“ウンカ”は歯車でジャンプする
 ウンカは小さい虫だがよく飛び跳ねる虫である。よく見るとセミにそっくりだが、セミよりずっと小さい。日本でウンカは、稲に害を及ぼす害虫として知られている。

 今回、欧州に生息するウンカ類の一種は、成体になるまで後ろ脚に「歯車」を備え、2本の脚をそろえて真っすぐジャンプするのに使っていることが分かった。

 英ケンブリッジ大の研究チームが発見し、9月13日付の米科学誌サイエンスに発表した。 自然界に存在する「機械」は、大腸菌などの鞭毛(べんもう)の根元にあるモーターが知られるが、身近な昆虫で見つかったのは珍しい。歯車の機械は、かつては人類が発明したと考えられてきたが、自然界に先例があったとは驚きだ。(時事通信2013/09/13)


 以下はナショナルジオグラフィックの記事「歯車を使ってジャンプする昆虫」から引用する。


 “歯車”を使ってジャンプする昆虫 
 農産物の害虫、ウンカ類(学名:Issus coleoptratus)の幼虫は、ジャンプ1回で約1メートル飛ぶ。後足に溝でかみ合う歯が並んでおり、この“歯車”を使って高速ジャンプ中の足の動きを調整しているという。

 跳躍中、2本の後足は互いに30マイクロ秒ずつ動く(ちなみにバッタは2~3ミリ秒)。そして、ウンカの幼虫は秒速3メートルのハイスピードで空中を飛翔する。

 動きを緊密に制御するこの歯車がなかったら、片方の後足をもう一方の足より前に出した途端、空中で身体が回転してしまうという。

 動物の動きを研究しているイギリス、ケンブリッジ大学研究員マルコム・バロウズ(Malcolm Burrows)氏は、「“歯車”を連動させる例は初めて」とその驚きを語る。

 動物にも歯車のような構造の例がある。しかし、トゲヤマガメ(学名:Heosemys spinosa)の甲羅の縁などは、「あくまでも装飾的で“歯車”としての機能はない」とバロウズ氏。

 また、ワニ類の心臓には血流を制御する歯車のような弁がある。しかし、複数の歯車を組み合わせて動きを同期させる例は動物界の新発見だ。

 ただし昆虫の歯車の構造は、機械部品のように左右対称ではない。

 「ウンカ類の歯車は、ジャンプ直前に機能する」とバロウズ氏は話す。また歯すじが歪んでいるので、回転するのは一方向だという。


 成体には歯車なし
 幼虫が重宝する歯車は、脱皮すると役に立たなくなると言う。成体は代わりに、“摩擦”という戦略を取っている。胴体に最も近い後足の一部を互いに擦り合わせて、動きを同期させているのだ。

 なぜ成体の歯車は用無しになるのか。成体になるまでに5~6回の脱皮を重ねる幼虫は、歯すじが傷ついても次の脱皮で交換できる。しかし、成体はそれ以上脱皮しないからだとバロウズ氏は推測する。

 「脱皮した次の日に歯車が傷ついたら、残りの人生は壊れた歯車を抱えて生き続けなければならない。捕食動物から上手に逃げられなくなれば、その一生はかなり短くなるだろう」とバロウズ氏。

 バロウズ氏は、ウンカ類の幼虫がこのようなユニークなメカニズムを備えているとは予想していなかった。当初は、すばらしいジャンプの仕組みを知りたいと関心を寄せ、技術者のグレッグ・サットン(Greg Sutton)氏と協力、ケンブリッジ大学で秘密の解明に乗り出した。

 しかし、自宅の庭で研究対象を探しても、なかなか見つからない。そこで2010年、5歳の孫息子に目的の幼虫の写真を見せて、助けを求めることにした。

 「数日後に電話がかかってきた。“うちの庭で見つけたよ!”と興奮した様子でね」とバロウズ氏は目を細める。彼のような幼い“研究者”でも、エキサイティングな科学の新発見に貢献できるようだ。

 今回の研究結果は、9月13日発行の「Science」誌に発表された。(Andrew Fazekas for National Geographic News September 13, 2013)


 ウンカとは何か?
 ウンカは、動物界 Animalia 門 : 節足動物門 Arthropoda 綱 : 昆虫綱 Insecta 目 : カメムシ目 Hemiptera 亜目 : ヨコバイ亜目 Homopteraに分類される。

 ウンカ(浮塵子)は、イネの害虫となる体長5mmほどの昆虫を指す。ただしウンカという標準和名を持つものはいない。

 遠く東南アジア方面から気流に乗って毎年飛来することで知られている。時に、大発生して米の収穫に大打撃を与えるだけでなく、ウイルスなどの伝播の媒体ともなる。

 江戸時代に起きた享保の大飢饉や天保の大飢饉の原因とされ、稲作文化圏では忌避される。カメムシ目ヨコバイ亜目の一部のグループで、アブラムシ、キジラミ、カイガラムシ、それにセミ以外の成虫の体長が5mm程のものである。

 そのような範疇の昆虫のいわば典型の一つがウンカであるため、この仲間にはウンカの名を持つ分類群が非常に多い。

 ウンカ類を餌とする小型のトンボ類は益虫とされている。 一方、近年の研究においては稲の細菌性病原体に対する抵抗力を活性化させる性質も報告されており、少数発生時には益虫となる場合も考えられる(2009年11月5日 産経新聞)。

 また、台湾茶の「東方美人」や紅茶の「ダージリン・ティー」はウンカによる食害がチャ葉の香気生成を促進する作用を利用して生産される。

 イネの害虫として有名なのは、セジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカなどである。これらはいずれも良く跳びはね、また良く飛ぶ虫である。しかし翅多型をあらわし、定着時には羽根の短いいわゆる短翅型がでる。

 これは繁殖力が強く、その周辺一帯で大発生を起こすため、水田には丸く穴が空いたように枯れた区画を生じる。これを俗に坪がれと言う。

 トビイロウンカは南方の国から飛来してくる。それが田んぼにたどり着き、どんどん増殖して、田んぼに大きな穴をあけるほどになります(これを俗に坪枯れという)。有機無農薬栽培では、トビイロウンカがいちばん恐ろしい害虫で、一旦大発生するとなすすべはない。

 トビイロウンカは9月以降に大発生するので、私たちは、収穫時期が9月中旬までのあきたこまちやコシヒカリの早生品種を栽培して被害を回避している。(Wikipedia:ウンカ


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