疲労を科学する
 過労死という言葉がある。「Ka-ro-shi」は英語の辞書や他言語の辞書にも掲載されている。日本語がそのまま使われるのはこれが日本特異の現象ということだ。先進国であるはずの日本の封建的な奴隷制度とあまり変わらない労働状況を象徴する言葉だという。

 厚生労働省のマニュアルによれば、「過労死とは過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態をいう」と定義されている。

 私も親戚を過労死でなくした。私自身も疲れで体が動かないこともある。今でも現実的な問題だ。疲労は、身体の異常を知らせる“3大生体アラーム(痛み・発熱・疲労)”の一つであるが、これまでその正体は謎のままであった・・。


 疲労の正体をつきとめたのが、大阪市立大学渡辺 恭良(やすよし)特任教授だ。渡辺教授は、そればかりか、疲労回復物質を発見したり、疲労を数値化し、疲労度計で測定する方法を開発した。

 この疲労度計を使えば、本人に気づきにくい疲労でも客観的に測定し、過労死を防ぐことができる。いったい疲労の正体とは何だろうか?また、疲労回復に最適な物質とは?疲労をどのように数値化するのだろうか?

 まずは、9月7日TBSの番組「夢の扉+」で放送した「世界初!疲労のメカニズムを解明し、疲れを数値化」から引用する。今日から、毎日疲れをとってスッキリ!健康生活を目指そう!


 夢の扉の鍵 「自分の道は自分にしか分からない」
 身体の異常を知らせる 「痛み」、「発熱」、「疲労」。“3大生体アラーム”と呼ばれるが、日常的に症状が出る「疲労」は、見過ごされがち・・。重大な疾患が潜む可能性もあるが、これまで、客観的な診断法は確立されていなかった。

 「疲れ」とは何か? なぜ、疲れるのか―? この“医学の忘れ物”に真正面から挑み、「疲労」のメカニズムを分子・神経レベルで解明したのが、大阪市立大学の渡辺恭良教授。

 渡辺教授は、どれだけ疲れているかを客観的に測る検査法を確立、疲労の数値化に成功した。

 挑戦のきっかけ、それは、自身の過労だった・・。脳科学を専門としていた渡辺は、40代半ばで、研究費13億円という脳科学研究のリーダーを任された。

 しかし、疲労困憊の日々が1年間続き、ついに、激しい腹痛に倒れる―。その原因は何か?当時の医学書を開いても、なんと病気の原因である「疲労」について述べた項目がなかった。「自分が体験したような“疲労”をなくしたい!」 渡辺は、生涯のテーマを決意した。

 1999年、疲労研究は国家プロジェクトとしてスタート。これまでに国や企業から、30億円という莫大な費用が投じられた。しかし、まわりには批判する人の声もあった。「疲労なんて休めばいいことでしょ」「こんな研究しても意味がない」

 渡辺教授は思うのだった。「自分の道は自分にしか分からない」「自分に何ができるのかは自分にしかわからない。自分の信じた道を歩もう」 

 渡辺教授を中心とする研究チームは、疲労の主な原因物質とされてきた「乳酸」が、むしろ疲れを取る役割があり、別の物質が疲労の原因であることを証明した。

 さらに、疲労回復に絶大な効果を発揮する、“ある物質”にたどりつく。そして今、新たに目指すのは、採血のように患者に負担をかけずに、手軽に且つより高い精度で、疲労を数値化すること。測るのは・・「自律神経」?
 世界共通語になってしまった“Ka-ro-shi(過労死)”を防ごうと突き進む渡辺教授の挑戦を追う。(TBS:夢の扉+)


 世界初!疲労の正体を解明
 まず、渡辺教授は疲労の原因物質を探すことにした。疲労で思い浮かぶのは「乳酸」だが、意外なことに乳酸は疲労回復物質であることがわかった。原因となる物質は「活性酸素」だった。活性酸素は細菌を退治してくれるが、同時に自分の細胞を傷つける物質だった。これが疲労をつくるのだ。

 では「活性酸素」を解消するにはどうしたらよいか。そう、抗酸化物質だ。渡辺教授は、疲労回復に最適な抗酸化物質を探すことにした。ありとあらゆる食材を調べた結果。一番最適な物質を発見した。その物質の名前は「イミダペプチド」。

 他の疲労回復物質が体全体にはたらくところ、イミダペプチドは、ピンポイントで効く。マグロの赤身や鳥の胸肉に多く含まれている。

 次に目指したのが疲労の数値化。過労死に認定される人は年間120人、実際に亡くなる人は数万人のぼると推定されている。つまり、過労死ということが、自分やまわりの人が認知できていないのだ。これを計測器で数値化することができれば、誰でも過労を認知できる。

 渡辺教授が、最初に考えたのが運動量の変化だった。だが、疲れていても運動量が増える人がいた。これは個人差があり物差しにできなかった。次に選んだのが脳ストレスの変化。これも個人差がありうまくいかない。

 そして、発見したのが自律神経のバランス測定。疲労がたまると、交感神経と副交感神経のバランスが悪くなる点に着目。これは、心電と脈拍を測れば数値化できた。気がつけば研究開始から15年経っていた。ついに疲労を測定する「疲労度計」を開発したのだ。

 次に4月5日NHK「あさいち」で放送の「さらば!疲労体質」を引用する。


 さらば!疲労体質
 日々の家事による疲れ、人づきあいによる疲れなど私たちは「疲れ」に囲まれて生きています。しかし疲れは放置しておくと糖尿病などの生活習慣病などを引き起こす可能性があり、実は怖いものなのです。

 一方で「疲れ」は身近な存在にも関わらず今までその「正体」はわかりませんでした。近年、疲れのメカニズムが解き明かされつつあります。「疲れ」を示すタンパク質「FF」が発見されたのを皮切りに、去年1月には生体内で「FF」を打ち消す働きがある「FR」が発見されました。

 さらに「イミダゾールジペプチド」という物質に「FR」を増やす働きのあることもわかってきました。番組では疲労研究の最前線を取材するとともに、科学的に解明されてきた疲労回復術から疲労に強い体の作り方まで、疲労とうまくつきあう方法をご紹介しました。

 唾液で疲労を測定することについて疲れが増すと唾液中のヒトヘルペスウイルスの一種であるHHV6やHHV7が増えることを利用して、唾液で疲労を測定しています。

 この方法は今のところ研究のため利用されている状態です。医師の判断で疲労測定に利用される方法のため、一般の方は測定できません。番組では特別に東京慈恵医科大学教授 近藤一博さんに測定してもらいました。


 疲れの正体「FF」とは?
  今、従来はよくわからなかった「疲労」が科学的にわかってきています。中でも大きな発見は、疲れの原因物質が見つかったことです。「FF(ファティーグ・ファクター)」と呼ばれるこのタンパク質は蓄積すると「細胞死」を促進させ、心臓病や糖尿病などの生活習慣病の原因になると考えられています。

 怖い「隠れ疲労」について 疲れはやりがいのある仕事や高い報酬によって感じなくなってしまいます。すると疲労を感じないため、働きすぎが起こってしまいます。これが「隠れ疲労」です。「隠れ疲労」は放っておくと、過労死を引き起こします。そこで番組では「隠れ疲労」を発見する方法をご紹介しました。

 隠れ疲労 ここをチェック!
・「はー疲れた」とここ最近言っていない ・嗅覚が鈍くなった ・他人の会話についていけない


 ちょっと疲れて疲労回復
 東京慈恵会医科大学、近藤一博教授は去年、疲労物質「FF」の力を弱める物質、FR(疲労回復因子 ファティーグ・リカバー・ファクター)を発見しました。「FR」は「FF」が出ると作られる性質があります。この性質を利用して、ジョギングをすることで「FF」と「FR」がどう変化するかを実験しました。

 その結果、1時間半ジョギングをして、その後1時間休憩をすると、実験前よりも「FF」が下がり、「FR」が上がることがわかりました。「ちょっと疲れて」その後休むことがポイントです。

 風呂やストレッチで疲労回復に効果があります。風呂の場合、41度以下のぬるめのお湯で10分くらい入浴することで「FR」を出すことができます。心地がいいと感じる程度の入浴が適当です。入浴は心臓に負担をかける行為でもあるため決して無理をしないでください。


 めざせ!疲労に強い体「FR体質」
 FFを出してFRを出すのではなく、FRそのものを増やすことで疲労に強い体を作る方法をご紹介しました。鶏のむね肉などに含まれるイミダゾールジペプチドを摂ることでFRを作ることができます。

 大阪のコンビニエンスストアや帝京大学駅伝競走部では、イミダゾールジペプチドを弁当や練習に取り入れています。他に疲労に効果があるものとして緑の香りやグレープフルーツの香りなどをご紹介しました。

 特にイミダゾールジペプチドを豊富に含む食品としてカジキを取り上げました。沖縄県与那国島で親しまれるカジキのおいしい料理法をご紹介しました。カジキをスープにすることでイミダゾールジペプチドを余さず摂ることができます。

 また衣が厚い天ぷらにすることで、パサパサになりがちなカジキをしっとりと食べることができます。(※妊娠中・授乳中の方は1回60グラム~80グラムを週2回程度を限度に召し上がってください。)(NHK あさいち)


 渡辺 恭良氏
 大阪市立大学大学院医学研究科 システム神経科学教授 独立行政法人理化学研究所 分子イメージング研究プログラム プログラムディレクター

 1980年3月、京都大学大学院医学研究科博士課程修了後、京都大学放射性同位元素総合センター助手、大阪バイオサイエンス研究所・神経科学部門研究部長などを経て、1999年より大阪市立大学大学院医学研究科・システム神経科学教授。

 2006年から独立行政法人理化学研究所分子イメージング研究プログラム・プログラムディレクターを兼任

 2008年より同研究所分子イメージング科学研究センター長。文科省21世紀COEプログラム革新的学術分野「疲労克服研究教育拠点の形成」拠点リーダー(2004年~)、や科学技術振興機構・社会技術研究「脳科学と教育」「非侵襲的脳機能イメージングを用いた学習意欲のコホート研究」研究代表者(同)も務める。

 2010年4月5日、平成22年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)を受賞。業績名:「先端技術を駆使した統合的疲労科学・疲労克服研究」


 近藤 一博氏
 
「疲労」はストレスの蓄積によって生体機能に障害が生じた状態を、「疲労感」は疲労を脳が主観的に定量する感覚を指します。 「疲労感」は、報酬や、やり甲斐などでマスクされ易いため、「疲労感」のみで「疲労」を定量しようとすると、様々な問題が生じます。 そこで、「疲労」を客観的に測定するために、疲労によって変化する生体のバイオマーカーを発見し、これを利用して疲労を測定する様々な方法が検討されています。

 我々は、疲労を客観的に測定するために、「疲れるとヘルペスという水泡が唇にできる」という現象に着目しました。 この現象は、通常は宿主の体内に潜伏感染しているヘルペスウイルスが、疲労によって宿主の危機が生じると再活性化し、他の宿主を求めて体外に放出されるという現象です。 ヒトのヘルペスウイルスは8種類知られていますが、この中でも労働による疲労にはヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が良く反応し、基礎疾患がある場合の疲労にはHHV-7が反応することが判りました。

 1999年度~2002年度: 大阪大学 / 大学院・医学系研究科 / 助教授

 2002年度~2003年度: 大阪大学 / 医学(系)研究科(研究院) / 助教授

 2003年度~2008年度: 東京慈恵会医科大学 / 医学部 / 教授 

 2008年: 9月にFF(疲労物質:ファティーグ・ファクター)」を発見、11月「HHV-6再活性化を用いた疲労度評価方法およびその利用」発表。

 2009年度~: 東京慈惠会医科大学 / 医学部 / 教授

 2011年: FR(疲労回復因子 ファティーグ・リカバー・ファクター)を発見。


参考 Wikipedia:疲労 過労死 TBS:「夢の扉+」「世界初!疲労のメカニズムを解明し、疲れを数値化


脳と疲労 ―慢性疲労とそのメカニズム― (ブレインサイエンス・シリーズ 25)
クリエーター情報なし
共立出版
抗疲労食―毎日の食事が疲れに効く!
クリエーター情報なし
オフィスエル

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