有髄神経と無髄神経
 神経は構造上の違いで、有髄神経と無髄神経の2つに分けられる。有髄神経は、髄鞘を持たない神経で、無髄神経は、髄鞘を持たない神経である。髄鞘は脂質二重層で構成された細胞膜が何十にも巻きつく形で構成されているため、絶縁体の役目をしている。

 機能的な違いとしては、有髄神経は跳躍伝導をし、無髄神経は跳躍伝導をしない。 無髄神経では軸索に沿って膜の外側がマイナス、内側がプラスに帯電している状態が並んでいると想像する。

 一方、有髄神経では髄鞘で覆われた部分では絶縁されているため、電位差が生じているのは軸索の両端になる。 この違いにより、有髄神経では無髄神経に比べ、軸索における電流の流れる速度すなわち、電気的信号の伝達速度が飛躍的(神経の太さにもよるが10倍程度)に速まる。

 1944年のノーベル生理学・医学賞は、このような神経細胞のさまざまな構造を調べ、伝達速度を測定する機械を開発・測定した研究に贈られた。受賞したのは米国の生理学者、ジョセフ・アーランガーと、ハーバート・ガッサー。受賞理由は「個々の神経繊維の高度な機能的差異に関する研究」である。


 ジョセフ・アーランガー
 ジョセフ・アーランガー(Joseph Erlanger、1874年1月5日~1965年12月5日)はアメリカ人の生理学者、医師。神経線維の様々なタイプを発見して、ハーバート・ガッサーとともに1944年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 カリフォルニア州サンフランシスコで生まれ。1899年、ジョンズ・ホプキンス大学医学部卒業。1904年にジョンズ・ホプキンス大学準教授となる。1906年ウィスコンシン大学マディソン校教授、ここで、S・ガッサーに教授し、神経細胞についての共同研究を行う。1910年セントルイスのワシントン大学教授に就任。ミズーリ州セントルイスで死去した。

 アーランガーは、はじめ循環器系の生理学研究所を行った。1920年代に入るとガッサーと神経線維の生理学研究に着手。ここで従来の電磁式計器では、神経インパルスという瞬時的で微小の信号をうまく現せないことに気づき、陰極線オシログラフを用いた増幅器を開発した。

 また、この計器を用いて神経線維の活動電位を測定した。混合型神経幹では、神経線維の構成種別に電位の衝撃波計を分離記録し、刺激伝達の速度がそれぞれ違うことを明かにした。また、繊維の太さと伝達速度の間に比例関係があることを示した。

 1937年ガッサーとともに「神経活動の電気的信号」を発表。1944年これらの業績に対して、ノーベル生理学医学賞が贈られた。受賞理由は「個々の神経繊維の高度な機能的差異に関する研究」

 この他、血圧記録計を開発。血圧の腎機能への影響を研究。心臓の房室刺激伝達系についても研究を行った。


 ハーバード・ガッサー
 ハーバート・ガッサー(Herbert Spencer Gasser、1888年7月5日 - 1963年5月11日)はアメリカ人の生理学者、医師。神経線維中の活動電位の研究で、ジョセフ・アーランガーとともに1944年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 ウィスコンシン州プラットヴィルで生まれ、ウィスコンシン大学に入学、動物学を学び1911年卒業。J・アーランガーに生物学を学ぶ。ジョンズ・ホプキンス大学で医学博士号を取得した。ロックフェラー医学研究所の生理学部門の教授を務めた。

 ガッサーの初期の研究はトラウマショックに関するものであった。第一次世界大戦後、アーランガーと神経生理学について研究を始める。ここで問題となったのは」、神経インパルスの電気的反応を正確に記録できる計器が存在しないことであった。

 そこで1921年増幅器を開発。これは陰極線オシログラフを使って電流を増幅し、電位の正しい波形を記録させるものであった。このオシログラフを使って、神経線維の種類が違えば、刺激伝達の速さも違うなど、神経線維の機能的差異を明らかにした。

 また、神経の直径と速さの関係には比例関係があることを示した。この他、神経線維を通じてそれぞれの繊維がどのように配置されているかを実証。知覚神経と運動神経の本質的な違いに対しても研究。この分野の発展に寄与した。また痛みの認識や筋肉を動かす過程についても研究。1937年アーランガーと共著で「神経活動の電気的信号」を出版。一連の研究に対して、1945年ノーベル生理学医学賞が贈られた。


 神経活動の電気的信号
 ジョセフ・アーランガーとハーバード・ガッサーは、1937年「神経活動の電気的信号」の中で、神経細胞を求心性神径の直径によって3群に分類した。 また、以下のようなことを述べている。

神経線維直径(μ)伝導速度
(m/sec)
機能


Aα12-2070-120運動位置感覚、固有感覚
β5-1230-70触覚、圧覚
δ2-512-30痛覚、温冷覚
B1-33-15交感神経節前線維


C0.4-1.20.5-2.0痛覚、温冷覚
0.3-1.30.7-2.3交感神経節後線維

•皮膚の感覚神経の終末は真皮に多く存在する。
•有髄線維(myelinated fiber)は、シュワン細胞が作る髄鞘とシュワン鞘(=神経鞘)に覆われている。無髄線維(unmyelinated fiber)はシュワン鞘に覆われている。シュワン鞘の周辺を神経内膜 、神経周膜、神経上膜が取り巻いている。
•神経線維の太さと伝導速度は相関がある。
•教科書では、Aδ線維とC線維の伝導速度には、オーバーラップがないようだ。
•Aδ線維の伝導速度は速い痛み、C線維の伝導速度は遅い痛みをよく説明できる。
•体性神経におけるA線維とC線維の比は1:2であり、内臓神経では1:8~1:10で、内臓に含まれるC線維の割合が多い。
•圧迫、低温、低酸素による伝導ブロックは神経線維が太いほどブロックされやすい。
  →Aβ線維→Aδ線維→無髄C線維
•局所麻酔薬によるブロックは神経線維が細いほどブロックされやすい。
  無髄C線維→Aδ線維→Aβ線維
•C線維には、ポリモーダル受容器と機械刺激非感受性の受容器とがある。
•エードリアンの法則 Adrian's law
刺激の強さが増すにつれて、感覚神経から記録されるインパルスの頻度が増し、また放電活動する線維の数も増加する。しかし侵害刺激の強さが増しても、痛みが強まるとは限らない。


参考 痛みと鎮痛の基礎知識:アーランガー・ガッサーによる神経線維の分類 Wikipedia:ジョセフ・アーランガー ハーバード・ガッサー  


生体電気信号とはなにか―神経とシナプスの科学 (ブルーバックス)
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