ただの肥満?いいえ象皮病
9月19日NTVの番組「ザ・世界仰天ニュース」で放送された「足が大きく膨れ上がった女性」には驚かされた。
南アフリカに住む女性ソフィアは、美味しそうなパンを食べ続けた。その結果、体重 126kgが317kgになった! 「ただの肥満」と本人も家族もそう思っていたが、脚だけがどんどん太っていく…そしてとうとう彼女はベッドから起き上がれないまでに。そして何と彼女の両脚は、重さだけで120kg以上に!実はその時、彼女は恐ろしい病におかされていた…!
脚が象のように腫れあがってしまったソフィア、実は「リンパ浮腫」を患っていた。また、その原因は「蚊に刺されたこと」のようであった…幸い病院で治療を受けることができ、また家族の支えもり、現在ソフィアは家の中では松葉杖なしでも歩けるようになっていた。
それほど巨大化した足でも治ることに感動した。しかし、蚊に刺されるくらいでそんな病気になることがあるのだろうか?
それがあった。それが「象皮病」と呼ばれる、リンパ性フィラリア症である。熱帯病で、蚊を介してフィラリアと呼ばれる寄生虫が人に伝播されると感染が起こる。
急性症状として成虫やミクロフィラリアに起因するリンパ管やリンパ節の炎症を起こし、これが繰り返されることでリンパ管の閉塞や破裂が起こる。
リンパ管の主要な機能は身体末梢部に毛細血管から供給される組織液の回収であるので、リンパ管の破壊が進行すると身体末梢部に組織液が滞留し、むくみ(浮腫)を生じる。これがリンパ浮腫であり、この浮腫の刺激によって皮膚や皮下組織の結合組織が増殖して象皮病をきたす。
それにしても、世の中にはまだまだ知られていない、病気があるものだ。調べてみると過去日本にも存在したという。今日は象皮病(リンパ性フィラリア症)について調べる。
リンパ浮腫とは何か?
リンパ浮腫とは、リンパ管の働きが何らかの原因で障害されることにより、皮膚組織のある部分に体液が溜まってむくみが起こる疾患である。
リンパ浮腫には、一次性リンパ浮腫(先天性あるいは原因不明のリンパ浮腫)、二次性リンパ浮腫(リンパ節の切除など、明らかな原因のあるリンパ浮腫)がある。
ほとんどは二次性リンパ浮腫。リンパ浮腫になる人は、がんの手術でリンパ節を切除した方や、放射線治療を受けた人が25~30%を占めているといわれている。治療後すぐに発症する方と、10年以上経ってから発症する方がいる。
リンパ浮腫は、リンパ浮腫は外見の変化に強いストレスを感じて、うつ状態になる事もある病気。また、リンパ浮腫をそのまま放置しておくと、日常生活に支障を来したり、細菌感染などの合併症の危険性が高まる。また、リンパ浮腫は女性に多い特徴がある。
リンパ浮腫の症状は、腕や脚のむくみがほとんどですが、脚のむくみに伴い下腹部や外陰部にも発症することもある。
リンパ浮腫で腕のむくみが現れるのは、どちらか片側だけのケースが殆どです。右乳がん手術後には右腕、左乳がん手術後には左腕にむくみが出る。両側乳がん手術後でも片腕にむくみが出ることもある。
婦人科がんや前立腺がんなどの手術後にも片脚にむくみが出る場合が多いのだが、両脚に出ることもある。痛みや皮膚の色の変化はほとんどないが、むくみが急速に進んだ場合には、皮膚が張った感じやしびれを感じることがある。また、強いむくみのために静脈がつぶされると皮膚が青紫色になることもある。
リンパ性フィラリア症とは何か?
リンパ性フィラリア症は、象皮病として知られているが、顧みられない熱帯病である。蚊を介してフィラリアと呼ばれる寄生虫が人に伝播されると感染が起こる。感染幼虫を保有する蚊が人を刺咬すると、寄生虫は人の皮膚から体内に入る。その後、幼虫はリンパ管へ移行し、リンパ系組織の中で成虫になる。
感染は通常、小児期に起こりますが、疼痛を伴う外観の変形は人生の後期に起こる。リンパ性フィラリア症の急性発作は一過性の障害を起こす一方で、永続的な障害も起こす。
現在、73か国の14億人以上の人に感染するリスクがある。感染者の約65%が東南アジア地域に住み、30%がアフリカ地域、残りはその他の熱帯地域に住んでいる。
リンパ性フィラリア症は、2500万人以上の男性に生殖器疾患を起こし、1500万人以上の人にリンパ浮腫を起こしている。罹患率と感染の度合いは貧困と関連し、この疾患の排除は国連ミレニアム開発目標の達成に寄与する。
リンパ性フィラリア症は糸状虫上科(family Filariodidea)の線虫(回虫)の感染で起こる。この細長い線虫は3種類ある。
1.Wuchereria bancrofti(バンクロフト糸条虫):患者の90%がこの糸状虫に感染しています。2.Brugia malayi(マレー糸条虫):残りの患者のほとんどがこの糸状虫に感染しています。3.B. timori(チモール糸状虫):この糸状虫も原因となる。
成虫はリンパ系組織に留まり、免疫機能障害を起こす。人の体内で6~8年生き、生活史の中で何百万ものミクロフィラリア(小幼虫)を産み、ミクロフィラリアは血中を循環する。
リンパ系フィラリア症は様々な種類の蚊によって伝播する。例えば都市部や郊外に広く分布するCulex(イエカ)、田舎に分布するAnopheles(ヤブカ)、主に太平洋の島嶼の常在地域に分布するAedes(シマカ)である。
日本にもあった象皮病
象皮病あるいは象皮症とは主としてバンクロフト糸状虫などのヒトを宿主とするリンパ管・リンパ節寄生性のフィラリア類が寄生することによる後遺症の一つ。
身体の末梢部の皮膚や皮下組織の結合組織が著しく増殖して硬化し、ゾウの皮膚状の様相を呈するため、この名で呼ばれる。陰嚢、上腕、陰茎、外陰部、乳房などで発症しやすい。
フィラリアは線形動物門(線虫類)に属する寄生虫で、今日の日本ではヒト寄生性のフィラリアがほぼ根絶されているため、イヌ寄生性のフィラリアの方が有名になっている。しかし、ヒト寄生性のフィラリアは江戸時代には全国的に分布し、重大視される感染症の一つであった。稀にイヌ寄生性のフィラリアも人体に感染することがあるが、これは心臓寄生性であり、象皮病は起こさない。
フィラリア類の雌はミクロフィラリアと呼ばれる幼生を多量に産生し、これが末梢の毛細血管中に移行して媒介者である蚊に吸引され、他の宿主に運搬される。バンクロフト糸状虫などはリンパ管やリンパ節に成虫が寄生するため、雌の産んだミクロフィラリアは、まずリンパ管内に出現する。患者は急性症状として成虫やミクロフィラリアに起因するリンパ管やリンパ節の炎症を起こし、これが繰り返されることでリンパ管の閉塞や破裂が起こる。
リンパ管の主要な機能は身体末梢部に毛細血管から供給される組織液の回収であるので、リンパ管の破壊が進行すると身体末梢部に組織液が滞留し、むくみ(浮腫)を生じる。この浮腫の刺激によって皮膚や皮下組織の結合組織が増殖して象皮病をきたすのである。
このように、象皮病の直接的な原因はフィラリアの寄生ではなく、リンパ管の破壊と、それによる組織液の滞留である。そのため、体内のフィラリアが既に死滅して感染自体は終結していても、この症状は進行する。むしろ重症の象皮病の患者の体内からは既にフィラリアは見られないことが多い。
また、フィラリアの感染によらず、乳癌などの手術によってリンパ管を破壊しても、象皮病を起こすことがある。
江戸時代に象皮病が日本に蔓延していたことは、葛飾北斎の画に象皮病の患者が描かれていることや、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に象皮病の症状のことを詠んだ歌があることからもうかがえる。
幕末の維新の志士である西郷隆盛は、象皮病に感染したため、晩年は陰嚢が人の頭大に腫れ上がっていたという。藤田紘一郎の『空飛ぶ寄生虫』によると、西南戦争で自害し首のない西郷の死体を本人のものと特定させたのはこの巨大な陰嚢であったという。
参考 東京工業大学関嶋研究室:顧みられない熱帯病 Wikipedia:フィラリア 象皮病
![]() | リンパ浮腫がわかる本―予防と治療の実践ガイド |
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法研 |
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主婦の友社 |
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