“継続は力なり”を科学的に立証
 “継続は力なり”とよく言うが、そのことが科学的にも正しいことが立証された。

 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は8月21日、外国語学習において脳は従来想定されていた以上に柔軟に変化することを明らかにしたと発表した。

 日々の学習により能力が向上するのは、脳に何らかの変化が生じているためと考えられているが、その詳細は未解明で、学習によって脳局所の構築に変化が生じることが重要なのか、脳局所間の連結が強まることが重要なのかについての議論が繰り広げられてきた。

 今回、学習プログラムを受けた人は、右前頭葉に灰白質容積の増加と、大脳深部の神経細胞体の集合体(核)の1つである尾状核の連結、側頭葉上部の連結に強化が生じていることが確認された。ところが学習をやめると、学習前と変わらない値に戻っていることも確認された。


 脳は、左脳と右脳の2つに分かれていて、それぞれ身体の反対側の運動・感覚機能を司っている。また、左脳は言語認識・計算・分析を、右脳は空間認識・想像・直感を得意とするといわれる。今回は、左脳の言語認識部分について調べたものである。

 やはり、学習は継続することが大切だ。学校では朝読書の時間があるが、これも毎日続けることで、理解力が増していることがよくわかる。また、書く方も同じで、私は毎日、漢字の書き取り練習をしているが、やらない日があると、とたんに漢字を書く能力が低下するように感じる。

 ブログには読む力と書く力が両方必要で、自分は記憶力が弱いのかと思っていたが、やはり毎日の積み重ねが大切なことが今回の実験で確認できた。この調子で英語の学習もしてみたいと思う。皆さんもあきらめずに学習を続けましょう。

 以下に、国立精神・神経医療研究センターのプレスリリース「外国語学習による脳の柔軟な変化を可視化」の記事を引用する。


 外国語学習による脳の変化を可視化で確認
 脳は部位ごとに異なる機能を持っている。例えば、右利きの人では左大脳半球の前頭葉と側頭葉の一部に言語機能が局在していることが知られており、これらの脳局所は言語野と呼ばれている。一方、右大脳半球は言語との関わりが乏しいと考えられてきた。

 運動や言語の学習は、人間が日々行っていることにもかかわらず、分かっていないことが多く残っている。学ぶことで能力が向上するのは、そのような脳の構築に何らかの変化が生じているためと考えられるが、その詳細は明らかではない。

 学習によって脳局所の構築に変化が生じることが重要なのか、脳局所間の連結が強まることが重要なのかについては議論が続いている。最近、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて学習による脳の構築の変化を計測できるようになりましたが、脳の局所の変化あるいは脳の局所間の連結を表す画像のどちらか一方しか解析の対象にしていなかったため、このような疑問にはっきりした答えを出すことができなかった。

 今回、研究グループでは、新たに脳局所と局所間連結の両方を継時的に評価できる方法を開発し、従来左半球に偏在して生じると考えられてきた言語学習を題材として、学習によって脳局所と局所間連結にどのような変化が生じるのかの検討を行った。


 学習の成果を脳で確認
 4か月間の英語語彙学習プログラムに参加した24名の日本人大学生と、参加しなかった20名の日本人大学生から、学習期間の前後に英語能力テスト(TOEICなど)と複数の脳MRI画像データ(脳灰白質(注1)容積MRI画像、脳白質連結MRI画像)を取得した。

 参加者は全員右利きでした。学習後にはTOEICの点数は30%アップし、右前頭葉44野に灰白質容積の増加、44野と尾状核の連結と44野と側頭葉上部の連結に強化が生じていた。

 予想に反して、これらの変化は右大脳半球に偏在しており、右前頭葉44野の灰白質容積増加と、右前頭葉44野と尾状核の局所間連結増強だけがTOEICの点数アップ率と相関していました。学習プログラムに参加しなかった人たちにはこのような変化は見られなかった。

 次に、学習プログラムに参加した人たちについて、プログラム終了1年後に再度検査を行ったところ、ほとんどの参加者はTOEIC点数が学習直後より低下しており、右前頭葉44野の灰白質容積と44野と尾状核の連結強度も学習前に近い状態に戻っていた。

 しかし自発的に英語学習を続けていた少数の参加者では、点数が保たれていたと同時に、前頭葉44野の灰白質容積と44野と尾状核の連結強度もプログラム参加前より増加した状態を保っていた。

 さらに137人の日本人成人で英語語彙能力テストを行ったところ、英語語彙能力が高い人ほど右前頭葉44野の容積と44野と尾状核の連結が発達していることがわかった。

 以上の結果は、成人になっても、学習により脳局所と局所間連結の両方が並行して柔軟に変化することを示している。

 学習に合わせて強化されたせっかくの神経回路も、学習を怠るのと並行して失われてしまうことがわかった。そして、外国語学習によって言語との関わりが乏しいと考えられていた右半球に構築の変化が生じることは、学習によって脳が変化しうるレパートリーは従来考えられていたよりさらに幅広いことを意味する。

 言語学習に伴う前頭葉44野と尾状核の連結強度の変化は、言語学習に「強化学習」の機構が働いている可能性を示唆する。


 脳のしくみとはたらき
 脳に関する基本的な用語を確認しておこう。まず、灰白質は大脳皮質や大脳深部に見られる神経細胞体の集合で、大脳皮質では層構造を持っている。白質は灰白質の神経細胞体から出た軸索(神経細胞間の連絡ケーブル)が通るところである。

 脳機能局在論では、脳(特に大脳皮質)が部分ごとに違う機能を担っているとしている。脳機能はある程度局在しているが、この局在は臓器などの器官のように代わりの利かない堅固なものなのか、それとも後天的に形成され変わるものなのかまだはっきりしない。

 左半球の前頭葉44野は前頭葉言語野(ブローカ野)に相当すると言われている。ところが、今回英語学習によって変化が見られたのは、右大脳半球のブローカ野相同部位だった。

 尾状核とは、大脳深部の神経細胞体の集合体(核)の1つであり、大脳基底核に分類される場所。前頭葉皮質や中脳ドパミン細胞を含むほかの大脳基底核と強く連絡し、報酬に基づく行動学習(強化学習)に関わると考えられている。

 脳のどの部位がどの認識機能を担うかについてはおおまかに分類されているが、個人差もある。左右の活動の差異も示されてはいるが、fMRIなどによる測定は相対的な活動の増大を示すもので、その部位がその精神活動の中枢であるとか、その部位がその精神活動を専門に処理するなどの根拠にはならない。


 右脳・左脳論は迷信?
 脳機能局在論に関して、一般に広く知られる右脳・左脳論があり、これは左半球が言語や論理的思考の中枢であり、右半球が映像・音声的イメージや芸術的創造性を担う、という観念である。

 しかし芸術などを対象とした脳機能イメージングでは右半球にも活動のピークがあるといった程度であり、多くの研究では左半球にも活動の増大が認められる。

 また、理屈っぽい人物は左脳優位、芸術肌の人物は右脳優位といった説があるが、そのほとんどは科学的な知見からかけ離れた通俗心理学に類するものであると批判されることが多い。誤った俗説として以下のようなものがある。

 「左半球全体が論理処理のために活動。また左半球だけが論理処理をする。右半球全体がイメージ処理のために活動。また右半球だけがイメージ処理をする。」

 「右脳を鍛える」と称する訓練等によって「イメージ能力」や「創造性」が向上するという説は、科学的根拠がなく否定も肯定もできない。経済協力開発機構は、2007年の報告書「脳の理解:教育科学の誕生(Understanding the Brain: The Birth of a Learning Science)」で、脳についての迷信として、「論理的な左脳」と「創造的な右脳」という観念をあげている。


 言語中枢とは?
 ことばの理解や表現をつかさどる脳の部分を言語野(言語中枢)といい、前言語野、後言語野、上言語野の3つの領域から成り立っている。

 前言語野は、運動性言語野ともいい、ことばを話す機能をつかさどっています。
 後言語野は、感覚性言語野ともいい、話しや文字の理解、書字の機能をつかさどっています。
 上言語野は、前言語野の機能を補助するはたらきをしていると考えられています。

 この3つの言語野は、神経でつながっていて、互いに協調しながらことばの機能を保っています。また、この3つの言語野は、右ききの人は左の大脳半球(だいのうはんきゅう)に、左ききの人は右の大脳半球に存在するのが原則。

 言語中枢は、大脳皮質において言語知覚および言語運動を支配していると考えられる領域。聞いた声や書かれた文字を言語として理解するのに働くウェルニッケ中枢、発語筋の運動の制御に働くブローカ中枢などが知られるが、実際には言語中枢は限られた場所に局在するというより、大脳皮質の広い範囲が関係していると考えられている。


参考 国立精神・神経医療研究センターのプレスリリース:外国語学習による脳の柔軟な変化を可視化 wikipedia:脳機能局在論 コトバンク:言語中枢


子どもの脳の発達 臨界期・敏感期 早期教育で知能は大きく伸びるのか?
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