直接観測で系外惑星を発見
 系外惑星とは、太陽系にとっての系外惑星、つまり、太陽系の外にある惑星である。今、大型望遠鏡と精密分析装置によって、他の恒星をまわる系外惑星が次々に発見されている。

 これまで、系外惑星は3500個以上が見つかっているが、恒星の光が強すぎて見えないため、直接観測は10例ほどしかない。ほとんどは、惑星が恒星の前を通る時にできる影を調べる手法などで見つけている。

 米ハワイ州にある日本の「すばる望遠鏡」で、地球から60光年離れた恒星を回る惑星の撮影に成功したと、国立天文台などの国際研究チームが8月5日、発表した。木星の3~5.5倍の質量しかなく、これまでに直接撮影された太陽系外惑星では最も軽く暗いという。


 惑星は、おとめ座の方向にある恒星「GJ504」から66億キロ離れており、太陽系で言えば最も遠い海王星のさらに外側を回っていることになる。チームを統括する田村元秀・東京大教授は「この大きさの惑星が中心星からこれほど遠くにあるのは従来の惑星形成理論では説明できない」と話している。

 恒星は表面温度や質量は太陽とほぼ同じだが、誕生から1億~5億年と太陽の46億年より若い。撮影はすばる望遠鏡に恒星の光を遮断する装置をつけ、地球の大気のゆらぎによる影響を補正して鮮明な画像を得た。(毎日新聞 2013年8月5日)

 以下は国立天文台プレスリリース記事「SEEDSプロジェクト第2の木星発見」から引用した。


 国立天文台「SEEDS」計画
 すばる望遠鏡では国立天文台・東京大学が中心となって、2009年に完成した新型コロナグラフカメラ「HiCIAO(ハイチャオ)」と、地球大気による星像の乱れを補正することで高解像度を達成する「補償光学装置」を用いて、太陽近傍における約500個の太陽系外の惑星やその誕生現場である原始惑星系円盤などを直接撮像観測することをも目的とした「SEEDS(Strategic Explorations of Exoplanets and Disks with Subaru Telescope:すばる望遠鏡による戦略的惑星・円盤探査プロジェクト)」プロジェクトを、2009年から約5年間にわたって実施中だ。

 約120名のメンバーによって進められ、3分の1が欧米の関連研究者からなる国際共同プロジェクトである。すでに計画の75%以上の観測を完了させた。今回の惑星GJ504bの直接撮像法による検出も、SEEDSプロジェクトの一環として行われたものだ。


 おとめ座「GJ504b」
 恒星自体は肉眼でも見える明るさ(約5等級)だが、惑星は赤外線波長で17~20等ととても暗く、見かけの明るさは恒星の60万分の1以下しかない。直接観測では、1回きりの撮像ではたまたま背景に写りこんだ無関係の星と誤認する可能性があることから、研究チームはGJ504bを7回にわたって観測し、背景星でないことを確認、さらにはGJ504に対して軌道運動していることも確認したのである。惑星と主星までの見かけの距離は44天文単位で、海王星の軌道半径より大きく冥王星の軌道半径に匹敵する。

 直接観測では、惑星の質量は明るさと年齢に基づいて推定される。これまでに撮像に成功している惑星はいずれも年齢が5千万年以下と若く、そのような若い天体の質量推定には幅がある。それは、惑星がどのように生まれたのかがわからないため、用いる天体進化の理論モデルによって惑星質量に不定性が生じるためだ。


 褐色矮星との違い
 木星の約14倍の質量を持つ天体は、惑星と恒星の中間的な質量を持つ「褐色矮星(かっしょくわいせい)」として区別されることが多いが、実はこの質量不定性が惑星と褐色矮星の区別を非常に難しくしている。実際、新しいモデルを用いると、これまでに直接撮像されたすべての惑星が木星質量の14倍よりも重い天体になってしまうのだ。

 一方、惑星GJ504bの場合は年齢が1~5億年と比較的年老いているため、質量推定においてこの不定性の影響は小さくなる。研究チームは、さまざまなモデルを用いてもGJ504bの質量は褐色矮星の質量よりも十分に小さいことを突き止め、まさに「第2の木星」と呼ぶにふさわしい天体であることがわかったというわけだ。

 従来の理論を用いると、このGJ504bの質量は最低でわずか木星の3倍の可能性もあり、その場合、これまでに撮像された惑星の質量としては最小記録となる。年齢の不定性を考慮した場合でも、3~5.5木星質量がもっともらしいと推定された。


 GJ504bの特徴
 直接観測の長所は、惑星を「発見」するだけでなく、「特徴づける」ことも同時に可能なことだという。複数の赤外線波長における撮像観測から、この天体は温度が絶対温度で約500度(摂氏230度)と非常に低温であること、また、特異なカラーを持つこともわかった。

 これらは、この巨大惑星の大気についての重要な情報をもたらす。過去の褐色矮星の観測から、その大気には塵でできた雲がある場合とない場合があることがわかっている。褐色矮星と系外惑星のカラーを比較すると、これまでの直接撮像惑星が塵でできた雲に富んだ大気であるのに対し、惑星GJ504bは低温度で大気中の雲が少ない惑星の例と考えられるという。

 惑星GJ504bは、太陽に似た主星から、太陽系でいうところの冥王星の遠日点に近い44天文単位(冥王星の遠日点は49天文単位)という離れた領域に発見された。太陽系のデータを基として作られた太陽系形成理論による「標準的惑星形成理論」では、このような遠方に惑星を形成することは難しいという。


 標準的惑星形成理論から外れる
 巨大惑星の誕生の仕方として、まず原始惑星系円盤中で大量のガスを集めることが可能なほど大きな固体の原始惑星が形成される必要がある。しかし、恒星からおよそ30天文単位以遠の領域ではそれが難しいことが理論的に知られており、GJ504の惑星系の場合も同じだ。重い円盤が重力不安定を起こして巨大惑星を作る可能性もあるが、そのような重い円盤が太陽型星の周囲にできる可能性は低いという。

 このようにGJ504bの起源を特定することは、現時点では困難だ。ただし、主星のGJ504は典型的な恒星よりも金属量が多いことがわかっており、これが固体の原始惑星の形成を促進し、結果として巨大惑星への成長に影響した可能性などが、研究チームによって指摘されている。検証には今後さらなる観測が必要だが、今回の観測結果が惑星系形成理論に大きな一石を投じたのは確かだという。


 SEEDS計画の成果
 また、SEEDSプロジェクトでは、現在までにGJ758およびアンドロメダ座カッパ星の周囲の巨大惑星の直接観測による発見にも成功している。また、ぎょしゃ座AB星、リック・カルシウム15星、HD169142星、SAO206462星、PDS70星、おうし座UX星、さそり座J1604星、HR4796A 星、HIP79977星など、多数の星の周囲にある原始惑星系円盤の詳細な構造を明らかにすることにも成功。

 SEEDSプロジェクトで直接撮像された原始惑星系円盤では、遠方巨大惑星が発見される半径領域に空隙構造や渦巻腕構造が多く見られる。この原因としてすでに惑星が「円盤中に存在している可能性」があるという。つまり、今回発見された惑星GJ504bのように遠方で巨大惑星が生まれることは珍しくないのかも知れないとする。標準理論を越えた惑星系形成理論が求められ始めていることは、SEEDSプロジェクトの大きな成果の1つといっていいだろう。

 また、個々の天体の詳細解析だけでなく、統計的議論を行えるようになってきたのもSEEDSプロジェクトの成果の1つだとする。このような直接観測を続けることによって、遠方巨大惑星はどの程度の頻度で存在するのか、どのように形成されたのか、太陽系外の巨大惑星の大気はどのような特徴か、さらに宇宙の中で太陽系は普遍的な存在なのか、という問いに迫ることが可能になるという。


 次世代補償光学「SCExAO」
 今後は補償光学の性能を向上させた、系外惑星探査のための次世代補償光学「SCExAO(スケックス・エーオー:超補償光学系)」との組み合わせにより、より内側の惑星探査を行うことも計画されている。SCExAOは従来よりも約1桁多い素子で大気揺らぎを抑制し、宇宙空間からの観測に匹敵する優れた星像を得ることができるという。また、先進的コロナグラフの活用により、主星の近くの暗い天体を観測する能力(コントラスト)を2桁以上向上させることができると期待されている。SCExAOにより、「惑星」に対する研究チームの理解を何段階も前に進めることにつながるはずだとした。


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ビジュアル 宇宙大図鑑 太陽系から130億光年の果てまで
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