高温超伝導とは?
 高温超伝導とは、高い転移温度 (Tc) で起こる超伝導である。

 1911年、オランダのヘイケ・カメルリング・オンネスによって「純度の高い金属が容易に得られる水銀を液体ヘリウムで冷却していったとき、温度 4.20K で突然電気抵抗が下がり 4.19Kではほぼゼロの10万分の1Ω以下になる現象」が報告された。ヘリウムの 液化と超伝導の発見によって1913年にノーベル物理学賞が授与された。

 一般に高温超伝導と言えば、ベドノルツとミューラー(ミュラー)がLa-Ba-Cu-O系において1986年に発見したことから始まり、その後続々と発見された転移温度が液体窒素温度(−195.8 °C, 77 K)を越える一連の銅酸化物高温超伝導物質とその超伝導現象のことを指す場合が多い。高温超伝導を示す物質のことを高温超伝導体という。

 高温という語は、通常は人間が「熱い」と感じるほど温度が高いことを表すが、高温超伝導における高温とは、従来の超伝導体と比較すると高温である−200℃~−100℃程度を指す。ミュラーとベドノルツはこの業績により1987年のノーベル物理学賞を受賞した。(Wikipedia:高温超伝導

 科学技術振興機構(JST)、東京大学、理化学研究所(理研)の3者は7月31日、物質の結晶構造と構成元素の情報だけを用いて、超伝導体が超伝導状態に変化する転移温度を精密に評価する新理論計算手法を開発したと共同で発表した。


 これまで、どのような物質を合成すればTcが高くなるのかを、理論計算から具体的に予言、設計できた例は存在しない。これは、実験データを参照せずに超伝導のTcを定量評価することが困難であり、その理論手法が完全に確立していないためだ。

 複数ある高温超伝導の発現機構を密度汎関数理論の枠組みに入れることは、これまで誰も試みたことがなく、今回の成果は数ある機構の内の1つであるプラズモン機構を入れることに成功したものだ。いったい「超伝導密度汎関数理論」とはどのようなものだろうか?


 東大など、「超伝導密度汎関数理論」を大きく伸展させることに成功
 科学技術振興機構(JST)、東京大学、理化学研究所(理研)の3者は7月31日、物質の結晶構造と構成元素の情報だけを用いて、超伝導体が超伝導状態に変化する転移温度を精密に評価する新理論計算手法を開発したと共同で発表した。

 成果は、東大大学院 工学系研究科(理研 創発物性科学研究センター 客員研究員)の有田亮太郎准教授、同・明石遼介大学院生らの研究チームによるもの。研究はJST課題達成型基礎研究の一環として行われたもので、詳細な内容は米国科学誌「Physical Review Letters」にオンライン版に近日中に掲載される予定だ。

 超伝導現象は発見されてすでに100年以上が経過しており、これまでに絶対温度160K程度の「銅酸化物高温超伝導体」や55K程度の「鉄系超伝導体」など、本来なら絶対零度に近い「転移温度(Tc)」が高い物質がいくつか発見されてきた。

 しかし、どのような物質を合成すればTcが高くなるのかを、理論計算から具体的に予言、設計できた例は存在しない。これは、実験データを参照せずに超伝導のTcを定量評価することが困難であり、その理論手法が完全に確立していないためだ。

 超電導は、電子が「クーパーペア」と呼ばれる対状態を形成し、電気を運ぶ電子が低エネルギー状態を取ることで実現する。クーパーペアがどのような状況で実現するかを考える上で重要なことは、動きの速い電子と遅い電子は物質中で異なる相互作用を受けるということだ。

 格子の振動は動きの遅い電子の間に引力をもたらし、このことによって鉛やアルミニウムにおいてクーパーペアが形成され、「単純な超伝導体」となるのである。これら単純な超伝導体は、結晶の格子振動が超
伝導転移の起源だ。


 プラズモン機構
 一方、電子間に直接働く相互作用についても、動きの速い電子と遅い電子では受ける強さが異なる。動きの遅い電子は、速い電子を含めた周囲の電子の雲の振動を感じながら動くが、速い電子は運動エネルギーが十分高いので周囲の電子の存在には影響されずに動く。

 1970年代の終わりから1980年代のはじめにかけて、この速い電子と遅い電子が受ける相互作用の差によって、格子振動が存在しなくても超伝導状態が実現し、場合によっては超伝導Tcが高くなることが示された。これが「プラズモン機構」と呼ばれるものだ。

 プラズモン機構についてもう少し捕捉すると、まず電子の集団が振動して擬似的な粒子として振る舞う状態を「プラズモン」という。

 そして、結晶格子の振動が擬似的な粒子として振る舞う状態が「フォノン」で、アルミニウムや鉛では、このフォノンが超伝導状態の実現に必要な電子対における「のり」の役割を果たす。また、プラズモンもフォノンと同様に「のり」の役割を果たすことがあり、それがプラズモン機構である。

 一方、これまでの2005年に単純な超電導の金属についてTcを性格に定量評価できることを示した「超伝導密度汎関数理論」においては、電子間相互作用は遅い電子も速い電子も同様に働くという近似をおいていたので、プラズモン機構による超伝導のTcの見積もりはできないでいた。

 実際、動きの速い電子と遅い電子が感じる相互作用の差が顕著であると期待される高圧下のリチウムのTcを計算すると、実験値を著しく過小評価する。そこで今回の研究では、これまでの方法論の枠組みが大幅に拡張され、速い電子と遅い電子の差を正確に考慮できる理論の構築が試みられた。

 リチウムは、常圧下ではTcが絶対温度1ミリK以下だが、20GPa以上の高い圧力をかけるとTcが10数K程度にまで劇的に上昇することが知られている。今回の研究で定式化された新しい理論を用いると、圧力下のTcが正確に評価されることが判明した。

 複数ある高温超伝導の発現機構を密度汎関数理論の枠組みに入れることは、これまで誰も試みたことがなく、今回の成果は数ある機構の内の1つであるプラズモン機構を入れることに成功したものだ。そのほかの機構については、今後の課題となるが、この電子間相互作用を超伝導密度汎関数理論の枠内で適切に取り込むことができるようになれば、新しい高温超伝導体の物質設計が現実的に視野に入ってくるという。

 また今回の成果は、従来の実験を説明するだけの理論から、予言能力のある理論への発展の重要な第1歩であり、この成果によって、今後の材料探索や合成が一気に加速し、将来的には超伝導モータや無損失送電線の実現に資することが期待されるとしている。(マイナビニュース:超伝導密度汎関数理論を大きく伸展


 格子振動とプラズマ振動
 
格子振動(lattice vibration)は、結晶中の原子(格子)の振動のこと。振動の駆動力は熱であるが、絶対零度においても、不確定性原理から原子(格子)は振動している(零点振動)。

 格子振動は、熱伝導の原因の一つであり、比熱とも関係が深い(→デバイ比熱)、また格子振動によって電子が散乱される(→電気伝導に影響)。

 格子振動は、従来型の超伝導と深く関わっている(→BCS理論)。量子化された格子振動がフォノン。

 振動という意味では、単独の原子や、分子、クラスター、表面などでの各原子も振動していて、これらを量子化したものもフォノンである。

 プラズマ振動(plasma oscilation)は、プラズマ中に生ずる電荷密度の波動である。ラングミュア波(Langmuir wave)、プラズマ波(plasma wave)とも呼ばれる。1920年代にアーヴィング・ラングミュアによって発見され、その機構が解明された。

 プラズマは正の荷電をもつイオンと負の荷電をもつ電子との混合物であり、全体として電気的中性が保たれている。そこである場所の電子集団が局所的に動くとそこで電気的中性が破れて電荷密度を生じ、電子を引き戻す方向に電場を生ずる。

 イオンは電子より質量がはるかに大きいので、電場によって加速されるのは電子だけである。こうしてその電場により電子群が動いて、電気的中性を取り戻す。しかし、電子には慣性があるので、中性を取り戻した時点では止まらず、逆の方向に行き過ぎる。

 そこでまた中性が破れて電場が生じ、また電子群が引き戻される。かくして電子群の往復運動、すなわち振動が起こる。これは巨視的には電荷密度の波動となる。これがプラズマ振動である。


 クーパ対とは何か?
 超伝導現象を量子力学的に説明することに成功したBCS理論(BCS theory、BardeenCooperSchrieffer)における、逆向きのスピンをもつ2個の電子からなる対(ペア)。2個の電子は重心の周りにゆるい束縛状態にあり、ボース粒子としてふるまう。

 BCS理論とは、1911年の超伝導現象発見以来、初めてこの現象を微視的に解明した理論。

 1957年に米国、イリノイ大学のジョン・バーディーン、レオン・クーパー、ジョン・ロバート・シュリーファーの三人によって提唱された。三人の名前の頭文字からBCSと付けられた。この理論によると超伝導転移温度や比熱などが、式により表される。三人はこの業績により1972年のノーベル物理学賞を受賞した。

 1911年、カマリン・オンネスによって発見された超伝導は、その後多くの研究者の注目を浴び、数多くの実験的、理論的研究がなされた。しかしながら、実験面では多くの成果が得られた半面、理論的な面での解明は遅々として進まなかった。

 1950年には超伝導体の同位体で転移温度が異なることが発見された。これに着目したJ.バーディーン(当時、ベル研究所、のちにイリノイ大学教授)は、直感的にフォノン(抵抗の微視的単位)に超伝導の原因があるとし、研究を進めた。

 1956年バーディーンがイリノイに招聘したL.クーパーが、フォノンを媒介とする電子対ではエネルギーが下がることを発見した。続いて、J.バーディーン教授の大学院生であったJ.シュリーファーが超伝導状態を表す波動関数を導いて、解明の土台を築いた。

 そしてカマリン・オンネスの発見から40年以上経った、1957年、バーディーン、クーパー、シュリーファーの三人によって提唱された超伝導を説明する理論(BCS理論)により一応の決着を見た。

 ボーズ-アインシュタイン凝縮と超伝導は、ボゴリューボフによって示されたいわゆるボゴリューボフ変換を通して、同時に解明することができる。

 超伝導状態を実現するためには電子系が何らかの凝集状態にある必要がある。しかし、電子はフェルミ粒子であり、パウリの排他律からくる制限により、そのままでは凝集できない。

 超伝導状態を実現するためには、電子がペア(対)となってボソン化し、最低エネルギー状態に集団で凝縮(ボース凝縮とみなせる状態)する必要がある。このためには、電子同士がお互い斥力を及ぼし合う状態から、何らかの有効な引力が電子同士に働く状態になる必要がある。

 BCS理論では電子-格子相互作用を介して電子同士がフォノンを仮想的に交換(或いはフォノンを介して運動量を交換)することによって、電子同士に引力が働くと考える。この引力によって生じる電子対(スピンは互いに逆向き、かつ対の全運動量がゼロ)をクーパー対(クーパーペア)と言う。(Wikipedia:BCS理論


超伝導入門 (物性科学入門シリーズ)
クリエーター情報なし
裳華房
トコトンやさしい超伝導の本 (B&Tシリーズ―今日からモノ知りシリーズ)
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日刊工業新聞社

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