だと、重量も8%軽くて済む」。

 歴代の人力ヘリコプターは非常に繊細な作りで、屋外での飛行は難しい。しかし、アトラス号のシンプルな制御方法のおかげで、事前のバランス調整作業は大幅に軽減された。いずれオリンピック競技に採用される日を夢見て、アトラス号を生み出したチーム「アエロベロ」は、既に次の目標に向かっている。(National Geographic news:人力ヘリコプター史上初の快挙


 ヘリコプターとは何か?
 ヘリコプター(helicopter)は、エンジンの力で機体上部にあるメインローターと呼ばれる回転翼で揚力を発生し飛行する航空機の一種であり、回転翼機に分類される。

 空中で留まる状態のホバリングや、ホバリング状態から垂直、水平方向にも飛行が可能であり、比較的狭い場所でも離着陸できるため、各種の広い用途で利用されている。

 日本語では「ヘリ」などと呼ばれる。「ヘリコプター」の名前はギリシャ語の螺旋 (helico-,ヘリックス) と翼 (pteron,プテロン) に由来している。

 ヘリコプターはローターの迎え角(ピッチ角)と回転面の傾きを調整することによって、非常に複雑な運動が可能である。例えば、垂直上昇や垂直降下、空中停止(ホバリング)のほか、機体の向きを保ちながら真横や後ろに進む事もできる。また後述のローターヘッドの形式により、宙返りなどの曲技飛行ができる機体もある。

 このようなヘリコプターの特徴は狭い場所や複雑な地形での活動に向いており、人員や貨物のさまざまな輸送に利用されている。ラジコン玩具も、電子ジャイロの小型化、高性能化により複雑な姿勢制御が容易となり、狭い空間でも飛ばせる事から、趣味としての人気も高い。また自動制御のロボットヘリも観測や農薬散布用などに実用化されている。

 しかし、翼の固定された航空機(固定翼機、飛行機)に比べると、一般に速度が遅く、燃費も悪く航続距離も短い。また、北米ではヘリコプターの騒音が社会問題になっている。この点を改善しようという試みが、ティルトローター機やティルトウィング機である。

 耐空性審査要領第1部「定義」によれば、ヘリコプターは「重要な揚力を1個以上の回転翼から得る回転翼航空機の1つである」と定義されている。


 ヘリコプターの構造
 メインローター 機体上部で回転する翼のことで、これが回転翼の名称由来になっている。回転する事により飛行に必要な揚力を得る。また、回転面を傾ける事により、前後左右の飛行が可能となる。

 エンジンで生み出された回転力は、メインロータを300~400rpmで回転させて飛行する。また型式や配列により、いろいろな種類に分類される。 テールローター 機体尾部にある小さな回転翼。メインローターが回転することで、機体が反作用によって逆回転方向の反作用「反トルク」(逆トルク、アンチ・トルク)を受ける。

 このままでは、機体が回転して操縦不能となるため、機体尾部に長く伸びた先のテールローターによって横方向に押す力を生み出し、メインローターの回転とは反対方向に回転力を与え、機首方向の安定を図る。

 また、テールローターの回転翼の角度を調整し、それが作る推力を加減することによって機首方向を変化させるのにも使用される。テールローターはエンジンで駆動され1,300rpm程度の回転数で常に回っている。型式や配列によっていくつかの種類がある。

 前進または後退側ブレード ヘリコプターが前進飛行状態にあるとき、ブレードを識別するために用いられる。前進ブレードとはローターの回転によりヘリコプターの進行方向に前進するブレードをいい、後退ブレードとはローターの回転によりヘリコプターの進行方向と反対の方向に動くブレードをいう。

 ヘリコプターのメインローターは非常に重いため、飛行機のようにスターターでプロペラごとエンジンを回転させ始動させることは出来ない。そこでエンジン始動時はローターとエンジンシャフトを切り離しておき、エンジンがかかってから滑車のすべりを利用するなどして徐々にエンジンの回転を伝えていくという方式がとられている。


 人力飛行機とは?
 人力飛行機(Human powered aircraft)は、人間の筋力のみを動力源とし飛行する飛行機のことである。純粋な人力飛行機においては推進力としてのモーター等の併用は認められないが、操縦系統などでサーボモータ等を使うことがある。人力飛行機という言葉は固定翼機の形態を指すことが多いが、広義には人力ヘリコプターや人力オーニソプターを含める場合もある。

 人力飛行機はその成功にいくつかの懸賞が設けられたが、特に1959年に始まった「クレーマー賞(英語版)」により世界中で研究開発が進んだ。1979年のゴッサマー・アルバトロスによるイギリス海峡横断がクレーマー賞の成功例である。

 世界初の人力飛行の成功は諸説あるが、公式に人間の筋力のみで離陸し、継続飛行に成功したのは1961年11月9日、イギリスでサウサンプトン大学の学生チームが開発したSUMPAC(英語版/The Southampton University Man Powered Aircraft:サンパック)であるとされ、このときのパイロットはデレク・ピジョット(Derek Piggott(英語版))であった。

 大学において学生の研究テーマとして採用されることがある他、低レイノルズ数領域の研究やソーラープレーンの開発に影響を与えた。日本では学生の同好会による開発、製作が盛んである。

 世界記録は他のスカイスポーツと同様にFAIが統括しており、マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発したダイダロス88により飛行距離約115km、滞空時間約4時間の記録が残されている。

 また飛行速度ではドイツ人のグンター・ローヘルトが開発したマスキュレアー2が時速約45kmという記録を残している。日本記録は日本大学理工学部航空研究会開発のメーヴェ21(Möwe21)が記録した飛行距離約49km、滞空時間約1時間48分であり、速度記録は技術者が結成したTeam'F'開発のNextzが記録した時速約28kmである。


 ダイダロス計画
 1970年代のバード、バード2(BURDⅡ)に始まったMITの人力飛行機開発は、1979年に複葉機のクリサリス(Chrysalis)で初飛行を達成した。そしてモナークBによるクレーマー・世界速度記録賞獲得の後の1985年、ギリシャ神話に登場する工人・ダイダロスとその息子イカロスの神話に倣ったクレタ島からギリシャ本土まで人力飛行する計画、ダイダロス計画(Daedalus project)が開始された。

 神話の解釈、期待しうる飛行性能、気象条件から飛行ルートが決定され、最終的にクレタ島からサントリーニ島までの約115kmを飛行する計画となった。

 機体、パイロット、気象など様々な方面での約1年半に及ぶ事前研究の後の1986年6月、ダイダロスの原型機となるミシェロブ-ライトイーグルの製作が開始された。

 ミシェロブ-ライトイーグルはMITの学生と教員ら18人の手によって15000時間を費やし完成され、同年10月に初飛行に成功、飛行試験を開始した。ミシェロブ-ライトイーグルを用いて操舵性能など記録挑戦に必要なさまざまな試験が行われた他、1987年1月には4つの世界記録が樹立された。

 ミシェロブ-ライトイーグルは優秀な機体であったが、それでもまだ計画に必要な飛行距離、飛行時間を達成するためには必要出力が大きすぎた。ミシェロブ-ライトイーグルで得られた知見を基に、必要出力を低減した記録機、ダイダロスが製作された。

 ダイダロスは改良された新翼型DAEシリーズの採用や構造、材料の改良などによりミシェロブ-ライトイーグルから10kg近い軽量化を達成した。一機目のダイダロス、ダイダロス87(当初はダイダロスAと呼ばれていた)は試験飛行において非公式ではあるが、ゴッサマー・アルバトロスの記録を超える飛行も成功させ、記録飛行への準備を整えていった。またダイダロスAの試験飛行の間に二機目のダイダロス、ダイダロス88(当初はダイダロスBと呼ばれていた)の製作も続けられた。

 1988年2月、試験飛行中にダイダロス87は墜落、搭乗していたパイロットは無事であったが機体は激しく破損した。その11日後、ダイダロス88が試験飛行に移行し、入れ替わりにダイダロス87の修復が開始された。3月下旬、修復を終えたダイダロス87、試作機のミシェロブ-ライトイーグルと共に記録挑戦機、ダイダロス88はギリシャに輸送された。

 ギリシャ到着後、飛行準備が整ってからおよそ3週間、飛行に適した気象条件を待ち続けた。そして気象条件が整った4月23日、ロサンゼルスオリンピック自転車競技ギリシャ代表のカネロス・カネロプーロスの搭乗でクレタ島イラクリオンからサントリーニ島までの飛行に挑戦した。

 およそ4時間、エーゲ海を飛行した後、サントリーニ島到達目前まで飛行を続けた。ダイダロス88は強風下の着陸の為に風と正対する方向となるサントリーニ島の海岸に対し平行に針路をとったところ、海岸の砂浜で温められた風を受け、主翼および後部胴体が捻れて折損、サントリーニ島の地に届くことなく海岸から約9m手前の海面に墜落、着水した。

 この飛行により直線飛行距離115.11km、滞空時間3時間54分59秒の世界記録が樹立された。なお、墜落時点でもパイロットは余力を残し、エネルギー補給ドリンクも1/3ほど残っていたため、少なくともあと2時間、天候が穏やかであれば更に3~4時間程度の飛行すら可能であったとされる。(Wikipedia:人力飛行機より)


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