異常気象は地球温暖化が原因か?
 連日暑い日が続いている。気温が40度を超えるような日が続くかと思えば、都心ではゲリラ豪雨、山口県や秋田県の一部では、これまで経験したことのない集中豪雨があり大きな被害が出ている。

 地球温暖化のためなのか、最近の異常気象はどこか地球がおかしいのでは・・・?と思わせる。確かに温室効果ガスのCO2は増え続けているのだが、それだけで、これほど毎年のように異常気象が発生するものだろうか?

 実は気象の変化は、様々な要因が複雑に絡み合って起きていることがわかってきている。昨日と同じ天気が今日も続くとは限らない。毎日新しい要因で、新しい気象現象が起きていると考えれば、異常気象も平常気象になる。

 今回、最新の氷床-気候モデルを用いたシミュ レーションの結果、氷期-間氷期が10万年周期で交代する大きな気候変動は、日射変化に対して気候システムが応答し、大気-氷床-地殻の相互作用によりもたらされたものであることを突き止めた。


 成果は、AORIの阿部彩子准教授、JAMSTEC 齋藤冬樹研究員、極地研の川村賢二准教授、コロンビア大のモーリーン・レイモ教授、ETHのハインツ・ブラッター教授らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、8月8日付けで英科学誌「Nature」に掲載された。

 この報告書からは、CO2の変化(大気)だけでなく、ミランコビッチ理論による日照量の変化、南極・北極などの氷(氷床)の量や、大地の変動(地殻)なども異常気象に大きく関係していることがわかる。

 以下はマイナビニュースの記事「氷期ー間氷期が10万年周期で交代するメカニズムを解明」から引用する。


 地球温暖化の根本原因は、ミランコビッチ理論による日照量変化
 地球の極域の気候と南極大陸やグリーンランドに見られる大陸氷河(氷床)の変化は、現在進行している地球温暖化の重要な指標であると共に、海水準(静止している海面)を直接変動させる要因にもなっている。とりわけ、人類が進化してきたここ100万年間は、氷期と間氷期が交互に約10万年の周期で交代する「氷期-間氷期サイクル」であり、氷床量の変動は海水準変動(海面の高低変化)に換算して130mにも及ぶものであった。しかし、このような気候と氷床の大変動の周期と振幅をもたらすメカニズムはまだよくわかっていない。

 この大変動の根本要因は、「ミランコビッチ理論」により夏の日射変動であると考えられている。実際、古気候データの統計学的解析からは、自転軸の傾きや北半球の夏における太陽と地球の距離といった、夏の日射量を決定する各要素の変動周期が氷期-間氷期サイクルと、密接に関わっていることが示されてきた。

 しかし、日射強度そのものには約2万年と4万年の変動周期が主に見られ、氷期-間氷期サイクルの10万年周期が顕著に見られない。そのため、10万年周期の発現には気候システムの内部フィードバックメカニズムが働いていると考えられ、これまでさまざまなプロセスが提案されてきた。例えば、北半球氷床が十分大きくなると不安定になり、次の夏期日射の増大にともなって氷期終焉になるといったものである。


 行き過ぎた地球温暖化、CO2濃度上昇説
 しかし、これまで用いられて来た簡単なモデルでは、観測で直接的に検証したり制約したりできる物理量や物理プロセスを扱うことができないので、肝心の気候変動メカニズムの実体は謎だった。さらに、氷床コアから得られている大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の変動が氷期サイクルに先行しているようにみえることから、氷期サイクルの原因は炭素循環にあるとする、ミランコビッチ理論に反対する説も提案されてきたのである。

 阿部准教授らは、種々の気候要因に対して地球システムが応答する際に起こるフィードバック効果については、あらかじめ大気大循環モデルを用いて見積もっておき、その結果と3次元氷床力学モデルを組み合わせることにより、大気-氷床-地殻間のフィードバックを考慮しながら氷床モデルを長期間積分することを可能にするという論文で、2012年度猿橋賞を受賞しており、今回の研究ではさらにその考えを発展させた。

 過去40万年については、外的要因として必要な日射変動(ミランコビッチ・フォーシング)は天体理論から精密に計算でき、また、大気中のCO2濃度についても、南極ドームふじ氷床コアにより正確な年代が与えられたので、これらの気候強制力を正確に入力することが可能になった形だ。このようにして、氷床-大気間のフィードバック効果を考慮にいれた氷床-気候モデル「IcIES-MIROC」を過去40万年にわたって積分し、過去の氷床変動の再現実験を実施した上で、各種気候要因の役割を別個に調べるための感度実験が行われた。


 氷床量と氷床の位置、地殻の変形速度を考慮
 その結果、10万年周期の氷床変動や、氷床拡大期における氷床量や地理的分布を再現することに成功。CO2濃度を一定に保ったり、地殻の変形速度を無限大と仮定したりした感度実験の結果からは、日射変化に対して大気-氷床-地殻の非線形的な相互作用が生じ、それが10万年周期を生み出しているという事実が突き止められた。大気中のCO2は、氷期-間氷期サイクルに伴って変動し、その振幅を増幅させる働きがあるが、CO2が主体的に10万年周期を生み出しているわけではないことも示唆された。

 さらに、日射強度を一定に保ちながら20万年ずつ積分することを繰り返した結果、求めた日射強度に対する氷床の平衡応答解が、氷床の初期条件によって2通りに分かれ(すなわち多重応答)、その「ヒステリシス(履歴)構造」が北米とユーラシア大陸で大きく異なり、その差が10万年周期出現にとって決定的であることが発見されたというわけだ。なおヒステリシスとは、ある系の状態が、現在加えられた力や外的条件だけでなく、過去にどういう状態であったかということに依存するような場合のことをいう。

 北米大陸はユーラシア大陸と対照的に、近日点の位置の変動周期(約2万年)ごとに氷床が大きく成長する。日射の最大強度を決定する離心率(約10万年周期)が最小に近づくにつれ、氷床成長は加速し、やがて氷床が極大サイズに達する仕組みだ。

 しかし、大きく成長すればするほど氷床の末端は南下し、後退に必要な日射の増加は小さくて済む。この状態に達した後、離心率がふたたび増大を始め、夏の日射が強くなることで氷床の後退が始まる。急速で大規模な氷期終焉を招く原因は、大気-氷床-地殻にわたる非線形な相互作用にあるという。ひとたび氷床が後退を開始すると、深く沈み込んだ大陸地殻の応答の遅れのために、氷床表面の融解により低下した表面高度がなかなか復活せず、融解が一気に進むのだ。(マイナビニュース 2013/08/09)


 ミランコビッチ理論(サイクル)とは何か?
 ミランコビッチ・サイクル(Milankovitch cycle)とは、地球の公転軌道の離心率の周期的変化、自転軸の傾きの周期的変化、自転軸の歳差運動という3つの要因により、日射量が変動する周期である。理論計算によると、周期は約2万年、約4万年、約10万年という3つに大別できる。

 1920~30年代に、セルビアの地球物理学者 ミルティン・ミランコビッチ(Milutin Milanković)は、地球に入射する日射量の緯度分布と季節変化について当時得られる最高精度の公転軌道変化の理論を用いてかなり正確な日射量長周期変化を計算した。その精度が地質学界で認められてきたことからこの名がある。

 ミランコビッチ・サイクルで表される日射量の変化は、北極や南極の氷床の規模の変化や氷河期や間氷期がおとずれたりする年代を求めるのに有効である。ただし、その計算は複雑であって理論と実際が異なる場合があるため常に再計算が要求される。

 ミランコビッチの算出した数値は、1960年代まで地質学者たちの間で用いられてきたが、1959年にシカゴ大教授ウィラード・リビー(Willard Frank Libby)によって開発された放射性炭素年代測定法などが発展して普及するに伴い、60年代には、一時廃れかかった。しかし、70年代に、海洋底のボーリング調査が行われ、採取されたサンプルに遺された微生物(有孔虫)化石の酸素同位体比から得られる気候変動の周期は、ミランコビッチの算出した数値ないしは計算法で得られる値に近い値であり、彼の仮説が改めて見直されるようになった。(Wikipedia:ミランコビッチサイクル


参考 マイナビニュース: AORIなど、氷期ー間氷期が10万年周期で交代するメカニズムを解明
アイラブサイエンス: 南極の氷からわかる「ミランコビッチ・サイクル」とは何か?


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