ビタミンKの発見
 ビタミンというと、A,B,Cを思い出すが「ビタミンK」というものがある。ビタミンは5大栄養素の一つなので、人類にとって必須、なければ命にもかかわる。「ビタミンK」とは何だろうか?

 「ビタミンK」は、油脂に溶ける脂溶性ビタミンのひとつ。私たちの体では食品から摂取するビタミンKと、体内の腸内細菌や組織でつくられたビタミンKとの両方を利用している。ビタミンKは納豆に非常に多く、1パック(40g)には348μgも含まれている。その他には、こまつ菜やほうれん草などの緑黄色野菜にも多く含まれている。

 第43回ノーベル生理学・医学賞には、このビタミンKの発見、その構造や働きをあきらかにした研究が選ばれた。受賞したのはデンマークの生化学者カール・ピーター・ヘンリク・ダムと、アメリカの生化学者エドワード・アダルバート・ドイジーである。受賞理由は「ビタミンKの化学的本性の発見」。


 ビタミンKは、出血した時に血液を固めて止血する因子を活性化する。また、骨の健康維持にも不可欠で、骨にあるたんぱく質を活性化し、骨の形成をうながすことも知られている。このため、ビタミンKは骨粗しょう症の治療薬としても使われている。さらに、血管(動脈)の健康にも役立っている。


 カール・ピーター・ヘンリク・ダム
 カール・ピーター・ヘンリク・ダム(Carl Peter Henrik Dam、1895年2月21日~1976年4月17日)はデンマークの生化学者で生理学者。1929年にコペンハーゲン大学準教授に就任した。渡米して1942年から1945年までロックフェラー医学研究所研究して、1946年からデンマーク工科大学の生化学科教授を務めた。

 彼はビタミンKの発見と人体におけるその働きの解明によりエドワード・アダルバート・ドイジーとともに1943年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 彼は、ニワトリにコレステロールを全く含まない食事を与える実験を行ってビタミンKの機能を解明した。ニワトリは数週間経つと出血が制御できないようになった。ダムは血液を凝固させるのに必要な成分を単離し、凝固ビタミンと呼んだ。このビタミンは、凝固を意味するドイツ語Koagulationsの頭文字を取ってビタミンKと呼ばれるようになった。

 彼はコペンハーゲンで1895年に生まれ、1976年に亡くなった。(Wikipedia)

 ダムはコペンハーゲン大学に勤務していた1928年、ニワトリのひなに体内でコレストロールが合成されていることを発見。また、ひなに皮下や筋肉で出血するひながあることを示し、出血の原因を壊血病と考えビタミンCを与えたところ、症状の改善が見られなかった。

 1935年には出血はビタミンC以外のビタミンが関係していることを発表、これをビタミンKと命名。ビタミンKは脂溶性で、血液を凝固させる働きがあることを突き止めた。1939年P・カレルとの研究で緑葉から純粋なビタミンKの抽出に成功した。

 また、血液の凝固にはプロトロンビンという血漿中に含まれる糖タンパク質が必要なことも発見した。トロンビンに変わって血液凝固に関与する。肝臓で生成され、その際、ビタミン K を必要とする。(ノーベル賞受賞者業績事典


 エドワード・アダルバート・ドイジー
 エドワード・アダルバート・ドイジー(Edward Adelbert Doisy、1893年11月3日~1986年10月23日)はアメリカ合衆国の生化学者でビタミンKとその化学構造の発見により、カール・ピーター・ヘンリク・ダムとともに1943年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 彼はまた、1930年にアドルフ・ブーテナントとほぼ同時期にエストロゲンを発見した。彼らはこの物質を別々に発見したが、ブーテナントだけが1939年度のノーベル化学賞を受賞している。

 イリノイ州ヒューム生まれ。1919年にセントルイスのワシントン大学生化学科の準教授となる。1923年から1965年までセントルイス大学生化学科の教授を務めた。

 彼のノーベル賞受賞を記念して、セントルイス大学生化学科は、E・A・ドイジー部門と名づけられた。(Wikipedia)

 ドイジーは、性ホルモンとビタミンKの研究で知られている。1929年、E・アレンとともに卵巣からエストロゲンを単離した。1930年代後半からビタミンKの研究を始め、1939年にビタミンKのはたらきをする2種類の物質を植物と動物から1種ずつ発見。

 ダムがその1種の単離に成功していたので、それをK1、もう1種をK2、とした。これらの物理化学的性質を研究し、同年K1、K2の構造を決定、K1の合成に成功した。(ノーベル賞受賞者業績事典


 ビタミンKとは何か?
 ビタミンK (Vitamin K) は、脂溶性ビタミンの一種で、ビタミンK依存性タンパク質の活性化に必須のビタミンである。ビタミンKは、2-メチル-1,4-ナフトキノンを基本骨格とし、3位に結合した側鎖の構造の違いからビタミンK1とビタミンK2が存在する。

 ビタミンK1はフィロキノンとも呼ばれる化合物で植物によって作られる。ビタミンK2は、イソプレノイド側鎖の長さの違いからメナキノン-4(MK-4)からメナキノン-14(MK-14)に分類される。天然型のK1、K2の他、ビタミンK3やビタミンK4などの合成型が知られる。 Kはドイツ語で凝固を意味するKoagulationsに由来する。

 ビタミンK1は、主に植物に含まれ、葉菜類、植物油、豆類、海藻類、魚介類などに多く含まれる。ビタミンK2は、微生物が作り出すビタミンであり、人体内の腸内細菌によっても作り出される。また、チーズや納豆などに多く含まれる。側鎖部分の長さ(後述構造式中のn)によりMK-6~MK-14が知られる。

 納豆には主にMK-7が含まれる。ビタミンKは、ビタミンK依存性タンパク質中の特異的なグルタミン酸残基がγ-カルボキシルグルタミン酸(Gla)に転換される際に必要な補因子である。

 ビタミンK依存性タンパク質には、肝臓によって作られる血液凝固に関与する因子の他、骨芽細胞によって作られるオステオカルシン、動脈等で作られるマトリックスGlaタンパク質がある。また、食事から摂取したビタミンKは生体内でMK-4に転換し、核内レセプター(SXR/PXR)と結合しコラーゲン産生に関与していることが知られる。


 血液凝固とビタミンK
 血液凝固には多数を因子が関係 しており、きわめて複雑だ。出血すると、血管が収縮して狭くなり、血液の流れが低下して、血 が固まりやすくなる。これに加えて、次の2つの反応が重要。

 第1は「血小板の凝集」で、第2は「血液凝固因子」活性化の一連の反応が起こり、「フィブリン繊維」の網目を作る過程だ。ビタミンKはこのうち第2の「血液凝固因子」全般に関係する。

 血液凝固には多くの血液凝固因子が関わっており、その多くのがビタミンK依存性タンパク質である。ビタミンKは正常な血液凝固に必須である。

 成人では、通常の食事で血液凝固に関してビタミンK不足になることはほとんどないが、新生児、乳児、肝疾患等により、出血症が知られる。新生児用の粉ミルクにはビタミンKを添加することがある。また、産科では出生時、出生1週間、一か月健診などの頃合いでビタミンKシロップを投与する。


 骨代謝とビタミンK
 ビタミンKのうちビタミンK2(MK-4)が骨粗鬆症の治療薬として利用されている。骨形成マーカーの1つであるオステオカルシンは、ビタミンKによって活性化され骨代謝を調節する。

 このオステオカルシンを十分に活性化するためには、血液凝固を維持するために必要なビタミンK量よりも多くのビタミンKを摂取しなければならない。納豆を多く食べる習慣のある地方では、納豆をあまり食べない地方よりも骨折が少ないことが知られており、納豆に含まれるビタミンK2(MK-7)が骨折を予防する因子と考えられる。

 ビタミンKのうち、MK-4やMK-7などのビタミンK2はオステオカルシンを活性化するだけでなく、骨組織に対して直接的に骨形成を促進し、骨の破壊を抑える効果がある。また、ビタミンK2は、骨のコラーゲン生産を促進し、骨質を改善する点に特徴がある。


 動脈硬化とビタミンK
 動脈にカルシウムが沈着する動脈石灰化が動脈硬化症の最も重要な症状の1つとして認識されている。ビタミンK依存性タンパク質の1つであるマトリックスGlaタンパク質(MGP)を欠損したノックアウトマウスは、全身の動脈にカルシウムが沈着し死亡する。

 ビタミンK阻害剤を投与した患者では、MGP欠損マウスと同様の動脈石灰化がみられる。心臓病とビタミンK摂取量を調べた疫学研究で、ビタミンK2の摂取量が高い群では低い群と比べて動脈石灰化が抑制され、心臓病による死亡率が半分程度であったとが報告された。

 また、臨床試験においてビタミンKを3年間投与すると血管の弾力性が維持されることもが知られる。


参考 Wikipedia:ビタミンK カール・ピーター・ヘンリク・ダム エドワード・アダルバート・ドイジー グリコ栄養成分百科:ビタミンK 日外アソシエーツ:ノーベル賞受賞者業績事典 新訂第3版 全部門855人


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